【連載】秋季早慶戦直前特集『ラストゲーム』 第1回 小島和哉

野球

 今季、小島和哉(スポ2=埼玉・浦和学院)がひときわ存在感を示している。開幕こそ救援でスタートしたが、立大戦からは先発に定着。リーグ序盤、不調の投手陣の中でも安定感のある投球を続け、指揮官からの信頼も獲得した。並み居る好投手の中、防御率は現在リーグ1位。成長を遂げたその背景には、一人の先輩投手からの大きなアドバイスがあった――。

※この取材は10月21日に行われたものです。

「自分の中では先発完投への思いがある」

今季チーム最多の3勝を挙げている小島

――リーグ序盤は投球の調子が良くないとおっしゃっていましたが、その原因は投球フォームの改良にあるのでしょうか

 夏から取り組んできたことだったので、改良もそうですね。ですが、フォームのことを試合の最中に意識することは違うので、試合は試合で勝つために投げて、その中で無意識にできるかだと思うので、それが明大戦(2回戦、○4-0)では力が抜けてできていたと思います。

――フォームを変えて良くなったところは、どのようなところですか

 大学に来てから、高校の時に比べてフォームや投球の感覚が良くないので、高校の時の感覚をつかめるように探り探りでやっている状況なのですが、最近は少しつかめてきたかなと思うので、ここで油断しないでやり込んでいきたいと思います。

――重心移動を変えたというお話がありましたが、どういった点を変えたのでしょうか

 自分はどちらかと言うと、足を上げてから内旋してしまうところがあるので、それをしないように、足を上げてから一回力を抜くじゃないですが、下に落とすイメージで投げるようにしています。

――軸を意識するというお話もありましたが、軸を意識することで良くなる点は

 軸というか、壁というか。投げにいく動作で一番大事なのは足を上げたところだと思うので、そこでぶれてしまうとその後の動きもばらばらになってしまうので、そこまでの足の上げも明大戦では少し早めにして、ちゃんとした軸をつくることを意識しました。軸さえつくれれば、体重移動もつくれると思うので、それを意識しました。

――フォーム固めのために、1日のうちに投げ込みはどのくらいされたのでしょうか

 投げ込みも多少増やしたのですが、シャドーピッチングだったり、練習以外で自分にメニューを課して走り込みを今までよりも増やしました。

――特に走り込みを重視されたということですか

 そうですね。スピードだけではなくて、軸をぶらさないような走り方を意識しました。

――長距離を走られたのですか

 長距離も走ったのですが、ポール(間)片道くらいの距離を何十本も走りました。走り込むと前かがみになったり、腕を使って走りだすので、そういうことはしないように意識してやっていました。

――練習後は安部磯雄記念野球場周辺を走られたりするのですか

 いや、グラウンドの中です。坂もあるので、うまく使ってやっています。

――それではリーグは、不安もある中での開幕となったのでしょうか

 不安がないと言ったらうそになると思うのですが。試合になったら、試合に入ってとにかく勝ちたいという気持ちを前面に出して投げることだけを考えました。

――法大3回戦、立大1回戦、東大1回戦と先発されましたが、調子が悪い中で試合をつくったことについてはどのように評価していますか

 自分も調子が悪かったのですが、立大との試合は勝てる試合を落としてしまって、自分があそこで投げ切れていればという思いもありました。やはり自分の中では先発完投への思いがあって、そういう意味でも明大の柳さん(裕也主将、4年)のピッチングやマウンドを最後まで降りないのはさすがだなと思いました。今季は完封はできていないのですが、早慶戦は今までの集大成という意味でも9回を0点に抑えたいです。

――シーズンをほぼ先発で過ごすことは初めてですが、疲労はいかがですか

 多少疲労はありますが、今までは先発で調子が良くてもリリーフに回されることもあって。それは信頼の裏返しでもあったのですが、自分としては先発として投げさせてもらっていることは周りからも多少は認められているのかなと思うので、最後までしっかり自分の責任を果たしていきたいと思います。

――立大戦、東大戦で第1先発を任されたことは、やはりうれしさもありましたか

 うれしい気持ちもあって、その分結果を出してやるという気持ちが強かったです。

――今季のベストピッチであった明大2回戦での好投の要因をいま改めて振り返ってみていかがでしょうか

 自分の中でも勝つということもそうでしたが、一度も負けていない明大だったので、自分が黒星を付けたいというそれだけでしたね。気持ち的にはすごく試合に入っていけていたので。

――投球内容の面で良かった点は

 カウントをうまくつくれたりだとか、ストライク先行で投げられたこと、うまく打たせて取れたこと、三振もたしか3つくらいだったということで、打たせて取る投球ができたかなと思います。

――打たせて取るという投球は小島選手が目指していく投球スタイルですか

 三振が取れれば一番いいと思いますけど、やはり三振を取るよりも打たせて取ったりする投手なのかなと自分は思うので、勝負どころでもいいコースに投げ切れていたので、内容としては良かったと思います。

――試合後には柳投手の投球を見て制球の良さを学んだという話がありましたが、制球の重要性をあらためて認識されましたか

 そうですね。敵チームですが交流はしていて、アドバイスをもらうこともあるので、あらためてあそこまでコントロールがいい投球を見て、やっぱりこのような投手がドラフト1位を取るのだなと思いました。あらためてコントロールが大事だと感じました。

――リーグ開幕時と比べて、今の調子はいかがですか

 良くなってきているとは思います。

――先発が続く中で、救援時と比べて登板前の時間の使い方に変化はありましたか

 球場に着いてからのアップを入念にやるようになりました。リリーフの時は登板までに時間があって、あまり早く体をつくりすぎても試合の終盤に動きが硬くなる気がするので。そういうところもこれから先発をやっていきたい上で良い経験かなと思います。

――長いイニングへの意識は救援を経験したからこそ生まれたのでしょうか

 リリーフのときは、球数が多くても1回を抑えればいいと思っていたのですが、先発になるとできるだけ球数も減らさなくてはいけないので、明大ではそういう意味では先発らしいピッチングができたかなと思います。

――リリーフの経験が先発に生きたことはありますか

 試合を経験することはすごく大事で、1試合でも多く投げればそれだけ経験になると思います。去年は自分があまり良くなかったことを周りのせいにする考え方が少し自分の中にあったのですが、夏のオープン戦の時に柳さんから「打たれた時こそ、調子が悪かったと片づけるのではなくて、自分の実力不足だと思って人一倍練習しろ」という言葉をいただいて、それからまだまだだなと、日々成長していかないといけないなと思って臨めました。この1年間で考え方は成長していると思います。

――現時点で防御率リーグ1位ですが、その要因はどのように考えていますか

 1イニング1イニングの積み重ねだと思っています。勝ち星よりも防御率が低い方が自分はうれしくて、(防御率1位)はピッチャーとして目指しているところでもあったので、早慶戦もしっかり抑えてタイトルを取れるようにしたいです。

――大学2年生ということで折り返しの時期でもありますが、今の自分の姿に満足はされていますか

 いや、まったく満足できていないです。きのうドラフト(会議)を見ていて、自分も2年後にドラフトで指名されたいという気持ちがあるので、そのためには、今のままではまだまだ通用しないと思います。全てにおいてレベルアップしないといけないと思います。

――特にレベルアップしたいところはありますか

 スピードもそうですし、1年間投げられるだけの体力をつけないといけないと思います。かと言って、プロに行くための練習だけだとプロになってからカベにぶつかると思うので、プロで活躍するための練習をもっと積み重ねないといけないと思います。

――プロへの意識が芽生えているということですか

 そうですね。

「1イニング、1イニングをしっかり0に抑えたい」

――バッテリーの相手が小藤翼選手(スポ1=東京・日大三)に変わりましたが、小藤選手の良さはどのようなところですか

 1年生なのに試合に出ていて、今までずっとマスクを被っているので、正直すごいなと思っています。自分は投手なので、1年生のころは4年生の捕手にに引っ張ってもらって自分の良いところが出せていたと思うのですが、捕手になると、投手の良いところを引き出したり、守備の中心でもあるので、そういう意味でも1年生があそこまでできているのはすごいと思います。

――頼れる女房役ということでしょうか

 そうですね。

――リード面では何か変化などはありましたか

 自分も投げていて勉強なので、試合中でもイニングが終わった後に意見交換をしています。結果に応じて何が悪かったのかを実戦で学べるのは良い経験だと思うので、これからも意見交換は大事にしていきたいと思います。

――物おじしない性格も感じますか

 真面目なので、あまり真面目にやりすぎないように、と思います。

――小島選手も1年生から試合に出ていましたが、小藤選手に精神面でのアドバイスもされますか

 去年は1年生が自分一人で、周りの先輩が声をかけてくれて、自分が試合で集中しだすと周りも気を遣ってくれていました。それなので、寄り添うときは寄り添って、集中したいときはそれを感じながら気を遣って見るようにしています。

――『神っている』チームメートとして木田大貴選手(商4=愛知・成章)を挙げられていましたが、攻守で助けられる部分が多いですか

 この間の明大でも守備で助けてもらいましたし、バッティングでもすごく打っているので、心強いです。

――早慶戦に話を移します。早慶戦では1年生のころから3季連続で勝利投手になっていますが、慶大に対して得意意識はありますか

 苦手ではないと言ったら苦手ではないのですが、やはり一発があるので、そこだけ注意して投げるようにしています。ことしも打率の高い選手が多いので、そこで走者を出して回さないように考えています。

――考え方としては、大量得点を奪われないようにするということですか

 そうですね。いまのワセダの打線なら得点は取れると思うので、相手も加藤さん(拓也、4年)なので分からないですが、少しでも最少失点で抑えられればいいなと思っています。

――今季から1番に入った沓掛祥和選手(4年)の印象はいかがですか

 パワーがあって、しっかり振ってくるので、低めに球を集めることで最悪安打はオッケーぐらいの気持ちで攻めていきたいと思います。

――一発があるチームということで、低めへの意識はかなり高いですか

 やはり真っすぐだけだと打たれてしまうと思うので、しっかり変化球の緩急を入れて、低めに集めて打ち取っていければと思います。

――早慶戦まであと2週間ほどですが、何か取り組みたいことなどはありますか

 今は少し肩の疲労が取れていないので、まずはしっかり肩を休めて、来週に合わせてうまく調整していきたいと思います。

――最後に早慶戦への抱負をお願いします

 防御率も意識はしたくないですけど、まずはケイオー相手に完封できるように1イニング、1イニングをしっかりゼロに抑えてその結果が完封につながれば、チームも勝てると思うので、そこを目指してやっていきたいと思います。

――ありがとうございました!

(取材・編集 井口裕太)

これまでのシーズンは多くて3勝止まり。4勝目を完封で奪いにいく

◆小島和哉(おじま・かずや)

1996年(平8)7月7日生まれ。177センチ、79キロ。埼玉・浦和学院高出身。スポーツ科学部2年。投手。左投左打。毎回の対談後、小島選手に書いていただく色紙には美しい文字が並びます。書道を習った経験があるか尋ねてみると、「実家の隣が書道教室でしたけれど、行っていませんでした(笑)」と意外な答えが待っていました!