【連載】新体制始動特集『捲土(けんど)重来』第2回 加藤孝太郎×伊藤樹

野球

 第2回には、早大をけん引する投手陣、加藤孝太郎(人3=茨城・下妻一)、伊藤樹(スポ1=宮城・仙台育英)の2人が登場。加藤は今春から第1先発に定着し、秋には最優秀防御率のタイトルも獲得。伊藤樹も、1年生ながら救援として幾度となくチームを救う活躍を見せた。そんな2人に2022年度の振り返りから、プロ入りまでを見据えた今後について伺った。

※この取材は12月10日に行われたものです。

2022年度は「すごく充実していた」(加藤)

昨秋法大1回戦で登板した加藤。早稲田のエースとしての活躍に来季も期待がかかる

――まずはそれぞれの他己紹介をお願いします

加藤 伊藤樹です。先輩に甘えるのが上手です。かわいらしい笑みを浮かべながら、考えていることはえぐいんじゃないかなという時はありますね(笑)。すごく良い後輩です。

伊藤樹 そんな考えていることはないのですが、優しい先輩ばかりなので、それにすがっているだけです(笑)。(加藤は)僕の中では血液型がA型って感じで…。

加藤 俺O型だよ(笑)?

伊藤樹 あれ(笑)? とにかくめちゃくちゃきれい好きなんですよ。プレーとかもとても丁寧で、私生活と野球がつながっている人だなという印象です。

加藤 本当に(伊藤樹が)そう思っているかは分からないのですが(笑)。確かにきれい好きではあるので、そういうのは野球に出ているのかなと思います。

――お2人は部活動以外での交流はあるのでしょうか

加藤 2人で買い物行くことはありますね。一緒にいることが多いかなと思います。

――どこに行かれるのでしょうか

伊藤樹 試合見に行った後…フレッシュ(東京六大学フレッシュトーナメント)の試合後ですかね、なんでしたっけ。

加藤 外苑前のハンバーガー屋さんに行きましたね。シェイクシャック?

伊藤樹 そうそうそう。原宿も行きましたね。

――先日引退された4年生からはどのような言葉を頂きましたか

加藤 自分が最高学年になるので、プレーだけでなく、普段の生活から(チームを)引っ張っていけるような取り組みをするようにというのと、悔いの残らないように頑張れという話を頂きました。

伊藤樹 自分は投手コーチの横山さん(横山優斗、社4=東京・早実)に一番お世話になって、いろいろアドバイスを頂きました。自分は結構ボールが荒れてしまって、横山さんにノーコンと言われていたので(笑)。プレーの面では「もっとコントロール良くしろよ」と笑いながら言われました(笑)。あとは3年生についてやっていけば大丈夫だから頑張れよという言葉を頂きました。

――主将の森田朝陽選手(社3=富山・高岡商)、副将の熊田任洋選手(スポ3=愛知・東邦)にはどのような印象がありますか

加藤 とにかく2人とも真面目です。熊田はどちらかというとプレーで引っ張っていくタイプだと思うのですが、4年生が引退されてからは発言も増えてきて、そういった面でもみんなを引っ張ってくれているなと思います。

伊藤樹 僕も同じく真面目な2人という印象があります。朝陽さんは勝負強いイメージがあって、気持ちが強い人なのかなと思います。キャプテン向きなのかなと思いますし、中川さん(中川卓也前主将、スポ4=大阪桐蔭)とはまた違ったスタイルの主将だなという感じです。熊田さんはプレーを一緒にしていて声を掛けてもらうことが多く、気配りができる方という印象があります。

――森田主将、熊田副将は共に野手ですが、投手陣のまとめ役は誰が担っていますか

伊藤樹 (加藤の方を見て)それはもう(笑)。

加藤 そうですね(笑)。やはりリーグ戦に出てた3年生が中心となって新チームを引っ張っているのかなと思います。

――今年1年を振り返るといかがですか

加藤 自分はこの1年はすごく充実していた1年だったと思います。今年から先発をやらせていただいて、春のリーグ(東京六大学春季リーグ戦)では最初、先発として試合をつくれるかが不安だったのですが、その中でも最低限試合をつくることができました。秋のリーグ戦(東京六大学秋季リーグ戦)に関しては春に出た課題というのを生かしながら、リーグ戦を最後まで投げ抜けたので、充実したシーズンだったと思います。

伊藤樹 僕もすごく充実していて、良い経験ができたと思っています。秋に関しては特に後ろを任されて、セーブを挙げられて、緊迫した場面でも抑えることができました。そのような良かった部分もあるのですが、(秋季リーグ戦の)明治戦で1試合目最後投げて打たれて、2試合目も先発してボコボコに打たれたのは、明治に1勝でもしていたら優勝の可能性があったところで全然貢献できず、悔しい部分でもあります。そういった部分も含めて経験ができたなと思います。

――お2人とも年間を通したリーグ戦の防御率が1点台ですが、その点はいかがですか

加藤 自分は試合に入る前に打者のデータをとても分析していたので、それが結果に結びついたのかなと思っています。データを見ながら一球一球に意図を持ちながら投球できていたのが1点台にもつながったのかなと思っています。

伊藤樹 僕は自分の自信のあるボールを1イニングで出し切って投げるという感じなのが加藤さんとは違うところです。自分はバッターのデータを入れちゃうと考えすぎちゃうところがあるので、キャッチャーに任せて、自分の持っているボールを投げるという感じでした。良い意味で吹っ切れながら、緊張感がある中で投げることができました。

――東京六大学秋季リーグ戦(秋季リーグ)を振り返って点数を付けるなら何点ですか

加藤 80点です。春は6回くらいで降板するケースがすごくあった中で、スタミナ不足が課題となっていました。秋は7回、8回まで投げ切れたということと、春で最後の最後に逃したタイトル(最優秀防御率)を取れたので、80点でお願いします。

伊藤樹 僕は70(点)くらいは付けていいかなと思います。明治戦以外は良いピッチングをできたという感じだったので、明治戦の価値を考えたら30点分くらいはマイナスなのかなと思います。

――秋季リーグの早慶戦では2連勝されましたが、その点はいかがですか

加藤 春に慶応には打たれていたので、とにかくどこまで粘れるかということを考えていました。8回に3点を取られたのですが、そこまではどうにか粘れて相手にリードを許さず、同点でバトンを渡すことができたので、最低限の仕事はできたのかなと思います。

伊藤樹 僕は2戦目しか投げていないのですが、本当に野手陣が頑張ってくれたなと思います。投手陣も点を取られながらも、粘ってという感じだったので、チームで勝ち取った2連勝でした。チームの中ではロー(スコアの)ゲームで勝つということをやっていて、最終戦で大勝することができて良かったと思います。やってきたことを出しながらも、高いレベルでやったらああいう試合になるんだなと思いましたし、早慶戦らしい試合だったのかなと思います。

――今年1年で印象的な登板はありますか

加藤 自分は秋の早慶1回戦ですね。3点もらっていたにもかかわらず、自分が追い付かれてしまって、その後ホームランで勝ち越された時には自分のせいで負けてしまうと思いました。ですが松木さん(松木大芽、スポ4=石川・金沢泉丘)のサヨナラタイムリーで逆転勝ちした時には、自分のせいで早慶戦の1回戦を落とさなくて良かったと思いました。それと同時に早慶戦はやはり別格だなと感じたので、早慶1回戦が印象に残っています。

伊藤樹 僕は2試合あります。1試合目は夏のキャンプの上武大戦です。春に全日本を準優勝しているチームに自分も投げて抑えましたし、打線もつながって勝ったというのが夏大きかったのかなと思います。公式戦だと延長までいった立教(1回)戦が早慶戦に良い意味でつながった試合だと思っています。自分も最速を更新できましたし、延長までいって勝ち切れたというのはチームとしても自信になった試合だと思っています。

――互いに印象的な登板はありますか

加藤 どの試合もインパクト強いんですよこいつ(笑)。でもやっぱり最速を更新した立教1回戦ですね。投げている姿をベンチから見ていたのですが、とんでもない球を投げるなと(笑)。ゾーンに入っていた感じでした。

伊藤樹 春の法政戦の2戦目です。自分にとって初めての公式戦が法政戦で、1戦目を落として加藤さんが2戦目に先発したのですが、オープン戦までに思っていた印象と全然違う加藤さんが投げていて、それが一番印象的でした。それからは自信を持って投げているなという印象があるので、最初のインパクトとして春の法政戦かなという感じです。

――加藤選手から見た「投手・伊藤樹」はどのような選手ですか

加藤 自分たちのレベルだとスピード・コントロール全てが高いレベルにあると思います。どうしても大学生はスピードがあると真っすぐに頼ったり、力任せに投げたりということがあるのですが、樹はストレートで押すこともできるし、頭を使ったクレバーな投球もできるので、大人な投球ができる投手だというイメージです。

――伊藤樹選手から見た「投手・加藤孝太郎」はどのような選手ですか

伊藤樹 さっき話した性格の話にもつながるのですが、自分は細かく細かくというのがなかなかできないタイプです。そうやって投げたいなと思っているのですが、自分はなかなか性格的には追い付けないんです。(加藤は)丁寧に投げるじゃないですか。そこが欲しい部分というか、すごいうらやましい部分です。

大学日本代表候補合宿は「立ち位置を再確認するきっかけになった」(伊藤樹)

昨秋明大2回戦で先発した伊藤樹。来季は先発の座をつかむことができるか

――ここからは個人への質問に移りたいと思います。まず加藤選手は、春からおそらく右のエースナンバーである背番号11を着けられるかと思います。背番号11への思いはありますか

加藤 早稲田の11って言ったら、簡単に着けられない重みのある背番号ですし、今まで偉大なOBの方々が着けてきた番号なので、その背番号に恥じないような活躍であったり、行動っていうのをしなくてはいけないなと思っています。昨年で言えば徳山さん(徳山壮磨、令4スポ卒=現横浜DeNAベイスターズ)が着けていた背番号で、自分も着けてみたいなという思いもあったので、その11番をもし着けるとなったらすごくうれしいですね。

――監督にも期待されていると思いますが、完投することへのこだわりはありますか

加藤 春のリーグ戦に関しては、自分の実力的にも完投は現実的ではないというか、難しいかなと思っていたんですけど、秋のリーグ戦に関しては自分が1戦目投げ切ろうという思いがすごくありました。

――個人的に投手陣で注目している選手はいらっしゃいますか

加藤 東海林(東海林碧波、スポ3=東京・早実)ですかね。まだリーグ戦では投げていないんですけど、入部した時からすごくスケールの大きい選手で、身長が190センチ以上あって、角度のある真っ直ぐが投げられるということで、順調に行けばリーグ戦で投げられる実力も十分にあるので、すごく楽しみというか、東海林がリーグ戦メンバーに入ってくれたらすごく投手陣に厚みが出るかなと思います。

――反対に野手陣で注目している選手はいらっしゃいますか

加藤 やっぱり熊田ですかね。1年生からずっと出ていて、今年の秋に打撃の方でも活躍していたので、ラストシーズンはもっと成長した熊田が見られるんじゃないかなと思いますね。

―続いて伊藤樹選手への質問に移ります。先日まで大学日本代表の候補合宿(侍ジャパン大学代表強化合宿)に参加されていましたが、まず選出された時の気持ちはいかがでしたか

伊藤樹 (選出を)伝えられたのが、お風呂に入っていて、加藤さんに言われて。今までジャパンの経験がなくて、そういう合宿とかに行ってみたいなという気持ちはすごくあったのですごくうれしかったです。もちろん行ってすごくいい経験になりましたし、いろいろな話を聞いて、やっぱりレベルが高いなと思いました。自分の立ち位置を再確認するきっかけになったので、すごくうれしかったのと、まだまだやらないといけないなというふうに思いました。

――合宿期間中に仲良くなった選手はいらっしゃいますか

伊藤樹 けっこういろいろな人と仲良くさせてもらったんですけど、一番いろいろな話とか、長くいたのは同志社大の真野凜風(3年)さんっていう方です。すごくいろいろな考えを持って投げている方だったので、いい話を聞かせてもらいました。

――具体的に学べたことは何ですか

伊藤樹 やっぱり一人一人感覚が全然違って、今はYouTubeとか調べてもいろいろな情報が流れていて。結局は自分の感覚とか考え方が確立していた方がレベルが高くなりやすいっていうのはすごく感じました。

――秋季リーグでは明大2回戦で先発されました。先発への意欲はありますか

伊藤樹 すごくありました。やっぱり先発して勝たないことには、あまり価値がないというか。大学生、社会人、プロの2軍・3軍といろいろ試合させてもらって、やっぱり1イニングって何とかなるんですよ。どれだけ調子が悪くても、あんまり能力がなくても1イニングって何とかなるんですけど、ロング投げるってなると絶対どこかで捕まるので、能力のあるないが分かれるというか。出し方とかにも寄るんですけど、そういうことをできるのは先発。やっぱり投手の面白さって先発に詰まってると思うので、(チームに)勝ち星をつけるというのも本当にありますけど、先発したいっていう気持ちはめちゃくちゃあります。

――先発をするとなると打席に立つ機会も多くなると思います。打撃への意欲はいかがですか

伊藤樹 僕はそんなにバッティング好きじゃないんですよ。小技とかの方が大好きなんですけど。

加藤 嘘つけ(笑)。

伊藤樹 まあちょっと嘘ついてます(笑)。バッティングはあまり得意じゃないというか、好きじゃなくて。明治戦の時もめちゃくちゃ軽い気持ちで打席に立ったんですけど、「打てればいいかな」くらいの感覚で立っています。

――ちなみに加藤選手は打撃についてはいかがですか

加藤 ピッチャーですけど、一応9番打者として立っているので、けっこう自分はヒット打ちたい欲が強いのかなと(笑)。好きかと言われたらそんなになんですけど、立ってるんだったら簡単にアウトになるんじゃなくて、しっかり塁に出ることを意識して自分はリーグ戦で打席に立っていますね。

伊藤樹 めちゃくちゃ自分が悪いみたいな感じですね(笑)。そんな経験者みたいな。

加藤 いやいや(笑)。ヒット打ちたいから。

伊藤樹 ヒットは打ちたいですよね。

――伊藤選手はチームの中で上級生と動く機会が多いかと思いますが、同級生の1年生との関係はいかがですか

伊藤樹 けっこう野球の話をすることが多いです。向上心がある子が多くて。練習時間が被らないので、あまり練習の中で一緒にやることはないんですけど、たまに時間別の練習で一緒になった時にピッチング見てしゃべるとか。野球のコミュニケーションの方が多いですけど、最近は一緒にゲームやるのがけっこう楽しいです。

――よくお話されたり、一緒にゲームをしたりする方は誰ですか

伊藤樹 梶田(梶田笙、スポ1=大阪・早稲田摂陵)っていう子なんですけど。めちゃくちゃ面白いんで、一番仲いいですね。

見据えるドラフト

――お二人はプロ入りについては意識されていますか

加藤 もちろんプロに挑戦できるレベルまで達したら自分もチャレンジしたいなと思っていますが、現時点ではまだまだという感じですね。

伊藤樹 僕は高校から(プロに)入りたいと言っていたんですけど、実力が足りなくて大学に行くというかたちを選んで。行きたい欲はすごくありますし、トップレベルでやりたいなと思っています。

――つい最近では蛭間拓哉前副将(スポ4=埼玉・浦和学院)がプロ入りされましたが、刺激を受けるところはありましたか

加藤 自分は蛭間さんもそうなんですけど、特に昨年の徳山さん、西垣さん(西垣雅矢、令4スポ卒=現東北楽天ゴールデンイーグルス)、あの2人にすごく面倒見てもらっていたので、やっぱり自分にとってはその2人の存在がすごく大きくて。今もすごく刺激をいただいています。

伊藤樹 僕は、蛭間さんは野手だったのであまり基準にはならなくて、昨年高校3年生で一緒に試合とかをしていた子がプロに行ったというのが一番刺激になっています。森木大智っていう子が阪神のドラフト1位で行ったんですけど、その子と中学校からずっと仲が良くて、もう1軍で投げていて。身近ではピッチャーで(プロに)行っているのがあまりいないので、同期で行ってるっていうのが一番刺激になっています。

――プロに実際行くとなると、そのために身に付けたいことはありますか

加藤 自分はまずは全体的なレベルを上げるって中でも、ボールの強さが一番今の自分にないものかなと考えていて。プロに限らず社会人野球でもそうですけど、上のレベルの打者を抑えようと思ったら、やっぱりいくらコースを突いても、ボールに強さがないと打たれてしまうと思うので、そういった時にベース板に強い球を投げて、バッターに差し込んだり、打ち取れる技術を今は身に付けたいなと思っています。

伊藤樹 僕は代名詞みたいなものが欲しくて。なんとなく伊藤樹っていうピッチャーを見た時に、秀でているものがないというか。球は速いし、変化球もそこそこあるよね、けん制とかもできるよねみたいにふんわりとしていて、それもいいものなのかもしれないですけど、「と言えば」みたいな武器が(まだないです)。加藤さんで言えばコントロールとか、そういうのが自分の中にまだないって感じているので、そういうのが4年間の中でつくれれば(プロ入りが)一気に近づくと思っています。

2020年秋以来のリーグ戦優勝へ

昨秋立大1回戦後に笑顔でダウンをする加藤(右)と伊藤樹。優勝にはこの2人の活躍が欠かせないだろう

――続いて来季に向けての話に移ります。新体制が始まって1カ月ほど経ちましたが、新チームの練習で変わったことや大変なことはありますか

加藤 前のチームは『天皇杯』とか『優勝』という言葉を直接的に使うことは少なかったように思うんですが、今年のチームは常に練習中に『天皇杯』とか『リーグ戦優勝』ということを口にしています。日々優勝を意識して練習するのが優勝に近づくことだと思っていて、そこが前のチームから変わったことというか違うかなと思います。

伊藤樹 今加藤さんが言ったことはチーム全体として意識の部分で変わっていることなのかなと思います。ピッチャー陣の中では4年生があまり多く出ていなくて、正直ピッチャーの枠としては結構埋まってきていてあまり変わらない状態なので、そこでの競争を感じて新たなメンバーが出てこないとピッチャー陣としてのレベルが上がらないというか、そこに甘んじていても駄目ですし、諦められても困るので、監督にいつも「自分が一番うまい、できるようになると思って自信を持ってできるように練習をしなさい」と言われていて、そこが一番特にピッチャー陣は大事だなと思います。

――お二人が考える新チームの強みや伸ばしていきたい点は何ですか

加藤 強みはやっぱり今年出ていたメンバーがすごく残っているというのが昨年とは一番大きく違う点かなと思っています。ただ蛭間さんみたいな飛び抜けた存在はいなくてみんな80点というか、平均よりちょっといい選手がたくさんいるイメージなので、ある程度のことはできるというか。逆にそれが悪い面でもあって、個々が伸びてこないとそこまでで終わってしまうので、ある程度みんな能力がある分、個々の能力を伸ばすことが今は必要かなと思います。

伊藤樹 僕の中では高校の時にゲームメークや試合の運びをすごく勉強してきたというか、監督に口酸っぱく言われてやってきた中で、中川さんも言っていることでゲームメークや試合運びがスムーズにいくということが多々ありました。ただ中川さんがいなくなった時にそれができなくなる、誰がやるんだろうと思う点と、下の代から出ている人たちが多くて能力はけっこう高いですが、ゲームメークとかやることが増えた時に結果が出なくなる点がすごく怖いので、個々の能力を上げながら余裕を持ってゲームメークできるくらいの能力はつけないとリーグ戦の中では勝てないと思います。

――チームとして、個人として春季リーグに向けて冬の練習で力を入れていきたい部分はどこですか

加藤 この冬練期間はチームというよりも個人個人の能力を上げることが第一優先だと思うので、全体に関しては個々の能力を上げることだと思います。個人に関してはさっき自分の課題で挙げたボールの強さを出すということと、しっかり1戦目と3戦目を完投できるだけの体力をつけることがこの冬の課題です。

伊藤樹 リーグ戦になると全体的に打てなくなるというか、相手のピッチャーも当然いいですし、オープン戦で打てた野手陣があまり打てなくてみたいなことがありました。冬に実戦感覚でやらないと、春後半になってやっと慣れてきましたみたいな雰囲気になるので、冬のうちに実戦をちゃんとやるのはすごく大事なのかなと思います。個人的にはもちろんさっき言った通り代名詞を作れるように自分の中で武器を今模索しているというか、いろいろなものを試して今あるものを育てながらやっていますが、そういうところを一つ一つトレーニングとかいろいろ考えています。

――意識している選手やチームはありますか

加藤 今年の六大学の自分の同級生の選手はレベルが高いと思っていて、今回の日本代表候補合宿にも何人か行っているので、そういった選手に負けたくないなという思いはあります。

伊藤樹 加藤さんたちの代で代表合宿に行かせてもらって、すごくいいピッチャーが多いと思うので、そこに台頭できるくらいのレベルにならないといけないなと思います。ただ、そのなかでも上じゃなくて同期を見たら外丸(外丸東眞、慶大1年)は先発としてずっと春も投げていて、もちろんゲームメークが上手なピッチャーで、先発で投げられていることに対するうらやましさとかいろいろあるので、来年はちゃんと春に投げ合いができるようにしないといけないなと思います。

――来季の個人としての目標を教えてください

加藤 (リーグ戦の)始まりから勝ち星を挙げることですかね。春も秋も今年は全然勝ち星が付かなかったので、来年はしっかり自分が投げてチームが勝てるようにということで、勝ち星を一番の目標にして頑張りたいなと思います。

――具体的に何勝したいというのはありますか

加藤 それはもちろん全大学から勝ち星を挙げて5勝というのを目標にしたいと思います。

――伊藤樹選手はいかがですか

伊藤樹 僕は現実的に見ても先発がやれるかどうか分からないですが、勝ち星よりも今は防御率というところで、規定投球回に乗るのも含めて防御率を下げること。(加藤が)今年最優秀防御率を取っていてかっこいいと思ったので、最優秀防御率を取りたいなと思います。

――具体的な数字で言えばは0点台でしょうか

伊藤樹 はい。

――最後に来季への決意や意気込みをお願いします

加藤 とにかくリーグ戦優勝して天皇杯を取るということで、自分は1年生の秋に最後の早慶戦でベンチに入れさせてもらってそこで優勝の瞬間を体験していて、その時の喜びは今も忘れていないので、その喜びをまた今年体験できるように、とにかく天皇杯を取るということだけ考えて頑張りたいと思います。

伊藤樹 僕も同じく勝つことが一番大事だと思っていて、リーグ戦を軽く突破はできないですが、「天皇杯を取る」と言っている中でリーグ戦で苦し紛れに勝っているようじゃ日本一にはなれないと思うので、リーグ戦でパって勝てるくらいの能力をつけて、勝ちに貢献できるように投げられればいいなと思います。

――ありがとうございました!

(取材・編集 荒井結月、星野有哉、写真 玉置理沙子、藤田珠江、星野有哉)

昨年チームを支えた投手陣に今年も注目です!

◆加藤孝太郎(かとう・こうたろう)(※写真右)

2001(平13)年11月20日生まれ。178センチ、74キロ。茨城・下妻一高出身。人間科学部3年。投手。右投右打。終始笑顔で取材に答えてくださった加藤選手。伊藤樹選手に耳打ちしたり、ツッコミをしたりと、仲の良さも伝わってきました。来季は右のエースとして、11番を着けての投球に期待がかかります!

◆伊藤樹(いとう・たつき)

2003(平15)年8月24日生まれ。176センチ、78キロ。宮城・仙台育英高出身。 スポーツ科学部1年。投手。右投右打。好奇心旺盛で物知りとの声が多く挙がっている伊藤樹選手。色紙にしたためた「エッセンシャル思考」は最近読んだ本の名前だそうです。その博識を生かした投球のクレバーさにも注目です!