緊迫の投手戦を制し、いざ決勝へ

野球
準決勝 10
早大
法大
黄本、○田中、柳澤−吉見

 秋季新人戦は2日目。この日の相手は充実の選手層を誇る法大だ。先発の黄本創星(スポ2=千葉・木更津総合)は低目を突く丁寧な投球で、相手に付け入る隙を与えない。しかし一方の打線は相手投手の前に沈黙。力投を続ける黄本を援護することができない。試合は両者無得点のまま延長戦に突入する。迎えた10回、早大は相手の失策と吉見健太郎(教1=東京・早実)の適時打で2点を奪取。このリードを柳澤一輝(スポ1=広島・広陵)が渾身の投球で守り抜き12季ぶりの優勝に王手をかけた。

 先発の黄本は初回から落ち着いた投球を披露した。自身の持ち味である速球に加え、緩い変化球も効果的に使って相手打線を翻弄(ほんろう)。しかし5回からは制球の乱れもあり、得点圏に走者を背負う場面が続く。そんな中でも粘りの投球であと一本を許さず、本塁は死守した。2点を先行した10回には、救援として柳澤がマウンドへ。いつも以上に重圧がかかるタイブレークの場面にも「気持ちで全部投げていた」と投球ごとに声を張り上げる気迫を見せる。特に最後の一球は自己最速となる150キロを記録。圧巻の投球で相手の追撃を絶った。

柳澤は自己最速となる150キロを記録した

 黄本の好投に応えたい打線であったが、法大2投手の前になすすべなし。9回までの安打はわずか2本にとどまった。ついに試合が動いたのは、タイブレーク制(※1)の延長に突入した10回。この回先頭の宇都口滉(人1=兵庫・滝川)の犠打を相手捕手がまさかの悪送球。思わぬかたちで早大に待望の1点が転がり込む。なおも続く好機で打席を迎えたのは、ここまで好リードで投手を支えてきた吉見。4球続けてファールと粘った末、甘く入った直球をきれいに三遊間にはじき返す。勝負を決める2点目は、好投を続けた投手陣への何よりのプレゼントとなった。

適時打を放ち喜ぶ吉見

 白熱の投手戦を制した早大は、いよいよ決勝に駒を進める。優勝となれば実に12季ぶりの快挙だ。迎える大一番に向け、ゲームキャプテンを務める木田大貴(商2=愛知・成章)は「優勝して、直原さん(大典新人監督、人4=高知・土佐)を胴上げしたい」と語る。リーグ戦では惜しくも届かなかった頂点まであと1勝。未来の早大を背負う若武者が、悲願の優勝を懸け決勝に挑む。

※1 連盟規定により10回からタイブレーク制。無死一、二塁からイニングを開始する

(記事 三井田雄一、写真 谷田部友香)

黄字は打点付き

早大打者成績
打順 守備 名前 10
(右) 立花玲央 .375 遊ゴ    二ゴ    二ゴ       空振      
(二) 真鍋健太 .000 左飛    左飛       一ゴ       二ゴ   
(左) 八木健太郎 .000 三邪    三邪       遊ゴ       右飛   
(遊) 石井一成 .429    四球    遊飛    一ゴ       中安   
(一) 佐藤晋甫 .143    敵失    遊ゴ       投ゴ         
  宇都口滉 .000                         敵失
  大森雄介 .000                              
(中) 三倉進 .000    捕飛    空振       空振         
  相馬弘季 .000                            左飛
(三) 木田大貴 .125    空振       三ゴ    二飛       投飛
(捕) 吉見健太郎 .286    遊ゴ       敵失       空振    左安
(投) 黄本創星 .500       左安    見振               
江間拳人 .000                      空振      
田中龍之介 .—                           
小形和義 .000                            二ゴ
柳澤一輝 .—                              
早大投手成績
名前
黄本創星 0.00
田中龍之介 0.00
柳澤一輝 0.00
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コメント

木田大貴(商2=愛知・成章)

――きょうはタイブレークの末の勝利でしたが、振り返っていかがですか

きょうは後半まで安打も全然出ていなくて、投手に助けられたところが多かったので、きょうは投手に感謝したいです。

――押される展開での勝利となりましたが、勝因は何だと考えますか

投手がよく粘ってくれたことと、野手が粘り強く守ったということが結果的にああいうかたちになったと思います。

――投手陣はガッツポーズなども多く気迫あふれる投球でしたが、守っていていかがでしたか

きょうは本当に気合が入っていたし、良いボールもいっていたので心強かったですね。

――一方の打撃陣は安打も少なかったですが、打撃陣全体についてはいかがですか

狙い球をしっかり絞っていけなかったということと、向こうがいい投手だったので苦戦したかなと思います。

――10回に点を入れた時はベンチはとても盛り上がっていましたね

そうですね。やっと1点入ってというところだったので、ベンチもいい雰囲気だったと思います。

――チーム全体の調子はいかがですか

野手は安打を打てていないのですが、投手を中心によく守ってここまできているので、あしたもしっかり守って攻撃につなげていきたいと思います。

――あすは久しぶりの決勝ですが、どのような戦いをしていきたいですか

きょうと一緒でなかなか点数が取れるとは思いませんが、投手を中心に守備は粘り強く守って、なんとかあしたは野手陣が奮起してワンチャンスをものにしていきたいと思います。

――あすに向けての意気込みをお願いします

ここまで来たら優勝して、直原さん(大典新人監督、人4=高知・土佐)を胴上げしたいと思います。

黄本創星(スポ2=千葉・木更津総合)

――きょうの投球を振り返って

丁寧に投げられた結果だと思います。

――先発登板を告げられたのはいつですか

きのうの夜ですね。

――そこからどう気持ちをつくりましたか

久しぶりの先発なのですが普段のリーグ戦と同じように、いつもは救援なので1イニングや短いイニングですが、その1イニングを何回も繰り返す気持ちで投げました。

――良かった点は

低めに集められたところが良かったかなと思います。

――ボールとしては

ボールとしては、球速は出ていなかったのですが、すごく伸びていたので、その点は良かったと思います。

――調子良く投げられましたか

調子自体はそんなに、特別良いわけでは無かったですが、その中でも低めに投げて抑えられたので良かったです。

――後半のピンチはどう乗り切りましたか

味方も相手の投手を打てないでいたので、打たれちゃいけないなと思って頑張って投げました。

――気迫が出たという感じでしたね

はい。出たと思います。

――今季は中継ぎが多かったですが、今後についてはどう考えていらっしゃいますか

やはり先発をやりたいので、らいねんの春は先発を目指して頑張っていきたいと思います。

柳澤一輝(スポ1=広島・広陵)

――きょうの試合を振り返って

接戦の中で最後タイブレークという形に入って味方がしっかり点を取って下さり、自分がしっかり役目を果たして抑えるだけだったので、強い気持ちを持っていきました。

――最後の打者との対戦の中では1球ごとに声が出ていましたが、どのような思いで投げられましたか

気持ちで全部投げていたので、気持ちが全部ボールに乗り移ったのだと思います。

――最後の1球は150キロを記録しましたが、150キロという数字に関してはどのように捉えていますか

数字で見るのではなくて、気持ちで投げ切ったので数字はそこまでは気にしていないです。

――きのうから球速も出て、直球で空振りも奪えていますが現在の状態は

状態自体はすごくいいので、それを最後のあすまで保っていけるようにやっていきたいと思います。

――今季のリーグ戦を振り返って

後を任せられていた中で結果が途中の方からは全然出ていなかったので、しっかり粘り強く新人戦は投げられるようにというのを意識してリーグ戦は終わりました。

――全試合でベンチに入られましたが、そこで何か学んだことは

野球はチームプレーなので個人だけが狙っていくというものはなくそうと思っていました。

――1番印象に残っているのはどの試合ですか

最後の早慶3回戦での4年生の姿を見て本当に感動しましたし、自分もどんどん頑張っていこうと思いました。

――4年生という点では先輩の有原航平選手(スポ4=広島・広陵)がドラフト1位指名されましたが、その後何か声をかけられたりしましたか

新人戦もすぐだったのでその後は特に声をかけられてはいないです。

――何か先輩の姿を見て感じたりすることはありましたか

憧れの存在でもあるのでしっかり有原さんのように今後成長していけたらなと思います。

――今季のリーグ戦でつかんだ手応えや課題は何かありますか

早いボールはいくらでも投げられるんですけど遅いボール、緩急がついたピッチングを出来るように今後この冬はしっかり取り組んでいきたいなと思います。

――今季はきょうも含めて中継ぎを務められましたが、来季に向けて先発をやりたいといった思いはありますか

ゆくゆくは先発をしたいんですけど、現状だと自分は抑えでしっかり抑えていかないといけないので。来年も多分そういう形になると思うので、しっかり継続して抑えるということはやっていきたいです。

――あしたは2008年秋以来の新人戦優勝がかかった一戦となりますが、あしたに向け一言お願いします

全員で優勝するだけなので、全員の力を合わせて勝っていきたいと思います。

吉見健太郎(教1=東京・早実)

――まずは2点目に適時打に関して、どのような球でしたか

外角の真っすぐを、方向とかは考えずに打ち返しました。それまでの打席では低めの球を打たされていたので、思い切り良く自分のスイングをしたら打球が三遊間を抜けました。

――捕手としても投手を援護したかったのではないでしょうか

投手の3人が粘ってくれていたので、助けてあげないといけないと思って打席に立ちました。

――リード面でのご自身の評価はいかがですか

投手の方に首を横に振られている球もあるので、自分はまだまだなのですが要求したところに投げていただいているので、投手のおかげです。

――2試合を無失点と好結果ですね

本当にピッチャー様々です(笑)。

――入学後に捕手転向されたと思うのですが、いつ頃なのでしょうか

春のリーグ戦前あたりです。直原さん(大典新人監督、人4=高知・土佐)に声を掛けていただいて、それで捕手になりました。

――春の新人戦時より捕手としての成長が感じられますが、手応えはいかがですか

ブルペンで球は受けてきたので、それが自信になっていると思います。

――9回にはピンチで二塁走者を刺殺するなど好プレーもありました

走者が飛び出すのが見えたので、石井さん(一成、スポ2=栃木・作新学院)が二塁に入ってくれていて、投げました。

――肩には自信があるのですか

自信があります。肩が良いということで捕手になったというのもあるので。遠投は100メートルくらいです。

――今後はどのように活躍していきたいですか

土屋さん(遼太副将、教4=東京・早実)など4年生捕手が3人抜けたので、メンバーに入ってスタメンを取りにいきたいと思います。あとはリード面で信頼してもらえるようになりたいです。

――いずれは土屋さんが付けていた『6』番も付けたいですか

付けたいですね。『6』目指して頑張ります。

――あすの決勝への意気込みをお願いします

相手の方が強いと思いますし、周りの方もそう思っているかもしれません。だからこそ失うものはないと思うので、全力で立ち向かっていきたいと思います。