首の皮一枚つながったーー。延長11回、ついに決着!/立大3回戦

野球
TEAM 10 11
早 大
立 大
(早)早川、柴田、○今西、徳山―小藤
◇(二塁打)加藤、小藤、鈴木萌

 延長11回の表、1死満塁。打席の檜村篤史副将(スポ4=千葉・木更津総合)は冷静に4つ目のボール球を見送った。歓喜に揺れる三塁側・早大ベンチ。ふさがりかけていたVへの細き道が、開けた瞬間だった。

 試合は初回から動いた。四球を選んだ走者を一塁に置き、打席には加藤雅樹主将(社4=東京・早実)。「狙っていた」というチェンジアップを捉えると、打球はぐんぐんと伸び中堅フェンスを直撃する。その間、一塁走者は一気に本塁突入。わずかなタイミングの差で足が返球に勝り、貴重な先制点を挙げた。ところが、先発・早川隆久(スポ3=千葉・木更津総合)は立ち上がり、苦戦を強いられる。初回から慎重にコーナーを攻めるが、決め球をことごとくファウルで粘られる。2死一塁としてから、中軸に連続四球を与え満塁のピンチに。ここはなんとか切り抜けたが、続く2回も先頭に安打を許すと、得点圏に走者を進められる。なかなかリズムをつかめない中、失点だけは許さなかった。

先制の適時二塁打を放った加藤

 先制した打線だが前日同様、『拙攻』の様相を呈し始める。2回、1死一、三塁とするも後続が倒れ無得点。4回も2死から満塁までこぎつけたが、加点には至らない。雲行きはにわかに怪しくなった。そしてその予感は、すぐさま現実となる。4回裏、無失点投球を続けていた早川だが、一球の失投に泣いた。簡単に1死としてから、6番・中嶋瞭(3年)に「狙われていた」という直球を完璧に捉えられ、被弾。好機をつぶした直後のことだった。

 その後も負の連鎖は止まらない。5回の攻撃。先頭から連打で一、二塁とすると、犠打でそれぞれ進塁。しかし、代打・吉澤一翔(スポ3=大阪桐蔭)が初球を打ち上げ捕邪飛に倒れると、続く中川卓也(スポ1=大阪桐蔭)もカウント3-2から外角直球を見逃し三振。6回に中前打で出塁した瀧澤虎太朗(スポ3=山梨学院)が盗塁死し、攻撃の芽を摘まれたかと思えば、7回も2死満塁の場面で再び中川卓が二ゴロにあえなく凡退。再三の好機を逸し続ける早大。負けるときの『パターン』に陥っていた。

この日3度の好機で倒れた中川卓。期待の起用が続くが、打率は1割を切っている

 重苦しい雰囲気が立ち込める中、エースが孤軍奮闘した。「即席で使った」というツーシームを効果的に織り交ぜ、立大打線を翻弄(ほんろう)。5回以降、一本の安打すら許さない粘り強い投球を展開した。そして8回から代わった柴田迅(社3=東京・早大学院)も威力ある直球でねじ伏せ、2回をピシャリ。3番手・今西拓弥(スポ3=広島・広陵)も得点を許さず、味方野手の奮起を待った。

打線の奮起を待ち、7回1失点と粘投した早川

 延長戦にもつれ込み、迎えた11回表。ついにその時は訪れる。1死から2番・金子銀佑(教3=東京・早実)が右前打で出塁。続く福岡高輝(スポ4=埼玉・川越東)も右前にはじき返し、これにつないだ。浮足立つ立大バッテリーは、続く加藤を申告敬遠。塁を詰め、檜村との勝負を選択した。1死満塁。1点でもいい。1点でも取ることができれば、勝利は目前だ。三塁側ベンチ、そして声を枯らして声援を送り続けた応援席の期待を背に、檜村が打席へと向かう。天国か地獄かの大勝負。ところが、立大2番手・中川颯(3年)の制球が突如乱れる。簡単に3ボールとなった。押せ押せムードの中、迎えた4球目。中川の投じた130キロの直球は内角をえぐる。しかし、本塁ベース上をかすめることなく、捕手のミットへと吸い込まれた。押し出しの四球となり、歓喜に揺れる三塁側。ついに勝ち越しに成功した。後はもう攻め切るだけだ。続く小藤翼副将(スポ4=東京・日大三)の捉えた打球は、右前へ抜けさらにもう1点を追加。立大に致命傷を与え、優勝への望みをつないだ。

延長11回、ついに勝ち越した

 『徳俵に足が掛かる』。土俵際まで追い詰められ、もう後がない状況を比喩する慣用表現だ。残り4戦、1敗もできない早大はまさに、徳俵まで追い詰められている。しかし、徳俵にしっかりと足を掛け、踏ん張ることができれば、そこから巻き返すパワーが生まれる。現状、チーム打率(.307)とチーム防御率(1.83)はともにリーグトップ。抜群の投手力を背景に、『ここぞの一打』が飛び出せば一気に流れを掌握し、勝ち切ることが望める。「きょうでチームは勢い付いた」(福岡)。「一戦必勝」(瀧澤)。「もう負けられない」(加藤)。早稲田の逆襲は、ここから始まる。

(記事 石﨑開、写真 望月優樹、今山和々子)

黄字は打点付き

早大打者成績
打順 守備 名前 10 11
(左) 瀧澤虎太朗 .364 見三 一ゴ   左安   中安   空三     左直
(二) 金子銀佑 .276 四球 右飛   四球   空三   二直     右安
(三) 福岡高輝 .375 右飛   投ゴ 一ゴ     二ゴ   投ゴ   右安
(右) 加藤雅樹 .458 中2   三飛   中安   見三   二ゴ   敬遠
(遊) 檜村篤史 .391 四球   左安   左安   右安   二ゴ   四球
(捕) 小藤翼 .333 空三   遊ゴ   投犠   左2     中飛 右安
(中) 山田淳平 .263   中安   一ゴ              
  吉澤一翔 .000         捕邪            
  蛭間拓哉 .000                      
  田口喜将 .333             四球        
  走中 鈴木萌斗 .500                   左2  
  今西拓弥 .—                      
  岩本久重 .000                     遊併
  徳山壮磨 .000                      
(一) 中川卓也 .071   捕犠   遊ゴ 見三   二ゴ     遊ゴ  
(投) 早川隆久 .556   左安   三安   中飛          
  富田直希 .000               見三      
  柴田迅 .—                      
  打中 山野聖起 .333                   三邪  
早大投手成績
名前
早川隆久 2.54
柴田迅 0.00
今西拓弥 1.50
徳山壮磨 0.00
東京六大学春季リーグ戦星取表
順位   慶 大 明 大 早 大 法 大 立 大 東 大 勝ち点 勝率
慶 大     〇5-2
●4-5
○7-4
〇4-1
〇7-1
○10-4
○15-0
.857
明 大   〇7-3
〇5-3
  ●0-4
○4-3
○4-1
〇1x-0
○8-2
.857
早 大   ●3-7
●3-5
  ○3-0
●1-3
○3-1
〇13-1
〇8-2
.571
法 大 ●2-5
〇5-4
●4-7
    ●2-3
●5-9
〇7-0
〇18-5
.429
立 大 ●1-4
●1-7
〇4-0
●3-4
●1-4
●0-3
○3-1
●1-3
○3-2
○9-5
  .400
東 大 ●4-10
●0-15
●0-1x
●2-8
●1-13
●2-8
●0-7
●5-18
  .000
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コメント

加藤雅樹主将(社4=東京・早実)

――試合が終わっての率直な感想をお願いします

我慢しながらという展開だったんですけれども、良い試合だったかなと思います。

――嫌な負け方をした直後の試合となりました。昨晩ミーティングなどはあったのでしょうか

(好機での)一本を出せないので。ピッチャー陣を助けようとは言っていたんですけれども、なかなか思うようにいかなかったです。

――そんな中、勝ち越しに成功した11回の攻撃を振り返っていかがでしたか

本当に命懸けでやろうと。打順も良かった(1番から)ので、銀佑(金子、教3=東京・早実)と福岡(高輝、スポ4=埼玉・川越東)が出た時に、「いけるぞ」という雰囲気は感じていました。

――初回にご自身が放った先制適時二塁打を振り返っていかがですか

チェンジアップだったんですけれども、狙っていた球が来たので。打てて良かったです。

――優勝の可能性が残ったことと、次週の法大戦に向けての意気込みをお願いします

もう負けられないので、(早慶戦を含めて)4連勝できるようにもう一度気を引き締めて。また5日後に試合があるので、そこに向けて頑張ります。

福岡高輝(スポ4=埼玉・川越東)

――試合を終えての率直な感想をお願いします

素直に勝てて良かったなと思います。

――きょうはしびれる試合展開でしたね

きょうも序盤から好機をつくれていたのに点が取れていなかったので、きのうのようになりそうで怖かったんですけど、みんなが集中力を保てていたので抑えられたのかなと思います。

――チームの雰囲気はどうでしたか

本当に雰囲気は良くて、投手陣がよく抑えてくれました。

――個人としては、延長11回に勝ち越しにつながる貴重な安打を打ちましたね

そうですね。でも2打席目に満塁の好機で凡退してしまって、あの場面で打っていればこのような展開にはなっていなかったので、一本出せなかったのが反省ですね。それでも結果的に最後は決勝点につながる安打を打てたことは良かったと思います。

――まだ優勝の可能性は残っています。来週の法大戦に向けての意気込みをお願いします

きょうでチームとしても勢い付いたと思うので、1週間しっかり調整して法大戦もいい雰囲気で臨めたらいいなと思います。

早川隆久(スポ3=千葉・木更津総合)

――前日負けてから、チームではどのようなミーティングが行われましたか

あんまり落ち込まずに、という前向きなミーティングでした。ミスの確認だけをしてという感じですけど、気を引き締めるためにもいいミーティングだったかなと思います。

――きょうの投球を振り返ってみていかがですか

3戦目でしたけど、しっかり投げ切れたので良かったかなと思います。

――右打者の外角へのチェンジアップが良かった印象です

いや(チェンジアップじゃなくてツーシーム)。きょうはまた即席でツーシームを使って。そのツーシームがはまったので良かったかなと思います。

――本塁打を打たれた球は

真っすぐを狙われている感じがあって、アウトコースに投げようと思ったんですけど、真ん中に入ってしまいました。

――初回以降、打線がなかなか好機を生かせませんでしたが、どういった気持ちで投げていましたか

粘り強く投げていれば、点を取ってくれると思っていました。粘り強く投げられた結果が(この勝利に)つながったと思います。

――来週対戦する法大打線の印象は

強力なので、丁寧に、丁寧に攻めつつ。後は小藤さん(翼副将、スポ4=東京・日大三)としっかり話し合いながら、攻めることができればなと思います。

――特に警戒すべき打者は

安本さん(竜二、4年)が5試合連発(本塁打)打っているので。自分が来週打たれてしまったら(史上初の6試合連続本塁打を許した投手として)名前が残ってしまうので、丁寧に攻めたいと思います。

瀧澤虎太朗(スポ3=山梨学院)

――試合を終えた率直な気持ちをお願いします

きょうは本当に負けてはいけない試合だったので、来週に首の皮が一枚つながって良かったです。

――試合前のチームの雰囲気はどのような感じでしたか

緊張感が漂っていて、もう負けられないという意識でみんな準備をしていました。

――きょうは4回と6回に安打が出ました。ご自身の打席を振り返っていかがですか

最終打席の当たりは悪くなかったので、いいかたちで(法大戦に)入れるように調整していきたいと思います。

――なかなか好機をものにできない厳しい展開となりました。チームを振り返っていかがですか

3試合ともヒットが出ているのにもかかわらず、全然点が取れていないので、とにかく集中してチャンスで打つしかないと思います。

――法大にはどのような印象をお持ちですか

良い選手がたくさんいて、一人一人のレベルが高いという印象があります。バッターで言ったら宇草さん(孔基、4年)、今はキャプテンの福田さん(光輝、4年)も調子がいいですよね。ピッチャーで言ったら三浦銀二(2年)がやっぱり良くて、自分はバッターなので三浦銀二を打てるように頑張ります。

――次戦に向けての意気込みをお願いします

もう1敗もできないので、一戦必勝で頑張ります。