塾の胴上げ阻止!勝ち点懸け今季最終戦へ/早慶2回戦

野球
早慶2回戦
慶 大
早 大 × 12
(早)柳澤、二山、○北濱、小島-小藤、岸本
(本塁打)佐藤晋3号2ラン(二塁打)加藤、福岡

 慶大・清水翔太(4年)が放った打球は高いバウンドで遊撃へ。その瞬間、地鳴りのような歓声と悲鳴が交錯する。早大・檜村篤史(スポ2=千葉・木更津総合)がこの打球を難なく処理し、試合終了。一塁側は自軍の勝利に湧き立ち、目の前に迫った賜杯をあと一歩のところで逃した三塁側は深いため息に包まれた。球場が早慶で真っ二つに割れる、伝統の一戦を象徴するような場面だ。初回から動いたシーソーゲームを制し、伝統の一戦の第2ラウンドを制した早大。宿敵に意地を見せつけた。

 点の取り合い、まさにシーソーゲームとなった。初回、慶大が郡司裕也(2年)の右前適時打で先制すれば、早大はその裏に佐藤晋甫主将(教4=広島・瀬戸内)の2試合連発となる2点本塁打ですぐさま逆転。初回の攻撃から、1回戦に続き激しい打ち合いになることは容易に想像できた。その後も点を取っては取られての繰り返し。先に主導権を握るのはどちらか――。中盤まで『流れ』は早慶どちらにあるとも言い難い状況。そんな中、この試合において早大に『流れ』を引き寄せたのが3番手で登板した北濱竣介(人4=石川・金沢桜丘)だ。5-4の1点リードで迎えた5回、早大は2番手・二山陽平(商4=東京・早実)が2死満塁から頭部への押し出し死球を与え、5-5の同点に追い付かれてしまう。なおも満塁のピンチ。迫りくるような三塁側・慶大応援席を正面に受けながら、北濱はマウンドに向かう。代わって先頭の瀬尾翼(4年)には真ん中に入った132キロ直球を痛打され、1点を勝ち越されたものの、その後は危なげない投球を披露。140キロを超える直球と、「空振りが取れた」と振り返ったスライダーが冴え、6、7回を三者凡退に切って取る。特に、6回の好機で早大が無得点に終わり、流れが慶大に傾きかけた7回の守りをピシャリと抑えたことが大きい。小気味の良い投球でリズムをつくるのが持ち味の右腕。北濱のリリーフはこの試合を制する上での重要な布石となる。

好救援で通算5勝目を挙げた北濱

 北濱が三人で抑えた直後、1点を追う7回裏の攻撃。先頭・佐藤晋が2球目の直球を逆らわずに右前に運ぶと、この安打を足掛かりに2死一、三塁の好機を迎える。打席には代打・熊田睦(教4=東京・早実)。立大3回戦で2点本塁打、前日の1回戦でも2点適時打を放っている代打の切り札を、慶大バッテリーは警戒する。際どいコースで勝負し、ボールカウントが悪くなると四球で歩かせてきた。すると、ここでも髙橋広監督(昭52教卒=愛媛・西条)が動く。続く代打は福岡高輝(スポ2=埼玉・川越東)。「逆方向にしぶとく打とう」。その言葉の通り、追い込まれてから低めの138キロ直球に食らいつくと、打球は左中間の芝生で跳ねた。走者一掃の適時二塁打。非凡なミートセンスを誇る2年生の執念の一打に、神宮が湧いた。その後も檜村の2点適時打が飛び出し、この回一挙5得点。8回からは前日の1回戦で先発登板した小島和哉(スポ3=埼玉・浦和学院)がマウンドへ。6季ぶりのリーグ優勝へ後のない慶大。選手たちも、応援団も、残り2回の攻撃に全てを懸け、決死の反撃といきたいところだったが、小島はそれら全てを踏みにじるように圧巻の投球を披露。打者6人を危なげなく完璧に抑えてみせた。悲願ならずガックリとうなだれる慶大選手を横目に、いつもと変わず握りこぶしを小さく握り整列に加わった小島。エースらしくマウンドに仁王立ちし、貫禄の投球で試合を締めた。

値千金の3点適時二塁打を放った福岡

 「胴上げだけは絶対に阻止しよう」(佐藤晋)。試合前に全体で言い合っていたという。早大の名に懸けて、宿敵の歓喜の瞬間に立ち会うわけにはいかなかった。これまでは幾度となく粘り及ばず競り負けていた早大。思えば、現チームにとってリードを許した展開から勝ち切った試合はこの試合が初めてだ。追いすがるものの最後に追い付けない。追い付いた直後にあっさり勝ち越されてしまう。そんな負け試合が続いていた。宿敵に勝利し意地を見せたのはもちろんのこと、春季リーグ戦最終週にしてチーム力の高まりを感じさせる、価値ある一勝。しかし、ここで春の戦いが終わったわけではない。1勝1敗。あす、3つ目の勝ち点を取りに3回戦へと臨む。勝てば3位、負ければ4位で春季リーグ戦を終えるが、最終順位のいかんを問わず宿敵からは絶対に勝ち点をもぎ取らねばならない。春になしえなかった賜杯奪還は秋へと持ち越しとなったが、その秋へ向けても最終戦は勝利で飾り、実りある一戦にしたいところだ。

(記事 郡司幸耀 、写真 加藤佑紀乃、加藤耀)

黄字は打点付き

早大打者成績
打順 守備 名前
(右)中 三倉進 .250 左安 遊ゴ    一ゴ    三振 四球         
(遊) 檜村篤史 .244 投犠    三ゴ 遊安    三振 中安         
(一) 佐藤晋甫 .286 左本    三振 三振       右安 三振      
(左) 加藤雅樹 .405 一ゴ    中2    一ゴ    一ゴ    左安   
   走右 八木健太郎 .231                              
(二) 宇都口滉 .333 四球    左安    二飛    右安    遊ゴ   
(中)左 長谷川寛 .270 一ゴ    左安    三振    中飛    中安   
(捕) 小藤翼 .333    二ゴ 三ゴ       四球            
  熊田睦 .600                   四球         
  小太刀緒飛                              
  岸本朋也 .267                         一ゴ   
(三) 織原葵 .250    四球    中安    四球            
  福岡高輝 .400                   中2         
  吉澤一翔 .250                         左安   
(投) 柳澤一輝 .308    二直                        
  二山陽平          捕犠                  
  北濱竣介 .000                三振            
  小野寺旭 .500                   遊失         
  小島和哉 .000                         三振   
早大投手成績
名前
柳澤一輝 2 0/3 3.68
二山陽平 2 2/3 4.91
北濱竣介 2 1/3 3.18
小島和哉 3.58
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コメント

佐藤晋甫主将(教4=広島・瀬戸内)

――きのう話されていたような得点への執念、勝利への執念が見えたようなゲームになりましたが、振り返っていかがですか

最初はビハインドの試合だったのですが、みんな諦めずにつないでつないで点を取ってくれたのですごく集中力のあるいいゲームだったと思います。

――ビハインドから逆転して勝つことができた試合は今季初めてになるかと思いますが、チームの手応えはありますか

粘って粘り切れない試合が多かったのですが、きょうはみんな集中力を高く持って逆転までこぎつけたので、すごくあしたにも、秋にもつながるいい勝ち方だったなと思います。

――1回の本塁打は先制を許した直後でした。どのような気持ちで打席に入られましたか

まだ1点だったし、得点圏にランナーがいたので何とか後ろの加藤(雅樹、社2=東京・早実)つないでという意識で打席に入りました。

――打った球は変化球でしたか

はい。

――7回は1点ビハインドで、佐藤晋選手から逆転のチャンスをつくりました

自分が出ればチームも、ベンチも活気づくというのはもう分かっていることなので、チャンスメーキングできればいいかなという気持ちでした。

――きのう、きょうと逆転したい場面や好機で一本が出ていますが、打撃の調子は上がってきていますか

三振が多いので、そこは気にしていないのですが、もっともっとシュアなバッティングができたらいいかなと思っています。

――連敗となれば、慶大の胴上げを目の前で見るという状況でしたが、きょうは背水の陣で臨まれましたか

そうですね。胴上げだけは絶対に阻止しようという意識で。それは学生コーチの厚志(佐藤、スポ4=茨城)や監督さん(髙橋広監督、昭和52教卒=愛媛・西条)も言っていたことなので、みんなそう言った意識は十分持っていたかなと思います。

――きのうから落ち込む雰囲気はなくなっていましたか

もうみんな開き直って試合に臨めたと思います。

――伝統のある早慶戦でまず1勝できたということに関してはいかがですか

意地を見せられたということは、すごくワセダとして良かったと思います。

――あしたはリーグ最終戦となり、また勝ち点も懸かっています。意気込みをお願いします

せっかくきょう勝つことができたので、何としても死ぬ気で勝ち点を取りに行きます。

宇都口滉(人4=兵庫・滝川)

――2打席目はチャンスでの打順でしたが、どのような気持ちで打席に入りましたか

このリーグ戦、チャンスで打ててなかったので、思い切って初球から振っていこうと思っていました。

――欲しいとおっしゃっていた打点が出ましたね

そうですね、良かったです。

――7回の4打席目はいかがでしたか

チャンスを広げたい場面だったので、初球から振っていこうと思っていました。

――きょうの安打は2本とも初球を打ったものでしたが、初球から振っていこうという気持ちでいたのですね

ストライクが来たら迷わず振るつもりでした。

――1、3打席目は安打は出なかったものの相手投手に球数を投げさせ粘った打席でした

三振しないようにずっと心掛けていたので、後ろでタイミング取るようにしてなるべく長くボールを見れるようにしてボールを見極めています。きょうは低めを捨てていこうという方針でやってたので、徹底できたとまでは言えないですけどみんな割とできてたので良かったです。

――きょうは盗塁も2つありました

監督さん(髙橋広監督、昭52教卒=愛媛・西条)のサインが出て、いけると自分でも思ったので走りました。

――一挙5得点を挙げた7回の攻撃を振り返って、チームとしていかがでしたか

きょうもですし、このリーグ戦振り返っても、試合の後半で大量得点を取ることができていたと思うので、それを継続してやってこれたのはみんな集中して試合に臨めてるということだと思います。

――負けたら慶大の優勝が目の前で決まる、という試合でした

みんなで言ってたんですけど、それだけは絶対に阻止しようと。それで一致団結できた結果がこれで、良かったと思います。

――生き生きとプレーされてるように見えましたが、きょうの試合は楽しんでできましたか

あんな大歓声の中で野球をできるってあまりない経験だと思うので、その試合を楽しめて良かったです。

――本日のご自身の働きを振り返っていかがですか

バッティングでも守備でも、悪くはなかったと思います。

――あしたの3回戦への意気込みをお願いします

早慶戦という絶対に負けられない戦いなので、きょうの勢いそのままに絶対に勝てるように頑張ります。

北濱竣介(人4=石川・金沢桜丘)

――追いつかれてなおもピンチの場面での登板になりました

ツーアウト満塁のピンチで1点取られてしまって、そこはしっかりインコースに入れようとしたんですけど少し甘く入って詰まりながらレフト側に持っていかれたので、その一打で抑えられたのはよかったかなと思ったのと、攻撃の面ではバントを失敗したのでそこをしっかり決めておけば楽に試合ができたのかなとそこは反省点です。

――前の打者が頭部死球で、慶大側からヤジもありましたがやりづらさはありましたか

ヤジは全然聞こえなかったです。

――代わったばかり、先頭に打たれて一時勝ち越しを許しましたが

攻撃陣も結構打っていたので1点差であればなんとかなるかなと思っていたので。代わる際に監督さんに満塁ホームランだけはやめてくれと言われていて、それ以外ならなんでもいいと言われていたので楽な気持ちで入りました。

――その後はしっかり抑えましたが、その辺りはやはり楽に入れたからでしょうか

そうですね、柳町(達、2年)といういいバッターだったんですけど、そこはしっかり乗り切ってしっかり気持ち切り替えていつも通りリズムを作ってやれれば逆転してくれると思っていたので。

――6回裏のチャンスを生かせなかったものの、その直後を三者凡退で抑えて流れが変わったのではないでしょうか

そうですね。自分の失敗で6回0点だったのでしっかり切り替えて、自分の中で切り替えればいいかなと思っていたので、そこはしっかりできてよかったと思います。

――スライダーがよく切れていたのではないでしょうか

結構空振りも取れたのでよかったなと思います。

――これで通算5勝目になります。率直に感想をお願いします

野手のおかげなので野手に感謝したいと思います。

――7回裏には野手が奮闘し5得点を取りましたが、北濱選手の目にはどう映ってらっしゃいましたか

福岡(高輝、スポ2=埼玉・川越東)の場面で打ってくれという感じでしたね。

――福岡選手が打った瞬間は

すごくうれしかったですね。

――負ければ目の前で慶大が優勝ということでしたが、やはり負けられない意地があったのでしょうか

目の前で胴上げされるというのは新人戦の頃から嫌なので、阻止できてよかったです。

――次戦の3回戦、勝ち点を懸けた一戦に向けて一言お願いします

あしたはしっかり準備していつでも出られるようにしたいと思います。

檜村篤史(スポ2=千葉・木更津総合)

――今の率直な感想を教えてください

きのう負けてしまったので、きょうは「絶対勝つんだ」という気持ちを持って臨みました。結果、全員野球で勝てたので気持ち良かったです。

――立大3回戦に引き続き早慶戦でも打順が2番でした

2番は犠打を打つ場面が多いということで。きょうも初回に犠打の場面があって、ちょっと(打球が)強かったんですけど、しっかり1球で(犠打を)決めることができました。そのまま良い流れで試合を運べたと思います。

――4回裏の打席では、勝ち越し点が欲しい場面での内野安打でした。気合いも相当入っていたのではないでしょうか

もう1点取れば勝ち越しという場面で。自分はきのうヒットが打ててなかったので「絶対打ってやる」という気持ちで臨みました。

――一塁へのヘッドスライディングは執念を感じました

自分は足が遅いので、そういうところで見せるしかないと思ってスライディングしました。

――そういったプレーはチームにも良い影響が出たのではないでしょうか

そうですね。ああいったプレーでチームの流れも左右されたりするのでよかったと思います。

――一方、6回裏では2死一、二塁の場面で見逃し三振となってしまいました

あそこでももう1本打ちたいなというのはあったんですけど、やっぱり甘くないなと感じました。その三振の後に織原さん(葵、社4=東京・早実)から「次があるから切り替えろ」と言ってもらえて。

――その言葉で切り替えられましたか

そうですね。その後にタイムリーを打てたので。

――その適時打ですが、2死満塁というかなりプレッシャーのかかる場面だったと思います

早慶戦は緊張するものだと思ってたんですけど、実際は楽しむことができていて。きょうの試合も楽しんで打席を迎えることができた結果、ヒットが出てよかったです。

――この打席は初球打ちではなく、フルカウントまで粘りました

初球は狙ってるんですけど、ツーストライクまで追い込まれてもしっかり対応することができて。粘れたのがよかったです。

――打った瞬間はどんなことを思っていましたか

(打球が)詰まって、いい感じに内野と外野の間に落ちるなと思っていました。うれしかったです。

――7回には同期の福岡高輝選手(スポ2=埼玉・川越東)がチームにとって大きな1本を打ちました。それも奮起するきっかけになりましたか

同期だし、結構仲も良いので勇気づけられたというか。めっちゃ気合い入りましたね。

――守備ですが、7回の遊ゴロはバウンドを合わせるのが大変だったのでは

前に出るか、待つかで悩んでしまって。それで結局待ってしまって、送球も悪かったんですけど晋甫さん(佐藤主将、教4=広島・瀬戸内)がカバーしてくれて。そこで前に出れていたら余裕もあったんじゃないかなと思います。

――その他にも守備機会はありましたが、総合的に見てどうでしょうか

早慶戦ではエラーというのがないので、あしたもこのまま、アウトをしっかり取っていきたいです。

――勝ち点を懸けた春季リーグ最終戦に向けて、意気込みをお願いします

早慶戦の最後の一戦ですし、リーグ戦の最後でもあるので、しっかり勝って、良い勢いで締めたいと思います。

福岡高輝(スポ2=埼玉・川越東)

――満塁という絶好の好機で打席が回ってきました。どのような気持ちで打席に入りましたか

熊田さん(睦、教4=東京・早実)がここまで良い場面で打ってきたのもあって、相手バッテリーに勝負を避けられて、自分に打席がチャンスで回って来るなと思ったので、絶対打ってやろうと思っていました。

――低めの球をすくいあげました

直球を打ちました。

――狙っていた球種はありましたか

いや、球種は特に。とにかく引き付けて、逆方向にしぶとく打とうと思っていました。

――打った感触や打球を見て

打った瞬間はレフトフライかと思っていました。レフト線よりに左翼手が寄っていてくれたので、うまく落ちてくれたかなと思います。

――早慶戦はやはり特別ですか

そうですね。慶大には絶対負けたくないです。特に自分には高校の同期(髙橋佑樹、2年)がいるので。チーム全体のミーティングで、絶対胴上げはさせないぞという話もしていました。

――きのうが早慶戦初出場でした。早慶戦はどんな印象ですか

とにかく観客が多くて、めちゃくちゃ緊張しました。

――安打にはなりませんでしたが、初出場で打点をあげています。きょうの打席にも良い印象で入れたのではないでしょうか

それより前にも良い場面で代打で打席に立っていたので、その経験もあって良いイメージで打席に入れたと思います。

――僅差の場面やチャンスの場面で打席が回って来ることが多いと思いますが、代打としてどのような準備をしているのでしょうか

どんな時に打席が回ってきても、気持ちは変えずに、打ってやろうと心掛けています。

――加藤雅樹選手(社2=東京・早実)など、同期の選手を見て、自分もという気持ちがあったのではないでしょうか

そうですね。きょうは特に自分以外の同期が全員出ていて、自分も負けたくないなとはいつも思っています。

――吉澤一翔選手(スポ1=大阪桐蔭)の適時打後、ハイタッチをしている様子も見られました。後輩も活躍し始めています

そうですね。吉澤とは自分仲が良いので、負けたくない気持ちもありますが、吉澤の活躍は自分もうれしいです