【連載】春季リーグ戦開幕特集『新章開幕』 第10回 石井一成主将

野球

 昨年、8年ぶりに東京六大学リーグ戦で春秋連覇を成し遂げた早大。例年になく大きな期待が掛かる中で、新チームを率いるのが石井一成主将(スポ4=栃木・作新学院)だ。チームはここまで実戦を積み重ね、徐々にことしの戦い方を確立しつつある。目前に迫る春季リーグ戦を見据え、主将はいま何を思うのか。

※この取材は3月30日に行われたものです。

『打って当たり前の打者になる』

――このところの春季オープン戦ではかなり調子が良いように思われますが、いかがですか

 そうですね、だんだんと(バットの)芯で捉えられるようにはなってきました。

――どんなコース、球種にでも対応できているということでしょうか

 沖縄キャンプの時と比べたらかなり自分のスイングができているなと感じています。

――調子も上向いてきたという感触は

 はい、だんだんとですが。

――沖縄キャンプでは打席での目線が課題と話していましたが

 だいぶ良くなって、自分の中でボールが見られるようになってきたので、安定して芯に当たるようになってきました。

――具体的にどのようなところを改善したのでしょうか

 真っすぐにしても変化球にしても体で追わず、目で追えるようになってきたので、体がぶれずに打ちにいけているということが一番いいところだと思います。

――体の前のポイントで打てるということでしょうか

 そうですね、はい。

――春季オープン戦は予告通りの4番打者です

 やはり勝負強さが必要な打順だなと思いますね。沖縄キャンプの時は全然打てていなかったので、チームもそのせいで調子が上がらなかった部分もあると思います。

――理想の4番像は

 打って当たり前になっていかないとダメだと思うので、さらに上を目指していきたいです。

――4番打者というと本塁打など長打のイメージも強いと思います

 大きいのも打てればいいですけど、野球は点を取るスポーツなので、走者を返すことができればいいなと思います。

――目標としている選手はいますか

 難しいですね(笑)。先輩にあたる鳥谷さん(敬、平16人卒=現阪神タイガース)は勝負強くて、単打も長打も打てて運動神経もいいですし。同じ遊撃ということもありますが、鳥谷さんのような選手になれればベストですね。

――冬場に行ったウエイトトレーニングの効果を感じる時はありますか

 だんだんと力がついてきているなとは感じますけど、まだ完成ではないので、リーグ戦に向けて、リーグ戦中もやっていけたらと思います。

――目指す完成した姿とはどのようなものですか

 打ちたい時に打てる、一本欲しい時に絶対に打てるような打者になれればいいですね。

――ことしは主軸の選手でも足を絡めた攻撃する場面が見受けられますが、石井主将ご自身は走塁に対してはどのように思っていますか

 ちょっと走れる方だとは思うので、隙があったら走っていこうという思いで塁に出ています。

――走塁に対してチーム内で統一していることはありますか

 やはり少しでも隙があったら次の塁を狙う。スタートしても無理だったら(元の塁に)戻ってくればいいので、スタートを意識していこうというのは新チームが始まってからやってきました。

――沖縄キャンプなどでは走塁練習を行いましたか

 走塁練習というのはなかったんですけど、打撃練習の時に各自で走者についてスタートの確認をしたりはしました。

――走塁の練習をする際にはどのような相手を想定していますか

 社会人の投手と対戦したりしてけん制だったり捕手からの送球を経験できたので、そこでいかに走れるかということでやってきたので、隙があったら六大学もレベルが高いですが、走っていこうと思います。

――現状の打線、攻撃パターンについてどう思われていますか

 うまくつながっているなとは思いますが、つながる時は何もしなくても良いので、悪い時に凡打でも次の塁に進むとか、そういうところを意識していかないと厳しい戦いになると思います。

――悪い状況が続かないようにするための方策は

 いかに自分のかたちで打てるかが勝負なので。打てない時は打てないでしょうがないので、流れに乗ったらそれに自分も乗れるように準備してやっていきたいですね。

――春季リーグ戦開幕まで残り1週間ほどとなりましたが、チームの雰囲気は変わってきましたか

 そうですね、だんだん緊張感を持ってやってくれていますし、リーグ戦の時は緊張すると思うので、普段からそういう緊張感を持ってやっていれば変わりなくできると思います。

――新1年生もチームに入ってきました

 まだ加藤(雅樹、社1=東京・早実)くらいしかあまり話したことがないので。でも、加藤は見ていて良い選手だなと思います。

『自分のことよりチームのこと』

昨年も5番打者を任された打撃に掛かる期待は大きい

――主将に選ばれた経緯を教えてください

 明治神宮大会があったのでその後に決めました。亜大戦(決勝戦)が終わってこっち(東伏見)に帰ってきて任命というか、監督さん(髙橋広、昭52教卒=愛媛・西条)から「(主将は)石井でいく」と言われました。

――毎年行われている投票はことしもありましたか

 投票もありました。投票があって自分が出たので、学生コーチが「石井でいいですか」と監督さんに聞いて、最終的には監督さんから指名されるという感じです。

――その時の心境は覚えていますか

 自分から「もう決まっている」と言おうと思っていたんですけど。指名された時はさらに気が引き締まる思いでした。

――主将になることが決まっていたというのは

 事前にアンケートみたいなものをやって、それを聞いていました。

――主将として周りの選手たちとの接し方は変わりましたか

 リーグ戦に出ているのが自分と中澤(彰太副将、スポ4=静岡)と投手で、経験していない選手が多かったので、とにかくリーグ戦の厳しさを分かってもらえるように接してきました。

――具体的にはどのような話をしましたか

 メンタル面のことや一球の重み、プレーの重みとかですね。分かってくれているとは思うんですけど、もう一度再確認というか見直そうということでやってきました。

――チームの見方も変わってきましたか

 そうですね。自分だけではやっていけないので、チームのことを最優先に考えて、その次に自分のことという順番にはなってきましたね。

――3冠を達成した次の代の主将ですが、プレッシャーを感じることはありますか

 目指しているのはそこ(四冠)なので。全然王者でもないですし、ただ前年が四冠目前だったということだけで、自分たちも四冠を目指してやるだけなので、プレッシャーでは全くないです。

――昨年の成績はいい目標というくらいの感じですか

 そうですね、あまり気にしていないです。

――「私生活でもさすが主将と言われるようになりたい」と話していましたが、新しい日課などはありますか

 特にないですけど、当たり前のことを誰にもまねできないくらい継続することが一番の強みというか、最後の最後で変わってくると思うので、当たり前のことを当たり前にできる人間になっていきたいです。

――あらためて沖縄キャンプはいかがでしたか

 雨も多くて試合数は少なかったですけど、実戦を重ねる中でチームの打線のつながりだとか、細かいサインプレーだとかもできたのでいいキャンプだったと思います。

――髙橋監督2年目の沖縄キャンプということで、髙橋監督の色が濃く出たところもあると思います

 チームの顔ということなので、雰囲気はこれまでと違いましたね。

――昨年から大きくメンバーが代わるためチーム内の競争も激しかったと思います

 レギュラーが決まっていないのもそうですが、競争意識は持ってほしかったので、自分が思ったより切磋琢磨(せっさたくま)してくれました

――一番頑張っていた印象がある選手は誰ですか

 一番頑張っていたのは八木(健太郎、スポ3=東京・早実)ですね。外野が2人空いたところで、三倉進(スポ3=愛知・東邦)とか長谷川寛(社3=宮城・仙台育英)が調子良かったりして八木が出られていない時もありましたが、ずっと頑張っていました。

――八木選手のここ最近の調子の良さもそこから来ているのでしょうか

 やっているのは知っていたので。最後の最後で結果を出してくれると思っていたので、自分としてもうれしいです。

――沖縄キャンプの個人的な収穫はありますか

 主将として試合をするのが初めてだったので、どうやって引っ張っていったらというか。チームがダメな時にどうしたら勢いがつくのかということはいろいろな場面を経験させていただいて、勉強にもなりました。

――いい盛り上げ方は見つかりましたか

 決まった方法はないので、場面によってやり方は変わってきます。場面を見て、自分が(下がっていると)感じた時に流れを持ってくるプレーをしたいです。

――春季オープン戦は大きく勝ち越していますが、その点についてはどう思われていますか

 勝っている時は打線がつながってきているのですが、負けている時の打線のつながりがあまりないというか、投手と野手のかみ合いが悪かったのでそこが課題かなと思います。

――試合中のベンチの雰囲気はいかがですか

 盛り上げ役が何人かいてくれて、チームもいい雰囲気でやれていると思います。

――春季オープン戦中で一番いい試合だなと感じた試合はありますか

 勝てた試合はどの試合もいい試合だったなと思いますけど、その中でも細かいミスとかはあったので、まだ完璧な試合はないですね。

――社会人対抗戦で勝った翌日(3月27日)に行われたノースアジア大戦では勢いに乗れなかったという印象があります

 神宮で締まった試合をやって勝てたことは良かったなと思いますけど、こっち(東伏見)に帰ってきて隙が出たのかみんなの気持ちが入ってなかったなと感じたところもあったので、そういう隙はなくしていかないとリーグ戦では勝てないということは(チームに)話しました。

――試合後のミーティングもいつもより長かったように見受けられましたが、髙橋監督からはどのような話がありましたか

 打てる時は打てますけど、いい投手になったらあまり打てないので、アウトになる内容もフライではなく低い打球を打つとか、走者が二塁にいたら走者を進められるような打撃をするとか、そういう打撃をしないといい投手は打ち崩せないということをお話ししていただきました。

――ここまで戦ってきてチームの長所は何であるとお考えですか

 チーム力というか、団結力はかなりあると思いますし、投手はみんな(昨年の経験者が)残っているので、野手が投手を盛り立てて、守備から攻撃につなげられるというのが理想ですね。そういうことができている試合もありますし、そこを強みとしてやっていきたいです。

――チームを一緒に引っ張る中澤副将はどのような存在ですか

 (守備の時)後ろにいると安心しますし、外野はあいつに任せているので、外野は指示で動いてくれます。あと、中澤も勝負強いので自分の前を打っていて助かっています。

――このチームの課題は何ですか

 やはり小さなミスというか、犠打だったり走塁、守備だったり。記録上には残らないですけど、小さなミスからピンチがやって来るので。投手だったら四死球とか、そういうところをできるだけ少なくして、相手をリズムに乗せないように、守備から攻撃につなげていきたいですね。

――春季リーグ戦で目指すものは何ですか

 やっぱり優勝が一番なので、負けない野球をしたいですね。

――個人のタイトルなどよりもチームの勝利が大事だということでしょうか

 そうですね。

――最後に今季の目標を教えてください

 きょねんはああいう結果(3冠)でしたけど、あれは4年生のおかげなので。ことしは自分たちのチームとして、もう一回挑戦者として一戦一戦大事に戦っていきたいと思います。

――ありがとうございました!

(取材・編集 杉田陵也)

ことしも『一戦必勝』で優勝を狙う

◆石井一成(いしい・かずなり)

1994(平6)年5月6日生まれ。181センチ、76キロ。栃木・作新学院高出身。スポーツ科学部4年。内野手。右投左打。沖縄キャンプのオフ日には同期と一緒に観光地巡り。万座ビーチや首里城など沖縄を満喫したそうです。石井主将自らがハンドルを握り、走行距離はたった1日で200キロ。「オフはオフです(笑)」と、普段とは違った一面が垣間見られました