【連載】春季早慶戦直前特集『慎始敬終』【第11回】熊田任洋副将

野球

 ここまで打率3割8分2厘、本塁打2本、リーグトップタイの12打点と、自身初のベストナイン、そして三冠王も狙える位置に付けている熊田任洋副将(スポ4=愛知・東邦)。森田朝陽主将(社4=富山・高岡商)が出場できない中で、チームをまとめるという役割も果たしている。そんな熊田副将に、好調の要因や早慶戦への意気込みなどを伺った。

※この取材は5月20日に行われたものです。

「背中で見せることが一番」

明大1回戦で本塁打を放つ熊田

――早慶戦まであと1週間となりましたが、今の心境を教えてください

 早慶戦はやはり特別なものなので、慶應を倒すためにしっかりと準備をしている段階です。

――今季の戦いを振り返ります。開幕カードの東大戦とその次の立大戦では打線がしっかりと機能して勝ち点を獲得しました。最初の2カードを振り返っていかがですか

 一人一人がその状況に応じてベストを尽くしてそれが点につながっていたので非常に良かったのではないかなと思います。

――その次の法大戦では、4戦目までもつれ込んだ末に勝ち点を逃しましたが、勝ち切れなかった要因は何だと思いますか

 点が取れるところで取れなかったというのもあると思いますし、無駄な四球などの部分があったので、接戦になって勝ち切れなかったのかなと思います。

――法大戦の悪い流れを断ち切れないまま明大からも2連敗を喫しましたが、振り返っていかがですか

 投手力でも打撃力でも力負けしましたし、あれだけ守備で簡単に四球などで出塁を許して得点させたら試合に勝つことは難しいなと思いました。

――目の前で明大の優勝を見届けるというかたちになりましたが、その時の心境はいかがでしたか

 悔しかったのは悔しかったのですが、呆気なかったというか、何回やっても勝てないだろうなとその時は思いました。

――森田朝主将が出場できないということで、副将の熊田選手が中心となってチームを引っ張っているのですか

 そうですね。自分の役割は特に変わっていないのですが、森田がいない分、4年生が中心となってチームを鼓舞してやっているという状況だと思います。

――控えのメンバーも含めて4年生がよく声を出している印象がありますが、その活躍はどう見えていますか

 試合に出ているメンバーは少ないのですが、一人一人が自分のやるべきことを考えて動いていますし、出てない4年生が下級生を支えて引っ張っているので、非常にありがたいことだと思います。

――今年からレギュラーに定着した下級生の選手もいますが、その下級生の活躍はどう映っているでしょうか

 今回初めてリーグ戦に出る選手が多くいるのですが、助けてもらっている部分も多くありますし、リーグ戦の独特な空気感を味わって学ぶことも多かったと思うので、それを生かして今後につなげてくれればなと思います。

――熊田選手も下級生の頃から出場していたわけですが、やはりリーグ戦の神宮球場独特の空気というのは感じていましたか

 ちょっと言葉で表すことは難しいのですが、神宮でプレーするということは早稲田の代表として出るということなので、普段できていたことが思い通り動かないということが多くあったので、そこはやっぱり独特なんじゃないかなと思います。

――森田朝主将と熊田副将でリーダーとしてのタイプに違いはあるのですか

 自分の場合はプレーでというか背中で見せることが一番だと思っていますし、森田の場合は鼓舞するような声かけで引っ張っているので、そこは違うのかなと思います。

――副将として他の選手の手本となるために心がけていることはありますか

 自分の場合はプレーでみんなを支えるということもそうですし、プレーでうまくいかなかった時に自分が不貞腐れた態度を出すとチームの雰囲気が悪くなってしまうので、いいときも悪いときも何も変わらずにプレーするということは意識しています。

――個人の成績について伺います。今季は打撃が好調ですが、その要因は何だと思いますか

 しっかりと投手の球種や球の軌道を頭に入れて、自分の中で打つボールと打たないボールというのをしっかり整理して打席に入れていることが一番の要因ではないかなと思います。

――リーグトップの12打点ということで、チャンスに強さを発揮していると思いますが、得点圏に走者がいる時といない時で気持ちの面で違いはありますか

 シンプルにランナーがいない時は自分が出ることを考えていますし、ランナーがいれば最低限何をしなければいけないのかというのを整理して打席に入っていることだと思います。

――ベストナインも視野に入ってきましたが、チームのためにプレーして、その結果タイトルが取れればいいというスタンスに変化はありませんか

 変わらないです。チームが勝つために自分のベストを尽くせるようにということを一番に考えています。

――守備ではチームで無失策を継続していますが、守備の秘訣はありますか

 この冬から春のリーグ戦に向けて実践を想定した守備練習を多く行ってきたので、それが生きているのかなと思います。

――1番の尾瀬雄大選手(スポ2=東京・帝京)が出塁して、2番の中村将希選手(教4=佐賀・鳥栖)が送って、熊田選手が返すという得点パターンが多いと思いますが、その1、2番コンビの働きはどのように映っているでしょうか

 チャンスで自分に回ってくることが多いので、非常にありがたいと思います。

――中村将選手とはプライベートでも関わりがあると伺ったのですが、どんな過ごし方をしていますか

 将希と他に何人かいるのですが、一緒にご飯に行ったり、誰かの家に行ってお酒とかゲームとかをしたりする感じです。

――中村将選手に期待する役割は

 結構熱い男なのでチームを鼓舞してくれますし、彼のプレーでチームの士気もあがるのでそういう役割だと思います。

「必ず慶應を倒したい」

法大1回戦で先制打を放った熊田

――早慶戦へ向けての話に移ります。今年のここまでの慶大の印象はいかがですか

 やはり投手を中心に守りからリズムを作ってくるチームだと思いますし、次の塁を狙う姿勢だったりといった細かいところが徹底されているイメージがあります。

――外丸東眞選手(2年)、谷村然選手(4年)の先発が予想されますが、二人の印象は

 二人ともコースを丁寧に狙って打たせて取るスタイルかなと思います。

――外丸選手、谷村選手を攻略するビジョンは見えていますか

 しっかりとこれまで通り打つ球打たない球を整理することと、甘い球を一発で仕留めるということが一番大事なことだと思うので、そこを残り一週間見つめ直していきたいと思います。

――打者で警戒している選手はいますか

 廣瀬(廣瀬隆太、4年)はもちろんですが、1番を打っている吉川(吉川海斗、4年)や、栗林(栗林泰三、4年)が今調子が上がってきているので、この3人は特に警戒したいと思います。

――そんな慶大を倒すためには誰が鍵を握ると思いますか

 加藤選手(加藤孝太郎、人4=茨城・下妻一)じゃないですか(笑)。

――最後に早慶戦へ向けて意気込みをお願いします

 早慶戦は歴史と伝統があって特別な舞台だと思うので、必ず慶應を倒したいと思います。

――ありがとうございました!

(取材・編集 齋藤汰朗、写真 荒井結月、田中駿祐)

質問に答える熊田

◆熊田任洋(くまだ・とうよう)

2001(平13)年4月15日生まれ。174センチ。76キロ。愛知・東邦高出身。スポーツ科学部4年。内野手。右投左打。自他共に認める「背中で見せるタイプ」の熊田選手。早慶戦でも、野球に対する真摯(しんし)な姿勢と攻守にわたる活躍でチームを引っ張ってくれることでしょう!