【連載】春季リーグ戦開幕特集『新章開幕』 第5回 真鍋健太

野球

 冬から本職の遊撃手ではなく、二塁手として練習に励んできた真鍋健太(スポ4=東京・早実)。直近の春季オープン戦でも『1番・二塁手』としてスタメンで出場し、攻守でその活躍に期待がかかる。約1週間後に控える東京六大学春季リーグ戦(春季リーグ戦)開幕を前に、現在の心境をうかがった。

※この取材は、4月1日に行われたものです。

見えてきた課題

――昨年一年間を振り返って

 チームとしては優勝しましたが、個人的には何も貢献できていないので。うれしかった半面、悔しかったです。

――昨年春は茂木栄五郎選手(平28文構卒=現・東北楽天ゴールデンイーグルス)に代わり、遊撃手としてスタメンで出場されましたが

 初めてのスタメン出場で、すごく緊張しました。いま考えれば、すごくいい経験をさせていただいたなと思います。あの1試合だけだったのですが、スタメンとして出ることができたのは自分の中で結構大きかったかなと思います。

――緊張感を持てた、ということでしょうか

 そうですね。甲子園にも出ていて、応援がある中で試合はしているのですが、六大学の神宮球場でやるというのは初めてでした。その中で2試合にフル出場できて、結果は全然ダメでしたが、雰囲気を味わえたと思います。

――お話にもありましたが、2試合で無安打という点についてはどのようにお考えですか

 オープン戦でも全く打てず、不安を抱えたままリーグ戦に入ってしまいました。その予感が的中してしまったところもありますが、逆に打撃での課題が明確になりました。 打撃をやっていれば、試合にも出られるかなという感じだったので、マイナスというよりプラスに捉えました。

――昨年は3冠を達成しましたが、当時3年生の代から見て、4年生はどういった存在でしたか

 僕は内野手なので、右京さん(河原、平28スポ卒=現トヨタ自動車)、茂木さん、丸子さん(達也、平28スポ卒=現JR東日本)を見ていて、すごく頼れる存在だなと思いました。逆に、これから自分がそういう立場になっていかなければならないな、とベンチで試合を見ながらすごく感じました。特に茂木さんや右京さんは話すことも多かったので、自分も来年右京さんのような存在にならないと、チームが勝てないと思いました。超えることは難しいと思いますが、そのつもりでやっていかないとチームが勝てるようにはならないかなと思います。

――打撃面では課題があった中で、守備に関しては通用する部分があったということでしょうか

 1年生の頃から、守備でベンチにいさせてもらっていました。あまり試合で(守備を)やる機会がなかったのですが、昨年春の2試合では、結構ボールが飛んできたという記憶があります。普通にこなせましたし、守備ではやっていけるのかなという自信にもなりました。

――沖縄でのキャンプは18日間という長い日程でした。振り返ってみていかがですか

 最上級生なので、とりあえずノックとかでは声を出して、引っ張っていくというのをまず意識してキャンプに入りました。個人としてもこの冬は打撃を課題としてやっていて、それを試す機会が何度かありました。沖縄ではそこそこできて、自分でもこういう感じかなという手応えをつかんでいました。キャンプの終盤で体がきつくなってきて、そこから思うような打撃ができませんでした。最初いいのはみんなそうだと思うので、きつくなってからいかに自分の打撃ができるのかというのが課題として見えました。リーグ戦は2カ月あって、早慶戦など終盤にきても打てるのかと言われると、いまの状態では打てないというのをキャンプの時に感じたので。コンディション作りも課題かなと思います。沖縄キャンプ自体はすごく充実していましたね。

――充実していた、とのことですが練習が濃かったということでしょうか

 監督さん(髙橋広、昭52教卒=愛媛・西条)、学生コーチ、4年生含め、雰囲気がダラダラしていては駄目だと思ったので、雰囲気づくりは意識していました。練習も自分のやりたいことを量多くできたと思います。課題や結果を含め、充実していて良かったと思います。

――何に量を費やしたのでしょうか

 打撃はもちろんなのですが、守備ですかね。小学校の時から守備ばかりやっていて、そのチームが打撃練習をやらないようなチームでした。ノックを受けていると、下半身も強くなって足も動くので。沖縄でもしっかり体をつくるということをテーマにやっていました。毎日課題練でかなりのノックを受けて、体もキレがあって打撃にもつながったのかなと思います。

――課題練というのは個人個人が言われてやる、というものでしょうか

 そうではなく、自分で何をやるかというのが選べるのですが、自分はほぼ毎日ノックを受けていました。課題は打撃なのですが、ノックを受けながら、体をつくるというのを小学校からやっていて、いまも変えずにやっているという感じです。打撃練習は量も大事だと思うのですが、質を高めてやるのが大事だと思っています。何百本かノックを受けたので、それは良かったと思います。

――沖縄は17泊18日という期間でしたが、部屋割りは

 6人部屋で、木田(大貴、商4=愛知・成章)、八木(健太郎、スポ3=東京・早実)吉見(健太郎、教3=東京・早実)熊田(睦、教3=東京・早実)宇都口(滉、人3=兵庫・滝川)と同じ部屋でした。すごく楽しかったです(笑)。

――部屋割りは4年生が決められるのですか

 たぶん、マネージャーとか学生コーチが決めているのだと思います。一番楽しかった部屋だと(笑)。

――沖縄では打率も高かったですが、春季オープン戦でのここまでの戦いぶりを振り返って

 東京に帰ってきてから、沖縄の疲れが抜けなくて、結構集中力を欠いていました。一度タイムリーエラーもありましたし、打撃も全然良くなかったです。いま練習できていない分、疲れは取れていると思いますが、あと1週間でどれだけ打撃の調子を上げられるかがポイントになってくると思います。守備は当たり前のところをアウトにすることだけを考えてやっています。東京に来てからあまり良くないですかね。

――沖縄では良かった、という感じでしょうか

 そうですね。いくらケアしても、沖縄の疲れが全く取れなくて。リーグ戦でも後半になってからのコンディション作りが本当に大切だなと思います。

――打撃面で課題、ということですが冬場にはどのくらいスイングをされていましたか

 チームとして、監督さんから一日千本は振るというのがありました。あまり数にこだわりはないのですが、結構振ったと思います。

――数は関係なく、納得のいくまで振ったという感じでしょうか

 そうですね。納得のいくまで振りました。

――この冬は遊撃から二塁へ転向されましたが、そのきっかけは何でしょうか

 やはり石井(一成主将、スポ4=栃木・作新学院)がいるので。自分ができるところというと二塁や三塁で、どちらかというと二塁なので、という感じです。嫌とかそういうのは全くなく、貢献できるなら、と思いました。

――宇都口選手などとはポジションで争う立場でもありますが、ライバル意識などはありましたか

 自分は人がどう、とかをあまり気にしないので。監督さんが求めることを自分がやっていれば、おのずと試合に出られる、という考えです。同じポジションの選手が打ったら、もちろん自分も頑張ろうと思いますが、ライバル意識とかそういうのはないですね。

――三塁の練習もされているというお話を聞きましたが

 新チームが始まって1カ月間は三塁でした。学生コーチに言われて三塁手の練習をしていたのですが、監督さんに「なんで三塁やってるんだ」と言われまして、そこから二塁になりました。

――二塁と三塁ではどちらの方がしっくりきますか

 断然二塁ですね。

――二塁も遊撃とは違った動きも多いですが

 そうですね。動きとか逆なので難しいです。中学の時とか、二塁手をやってきたことが少しあったので、そこまで苦ではないですね。

――試合を見ていて、ポジション取りがうまいのかなというふうに見受けられましたが

 自分はあまり脚力がないので、投手や打者の調子、スイングの軌道を見て、こっちに(打球が)来そうだなと思ったら一歩二歩動いています。その一歩二歩でだいぶ変わるので。やはり守備で貢献したいという思いがあります。守備から入るタイプなので、守備ができていないとダメだなと。投手が安打だ、抜けたぞと思った打球を取れたら、投手はもちろん、チームとしてもすごく楽だと思います。守備のポジショニングというのは高校の時から意識してやっています。

「とにかく神宮でヒットを打ちたい」

華麗な守備で流れを引き寄せる

――あと10日ほどで春季リーグ戦が開幕しますが、チームの雰囲気はいかがですか

 1週間ベンチに入っていないので、何とも言えないですが、きょねんと似ているのかなと思います。きょねんも優勝できるのかなという不安なままシーズンに入りました。毎年そうなのですが、結構似ているのかなと思いますね。

――どちらかというと不安が大きい、という感じでしょうか

 そうですね。かといって、優勝できるのかと言われると分からないですけど。雰囲気は悪くはないですね、あと1週間でどれだけ上げられるかだと思います。

――吉野亨新人監督(スポ4=埼玉・早大本庄)は4年生が中心となっていて、昨年よりチーム力は上だと話していました。4年生はどのような学年ですか

 野手であれば、石井、中澤(彰太副将、スポ4=静岡)を筆頭に、自分や木田はずっとベンチに入ってきょねんの戦いぶりを見てきているので、この4人で引っ張っていかなければならないというのは感じています。控えとしてベンチにいる4年生、スタンドにいる4年生を含め、4年生が一つにならないと絶対優勝できないと思います。監督さんが「きょねんの4年生は良かった」とずっと言っているので、いまの4年生も一つの目標に向かって進んでいかなければ絶対勝てないと思います。メンバーかどうかは関係なく、4年生がちゃんとやっていれば、下もついてきてくれると思うので。あと1週間で、4年生がもっとしっかりしなければいけないかなと思います。

――プレーであったり、雰囲気づくりであったり、ご自身の役割についてはどのようにお考えですか

 1番を打たせてもらっているので、いかに中澤、石井の前に走者がいるかというのが、ポイントになってくると思います。とにかく塁に出ることを意識して、やっています。守備でも絶対失策をしない、ということです。守っている時は外野や捕手は下級生なので、声を掛けてあげて、少しでもやりやすい環境でやらせてあげたいと思っています。ベンチでも率先して声を出すことを意識してやっているので、そういったところも変えずにやっていきたいと思います。

――髙橋監督が就任2年目となりましたが、これまでと比べて違う面はありますか

 きょねんはたぶん遠慮がちにやっていたと思うのですが、ことしは沖縄の日程なども自分でやられていて。それは自分たちのことを思ってやってくださっていることだと思いますし、自分は結構監督さんにも指導され、試合でも使っていただいていました。監督さんの期待には本当に応えたいなという思いでやってきたので、もう一度監督さんを男にしたいなという気持ちでいっぱいです。

――髙橋監督は選手と話されることが多いのでしょうか

 あまり話したりはしないですね。4年生は毎回監督さんとご飯に行くという機会があります。1カ月前くらいに行ったのですが、自分らのことを思ってくれているなと感じました。怖そうな顔をしていますが、ああ見えて結構面白い人だと思います。いまは本当に監督さんを胴上げしたいですね。

――石井主将はチームを引っ張る上で、どのような存在ですか

 1年生の時から、自分たちの学年の中では一番練習していて、きょねんの沖縄キャンプでもいつまでバット振ってるの、というくらい練習していました。石井は普段面白いやつなのですが、野球になると本当に毎回すごい意気込みでやっているので、自分たちが引っ張られているのを感じます。本当に自分たちを引っ張ってくれている存在だなと思いますが、おんぶにだっこではダメだと思います。石井一人に負担が掛かってしまうので、石井を含め、4年生全員でチームを引っ張っていきたいですね。

――では、石井主将は背中で引っ張っていくタイプですか

 そうですね。

――石井主将の練習量というのは

 自主練の他にジムに行ったりしているので、練習量はチームで一番だと思います。

――昨年の河原選手もかなり自主練をされていたそうですね

 その点では似ていると思います。右京さんも言葉というより、背中で引っ張るタイプだったので。

――では逆に、河原さんと石井さんで違う面はありますか

 野球に関しては似ていると思いますけど、石井は普段も結構真面目なのでそこが少し違うと思います。

――ラストイヤーに懸ける思いをお聞かせください

 とにかく神宮で安打を打ちたいです。安打一本打てれば結構いけると思っているので、開幕戦である東大戦の1打席目で、気負う必要はないと思いますけど、安打を打って、そこからはどう勝てるかというのを考えて。リーグ戦で連覇できればいいなと思いますし、ことしこそは四冠とりたいです。青木さん(宣親、平16人卒=現シアトル・マリナーズ)のようなレジェンドになれるような学年にしたいです。

――開幕まであと10日と迫っていますが、ご自身の心境の変化はありますか

 すごく近づいてきているので、東大戦勝てるのかなっていう不安しかないですね。

――きょねんもそういった不安がある中で、開幕戦がスタートしたと話していましたが

 きょねんは3年生だったので、4年生に引っ張られているという感じでした。一番上になって、引っ張らなければいけないという気持ちなので、ことしの方が不安ですね。

――ご自身のプレーの中で、ここを見てほしいというポイントはありますか

 守備ですね。ヒットゾーンのところをパパッと処理するところです(笑)。

――では最後に、改めてリーグ戦での目標をお聞かせください

 個人としては先ほども言ったように、安打を一本打つことです。そこからはチームがどう勝っていけるかを考えることだけだと思います。チームとしてはまず、リーグ戦を一戦必勝で戦っていきたいと思います。東大戦で勝ち点を取って、そこからも勝ち点を取って優勝できるように、そしてことしこそは四冠とれるように頑張りたいと思います。

――ありがとうございました!

(取材・編集 名前 佐藤亜利紗)

母校・早実高の校是である『去華就実』。ワセダで学んだ精神でラストイヤーに臨む

◆真鍋健太(まなべ・けんた)

1993(平5)年6月13日生まれ。171センチ、70キロ。東京・早実高出身。スポーツ科学部4年。内野手。右投左打。4年生として、常にチームのことを考え、取材に答えてくださる姿が印象的だった真鍋選手。沖縄キャンプでは、普段から仲が良いという後輩の選手と同部屋だったそうで、一緒に月9を見たと楽しそうに語っていました。先輩後輩という垣根を越えたチームワークの良さがうかがえますね!