【連載】春季早慶戦直前特集『七転八起』第6回 蛭間拓哉

野球

 今季ここまで、チームトップの打点、本塁打数を誇るなど主軸として大きな活躍を見せている蛭間拓哉(スポ3=埼玉・浦和学院)。ここまでの春季リーグ戦を振り返ると共に、早慶戦へ向けた意気込みを伺った。

※この取材は5月21日にオンラインで行われたものです。

チームとしても個人としてもまだまだできる

笑顔で取材に答える蛭間

――ここまでのリーグ戦を振り返ると

 チームとしてはなかなか勝てないというところと、個人としては思うように結果が出ていないというのが正直なところです。もっとチームとしても個人としてもまだまだできるなという感じです。

――それは具体的にどんなところですか

 チームとして、打線ではなく個人個人が勝負しているなというところがあります。もっと打線として、チームひとつとなって点を取る、守備でもチームひとつとなって点を取られないなどそういうことがチームとして足りないかなと思います。個人としてはミスショットや三振、ボール球を振ってしまうとか、まだまだそういう課題が多いので、その部分ではまだ全然手ごたえのある感じではないです。

――打撃の成績についてはそれぞれチームトップに近い数字だと思いますが、どのように感じていますか

 自分個人としては、感覚的にはそんなに悪くはないのですが、実際結果が出ているかというと自分の中ではまだまだだと思います。ミスショットだったりボール球に手を出してしまったりという部分が多いです。もっと打率を残せると思いますし、ヒット数も出ると思うので、まだまだかなと思います。

――けがの状態はいかがですか

 痛みはもう無くなってきているので大丈夫です。早慶戦までにはしっかりと状態を上げていきたいと思っています。

――最近はどのような練習に重きをおいていますか

 最近はけがしていたので、あまり技術的な面はできなかったので、コア、体幹をしっかり鍛えていました。

――冬の期間から引き続きですね

 そうですね。体幹は自分の中で一番大切だと思っているので、筋トレなどよりそういうトレーニングに重きを置いてやっています。

――アンケートで打率が良い要因について伺ったところに「首長」と書かれていたのはどのような意味ですか

 あれは、首を長くするイメージというか、上体に力が入ってしまうと上がってしまうので、そうではなくて、呼吸を鼻からしっかり吸って吐いて首を長くしてあばらを下に落とすようなイメージを自分は常にしています。歩く時も投げる時も打つ時もトレーニングする時も全て「首長」というのを意識していて、そう書きました。

――今季から打順が3番に変わりましたが、どのように捉えていますか

 秋は8番などを打つことが多かったのですが、3番ということはチャンスでまわってくることも多く、チームの主軸になってくると思うので、しっかりとチャンスで1本打てるバッターになれるようにというのを意識しています。

――チームから求められる役割など、心理的な変化はありましたか

 3番バッターや3年生になるとチームの上級生ですし、主軸になるということで試合前の緊張感などは前とは全然違います。メンタル的な部分で、自分で自分を少し追い込んでしまった部分があったかなと思います。

――その中でどのように気持ちをコントロールしていますか

 緊張してしまうというのは、日頃の練習から隙があったりなどそういう部分だと思います。練習から常に試合を想定して、逆に試合では楽しくではないですが、気持ちを楽にして今まで自分がやってきたことを出すだけだというくらいの気持ちで、結果を考えるのではなく目の前のことに、一球入魂じゃないですけど、そういう気持ちで取り組むようになりました。

――守備でも好プレーが多くみられます。今季ここまで守備面について振り返っていかがですか

 まだまだ1歩目のスタートだったり送球の正確性だったり、そういう部分は全然だと思います。正直全然良いと思っていないので、もっと1歩目のスタートだったり、判断力などを日頃からしっかり磨いて、試合ではもう少しスピードを意識しながらやっていきたいなと思っています。

――守備で特に意識していることは何ですか

 1歩目や相手のここら辺にくるんじゃないかという配球によっての守備位置などを意識しながらやっています。

――守備で得意なところはどこですか

 全部です。

――試合前のルーティンなどはありますか

 自分はとにかく力を抜くということを意識しているので、脱力方法としてヨガや瞑想など呼吸系やリラックスする方法を常に考えてやっていることがルーティンです。

――マイブームがヨガともお聞きしました。どのようなきっかけで始めたのですか

 アシックスのトレーニング施設にいくことがありまして、そこでヨガをやらせてもらって気持ちが楽になったというか、とてもリラックスできました。このリラックスの感じを神宮の打席でできれば相当力が抜けて打てるだろうなとイメージできたので、ヨガは力を抜くことができるので、バッティングなど野球につながるなと思っています。

「『一球入魂』をしっかりと体現できるように」

明大1回戦で先制の3ランを放つ蛭間

――蛭間選手にとって理想とする選手像は

 常に謙虚にというのを。バッティングもそうですし、全てにおいて謙虚さを忘れずに取り組むというのは高校のときから思っていました。大学に入ってさらに徳武コーチ(定行氏、昭36商卒=東京・早実)に教えていただいて、そういうことの大切さを改めて感じました。常に謙虚にという気持ちは、今もそうですしこれからもずっと持ち続けることだと思っています。

――大学に入学してから、一番成長したと思うのはどのようなところですか

 自分でしっかりと考えて練習をするということが今までと違って成長できているところかなと思います。特に高校生の時は提示されたものをただやっていただけというか、やれと言われたことをやるしかないような、自分で深く考えてやるということが足りていませんでした。大学生になってからは強制的にあれやれ、これやれと言われることがないので、今の自分に何が足りないのかなどを明確に考えて、それを達成するためになにをしなくてはいけないのかというのを考えるようになったり、いろいろな人に話を聞いて自分に合う合わないというのをしっかり考えながら区別することもできるようになったりしました。考えて取り組めるようになったと思います。

――精神面では成長したと感じるところはどんなところですか

 物事を冷静に判断する、冷静さです。一回全てのことを受け入れて、そこから合うものは取り入れて、合わないものは知識として置いておいてと考えることができるようになったので、物事を冷静に判断するということが以前より成長できているかなと思います。

――今の蛭間選手からみて、昨年のご自身はどのように映りますか

 大学2年目ということで、いろいろなことに挑戦したいと思っていた1年でした。いろいろなことに挑戦して、良い事もありましたし、だめな事もありました。良い経験ができた1年間だったなと思います。

――春季リーグ戦開幕前特集のインタビューでは、チームに「一球に対しての集中力や執着心」が足りていないとおっしゃっていましたが、現在の印象はいかがですか

 試合を重ねるにつれてだんだんチームにはなってきているとは思います。しかし、まだ試合で勝ち切れていない部分があるので、結果として表れていない、それはできていないと同じことだと自分は思うので、まだまだ足りていないのだろうなと思います。

――春季リーグ戦は、有観客の時と無観客の時がありましたが、プレーしていて違いは感じますか

 有観客の時のほうが緊張しないです。逆に無観客だと練習試合のようなイメージなのですが、自分でもよくわからないのですが、有観客のほうが緊張しないです。無観客のほうがリラックスしようと思いすぎて緊張していたので、自分は有観客のほうが良いです。

――走攻守の全てで勝負したいとおっしゃっていましたが、どのようなことを意識して練習していますか

 走塁では次の塁を常に狙う、盗塁なども見せていけたらいいなと思っています。打撃では長打力を。長打を打てれば点も入りますし、チームにも勢いがつくと思います。常にセンター返しを意識してというのは言っていることなので、その基本ベースは変えることなく、しっかりチャンスで1本打てるバッターになりたいなと思っています。守備では1歩目のスタートや送球の安定性というのを、もっとこれからしっかりと練習をして磨いていきたいと思います。

――早慶戦に向けて準備などどんなことを意識していますか

 バッティングではデータなども取られたりして、攻めてくると思うので、それをしっかり対応できるように、立ち遅れることが1番良くないことだと思うので、まずはしっかりと自分の中でいろいろなことを想定しながら、リーグ戦を通して今の自分に何が足りないかというのは明確になっているので、それをあと早慶戦に向けてどれだけつぶせるかだと思うので、しっかり準備していきたいなと思っています。

――先発が予想される森田晃介投手(4年)、増居翔太投手(3年)は防御率リーグ1位、2位という好投手ですが、どんな意識で向かいたいですか

 意識というよりかは自分のスイングができれば打てると思います。しっかりとそこは相手に崩されることなく自分のスイングをするということを意識して、攻められるイメージというのはできているので、そこの対応力、良くなかったら打席内で修正するというのを意識しながら相手の術中にはまらないようにしっかりと準備していきたいなと思います。

――早慶戦ではどのような打撃をしたいですか

 とにかくチームの勝利に貢献できるように、勝負どころでの1本やチームを勢いづける1本が打てれば良いと思います。

――早慶戦でファンにみてほしいところは

 おそらく生井選手(惇己、3年)と勝負することがあると思います。秋は打ちましたが去年の春は抑えられていてお互い意識する部分は少しはあると思うので。生井選手だけではなく森田投手、増居投手と好投手もいるのでそういうピッチャーから結果を出せるようにしていきたいと思います。

――最後に、早慶戦への意気込みをお願いします

 負けが続いていますが、早慶戦は絶対に負けてはいけない、どこのチームもそうですが負けてはいけない相手なので、しっかりと準備を怠らずに。結果を考える前に一球一球、一球入魂をしっかりと体現できるようにしていきたいなと思います。

――ありがとうございました!

(取材・編集 佐藤桃子)

◆蛭間拓哉(ひるま・たくや)

2000(平12)年9月8日生まれ。176センチ、85キロ。埼玉・浦和学院高出身。スポーツ科学部3年。外野手。左投左打。早慶戦も「自分のスイングができれば打てる」と話してくれた蛭間選手。相手からの警戒は高くなっていると予想されますが、それをはね返す一打が楽しみです!