【連載】秋季リーグ戦開幕前特集『求』【第6回】熊田任洋副将×吉納翼

野球

 最終回に登場するのは、熊田任洋副将(スポ4=愛知・東邦)と吉納翼(スポ3=愛知・東邦)の「東邦コンビ」。共に打線の中軸を担い、チームに欠かせない存在となっている二人が、東京六大学秋季リーグ戦(秋季リーグ)に懸ける思いとは。

※この取材は9月2日に行われたものです。

「どういう場面、どういう状況であっても自分たちの野球ができるようにしていきたい」(熊田)

――お互いの紹介をお願いします

熊田 吉納は見た目結構チャラそうな、やんちゃそうな顔をしているのですが、 根は真面目で、野球に真摯に取り組んでいる姿が印象的かなと思います。

吉納 熊田さんは高校の頃からチームの主軸となって、常にチームの先頭で声を出したり、プレーでも率先したりしている姿を自分も学んでいきたいなと思っているので、参考にしている選手の1人でもあります。

――高校時代から知る関係だと思いますが、高校時代と今で印象に違いはありますか

熊田 変わっていないです。

――お互いの意外な一面を教えてください

熊田 意外な一面…。何かある? 高校から知っているので。

吉納 自分は高校の頃は知らなくて、大学入ってから知ったんですけど、(熊田選手は)K-POPとかあんまりそういう感じじゃないなと思っていたんですけど、意外とK-POPとか韓ドラとかめっちゃ見ています。

――好きなグループは

熊田 グループですか。大半好きなんですけど、この前aespaのライブに行って感動しました。

――イチオシの韓ドラは

熊田 どれだろう。自分が一番面白いなと思ったのは、『社内お見合い』です。お互いに恋愛の韓ドラを結構見ます。

吉納 自分も『社内お見合い』好きです。

熊田 最近は『キング・ザ・ランド』。

吉納 ホテルの本部長と優秀な社員が最初は本当に仲悪い状態から恋愛に発展するみたいな。めちゃくちゃ面白いです。

――東京六大学春季リーグ戦(春季リーグ戦)4位という結果を振り返っていかがですか

熊田 順位どうこうというより、やっぱり後半、法政に負けてから自分たちの野球をすることができなかったことがこの春のリーグ戦で一番悔しかったことです。どういう場面、どういう状況であっても自分たちの野球ができるようにしていきたいなと思います。

吉納 新チームが始まる前から明治が強くて、明治を倒そうと取り組んだ春でしたが、結果を見てみれば法政にも勝ち点取られて、慶応にも取られる結果になってしまいました。自分たちの実力があるには変わりないと思いますが、結果として4位になっている以上はもっともっと自分たちがやらなきゃいけないなと痛感させられました。

――印象に残っている試合を教えてください

熊田 明治との試合が一番印象に残っています。

吉納 自分もそうですね。法政落としてから悪い流れでいってしまったのですが、やっぱり明治が目の前で優勝した姿を見て本当に悔しかったですし、 自分たちが負けて明治が優勝したのがとにかく悔しかったです。

――春季リーグ戦を通して見えてきたチームの課題はどんなものですか。

熊田 結果として出ているのはやっぱ投手陣だと思いますし、目に見えないミスや細かいところがやっぱり明治と自分たちの差だと思ったので、 記録には出ませんが、細かいところまでこだわってやっていかないとなと思いました。

吉納 自分が早稲田に入って一番最初に思ったのが、仲悪いわけではないのですが、ピッチャー陣と野手陣が孤立しているなという感覚で。個々で見たら仲悪くはないのですが、やっぱりピッチャーはピッチャーで仲良しこよしでやっていたり、それをピッチャーからしたら野手もそうやっているふうに見えたりっていうのが、結果として出ている感じがします。難しいところではあると思いますが、ピッチャーと野手の連携をしっかりやっていくのが大事だと思います。

――春季リーグ戦の個人の成績を振り返っていかがですか

熊田 チームの勝利のためにという部分では、自分なりにはベストは尽くしたかなと思いますが、やっぱり劣勢でチームの空気が悪い中、断ち切ることができなかったのでそこの部分が課題だと思いました。

吉納  自分もそうですね。打率が低くて。去年の秋とか振り返ってみたら、結構点が入っている場面での先頭バッターで自分が立っていることが多くて、チャンスメークできた部分が去年はありましたが、今年の春は自分が先頭から始まる時もなかなかチャンスメークができていませんでした。ホームランは2本出たものの、やっぱりチームバッティングとしては全然まだできていなかったなというふうに思います。

――春季リーグ戦が終わってからは監督や主将副将を含めて、夏のテーマとしてはどんなものが掲げられましたか

熊田 特にこれというテーマはなかったのですが、やっぱり春の結果が自分たちと他大学との力の差だとみんな痛感したと思うので、この差をなんとかするために、この夏はチームもそうですけど個人の練習でも取り組んでいました。

吉納 熊田さんの言った通り、特にこれっていうのはないのですが、ここ最近も春が始まる前も監督が「個々の技量を本当に一人一人が全部発揮できたらすごいチームになる」と言っていました。本当にその通りだなと思っていた分、やっぱり結果が出てないのが現状で、だからこそしっかりもっと一人一人が全ての力を発揮できるようにしていかなければいけないなという気持ちに各々がなっていたと思います。

「自然とチーム力が上がっていると捉えることもできる」(吉納)

質問に答える吉納

――新潟でのキャンプ全体を振り返ってみていかがですか

熊田 日本生命でコーチをされている宇髙さん(宇高幸治、平23スポ卒=現日本生命コーチ)や、オール早稲田戦で社会人の主力で戦っているような方たちと試合をさせてもらって、技術はそうですけど、やっぱり1球の重みというか、野球で飯を食べていくっていうことはこういうことなんだなっていうことをこの新潟キャンプでは一番感じました。本当にどの練習でも、1球っていうのは無駄にしちゃいけないんだなと思いました。

吉納 自分もそうですね。オール早稲田戦とかでやっぱり感じたんですけど、本当に1球への執着心であったり、一つ一つのプレーですね。やっぱり本当に負けたら終わりという世界でやっている人たちのプレーは、自分たちとは本当に比べものにならなかったのですが、全てがうまくいかなかったわけではないですし、やっぱり一人一人が本当に秋優勝するためにという中で、同じ宿舎に全員が寝泊まりしたり、みんな同じ会場でご飯食べたりしてっていうのを2週間弱続けたのは、自然とチーム力が上がっていると捉えることもできますし、下向く必要はないかなと思います。キャンプを開いてみんなでいいものを作り上げたなという風に思います。

――チームとして夏の間に重点的に取り組んできたことはありますか。

熊田 大前提として守備力、打撃力を個々で上げていくっていうのはまず1つの課題でした。宇髙さんから言われたのはカバーリングだったりランナーの全力疾走だったり、細かいところを指摘されたので、そういう自分たちがちゃんとできることをやっていこうというふうにやっています。

吉納 自分たちのできることっていう部分では、技術、打撃、守備とかを上げるために、ウォーミングアップの入りであったりとか、グラウンドでの全力疾走とか、細かな動きにしても、メリハリつけて動くっていうところを意識してやっていけたらと思います。

――個人的に、重点的に取り組んできたことはありますか

熊田 このキャンプでは守備を重点的に取り組んできました。代表でも感じましたし、日米大会でも感じたことですが、やっぱり無駄な動きをなくしたり、足の運びをちゃんとやっていかないとなと感じたので、 そこを意識しながらやってきました。

吉納 自分は二つあります。 年始から金森助監督(金森栄治助監督、昭54教卒=大阪・PL学園)が新たにチームに加わって、自分は特に打撃なんですけど、打撃において特になんか大きく変えようとしたことはなくて、意識の変え方とか本当にちょっとしたことで、バッティングが良くも悪くもなってしまうので、そこをいい状態を続けるためにも、金森助監督に自分から色々意見を聞いて取り組みました。もう一つは、上級生になった立場として、あんまり人前で話すのが得意じゃないというか、あまり好きではないのですが、練習やミーティングにしても本当たまにですが積極的に自分から発してチームの雰囲気を上げていけたらなと考えたので、そういう姿勢ではしっかり取り組めたなという風に思います。

――具体的に新しく始めたことはありますか

熊田 自分の中では変えたつもりないんですけど、結構周りに言われるので、なんか変わったみたいです。

吉納 僕はそんな変えていないですね。

――ここまでの夏季オープン戦を振り返っていかがですか

熊田 不安ですね。

吉納 今日の試合後(9月2日対ENEOS戦、5―25で早大が敗戦)の取材なので、ちょっと不安でしかないですけど、よくこの負けを次につなげようとか、この負けがあったからっていうふうに、去年や一昨年も何度か言ってくるケースがありましたが、僕はそういうのは強いチームが成績を残しているからこそ言えることかなと感じています。やっぱり自分が入学してから優勝っていう景色は見たことないですし、春の4位に終わった中で果たして本当に今のチーム力でそういうふうに考えていいのかなと思います。それこそ今日の試合にしても、自分がもし早稲田大学野球部員じゃなくて、早稲田ファンとして試合を見たら、本当に大丈夫かなと思うぐらいの試合をしているのが続いているとは思います。不安ではありますが、さっき言ったようにそのキャンプでのチーム力とか団結力を磨き上げてきたことには本当に変わりないと思うので、とにかく下を向いちゃダメっていうふうにまたリーグ戦始まる中で自分が発信していけたらいいなという風に思います。

――個人の状態としてはいかがですか

熊田 ぼちぼちです。

吉納 まあまあですけど、ここから上げていけたら。色々試しながらやってはいるので、リーグ戦で活躍して優勝するために貢献できるのがベストなので、そういう意味ではしっかりリーグ戦にベストを持っていけたらなと思います。

「日本代表の経験でより一層プロに行きたいと思った」(熊田)

質問に答える熊田

――熊田選手への質問です。大学日本代表の活動を振り返って感想を教えてください

熊田 まず一番に「野球って楽しいな」というふうに素直に思いました。大学のトップレベルの選手が集まる中でアメリカの大学生とも戦って、体の強さや打球の強さといったものは違うなと思ったので、そこは一番刺激を受けたのではないかなと思います。

――秋にはドラフト会議も控えていますが、改めてプロへの思いを教えてください

熊田 この日本代表の経験でより一層プロに行きたいと強く思ったので、ドラフトまで2カ月を切っていますが、1日も無駄にできないなと思います。

――次に吉納選手への質問です。大学日本代表に選出されたり、プロへ進んだりする先輩が多くいますが、そういった上のレベルでの野球に対するご自身の思いを教えてください

吉納 リーグ戦で何度も試合をしている身近な選手たちであるからこそ、目の前でプレーしたり、大学日本代表対高校日本代表の試合を見たりしても、本当に上のレベルでやっているなと感じます。そういった選手を超えていかないと自分も上で活躍できないという風に思うので、憧れていてはいけないですね。憧れるのをやめましょう(笑)。

――同年代でライバル視している選手はいますか

吉納 大学日本代表にも選ばれた佐々木泰(青学大)は、中高時代から知っていて仲が良いです。六大(東京六大学リーグ)と東都(東都大学リーグ)でリーグは違うのですが、東都で優勝して、日本一にもなって、大学日本代表にも選ばれてというのを見て、本当に一気に存在が遠くなってしまったなという感じがします。それでも、自分がこれからもっと頑張って佐々木泰をしっかり超えていきたいと思います。

「先輩たちに優勝という最高の景色を見せてあげたい」(吉納)

取材に応じる二人

――次に秋季リーグ戦の話題に移ります。先ほど「不安がある」という話もあったのですが、具体的にはどんな点を修正していきたいですか

熊田 何かこれというものは残りの期間で変えることはできないので、一日一日勝つために全員が頑張るしかないです。やるだけです。

吉納 本当にやるだけですし、熊田さんを含め4年生は本当に最後の試合になり、終わりが近づいてきます。熊田さんたちの代は2年生の秋にフレッシュ(東京六大学フレッシュトーナメント)で優勝しているので、その景色をもう一度みんなで見れたらいいなと思います。

――スタメンは昨季と大きく変わらないと思いますが、リーグ戦経験のない4年生やルーキーがアピールを続けています。新戦力に期待していることはありますか

熊田 4年生だったら、澤村(澤村栄太郎、スポ4=早稲田佐賀)や前田(前田浩太郎、スポ4=福岡工)、黒嶋(飛来、スポ4=早稲田佐賀)が投げることが増えたのですが、春になかなかチャンスをつかめなかった3人なので、暴れてほしいなと思います。

吉納 僕は1年生の越井(越井颯一郎、スポ1=千葉・木更津総合)に期待しています。入学当初は笑われている感じとかあったのですが、あれだけマウンドで気迫を出して投げている姿は見習うべきだと思いますし、これからが本当に楽しみな選手でもあるので、期待したいと思います。

――熊田選手にとってはラストシーズンとなりますが、副将として、チームの柱として、どんな役割を果たしていきたいですか

熊田 自分は勝つために思いを伝えるというより、そういう姿を見せることしかできないので、悔いのないように過ごしていきたいとは思っています。

――吉納選手にとっては、今の4年生とプレーする最後のシーズンとなりますが、4年生に対してどんな思いがありますか

吉納 リーグ戦期間に入ったら一試合一試合やっていくと思うのですが、例えば東大にしても明大にしても各大学の各試合のワンプレーワンプレーを人生の思い出となるように気負わないで楽しんでもらいたいです。早稲田のチームの風習としては、「4年生がやろう」とか「4年生が引っ張っていこう」というのがあって、もちろんいいことだとは思うのですが、自分がその立場ではなく、4年生の重みというのは分からないのですが、早稲田に来て試合ができるということや神宮の景色などを忘れないように楽しんでやってくれれば大丈夫です。それがいい結果につながると信じているので、優勝できるように自分も含めて下級生は頑張っていきたいと思います。

――改めてチームの目標を教えてください

熊田 必ずこの春の悔しさを秋にぶつけられるように頑張っていきたいと思います。

吉納 毎リーグ「今年こそ」と言っているので、本当に今年こそは優勝します。

――勝つためのプランは持っていますか

熊田 勝てれば何でもいいです!

――個人の目標を教えてください

熊田 チームが勝つならば自分はベストを尽くすだけなので、もう勝てば本当に何でもいいです。

吉納 勝つための一打を打っていきたいなと思います。2年春からスタメンを取っていろいろタイトルを取りたいと言っていたのですが、上級生になってくれば考え方も変わってきて、とにかく優勝するために自分のベストプレーを尽くせたらいいなと思います。

――ご自身の注目してほしいところを教えてください

熊田 気合いを見てくれればと思います。

吉納 自分もガッツあるプレーを見てほしいと思います。

――最後に一言お願いします

熊田 4年生として本当に最後になるので、何か後輩に残せたらなというふうに思うので、優勝目指して頑張りたいなと思います。

吉納 僕たち後輩が先輩たちに優勝という最高の景色を見せてあげたいなと思います。

――ありがとうございました!

(取材・編集 齋藤汰朗、横松さくら)

東邦コンビの活躍に期待です!

◆吉納翼(よしのう・つばさ)(※写真左)

2002(平14)年8月16日生まれ。180センチ。85キロ。愛知・東邦高出身。スポーツ科学部3年。外野手。右投左打。熊田選手も選出された大学日本代表への意欲を尋ねると、「憧れるのをやめましょう」という大谷翔平選手(エンゼルス)の名言を引用して答えてくれた吉納選手。大谷選手をも超える活躍に期待です!

◆熊田任洋(くまだ・とうよう)

2001(平13)年4月15日生まれ。174センチ。76キロ。愛知・東邦高出身。スポーツ科学部4年。内野手。右投左打。今夏、大学日本代表に選抜された熊田選手。自由時間には、明大の上田希由翔選手や宗山塁選手、仙台大の辻本倫太郎選手などとゲームをして親交を深めたそうです!