【連載】春季リーグ戦開幕前特集『勇往邁進(まいしん)』 【第6回】吉納翼

野球

 昨春にスタメンに定着すると、秋にはリーグ2位となる打率3割6部1厘の活躍をした吉納翼(スポ3=愛知・東邦)。春季オープン戦では昨季の課題だった長打も出てきており、仕上がりは上々だ。そんな吉納にキャンプや冬場の取り組み、また東京六大学春季リーグ戦(春季リーグ戦)に向けた意気込みを伺った。

※この取材は4月4日にオンラインで行われたものです。

「悔いの残る打席がないように詰めていきたい」

城西国際大戦で適時打を放つ吉納

――約1カ月の遠征を振り返っていかがですか

 ロサンゼルスは1試合もできないかたちで終わってなかなか思うようにいかなかったんですけど、野球をやっている中で早稲田が春優勝するために常日頃からキャンプの期間でのチームの中でやることをしっかり統一できてたと思うので、そこに関しては良かったんですけど、天候なのでどうしようもないですが今言ったように実戦の少なさが少しやり残した感があります。

――冬の期間ではどのようなことに重点を置いていましたか

 今までは練習終わったらバッティングしてウエイトやってっていう感じだったんですけど、バットを振る量を増やして、寝る前に時間があったら寮の2階のちょっと広いベランダで素振りをしていて、鏡とかも何もない空間なので自分に集中して、コース別で素振りしたりとかすごくいい時間を過ごせているかなと思います。

――体を大きくするなどはあまりやっていない感じですか

 それはいつも通り継続してやっているんですけど、どれだけやったって試合ではバット振るのが自分がやるべきことだと思うので、そこにもうちょっと時間を割いてやっています。

――チームとしてここまでのオープン戦を振り返っていかがですか

 あまり大差で勝てるような試合も途中で追いつかれたり、勝ち切れるところでも勝ち切れなかったりとか、もちろん大敗したこともあって、その分たくさん課題は見つかったのでそれをリーグ戦までにつぶしていくのもそうなんですけど、やっぱりチームとして勝ち癖が付いたかと言われるとそうではないかなっていう感じなので、勝ち癖を付けた中での課題を見つけられるようにしたかったんですけど負け癖がついてしまったという感じです。でも下を向いていてもしょうがないので、リーグ戦に向かって一人一人が前を向いていくだけかなと思います。

――個人としてもコンスタントに安打が出ていると思いますが、調子はいかがですか

 去年の秋と比べて長打も増えていい状態ではあるんですけど、やっぱり悔いの残る打席も何打席かはあって、相手のピッチャーがどれだけ実力があってもそこに打ち勝つのが本物のバッターだと思いますし、それをチームのみんなが求めているからこそ試合に出続けられることだと思うので、ここっていう場面で今言ったように悔いの残る打席がないように詰めていきたいと思います。

――先ほどもあったように以前課題とおっしゃっていた長打も出ていますが

 打順が一つ上がって、もし例えば初回が3人で終わって4番の印出が塁に出てくれたらそこで一気に点を取りたいっていうのがやっぱりあって、クリーンアップを打っている以上やっぱりそういう打撃が求められていると思うので、また広角に長打が打てることが自分の持ち味なので、それを出せたらいいなと思います。

――左中間への長打が多いなと思いますが、やはりその意識はありますか

 来た球に対してコンスタントにバットを出しているだけなんですけど、外だからって無理に引っ張りにいかずにそこは素直に振っているだけです。

――5番を打っていますが、打順についてはいかがですか

 やっぱり上位と下位打線をつなぐ大事な場所だと思っていて、5、6番の自分と野村さん(野村健太、スポ4=山梨学院)が打てばいい打線のつながりが自然と見えてくるので、それをリーグ戦に発揮できたらいいなと思います。

――守備についてはいかがですか

 何個か進塁を防ぐ場面があったり、エラーもしていない気がして、沖縄とか関西、名古屋では社会人とか大学野球でも上のレベルのところとやることが多かったんですけど、そうなってくるとやっぱりいいバッターが増えてくる中で、前の打球もそうなんですけど後ろに大きいフライとかもあった中で、この冬課題としてやっていた背走の意識とかもしっかり出せるようになったのでいい状態なのかなと思います。

――浦添キャンプで中村将希選手(教4=佐賀・鳥栖)に送球を教えている場面もありましたが

 中村さんは送球があれなんでっていうのを自分で言ってきて、自分もそれは知っていたので、まず考えすぎているという部分もあったんですけど、自分は送球の精度はそれなりに自信があるので、持論ですけどこういうのを試してみたらっていうふうに提案してみたぐらいです。

――それ以降の試合では中村将選手の送球も安定してきたかなと思いますが

 確かにしていると思いますね。僕が言ったことを試しているか分からないんですけど良くなってきているので、うれしいなと思います。

――オープン戦を見ていて、森田朝陽主将(社4=富山・高岡商)を中心に非常に元気のあるチームだなと思ったのですが、その点はどうですか

 その通り主将の朝陽さんが相当な熱男なので、それにみんなが負けないようにっていう感じでそれがいい状態になっていて、負けている時も何試合かは雰囲気が悪くなってしまうこともありますが、でもやっぱり早稲田の野球部としてあるべき姿っていう部分に関しては、打席に立ってても守っていても安心感があるなと感じています。

――外野手の中では一番リーグ戦での経験あると思いますが、外野手を引っ張っていく立場としてはいかがですか

 そこに関してはもちろんセンター森田さん、レフト中村さんで学年としては上なんですけど、経験があるからということではなくて学年関係なしに、出ている以上は自信を持って言うべきことは先輩だろうが後輩だろうが言うのは大事だと思いますし、それくらいチームを引っ張っていけたらいいなと思っているので、もちろん去年1年間出場していろんな経験をしているのは間違いないですけど、そうだからじゃなくてやっぱり自分が先輩を勝たせたいっていうのもあるので、その気持ちの表れじゃないかなと思います。

――金森栄治助監督(昭54教卒=大阪・PL学園)が打撃コーチに就任してからチームとして変わったことなどはありますか

 金森さん自体が明るい方なので、金森さんの存在でチームの士気も上がったと思いますし、やっぱり金森さんが来て何とかして何かを変えないとっていう感じで練習に取り組んでいるので、それが結果として現れている現れていないどうこうじゃなくて、しっかりみんなでやろうっていう意思統一とかそういうのができているので、自然といい状態にもっていけているんじゃないかなと思います。

「僕が森田さんを日本一のキャプテンに」

社会人対抗戦で適時二塁打を放った吉納

――続いてリーグ戦についてに移ります。リーグ戦まで残り1週間ほどになりましたが、現在の心境を教えてください

 やるべきこと後はやるだけですし、どんだけ抱え込んでも(リーグ戦は)すぐやってくるので、とにかく自信をつけるために振り込むだけです。

――チームの雰囲気はどうですか

 チームとしても本当に始まるんだっていうのもここ最近の練習とか試合でも言っているので、もちろんキャンプ期間に比べて試合の取り組み方もリーグ戦に向けてどんどん気持ちができていると思うので、もうここの2週間弱をもっとみんな一人一人が出せたらいいなと思います。

――今までのチームとの違いはありますか

 これといったものは分からないですけど、やっぱり熊田さん(熊田任洋副将、スポ4=愛知・東邦)を中心に去年のチームでベンチに入っている人数が今の4年生が多い分、いいチームの状態だった時を見ている人が多いので、それを一人一人がしっかりとグラウンドで同じような雰囲気を出せるように体現しているのかなと思います。

――チーム内で期待している選手はいますか

 みんな期待していてもちろん自分がやらないといけないと思うんですけど、やっぱり森田主将だと思いますね。

――理由はありますか

 キャンプとかキャンプはいる前はあんまり調子が良くなかった中で、何とかしようとしている姿はみんな絶対感じていると思いますし、それにキャプテンっていうのがあって、みんなやらなきゃいけないっていうのが今のチームの状態をつくっているので、森田さんが不調だった時も見ているからこそここ最近の試合で打っている時を見ると自分も嬉しいなっていうふうに思いますし、やっぱり森田さんを胴上げしたいので、僕は期待しているのもそうなんですけど僕が森田さんを日本一のキャプテンにします。

――警戒しているチームはありますか

 やっぱり去年優勝している明治大学ですね。明治もやっぱり下級生が多い中でああやっていい成績を残していてまだそのいい選手が残っているので、明治を倒さないと優勝はないなと思います。

――チームとしても「明治を倒す」という意識はありますか

 ありますね。他の大学もあると思うんですけど、やっぱり明治が強いなというのが印象にあります。

――今季から背番号が24番になりましたが

 正直ひょっとしたら僕1着けるんじゃないかっていうふうに思っていたんですけど、でも24で去年はあの松木さん(松木大芽、令5スポ卒)という偉大な超最強男が着けていた背番号なので、その番号に恥じないように自分も暴れまくりたいと思います。

――個人としての目標はありますか

 毎回言っているんですけどやっぱり三冠王を取ってベストナインも受賞したいなと思いますし、やっぱりベストナインとかが各ポジションで早稲田として4、5人出ればチームとしてもいい成績残せてる、それが優勝につながるんじゃないかなと思うので、個人としてもチームとしてもそういう成績は残したいなと思います。

――どういった役割を担っていきたいですか

 やっぱりみんな氣があって自分は全然出していない方だと思うので、リーグ戦からは自分が一番(氣を)出せたらいいなと思います。

――一番氣を出しているのは誰ですか

 島川選手(島川叶夢、スポ4=熊本・済々黌)と森田キャプテン、この2人かなと思います。

――最後にリーグ戦への意気込みをお願いします

 多くの早稲田のファンがそろそろ優勝してほしいと思っている頃だと思うので、自分もやっぱり優勝して悔しい気持ちにもなりたくないですし、悔しい姿を早稲田のファンには見せたくないので、神宮球場に応援しに来てくださるたくさんの早稲田のファンと共に優勝できるように、自分がその優勝できるピースにはまれればと思います。

――ありがとうございました!

(取材・編集 田中駿祐、写真 荒井結月、田中駿祐)

笑顔で質問に答える吉納

◆吉納翼(よしのう・つばさ)

2002(平14)年8月16日生まれ。180センチ。85キロ。愛知・東邦高出身。スポーツ科学部3年。外野手。右投左打。ロサンゼルスから愛知まで全ての遠征に参加していた吉納選手。遠征の思い出として、沖縄のきれいな海や同期と出かけたということを挙げてくださいました!