【連載】秋季リーグ戦開幕特集『覇者の挑戦』 第5回 河原右京主将×岡田稔基新人監督

野球

 100人以上の部員が在籍する早大野球部。大所帯をまとめあげるのは、勝負強い打撃で打点王を獲得した河原右京主将(スポ4=大阪桐蔭)と、練習メニューを考案し選手の指導にあたる岡田稔基新人監督(スポ4=埼玉・川越東)の二人だ。立場は違えど、チーム発足当初から部をけん引してきたお二人に、春の振り返りと秋への意気込みを語っていただいた。

※この取材は9月3日に行われたものです。

「思い通りに野球ができた」(岡田)

真剣な表情で語る岡田新人監督。試合中は三塁コーチャーを務める

――春季リーグ戦を振り返ってみて、どのようなシーズンでしたか

河原 日本一はずっと目標にしていたことだったので、最高のかたちで終われたことはすごく自信につながったというか、秋に向けてもすごく良いシーズンだったかなと思います。

岡田 右京も言ったように、日本一を目標として新チームになってやってきたので、目標であった日本一になることができたことはすごく良かったなと思います。すべてがうまくいったというか、思い通りに野球ができたなと思いましたね。

――お二方から「うまくいった」と声がありましたが、下馬評は決して高くないチームだったと思います。そんなチームが優勝という目標を設定したモチベーションというものはどのあたりにあったように思われますか

河原 モチベーションですか。当初は優勝できるとは全然思っていなくて、リーグ戦に入るまでも不安でしたし、入ってからも最初は不安の中でやっていました。1試合1試合で強くなっていったチームなので、一人一人の勝ちたい気持ちが優勝につながったのではないでしょうか。終盤での逆転も多かったですし、そういうところではないでしょうか。シーズンを通して、挑戦者の気持ちでやろうということを意識していたので、それが良い方向に出たのかなと思います。

岡田 一人一人の気持ちの強さっていうのは、下馬評で強くない、弱いと言われていたことを見返してやろうというところから来ているように思いますね。それがモチベーションになったのかなと思いますね。

――優勝後はチームの雰囲気も変わりましたか

河原 特に変わってないですね。変わったというよりも、次もまた秋リーグで優勝して日本一になろうと気持ちになったくらいですね。

――周囲からの声については

河原 最初は弱いと言われていて、優勝してからは完全優勝でしたし、日本一にもなって、攻撃の面でも春季はすごく打ったので、「よく打つな」だとか「強いな」だとかは言われるようになりましたね。

岡田 周りは勝ったことによって、「強いね」という声は増えましたが、それは周りが言っているだけかなと思います。選手やチームとしてはもう一度、挑戦者の気持ちで秋の日本一を獲りにいくと思っていて、中身は変わっていなくて、周りの人がそう言ってくれているという感じがします。

――ことしはチームづくりという面では監督が変わりました。その中で河原さんは主将として、岡田さんは新人監督としてチームづくりをしてきてこられたと思うのですが、理想のチームはつくることができましたでしょうか

河原 結果的に日本一になれたので、間違ってはいなかったのかなと強く感じることはできましたね。それをまた秋に日本一になって証明したいなと思っています。

岡田 明大や法大に比べると、層の厚さという部分では劣ると思っていますが、みんな真面目な選手なのでやればできるのだろうとは思っています。

――髙橋広監督(昭52教=愛媛・西条)が新人監督のご出身ということで、何かアドバイスなどはありましたでしょうか

岡田 特に何かを言われたということはないですね。監督さんと話す機会が多いので、会話の中や監督の選手への接し方を見て学ぶことが多いですね。

――選手主体のチームを目指していると以前おっしゃっていましたが、その辺りはいかがでしょうか

岡田 秋の結果が証明してくれると思います。

――夏は遠征も多かったと思います。どのように調整を行ってきましたか

河原 もう一度体づくりをしようということで、4年間でここまで走ったりトレーニングをしたりというようなことはなかったのですが、冬のメニューくらいのことをこなしてきました。その部分で秋を戦っていける体力はついたのではないかなと思います。

――春季が良かっただけに、もう一度原点に戻ってということですか

河原 そうですね。そういう狙いもあります。

――岡田さんは新人監督という立場で、この夏は選手がどのようなことを頑張っているなと感じていますか

岡田 試合数が多くて、連戦が続く中でも弱音を吐かず、一人一人が現状のできる準備をしてくれたのではないかと思います。

――遠征も多かった夏ですが、疲れはありましたか

河原 相当キツかったですね。移動だけでも疲れるので、それで試合となったら相当疲れましたね。

――一方で、得られたものも多かったのでは

河原 オールスター戦に出場したり、オール早慶戦で社会人の方と交流ができたりと、いろいろと見て学ぶものもありましたし、アドバイスを受けることもできました。

――遠征では、河原主将の地元である徳島での試合もありました。徳島で試合をするのは小学生以来だとお聞きしましたが、いかがでしたか

河原 観客の方もたくさん入ってくれて、結果も残せたので、ファンの方々に良いところを見せられたのではないかと思います。楽しかったです。

――実家には戻られましたか

河原 戻っていないです。試合には友達も来てくれたので懐かしく久々に会う人もいましたし、徳島で野球をするのが久しぶりだったので、小学校のチームメイトも見に来てくれていたので、成長した姿を見せることができたと感じています。

「プレーで引っ張っていきたい」(河原)

試合の流れを引き寄せる一打が目立つ河原主将

――春は勝負強い打撃でチームをけん引し、打点王を獲得されました。そのことについてはいかがお考えですか

河原 自分は2番打者で、下位から回ってくることが多くてあまりチャンスもないのですが、その中でも満塁の場面がいくつかあって、それもチームが負けている状況だったので、ここで打てばチームが盛り上がるなと分かっていたので、ここは絶対に打たなアカンと思っていましたね。

――チームとしては良い終わり方ができたと思いますが、ご自身としてはいかがでしたか

河原 70点ぐらいの出来ですかね。自分自身もっと打てたという気持ちもありますし、チャンスで打てたのは良かったのですが、チャンスでない場面での打ち損じもあったのでそのくらいですね。守備でも凡ミスがいくつかあったのでそこを改善できればなと思います。

――3年次では遊撃手をされていましたが、春季は二塁手での起用でした。秋以降はどのようになるとお考えですか

河原 そのままセカンドだと思いますね。

――秋シーズンに向けての課題はどのようなことでしょうか

河原 バッティングはもっと長打を増やすことを心がけていこうと思っています。守備はこの春にセカンドを初めて守ったのですが、当然慣れていなくて、ショートと違って景色も違いますし、ちょっと難しかったのですがもう何ヶ月もやって慣れてきたので、もう凡ミスはなくして、もっと難しい打球もさばけたらなと思います。

――新人戦で指揮を執られていましたが、2年生の新戦力についてはどのように思われていますか

岡田 2年生には派手さはないと思いますが、一人一人見ると能力が高い選手が多いです。目先の目標では新人戦というものがありますが、4年生になった時のリーグ戦を見据えて練習してほしいなと思います。

――新人戦はどのようなテーマで選手起用をなさいましたか

岡田 短期決戦なのでミスからの失点は防ぎたいと思っていました。なので、守備力の高い選手を使いました。

――実際に戦って、課題や収穫などはありましたか

岡田 ほとんどが神宮でプレーするのが初めての選手だったので、東伏見で普段できていることが全然できませんでした。課題にしていたミスからの失点というところで、無駄な点を与えてしまって、立大戦の時もそれで負けてしまいました。秋(の新人戦)ではそれを無そうということで、いまも守備を重視して練習しています。

――1、2軍のオープン戦から見て、キーマンとなる選手は

岡田 4年生のピッチャーだと思います。投手陣が苦しい現状の中で戦っていかないといけません。吉永(健太朗、スポ4=東京・日大三)であったり、いま頑張っている上野(雄平、教4=東京・早実)であったり、そういった4年生が、最後なので意地を見せてほしいと思います。

――お互いにどのような主将、新人監督だと思いますか

河原 岡田はとても真面目で、選手のことをよく考えてくれています。ストイックですね。

――どのような点でストイックですか

河原 ノックを打つのですが、それでも毎日素振りをしたり、トレーニングをしたりしています。それを選手も見ているので、みんな尊敬していると思います。

――岡田さんの目から見た河原主将は

岡田 キャプテンらしいキャプテンだと思います。やはり自主練も一番多いので、それこそみんな見ていると思います。チャンスで右京に回ったら打ってくれるというように思いますし、その一打で流れが変わってきたので、すごいキャプテンだと思います。

――試合での河原主将の活躍を見られていかがですか

岡田 うれしい限りです(笑)。

――オフなどでお二人のエピソードはありますか

河原 ないなあ(笑)。

岡田 ないね(笑)。

――試合や練習で見られる真面目という印象以外で何かありますか

河原 真面目ですね(笑)。

――岡田さんはいかがでしょうか

岡田 2年生の八木(健太郎、スポ2=東京・早実)などと一緒に、リラックスするべきところはふざけたりするというのを見るのが好きです(笑)。

――お二人はチームを引っ張る立場だと思いますが、心掛けていることは

岡田 自分はみんなとは違う立場なので、選手主体のチームで基本は何も言いません。心掛けていることは、監督の意図を伝えることや、どうしても気持ちが乗らない時や体が疲れている時にもやるべきことはやろうという声掛けをすることです。基本は特に何も話さないです。

河原 みんな大人で大学生なので、そんなに言わなくてもわかると思います。自分もあまり言うことはありません。自分はプレーで引っ張っていきたいと思うことが多いです。

「挑戦者の気持ちで」(河原)

秋もこの二人がチームをまとめあげる

――オープン戦は残り1試合となりましたが、ここまでの印象を教えてください

岡田 春がうまくいっていた分、このようなオープン戦でうまくいかない部分があって、もどかしさがあります。ですが、秋はこういう試合になると思うので、秋のリーグ戦に向けて良い経験ができていると思います。

河原 8月は試合数が本当に多くて、やっている選手としては体もきつかったです。ですが、秋2カ月間を耐え抜く体力づくりだと思うので、その点では試合する体力がついたと思います。

――春優勝したということでマークが厳しくなると思いますが

岡田 相手どうこうよりも自分たちがすべきことをするだけです。もちろんマークが厳しくなると思いますが、勝つチームが本当に強いチームなので、自分たちが勝つためにやるべきことをやるだけだと思います。

河原 簡単には勝たしてもらえないと思います。春の本一になったからといって、受けて立つのではなく、挑戦者の気持ちで、春同様に戦っていきたいです。

――他大で警戒しているチーム、選手はいますか

岡田 全部です。

河原 特に意識するのは明大ですかね。いつも負けている印象があるので、やっている自分たちからしても何かいつもと違うという感じがあります。明大のときはいつも気合が入りますし、春は勝ったので、この秋も勝ちたいと思います。

――質問春リーグで唯一負けたのは明大戦でしたが、その時投げられていた柳裕也選手(明大)の印象はいかがですか

河原 コントロールも良いですし、真っすぐの勢いもある投手なので、そう簡単に点は取れません。そういう時こそ、細かいバントや走塁をやっていかないと勝てないので、そこを徹底してやっていきたいと思います。

――早大で活躍を期待している選手はいますか

岡田 みんなに期待していますが、特に重信(慎之介、教4=東京・早実)ですかね。春は重信自身もうまくいかないところがあったと思います。重信が塁に出れば、後の打者が狙い球を絞りやすくなります。塁に出ることで、チームの良い攻撃が始まると思うので、重信に一番期待しています。>

河原 さっき岡田が言っていたように、まずは4年生の投手に出てきてほしいです。下級生がいま中心になって投げているので、ラストシーズンは4年生が頑張ってほしいと思います。

――お二人にとってもラストシーズンとなりますが、どのようなりますが、そのようなシーズンにしたいですか

岡田 目の前の一試合を全力で戦って、最後日本一になっていたら良いなと思います。やるべきことは目先の一試合を戦うことなので、結果として最後グランドスラムを達成できたらと思います。

河原 春と同じように『一戦必勝』で、目の前の試合を全力で戦った結果、優勝できれば良いなと思います。

――秋リーグへの意気込みをお願いします

岡田 挑戦者の気持ちでグランドスラムを目指して、全員でやっていきたいと思いますので、最後まで応援をよろしくお願いします。

河原 春秋連覇します!

――ありがとうございました!

(取材・編集 後藤あやめ、菖蒲貴司)

◆河原右京(かわはら・うきょう)(※写真右)

1993年(平5)11月4日生まれ。身長173センチ、体重76キロ。大阪桐蔭高出身。スポーツ科学部4年。内野手。右打左打。色紙には大きく『春秋連覇』書いてくださった河原主将。打ち合わせもなく書いたはずなのに、岡田新人監督と全く同じ言葉になってしまったと笑みを浮かべていました。『春秋連覇』を達成するべく、チームを引っ張る姿に期待です!

◆岡田稔基(おかだ・としき)(※写真左)

1994年(平6)1月26日生まれ。身長175センチ、体重70キロ。埼玉・川越東高出身。スポーツ科学部4年。最近はアニメにはまっているという岡田新人監督。いまは『四月は君の嘘』というアニメを見ているそうです。実はもう3周目。普段から真面目な印象ですが、このアニメが良いリフレッシュになっているようです。