【連載】秋季リーグ戦開幕特集『アゲイン』 最終回 石井一成主将

野球

 東京六大学春季リーグ戦(春季リーグ戦)5位。主将として初めて臨んだリーグ戦は思い通りにいかないことの連続だった。自身も調子が上がらず、打率は2割台。悔しい思いだけが残ったシーズンだった。しかし、ここで立ち止まらないのが石井一成主将(スポ4=栃木・作新学院)という男。オフの期間から毎日練習を続け、徐々にではあるが本来の姿を取り戻しつつある。ラストシーズンを前に、チームをけん引する主将は何を思うのか。その心境に迫る。

※この取材は8月26日に行われたものです。

「練習量を増やすしかない」

――きょうの立正大戦は2-10で敗れました。試合後の練習はいつもより多めだと聞いています

 (バットの)振り込みを多くしました。それ以前にバッテリーや守備面で課題もありましたが、振り込む必要があるなと思ったので。毎回試合後はバッティングをやっています。

――普段夏季オープン戦の後はどれくらいバットを振っていますか

 本数は決まっていません。リーグ戦が近づいてきましたが、本数は減らす必要がないですし、むしろしっかり(バットを)振る量を確保してリーグ戦に臨むということでやっているので、(本数は)各自に任せています。

――石井選手自身は本数の設定はありますか

 何本とかは決めてないですね。

――気が収まるまでという感じでしょうか

 そうですね。

――ここからは春季リーグ戦の話に移っていきたいと思います。あらためて主将として臨んだリーグ戦で5位という結果はどのように捉えていますか

 5位というのは本当に情けなくて、主将として何もできなかったことは悔しいところでありますが、もう終わったことなので引きずる必要はないと思います。引きずって悪い結果が出るくらいなら、前を向いていった方がいいと思います。

――春季リーグ戦後のオフは何をして過ごしましたか

 何やったっけな…(笑)。実家には帰らず、寮にいました。

――オフの期間も少しバットを振ったりと、という過ごし方でしょうか

 毎日何かしらはやっていましたね。完全なオフはなかったです。

――オフの期間でミーティングなど、選手同士で集まる機会はありましたか

 (ミーティングを)やりました。やはり4年生がしっかりしないといけないということはみんな思っていましたし、第一に主将の自分が一番しっかりしなければと思っていたので、4年生全員で集まってもう一度(チームを)引っ張っていこうという話をしました。

――オフが終わって練習を再開した時のチームの雰囲気はいかがでしたか

 そんなに悪くなかったですね。

――春季リーグ戦中は「士気が下がってしまった」と話していましたが、そういう雰囲気もなくということでしょうか

 そうですね、そういう雰囲気はなかったです。みんな前を向いてやってくれいていました。

――石井選手自身はいかがでしたか

 自分もその時には切り替わっていましたね。

――切り替えは速いタイプですか

 そうですね。あまり引きずらないです。

――夏場の練習はバットを振る回数が増えたと聞いています。春季リーグ戦前と練習において変わった部分はありますか

 考えるより、(練習を)やった方がいいので。なぜ(春季リーグ戦で)駄目だったのかを考える時間があるなら、練習に費やした方がいいなという考えでやってきました。実力がないので、練習量を増やすしかないということで、だんだんと春より練習量が増えたと思います。

――春季リーグ戦期間中は考えてしまうことも多かったのでしょうか

 勝ててなかったですからね。やってきたことへの自信がなくなってしまったのかもしれないです。

――昨年はメンバー練習については早い時間帯に終わることも多かったですが、ことしはその時間も長くなりましたか

 そうですね。基本的に一日練習をしています。

――それ以外に各自自主練習も行うかたちで

 そうですね。

――ボールを確実に捉えるための練習というのは、具体的にどのような練習をしていますか

 自分の振りたいところに振るためには数をこなすしかないと思います。ただバッティング練習で飛ばすだけではなくて、ケースを想定してある程度コースを決めて狙いどおりに打てれば、それは素直に(バットが)出ているということなので、それを指標にしながら練習をしています。

――どれくらいのケースを想定して練習をしていますか

 自分の感覚で、ストライクなら打っていくとか、2ストライクで追い込まれている状況であれば多少ボール球でも打っていくとか、そういう練習をしています。

――この夏、一番実力が伸びているなと感じる選手は誰ですか

 やはり八木(健太郎、スポ3=東京・早実)ですね。けっこう練習していて、一緒にジムにも行ったりするので。頑張っていますね。

――「チームの力を上げるためには個人のレベルアップが必要」だと話していましたが、今のチームは選手それぞれが前を向いているという雰囲気はありますか

 チーム力を上げるためには個人が強くないといけないので、まずは個人の力を上げようという意識で、後輩も4年生もやってくれていますね。

――部員140人全員を一つの方向に持っていくというのは大変なこともあると思います

 野球をやっていれば向く方向というのはそんなに外れないと思いますが、中にはどこに向かっていけばいいか分からなくなっている後輩とかもいると思うので、そういう人には自分からミーティングとかで、「リーグ戦で優勝したいから協力してくれ」と言っています。

――春季リーグ戦期間中よりも、部全体が勝ちにいくという雰囲気はありますか

 リーグ戦中は言わなくても優勝目指してというか、勝ちに向かってやってくれていると思いますが、練習期間中は気が緩んだりしてそういうところが難しいなとは感じます。自分や4年生が注意しながらやっています。

――リーグ戦の経験者が少ない中で、リーグ戦の厳しさや一球の重みを浸透させることは難しいところもあると思います。その点は春と変わってきていますか

 そうですね、(浸透させることは)なかなか難しかったですが、5位という結果を見て、各自自覚してくれれば。自分ももちろん言いますけれど、自覚してくれたのかなと思います。

「いい方向にいっている」

時には大きな声でチームを鼓舞している

――夏季オープン戦のチームのここまでの戦いはいかがですか

 悪くはないと思いますが、その試合ごとに細かい課題が出ているので、それをいかにつぶせるかどうかだと思います。

――チームの状態についてはどう感じていますか

 バッテリーは球種を試しながらやっている部分があるので、(多少打たれても)それは大目に見てもいいと思います。負け癖が付いてしまうのは心配ですが、そんなにチームの状態は悪くないと思います。

――石井選手ご自身は徐々に安打数も増えてきています。ご自身の調子はいかがですか

 全然良くないですね。相手チームのエース級があまり投げていないので。

――良くないと感じてしまうのはどういうところですか

 体がバテているのか、(バットを)振る量が少ないのか、どっちなんだろうというのはありますが、(調子が)いい時は自分のスイングができているので、そのいい感覚を続けていきたいです。

――調子が悪い中で徐々に安打数が増えている要因は何だと考えていますか

 自分としては勝手に(バットを)振っていた成果が出ているのかなと思っていますが、まだまだ捉え切れていない部分があるので、そこはさらに気を引き締めていかないとなと思っています。

――夏季オープン戦前は「調子はまだまだ」と話していましたが、今はその時点よりは前に進んでいますか

 2ミリくらいですね(笑)。それを何センチにも何メートルにも伸ばしていかないとなと思っています。

――8月17日の東北楽天ゴールデンイーグルス戦ではランニング本塁打も放ちました

 あれは風です(笑)。

――チームとしてはプロに勝てたということで自信になったと思います

 相手の集中力が切れていたので分からない部分もありますが、こちらは集中力を切らさずに打ち勝つことができたので、勝てたことは収穫だったなと思います。

――その試合はベンチもかなり盛り上がっていましたが、その試合後などはどのような話がありましたか

 打線は打つ時もあれば打てない時もあるし、打っている時には感じづらいですが、いつでも打てるという安心はしちゃ駄目で、スイング量は各自しっかり確保しなきゃダメだよというのは言いました。

――夏季オープン戦ではファーストストライクから積極的に振っていく場面が多く見受けられます

 待っていてもいいボールが来ないというか、相手の配球にはまるだけなので、いいボールが来れば積極的に振っていこうということでやっています。

――春季リーグ戦では三振が多かったので、そこを意識しているのかなと思ったのですが

 そこは考えていませんね。三振が悪いことではないですが、三振の前の過程は見直さなければいけないので、(ファーストストライクから打つのは)三振を少なくするためではなくて、より相手のいいボールを打てるようにするためにやっています。

――夏季オープン戦は神宮球場と見る位置が違いますが、打席での構えの重心が少し低くなったように感じました。そこは勘違いでしょうか

 どうなんだろう(笑)。(重心を)下にはしていないです。それは(調子が)悪い時ですね。ボールを見ようして下にもぐってしまっているので。いい時は体が立って上からボールを見て打ちにいけています。

――この夏、意識的に変えたところはありますか

 特にないですね。細かい課題を練習でつぶしていっています。

――打撃練習の時には、ご自身のフォームを映像で見ていることがありますが、どこを確認していますか

 やはり軸がぶれると思った所にバットが出ないので、軸を意識して、ストレートの時も変化球の時もぶれていないかというのを確認しています。

――毎試合打順やメンバーが入れ替わる中で、チームの競争意識というのは上がってきていますか

 かなり高くなっているとは思いますね。誰が4番を打つか分からない状態なので、自分も結果を残さないといけないですし、他のメンバーも諦めずというか、自分が(試合に)出るんだという意識を持ってほしいです。

――4年生が2軍戦に出たり、1年生が1軍戦に出たりと目に見えてメンバーが変わっていく中で、選手の姿勢に変化はありますか

 競争し合っているので、一球一球の集中力が挙がってきていると思います。いい方向にいっていますね。

――石井選手と共に二遊間を守る選手の中には、富田直希選手(教1=東京・早実)もいます

 1年生なのでまだ少し遠慮している部分がありますが、そこはしっかりサポートしていきたいです。

「挑戦者として」

――この秋はプロ野球ドラフト会議も控えていますが、石井選手はどの球団のファンですか

 どこだろうな(笑)。巨人ですかね。

――プロ野球選手になりたいと思ったのはいつからですか

 小学1年生の時です。野球が好きだったので、その最高峰のプロ野球選手を目指すようになりました。

――実際にその夢がかないそうなところまで来ています

 プロ野球選手になるのは簡単なことではないですけれど、(プロに)入ってから活躍するというふうに目標が変わりました。入るだけではダメだなと。

――高校から直接プロにいくという選択肢は考えていましたか

 考えなかったですね。まずは大学で野球をやろうと思っていました。

――いよいよラストシーズンを迎えますが、主将に就任してからここまでは長く感じましたか。短く感じましたか

 短く感じました。もう秋かという感じです。

――秋季リーグ戦での数字の目標はありますか

 数字は特にないです。

――春も同じように話していました

 自分が5割打っても勝てなければ意味がないので。数字は考えていないです。

――最後に秋季リーグ戦の目標を教えてください

 いい意味で開き直って挑戦者として、また1試合ずつ大事に戦っていきたいです。

――ありがとうございました!

(取材・編集 杉田陵也)

負けない野球でリーグ優勝を目指す

◆石井一成(いしい・かずなり)

1994(平6)年5月6日生まれ。181センチ、76キロ。栃木・作新学院高出身。スポーツ科学部4年。内野手。右投左打。母校・作新学院高がことしの夏の甲子園で54年ぶりの優勝を果たしました。優勝の瞬間は東京六大学オールスターゲームからの帰り道で、新潟駅にいたそうです。「Twitterで速報を1分おきくらいにこうやって(スマートフォンの画面を指でスクロールする動き)ました(笑)」と、その時のことを話してくれました。「後輩から元気をもらって、自分も頑張らなければいけないなと思いました」と、あらためて秋の頂点を目指す決意を強くした様子でした!