中澤が一発、小島が完投!宿敵から執念の勝ち点奪取/慶大3回戦

野球
慶大3回戦
慶 大
早 大 ×
(早)○小島-吉見
◇(本塁打)中澤1号ソロ(二塁打)八木、吉見

 「いいかたちで終われて良かった」(小島和哉、スポ2=埼玉・浦和学院)。両校の威信を懸けた、最後の戦い・早慶戦。1勝1敗で迎えたこの日、何としても宿敵に勝利したい早大は3回、中澤彰太副将(スポ4=静岡)のソロ本塁打で先制する。6回には一時同点とされるが、直後に八木健太郎(スポ3=東京・早実)の適時打で勝ち越した。その後も追加点を挙げて慶大を突き放すと、小島が最後までリードを保ち完投勝利。『慶大からの勝ち点奪取』という、春に残された最後の目標を達成した。

小島にとって完投勝利は自身初

 髙橋広監督(昭52教卒=愛媛・西条)が「宿命」と称するように、たとえ5位という順位が確定しようとも、早慶戦では必ず勝ち点を挙げたいところであった。小雨が降る中、今季2度目の先発マウンドに上がった小島。1、2回戦での登板がなかったため、序盤からエンジン全開の投球を披露する。右の強打者が並ぶ慶大打線を前にしても、ひるまず果敢に内角を攻め続けた。6回に制球を乱し同点に追い付かれるが、柳町達(1年)を三振で抑え、なんとか最少失点で切り抜ける。7回には自らスクイズを決めるなど、9番打者としての役割も果たした。小島は最後までマウンドを譲らず、9回148球の熱投で完投勝利。小島を奮い立たせたのは、前日の竹内諒(スポ4=三重・松阪)の力投だった。「竹内さんがあれだけいいピッチングをしてくれて自分につないでくれたので、恥ずかしいピッチングはできないという気持ちでした」(小島)。先輩が見せた渾身(こんしん)の投球は、後輩の心にもしっかりと響いていた。

 前日は計7得点を挙げ、打順の入れ替えが功を奏した稲穂打線。しかし1回戦同様、慶大のエース加藤拓也(4年)が立ちはだかる。2回には3者連続三振を喫するなど、この日も難敵攻略に手を焼くかと思われた。3回、打席には中澤。打率は0割台に低迷し、秋に向け何か早慶戦で結果を残したいところだった。初球の直球を捉えると、打球は左翼方向へ伸びていき、そのままスタンドへ。待望の先制点は、悩める副将のバットからもたらされた。さらに同点とされ迎えた6回、2死三塁の場面で八木が打席に入る。前日は好機で凡退するなど、悔しい打席が続いていた。「きょうこそは絶対に打ってやろう」(八木)。高めに浮いた直球を逃さず振り抜いた。左翼手の頭上で越える適時二塁打で、再び優位に立つ。7回にもスクイズと暴投で2点を追加。効果的に得点を積み重ね、慶大を圧倒した。

殊勲打を放った八木

 通算成績は6勝7敗。5位に沈み、勝ち点も2にとどまった。シーズン序盤から投打がかみ合わず、何度も苦しい戦いを強いられたが、早慶戦の3試合はいずれも粘り、食らい付き、守り抜く『早大らしい野球』を体現した。早大が目指すべきものは、やはり投手を中心とした守りの野球。「秋に向けて、この春の経験が生きてくれれば」(髙橋監督)。好調をキープした選手は、さらなるステップアップを図るため。不振にあえいだ選手は、秋こそその本領を発揮するため。まずは鍛錬の夏を過ごし、秋にはたくましくなった姿を神宮球場で見せてほしい。

(記事 中丸卓己、写真 後藤あやめ、郡司幸耀)

☆不調の中澤、今季最終戦で本塁打を放つ!

待望の一発に沸くベンチに迎えられる中澤(左)

 悩める副将が先制のソロ本塁打を決めた。3回両者無得点で迎えた1死の場面。慶大1回戦では抑え込まれた加藤拓也(4年)からの直球を、中澤彰太副将(スポ4=静岡)が捉える。打球は左翼手の頭を越えるとそのままスタンドへ。神宮球場に歓声が響き渡った。

 2回戦までは、満塁の好機に見逃し三振を喫するなど、思い通りのプレーを披露できていなかった。しかし、この日は宿敵との均衡を破る一打を見せる。本塁を踏んでベンチに帰ると、髙橋広監督(昭52教卒=愛媛・西条)にポンと肩をたたかれた。「こういう成績でも使い続けてくれたので、打てて良かった」(中澤)。絶不調で苦しみ、もがき続けた今シーズン。チームを引っ張る立場としての役割を最後の最後に果たし上げた。

 少しずつではあるが、着実に本来の姿を取り戻しつつある中澤。「一丸となって優勝を目指していきたい」と語るそのまなざし力強く、しっかりと前を見据えていた。

(記事 後藤あやめ)

黄字は打点付き

早大打者成績
打順 守備 名前
(三) 木田大貴 .333 遊ゴ    左飛    四球    遊ゴ      
(二) 真鍋健太 .316 遊ゴ    四球       左安 空振      
(一) 立花玲央 .267 三邪    右安       三ギ    二飛   
(遊) 石井一成 .286    空振 捕邪       二ゴ    四球   
(左) 八木健太郎 .244    空振    右飛    左2    三併   
(右) 三倉進 .208    空振    右飛    二ゴ         
(捕) 吉見健太郎 .178       三ゴ 空振       右2      
(中) 中澤彰太 .061       左本    右飛    捕ギ      
(投) 小島和哉 .333       四球    空振    捕ギ      

早大投手成績
名前
小島和哉 13 2.86
東京六大学春季リーグ戦星取表
順位 明 大 立 大 法 大 慶 大 早 大 東 大 勝ち点 勝率
明 大 ○2-0
●2-5
○3-1
○3-1
●5-6
○3-2
△1-1
○10-0
●0-1
○18-0
○3-2
●4-5
○11-5
○1-0
●2-3
○12-3
10 .667
立 大 ●0-2
○5-2
●1-3
○5-4
●1-5
●6-8
○1-0
○6-4
○4―1
○1-0
●0-4
○15-0
○8-2
.615
法 大 ●1-3
○6-5
●2-3
●4-5
○5-1
○8-6
●1-11
●2-8
●4-5
○7-2
○5-0
●1-4
○10-4
○11-4
.500
慶 大 △1-1
●0-10
○1-0
●0-18
●0-1
●4-6
○11-1
○8-2
○9-4
●3-7
●2-4
○6-1
○9-4
.500
早 大 ●2-3
○5-4
●5-11
●1-4
●0-1
○5-4
●2-7
●0-5
●4-9
○7-3
○4-2
○1-0
○8-0
.462
東 大 ●0-1
○3-2
●3-12
○4-0
●0-15
●2-8
○4-1
●4-10
●4-11
●1-6
●4-9
●0-1
●0-8
10 .231
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コメント

髙橋広監督(昭52教卒=愛媛・西条)

――きょうは理想的な勝ち方だったと思うのですがいかがでしょうか

まあまあですね。最初と最後だけは良かった気がしますね。

――先発は小島和哉選手(スポ2=埼玉・浦和学院)でしたが、いつごろ決められたのでしょうか

第1戦、第2戦の状況を見てね。本当は第1戦と第3戦で同じなんですけど、大竹(耕太郎、スポ3=熊本・済々黌)が第1戦で良くなかったのでね。きのうも竹内(諒、スポ4=三重・松阪)が頑張って、小島は登板がなかったのでね。一番理想的なかたちになったと思いますね、現状では。

――きのうも「球に力のある投手の方が理想」とおっしゃっていましたが、その言葉通り小島選手が完投してくれましたね

きのう、おとといと休養十分ですからね。満を持してという感じで、一番いい投球をしてくれましたね。

――試合序盤は加藤拓也選手(慶大4年)との緊迫した投げ合いとなりました

小島としては状態も良かったですけど、加藤くんは第1戦で球数もたくさん投げていましたし、大変だったと思いますね。でもワセダもよく点を取ってくれて、最後になってようやく理想的なかたちになったという感じですね。

――先制点は中澤彰太副将(スポ4=静岡)の本塁打でしたが、あの場面は

まあもっとシーズン早くから打ってくれよなという感じですけどね。本人も吹っ切れてね。

――逆方向への本塁打でしたね

素晴らしいですよね。ああいうことができる打者ですからね。だから今シーズンの成績は本人としても不本意でしょうけど、チームとしても非常に大きかったですよね。

――6回には八木健太郎選手(スポ3=東京・早実)にも勝ち越しの適時打が出ました

そうですね。八木もよく粘って打ってくれたと思いますね。

――7回のスクイズと暴投による2点は、かなり大きな追加点だったのではないでしょうか

ラッキーなことが重なって、クリーンヒットもなく点が取れたのでね。あれは大きかったですよね。まあ加藤くんにも疲れがあったでしょうからね。

――一方、小島選手は6回に一度制球が乱れ、監督もマウンドに行かれていましたが

ちょっと制球が良くなかったですよね。捕手とも話して、とにかく頑張れと。

――右打者の内角をかなり攻めていましたね

そうですね、本来はああいう投手ですからね。最後の本塁打くらいでしょうかね、高めに浮いたのは。安打を打たれた球は高めに浮いていたんですけども、その確率がきょうは低かったですよね。9割がた合格でしょうかね。

――これでリーグ戦の全試合を消化しました。あらためて今シーズンを振り返っていただけますか

納得のできるシーズンではないですけど、早慶戦に勝つというワセダの宿命がありますので。1試合は落としましたけど、まあ何とか最低限の仕事はしたかなというところでしょうかね。

――メンバーも大きく入れ替わりなかなか予想のできないシーズンだったとは思いますが、シーズンを終えて得た収穫などは

4年生になっても頑張ってくれた真鍋(健太、スポ4=東京・早実)、木田(大貴、商4=愛知・成章)、立花(玲央、人4=千葉英和)もそうですけど、不安視していた捕手も決まって。守る時にはそんなにミスもないんでね。微妙なところでやはり経験がないところもありますので、仕方ないとは思いますけどね。秋に向けて、この春の経験が生きてくれればと思いますね。

――竹内選手の復活、活躍も大きかったのではないでしょうか

まあ遅いですよね。竹内が明大の柳(裕也主将、4年)みたいに5、6勝してくれるか、もしくは他の大竹とかがしてくれるという状態がベストなんですけどね。だから、現時点ではエースと呼べる人がいないじゃないですか。竹内が良くなったとはいえ、エースかと言われればまだ2勝ですからね。

――夏に強化したい点などは

やはり打てないというのは想定内ですから。打撃はそんなに急に変わるものでもないので、投手を中心に守りをしっかりとね。ワセダはエラーは少ないですけど、点に絡むようなエラーがシーズン中にもあってね。それが大きく流れを変えたような部分もあるので、そういうところも鍛えていきたいですよね。

――昨年同様、オープン戦を多くこなしていくのでしょうか

そうですね、そういうかたちになると思いますね。

――最後に秋に向けて意気込みをお願いします

これはもう春の5位から、秋は優勝ですね。

中澤彰太副将(スポ4=静岡)

――きょうの勝利で慶大から勝ち点を奪いました。早慶戦を振り返っていかがですか

同じリーグ戦ですが、早慶戦はやっぱり特別なものだと思っているので、そこで勝ちを取れたことは秋につながるのではないかなと思います。

――きょうの試合の3回には先制のソロ本塁打を放たれました

左翼手を越えるかなとは思いましたが、入るとは思わなかったです。

――打った球種は

真っすぐです。

――1回戦で抑えられた加藤拓也選手(慶大・4年)が相手でした

加藤くんはすごく良い投手だというのは感じているので、そういう投手から打てたのは良かったです。

――慶大2回戦から打順は打率順に組まれました

それに関してはしょうがないです。自分のできることをやろうと思いました。

――慶大2回戦まではなかなか思うようなプレーができなかったと思いますが

ヒットは打てなかったのですが、その打席の中でも良いと思う感触もあったので、それが第3戦(慶大3回戦)で出たので良かったです。

――うまく最後の試合につなげられたのですね

そうですね。最後なので思い切ってやろうと思いました。

――本塁打を打った後は髙橋広監督(昭52教卒=愛媛・西条)から肩をたたかれていましたが

こういう成績でもずっと使い続けくれたので、そういうことも含めて打てて良かったです。

――以前おっしゃっていた秋につながるプレーに関してはいかがでしたか

チームの勝ち方というのは、先制点を取ってバントも決まってスクイズも決まってという、これが本来の勝ち方だと思います。そこをみんなでできたことは良かったと思います。

――あらためて春リーグを振り返って

チームも個人も悔しい結果で終わりましたし、個人的にチームに迷惑をかけてしまいました。秋は自分は最後なので、4年生と監督とスタッフで一丸となって優勝を目指していきたいです。

八木健太郎(スポ3=東京・早実)

――慶大3回戦ということでどのような意気込みで試合に臨みましたか

結果は5位なのですが、早慶戦は伝統もありますし、絶対に負けてはいけない戦いなので、絶対に負けないという気持ちで試合に臨みました。

――試合全体を振り返ってみていかがですか

きょうはピッチャーも野手もミスなくできていたと思います。終わり良ければ全て良しという感じで、秋に向けて入れるかなと思います。

――6回に勝ち越しの二塁打を放ちましたがどのようなお気持ちで打席に入りましたか

きのう、2死二、三塁のチャンスで打つことができませんでした。きょうも2死三塁ということで、きょうこそは絶対に打ってやろうという気持ちで、何でもいいから思い切り振りました。

――狙っていた球などはありましたか

特にはないですね。来た球を上からはたいていこうと思って振りました。

――打った感触はいかがでしたか

久しぶりに気持ちの良いバッティングでしたね。

――きょうは粘り切る野球というのができたのではないでしょうか

そうですね。それがことしのチームだと思います。今回のリーグ戦で夏に向けての課題がたくさん残ったので、練習をして秋に臨みたいです。

――春季リーグ戦はきょうで閉幕しましたが、個人として振り返っていかがですか

守備でも打撃でも課題が見つかったリーグ戦だったので、夏に練習していきたいと思います。

――盗塁を多く決めていた印象がありますが

盗塁は昔から苦手ではないので、これからも癖などを見つけてもっと良いスタートを切れるように頑張っていきたいです。

――夏に強化していきたいことや、秋に向けての意気込みをお願いします

強化していきたいところは打撃、守備、走塁全部ですね。秋こそはもっとチームに貢献して、自分のやるべきことをやって、リーグ戦優勝、そして明治神宮大会も優勝していきたいと思います。

小島和哉(スポ2=埼玉・浦和学院)

――完投勝利を挙げたいまの気持ちはいかがですか

最後の試合だったので、それがいいかたちで終われて良かったなと思います。

――先発登板が決まったのはいつでしたか

土曜日の試合が終わったあとに、3戦目までもつれたら(先発で)いくよと言われていました。

――きょうの投球で良かった部分はどのあたりですか

要所で抑えられたのが一番かなと思います。

――制球の部分ではいかがでしたか

イニングの先頭や、(グラウンド)整備後の6回の四球と、9回の本塁打は少し気が抜けていた部分があったので次の課題にしていきたいです。

――中軸の打者には内角をしっかりと攻めている印象を受けました

自分の自信がある球がインコースの真っすぐなので、それで打たれたら仕方ないという感じの開き直りで投げました。

――沓掛祥和選手(4年)には2打席連続で死球となりましたが、内角攻めへの意識からですか

それはもう当たってしまっても仕方ないと割り切っていたので、何も気にしていないです。

――8回のピンチでは髙橋広監督(昭52教卒=愛媛・西条)からどんな言葉をかけられましたか

「お前に任せるぞ」と言われたので、今の自分の一番いいボールを投げて抑えようと思いました。

――7回には自らスクイズを決めましたが、気持ちが楽になったのではないでしょうか

気合いで決めようと思っていたので、うまく転がって良かったです。

――普段は救援として準備をされている中、スタミナ面での不安はありませんでしたか

去年だと終盤になると球が甘くなってしまっていましたが、きょうは甘い球もありましたけど投げ切ることができたので、それは一つの成果かなと思います。あとは一番は土日に投げなかったのが大きいです。前日に竹内さん(諒、スポ4=三重・松阪)があれだけいいピッチングをしてくれて自分につないでくれたので、恥ずかしいピッチングはできないという気持ちでした。

――昨年に引き続き早慶戦で勝利を挙げられましたが、そのことについてはいかがですか

早慶戦だからというのはあまり関係なく、きのういい勝ち方をしたのできょう負けたら無駄になってしまうので、それだけはないようにと思っていました。

――あらためて今季のご自身の成績を振り返ってみていかがですか

全体的に見てもあまりいいシーズンではなかったので、失敗を秋のシーズンに生かして成果を挙げられたらなと思います。