手に汗握る展開も、開幕白星スタート/東大1回戦

野球
東大1回戦
東 大
早 大 1×
(早)大竹、○小島-吉見
◇(二塁打)三倉、吉見

 春の日差しが心地よい神宮球場。ことしも東京六大学春季リーグ戦が開幕し、戦いの幕が切って落とされた。3季連続優勝を目指す早大は開幕戦から登場。黒星スタートは絶対に許されない試合は、両校のエースがお互いに一歩も譲らない投手戦に。東大の注目左腕・宮台康平(3年)相手に打線が苦戦を強いられるものの、9回裏に連打でサヨナラ勝ち。守り抜き、ワンチャンスをものにして勝つ、ことしの早大野球部の試合運びを体現するゲームとなった。

 開幕戦のマウンドを任されたのは、経験豊富な大竹耕太郎(スポ3=熊本・済々黌)。この日はなかなか制球が定まらず、毎回のように走者を背負う苦しい状況が続いた。粘りの投球で本塁は踏ませないものの、試合の流れは善戦を続ける東大へ。1点も与えることができない展開の中で、9回最大のピンチが訪れる。先頭打者に右翼への二塁打を放たれ、無死二塁。大竹はここで降板し、小島和哉(スポ2=埼玉・浦和学院)が救援のマウンドに上がった。しかし、四球と進塁打などで1死二、三塁とさらにピンチは拡大。万事休すかと思われたが、昨年ルーキーながら6勝をマークした左腕がここで意地を見せる。「大竹さんがずっと0で抑えていたので、とりあえず絶対に点は取られないようにということだけを考えた」(小島)と気持ちを込めてこの回をなんとかしのぎ切り、固唾(かたず)をのんで見守っていた一塁側応援席からは安堵(あんど)の息が漏れた。

大竹は調子が悪い中、何度もピンチを切り抜けた

 9回表を無失点で切り抜けた最終回の早大の攻撃。好調の宮台を打ち崩せない中、この試合チーム13個目の三振で2死と追い込まれる。そんな中、打席に入った吉見健太郎(教3=東京・早実)は打球を左中間へ運び、2死二塁と得点圏へ。一打サヨナラの好機をつくり、全ては続く三倉進(スポ3=愛知・東邦)に託された。その3球目、真ん中内よりに入ったボールに食らいついた打球が左前のポテンヒットとなり、吉見が歓声の中ホームイン。三倉の幸運な一打で勝利をつかみ、開幕白星スタートを切った。

サヨナラ打を放った三倉。振り切ることはできなかったものの、ボールを押し込み安打にした

 「想定内の試合で、『最後は守り勝つ』と言っていたので、そういう点では我々が考えていた試合展開で勝てたと思う」とロースコアのゲームを髙橋広監督(昭52教卒=愛媛・西条)は振り返った。試合を通じて4安打と打線に多少の不安が残るものの、勝利は勝利だ。次の試合で確実に勝ち点を手に入れ、優勝への波に先乗りしたい。

(記事 中村朋子、写真 後藤あやめ、中川歩美)

☆開会式にて天皇杯返還

天皇杯を返還する石井

 この日は、試合前に東京六大学春季リーグ戦(春季リーグ戦)の開会式が行われた。昨季優勝した早大を先頭に、朝早くから集まったファンの拍手に迎えられながら選手たちが入場。石井一成主将(スポ4=栃木・作新学院)らの手には天皇杯、優勝旗をはじめとする各賞の賜杯が握られていた。そして、各賜杯返還後には石井が六大学の代表として選手宣誓。神宮の澄み切った空の下に球春到来を告げた。これから8週間にわたり、繰り広げられる各大学との熱い戦い。一旦は返還した天皇杯を再び都の西北にもたらすため、『一戦必勝』で春の頂を目指す。

黄字は打点付き

早大打者成績
打順 守備 名前
(左) 八木健太郎 .000 遊失    空振       三ゴ    投ギ   
(二) 真鍋健太 .000 捕飛    空振       死球    見振   
(中) 中澤彰太 .000 空振       三ゴ    捕邪    一ゴ   
(遊) 石井一成 .000 二ゴ       四球    四球       三邪
(一) 立花玲央 .000    空振    投ギ    空振       空振
(捕) 吉見健太郎 .250    空振    空振       遊直    左2
(右) 三倉進 .500    中2       三ゴ    空振    左安
(三) 木田大貴 .000    空振       遊ゴ    一直      
(投) 大竹耕太郎 .333       空振    空振       左安   
  小島和哉 .—                           
早大投手成績
名前
大竹耕太郎 8 0/3 0.00
小島和哉 0.00

東京六大学春季リーグ戦星取表
順位 早 大 慶 大 法 大 東 大 明 大 立 大 勝ち点 勝率
早 大 5/28
5/29
4/30
5/1
○1-0
4/10
5/14
5/15
4/23
4/24
1.00
慶 大 5/28
5/29
○11-1
4/10
4/30
5/1
4/23
4/24
5/14
5/15
1.00
法 大 4/30
5/1
●1-11
4/10
5/21
5/22
5/7
5/8
4/16
4/17
.000
東 大 ●0-1
4/10
4/30
5/1
5/21
5/22
4/16
4/17
5/7
5/8
.000
明 大 5/14
5/15
4/23
4/24
5/7
5/8
4/16
4/17
5/21
5/22
――
立 大 4/23
4/24
5/14
5/15
4/16
4/17
5/7
5/8
5/21
5/22
――
コメント

髙橋広監督(昭52教卒=愛媛・西条)

――きょうは劇的なサヨナラ勝ちでした

そうですね、いい試合でいい勝ち方ができました。

――9回まで得点が奪えそうな流れではありませんでしたが、ベンチの雰囲気はいかがでしたか

負けるという気持ちもなかったですし、9回表のピンチをしのいだのでね。最初から1点勝負だと私も思っていましたから、選手も動じることはありませんでした。想定内の試合で、「最後は守り勝つ」と言っていたので、そういう点では我々が考えていた試合展開で勝てたと思いますね。

――スタメンで出場する選手も多くいましたが、試合前の選手たちの様子はいかがでしたか

緊張感はあったと思いますが、プレー上は感じなかったし、新しい陣営で臨んでいるからということはなかったですね。緊張感はあるでしょうけど、そんなに(すごく)緊張しているということはなかったです。

――初回は大竹耕太郎選手(スポ3=熊本・済々黌)の4球連続ボール球での四球から始まりました。状態の方は吉見健太郎選手(教3=東京・早実)から聞いていましたか

聞いていました。最初は少し悪かったですけど、だんだんと立ち直って良くなってきたので、続投させました。8回からはボールが少し上ずってきたなと思ったので、(8回)裏の打席で代打を出すことも考えましたが、試合が動いていなかったのでね。その状況での投手交代は早いかなと思ったので。でも吉見からはボールは少し良くないという報告は受けていましたね。

――あしたもこの流れに乗って連勝を狙っていきたいところだと思います

相手もまた必死できますので、簡単にはいけないと思いますけど、きょうはいい勝ち方をしたのでね。このムードを大事にやっていきたいと思います。

大竹耕太郎(スポ3=熊本・済々黌)

――内容はいかがでしたでしょうか

立ち上がり緊張して制球が定まらなかったです。序盤は体が突っ込んだ感じであまり良くはなかったです。監督(髙橋広、昭52教卒=愛媛・西条)にも長いイニングいくとは言われていて、試合をしていく中で調整していけたらと思っていました。もともと、オープン戦から調子が悪い日に抑えるということをテーマにやってきたので。(調子が悪くても)テンションを下げるのではなく、良い時の感じまで持っていければいいと思ってきょうは投げていきました。

――なかなか点が取れない中で、自身も点はやりたくないという気持ちでしたか

リードした状態で投げる方が気は楽なのですが、ことしに関してはロースコアのゲームになると分かっているので、心持ちとしては楽です。

――球に関してはいかがでしたでしょうか

きょうに関しては球種の選択ミスが多かったかなと思います。打たれたのがほとんどツーシームだったので。そのツーシームがきょうはキレていなかったと思います。9回の二塁打に関してもツーシームだったので。今後、球種ごとの調子の良さを見極めて試合に入ります。

――宮台康平選手(東大3年)は意識していましたか

僕より全然いい投手だと思います。見習うところは見習いたいです。きょうも打たれたので打ち返しました。

――7回、マウンドで髙橋監督からどのような声掛けがあったのですか

特別内容があるわけではなかったですけど、単純に間を取りたかったのかと。任せるからということはおっしゃっていたので、好きにやりました。

――交代に関してどのように考えていますか

調子が悪い中であそこまでいって、自分が(続けて)投げていて抑えられるという保証もないですし。小島(和哉、スポ2=埼玉・浦和学院)が抑えてくれて良かったです。

――『点をやらなければ負けない』、ことしのスタイルになりそうですね

こういう試合を経て経験値が上がると思うので。残りの4カードにつながると思います。

――調子が悪いというのは具体的にどのような点でしょうか

緊張がありました。先頭(結果は四球)とかあからさまに緊張です。下級生とは違った緊張感がありました。自覚が出てきた分、責任も大きいです。バッテリーとしても経験値は自分の方が上なので自分がリードするという気持ちはありました。

――0で終わったということに関して

監督は『点をやらない投手が良い投手』と常におっしゃっているので。修正すべき部分はたくさんあるので、3戦目いけるように準備していきたいと思います。

三倉進(スポ3=愛知・東邦)

――ナイスバッティングでした

2本目は変化球、スライダー系を狙っていたんですけど、ちょっと抜けて曲がり切らずに来たボールだったので、中途半端な打撃になってしまったんですけど、チームの打撃の目標として逆方向に強い打球を打つということだったので、その意識もあったから向こう(左翼)に飛んだのかなと思います。引っ張るつもりだったらセカンドフライやピッチャーフライになっていたと思うんですけど、気持ちが向こうにあったからバットが止まってもあそこに落ちたのかなという感じですね。

――宮台康平選手(東大3年)をなかなか捉えられませんでしたが、チームとして狙い球は絞っていましたか

特にこれというのはなかったのですけど、個人個人で決めていました。自分の場合は、真っすぐを生かした投球をしていたので、インコースとアウトコースどっちに来ても対応できるように考えていたんですけど、三振した打席は真っすぐを考えすぎて、逆に引きつけすぎて三振という感じだったので、この打席は課題になりました。

――それで最後変化球打ってみようかなと

真っすぐの球威が落ちていたんで、真っすぐに絞るというよりかは。カウントを取りにきた変化球は甘かったので。それと、真っすぐは高めでストライク取っていたので、高めを一発で捉えるのも難しいと思いました。

――東京六大学リーグ戦初出場初安打、そしてサヨナラ安打ですがどうですか

サヨナラ安打は中途半端な打撃。チームが勝ってうれしいんですけど、内容としてまだ課題があります。1打席目の打撃は、追い込まれてからああいうかたちにできたというのは自信になります。

――サヨナラ安打でしたが、納得いかないように見えました

吉見(健太郎、教3=東京・早実)がきれいに間を抜いて打ったので、できればああいう打球が良かったです。けど、外野のポジショニングを考えるとそこまで飛んだら返って来られなかったので結果オーライです。

――社会人対抗戦での本塁打あたりから自信がついたのか

もともと自信はあったんですけど、なかなかスタメン起用がなかったので、1試合通して試す場面が少なかったんですけど、沖縄キャンプの終盤からスタメンで起用してもらうようになって。それで試合の勘というか、打席での感覚が変わってきたと思います。

――2回の二塁打は直球でしたか

はい、直球です。

――サヨナラ安打のコースはどの辺りでした

真ん中内よりです。

――守って守って最後に勝つという方針ですが、打って勝つ試合はあまり考えていないのでしょうか

そうですね。できれば打って勝ちたいです。打つチャンスがある投手の時はどんどんいきたいですけど、きょうはそういう投手ではなかったです。

――きょうベンチの雰囲気はどうでしたか

守って抑えていたので、いつかこっちに(流れが)転がってくるだろうという雰囲気で、消極的ではなかったです。

小島和哉(スポ2=埼玉・浦和学院)

――無死二塁の場面でマウンドに上がりましたが、どんな心境でしたか

大竹さん(耕太郎、スポ3=熊本・済々黌)がずっと0で抑えていたので、とりあえず絶対に点は取られないようにということだけを考えていました。

――緊張や重圧などはありましたか

それほど緊張はしなかったです。1年の時もピンチの場面で投げることが多かったので、そういう経験が生きていました。

――登板への準備はどのあたりから始めていましたか

ピンチの場面で左打者だったら自分で、右打者であれば吉野さん(和也、社4=新潟・日本文理)と話を聞いていましたけど、いきなり二塁打だったので、あまり準備ができなかったのが少し反省点です。

――序盤は制球に苦しんでいる印象でした

あまり良くなかったですけど、とにかく0で抑えられたので良かったです。

――ボールの質はいかがでしたか

それほど力まず7、8割の力でキレのいい球を投げられた印象があったので、そこはいいところだったかなと思います。

――先週からきょうまでどのように最終調整をされてきましたか

100パーセントの力で毎回投げるのではなくて、70、80パーセントの力で投げることで、軽く振ったような腕からキレのいい球を投げるのが自分の持ち味だと思います。高校の練習にも行って、監督の助言をいただいたりしたので、それを確立しようとしました。

――結果的には勝利投手となりましたがどのように感じていますか

申し訳ないですね。自分は別にさほど何もしていないので。大竹さんに申し訳ないなという気持ちはありますね。