明治神宮大会展望

野球

 一時は自力優勝が消滅したものの、運をも味方につけ8年ぶりの春秋連覇を成し遂げた早大。シーズン序盤は投打共に振るわず不安のある中での試合が続いたが、粘り強い野球で踏ん張りを見せ、つかんだ栄冠であった。そして、早大は今春に続く2度目の日本一の座を懸けて明治神宮大会に臨む。いよいよ迎える最後の戦い。まもなくその火ぶたが切られる。

 トーナメント制がとられ、優勝するためには1敗も許されない今大会。試合を優位に進めていくためにも、先制点の重要性はリーグ戦よりも高い。打線をけん引するのは、1番打者でのスタメン起用が予想される重信慎之介副将(教4=東京・早実)。秋季リーグ戦では首位打者に輝いたリードオフマンが、いかに出塁することができるか。これが試合を左右する大切なカギとなる。また、好調な重信の出塁を生かすためにも中軸の活躍は欠かせない。今季は思うような結果を出すことができなかった茂木栄五郎(文構4=神奈川・桐蔭学園)、そして丸子達也(スポ4=広島・広陵)による学生生活最後の大暴れにも期待したい。

リーグ戦に続き、重信がダイヤモンドを駆け巡る

 投手陣では、二枚看板・大竹耕太郎(スポ2=熊本・済々黌)小島和哉(スポ1=埼玉・浦和学院)の活躍が不可欠。大竹はケガのため今季は出遅れたが、しっかりと本来の投球を取り戻している。また、小島は今季10試合中7試合に登板。チームが勝つためには欠くことのできない存在へと成長した。まだまだ成長過程にある若き左腕に掛かる重責は計り知れないが、鮮烈デビューの1年を笑顔で締めくくりたい。また、リーグ戦初勝利をマークし、勢いに乗る北濱竣介(人2=石川・金沢桜丘)も中継ぎとして控えている。

ルーキーながら秋季リーグ戦では投手陣の柱となった小島

 早大の前に立ちはだかるのは、全国から勝ち上がってきた強豪校。決して一筋縄ではいかない戦いが待ち受けている。初戦で対戦する愛知大のエース中川誠也は速球派左腕。愛知大学秋季リーグ戦で、タイトルを総なめにした好投手だ。左打者が多い早大打線にとっては厳しい展開も予想される。また、プロ野球・読売からドラフト1位指名された桜井俊貴を擁する立命大などライバルは数多く、以降も気の緩めることができない試合が続く。

 春季リーグ戦、全日本大学選手権、そして秋季リーグ戦。すでに三冠を手中に収め、残すは今大会のみ。再び日本一に輝くことができれば、東京六大学リーグ史上初となる『グランドスラム』達成となる。前人未踏の大記録へ、この絶好の機会を逃すわけにはいかない。再びの頂まで、あと3勝。再び神宮で歓喜の瞬間を味わうまで――。早大らしい『一戦必勝』の野球で日本一の座をつかみ取る。

(記事 杉田陵也、写真 豊田光司、大森葵)