秋の頂点へ!真夏の軽井沢合宿

野球

※この取材は8月11日に行われたものです。

 早慶戦での悪夢の連敗から2ヵ月あまり。選手たちは再び栄冠へ向け立ち上がり、日々鍛錬を積んでいる。都内に比べ涼しく、練習環境として優良である軽井沢の地で合宿を行う野球部の一日に迫る。

 「実戦の中で自分たちがやってきたことをどれだけ出せるか」(直原大典学生コーチ、人4=高知・土佐)を主題に置き、実戦練習を中心に取り組んでいるこの合宿。午前は走者を置いての守備練習が行われた。細かに状況を設定し、声を掛け合いながらのプレーを通して実戦感覚を養う。続けて行われたのはシート打撃。こちらは状況に応じ打撃を行う練習だが、エースの投球がひときわ目立った。有原航平(スポ4=広島・広陵)が打者10人に対し、渡辺琢也(教3=東京・早実)による安打1本のみに抑える投球。次週から本格的に始まる夏季オープン戦を前に、調整の順調さをうかがわせた。

 午後からは打撃練習中心のメニューをこなす。フリー打撃では3ヵ所に設置されたケージに打者が入り、中澤彰太(スポ2=静岡)や石井一成(スポ2=栃木・作新学院)らが次々と快音を響かせる。途中徳武定祐コーチ(昭36商卒=東京・早実)から熱のこもった指導を受けながら打ち込む場面も見られ、その成果が少しずつ表れていた。ファウルグラウンドでは春季リーグ戦で不調に終わった中村奨吾主将(スポ4=奈良・天理)が入念にティー打撃を行う。現在の調子は「完璧からはほど遠い」(中村)とし、一からフォームをつくり直している様子。有終の美を飾るべく、ラストシーズンへ向け地道な努力を重ねている。

徳武コーチから打撃指導を受ける中澤

 一方、投手陣は日差しが差し込む中で投げ込み、走り込みに精を出す。まず行われたのは坂道を用いての長短のダッシュ。そしてトラックで行われた時間を計りながらのランでは竹内諒(スポ2=三重・松阪)が快走し、スタミナ面での成長を見せた。1年生ながら合宿に参加した柳澤一輝(スポ1=広島・広陵)や二山陽平(商1=東京・早実)らも秋季リーグ戦へ向けトレーニングに励んだ。ブルペンでは小宮山悟コーチ(平2教卒=千葉・芝浦工大柏)が見守る中、内田聖人(教3=東京・早実)がミットを鳴らす。先日のオープン戦で3回6奪三振の快投を見せた髙梨雄平(スポ4=埼玉・川越東)もフリー打撃で登板するなど、一人当たりおよそ100球超を投げた。

小宮山コーチが見守る中、投げ込みを行う内田

 全ては勝つために、他の五大学を倒し優勝するために選手たちは自らを追い込んでいる。苦しい中でも皆表情にはどこか充実感があった。秋季リーグ戦開幕まで1ヵ月。ワセダの進化は続いている。

(記事 盛岡信太郎、写真 小川朝煕、荒巻美奈)

コメント

岡村猛監督(昭53二文卒=佐賀西)

――これだけ涼しいと監督含め選手にとっても練習に集中しやすい環境だと思うのですが、ことしの軽井沢キャンプはいかがですか

相対的に東伏見と比べれば涼しいから、より練習する環境として恵まれていると思います。

――やはり練習に集中しやすいということで、きょねんと同様にシート打撃のような実戦形式の練習が中心なのでしょうか

そうですね。まあ涼しいから実戦的な練習をしているわけではなくて、この時期はそういった(実戦的な)練習をしていかないと、残り1ヵ月でチーム力、そして個々の力も高めていかないといけないといけないので、チーム力をいかに高めていくかという時期でオープン戦も始まるのでチームプレーが円滑にできるようにそういう練習をしています。

――ことしの夏は東北各地で交流試合があり、移動量も多く体力的にも厳しいと思うのですが、遠征の意義は何でしょうか

移動が大変であるというのは分かっているのですが、東北の復興支援に協力するため、勇気を届けるために交流試合をしながら移動をしていくわけだから、現地の方々はもっと大変な思いをしているので、我々が大変とか大変じゃないとかは考えていないですね。

――先日のオープン戦では髙梨雄平投手(スポ4=埼玉・川越東)が好投をしたとお伺いしたのですが、メンバーはまたゼロベースで考えていくということでしょうか

そうです。もうメンバー間競争はゼロベースで、シーズン前はいつも変わらないです。だから髙梨がいいピッチングをして良かったというだけじゃなくて、これまで相当信頼を裏切ってきていますから、なかなかそう簡単には信用はできないということですよね。

――小野田俊介選手(社4=早実)は膝の具合も順調だとのことですが、先ほどのシート打撃でも4番を打っていた通り今後の4番候補の一人になってくるのでしょうか

そうですね。でも4番かどうかはわからないですね。どういうオーダーを組むのかはこれからオープン戦で試していきたいなと思っています。一番調子のいい者が4番に座る、クリーンアップを固めるということです。

――この夏休み中の結果を見ながらということですかね

そうです。常にゼロベースですからね。

――ことしも宿は一緒ですが、きょねんのように毎晩ミーティングを開いていらっしゃるのでしょうか

初日からずっとやっています。

――基本的に監督からはどういったことをお話するのでしょうか

ワセダの野球部としてのあり方、ワセダの学生としてのあり方、そういったことが中心ですね。

――心構えに関する話が中心ということでしょうか

心構えとどうやって戦うのかという戦術的なことをこちらからは話しています。

川口浩部長

――きょう到着して練習をご覧になってみていかがでしょうか

涼しいところでのびのびできていいと思います。

――春季リーグ戦では惜しい結果に終わってしまいましたが、秋季リーグ戦ではどういった結果に期待しますか

せっかくこうやって練習しているので、一人一人が持っている力を全部出せばそこそこいいところに行けるのではないかと思います。まあ試合はやってみないとわからないからね。

――大学の教員として野球部の選手の皆さんに学生として期待していることはありますか

勝つということは当たり前だけど、あとは運動部だから競技力の向上。これは全員全力でやってほしいと思います。それと文武両道。勉強もちゃんとやって自分の人間性をちゃんとつくってから社会に出ていって、公的な場面でも私的な場面でもそれなりの責任を担っていける人になってほしいですね。

――日頃から話しているとは思いますが、選手の方々に激励のメッセージをお願いします

東京六大学リーグ戦で勝って、神宮大会でも勝って、日本一!

直原大典学生コーチ(人4=高知・土佐)

――春季リーグ戦終了から2ヵ月間、チームの雰囲気はいかがでしたか

実際最初は早慶戦に負けてから、個人的には2、3週間無気力のような時期があったと思います。やらないといけないと分かっていてもそれぞれ集中できていないというのがチームとしても1、2週間はありました。そこから4年生中心に秋へ向けて時間がないから頑張っていこうとミーティングをしました。いまの雰囲気としては春のリーグ戦前よりいい雰囲気で練習できていると思います。

――約1ヵ月中村奨吾主将(スポ4=奈良・天理)が大学日本代表により不在だった時期もありました

(主将が)いないなりに中澤(彰太、スポ2=静岡)や石井(一成、スポ2=栃木・作新学院)、3年だと重信(慎之介、教3=東京・早実)あたりの下級生が中心になっていろいろ発言してくれました。自分たち4年生が引っ張っていく中で下級生の力は大きかったなと思います。学年対抗でやっているわけでなくてチームとして頑張っているので、学年関係なくいい意見も出たりチームをどうしていけばいいかというのも話し合えて、いい意味で中村がいなくなって良かった点も正直あったと思います。

――それぞれが自律的に考えることができたのですね

中村頼りではなくて、中村がいなくても自分たちはやるぞというのをみんなで話していました。

――軽井沢に来てからはどのような目的を持って練習されていますか

やってきたことは間違っていないのですが、(慶大に)負けて何かを変えないといけないということで、もっと徹底して一つ一つの技術の精度を上げることに集中していこうと。特に実戦の中で自分たちがやってきたことをどれだけ出せるかというのをメインに考えてチーム練習を中心にやっています。

――先日の全足利クラブとの試合にも快勝し、雰囲気もいいのですね

オープン戦はいままで自分たちがやってきたことを出せたので良かったです。今後も練習で岡村監督が打撃、守備、走塁で徹底しようと言っていることをもっとチームに浸透させて試合で出せればと思います。

――この秋は直原コーチにとっても最後のリーグ戦となりますが、意気込みをお願いします

自分も最後なので春負けた分秋は最後に優勝したいと思います。1年から4年までやってきて、学生コーチになったのは2年の秋で、そこから自分たちの代や下級生の頑張ってきた姿を自分が一番見てきたと思うので、その成果が出てくれればうれしいです。自分は三塁コーチャーという仕事を全うするだけなので、後は選手がやってくれるのを信じています。

――

中村奨吾主将(スポ4=奈良・天理)

――大学日本代表からチームに帰ってきて、状態はいかがでしょうか

(春季)リーグ戦が終わってからも状態は良くなかったので、いろいろ試しながらやってきました。(代表チームが試合をした)オランダでもあまり打てなかったのですが、帰ってきてまた一から(打撃フォームを)つくっていこうというところです。

――いまはまだ立て直し段階というところでしょうか

まだ完璧からは程遠いのですが、ここからオープン戦も入ってきますし、これからです。

――オランダでは中軸として決勝打を放つ活躍もありましたが、それでも自分の中では納得できない内容だったのですか

全然自分の打撃ができなかったですし、終盤に得点圏で(打順が)回ってきて、外野の前に打球が落ちただけとかだったので、本当にたまたまといった感じでした。

――昼も投手陣に交じって居残りで打撃練習をされていましたね

納得いくまでやろうということで練習していました。

――途中も打球に納得がいかず感情をあらわにする場面もありました

いま打撃のかたちをつくろうとしている段階なのですが、そのかたちがうまくいかずに納得いかない打球もあったので。これからです。

――軽井沢に来て、チームとしてテーマに置いていることはありますか

やはり守備から(試合を)つくっていかないといけないと思いますし、走塁も交えながらやっています。打撃も一人一人に役割があるのでそれぞれが意識をしながらやっています。

――合宿や東北への遠征と、移動も多く過酷な夏になると思いますが、

いろいろなことがある中で自分たちのやるべきことをやっていって、リーグ戦に向けて準備をしていきたいと思います。

土屋遼太(教4=東京・早実)

――どのような目標を持ってこのキャンプに臨んでいますか

個々のレベルが一回り二回り上げられるようにという目標を持って来ています。

――捕手として見た投手陣の調整はいかがですか

走っている量がかなり多いので、東伏見(早大東伏見グラウンド)の時に比べるとすごく辛そうなのですが、その分いいトレーニングになって秋はいい感じになるのではないかと思っています。

――成長を感じる投手はいますか

4年生ですが、髙梨がここに来て自分の思うようなピッチングができるようになっているみたいで、(投げていて)すごく楽しそうです(笑)。

――副将として見たチーム全体の調整は

野球をやるにはとっておきの環境でやらせていただいているし、戦術やコミュニケーションを徹底するのにもいい環境なので、すごくプラスの方向に行っているなと感じています。

――中村主将が日本代表で不在の中、どのようにチーム状態を維持していましたか

中村がいなくても4年生がすごく声を出してやっていたので、特別自分が副将としてしたことはそんなになくて、チーム全体で中村と武藤(風行、スポ4=石川・金沢泉丘)がいなくても秋に向かって準備していこうという気持ちが一番良かったかなと思います。

――このキャンプでご自身はどのような点を強化しようと臨みましたか

打撃でいうとスイングを速くするということをポイントしてやっているのと、春は盗塁を全然刺せなかったので、秋は刺せるように訓練しています。

――ご自身の現在の打撃の調子はいかがですか

いいです!

――ここまでこのキャンプでいい調整はできていますか

体調はいいかというとトレーニング中なのでそうではないですけど、いい感じになってきています。

――具体的にどのような点が良くなっていると感じますか

(グラウンドが)土なので、人工芝の東伏見と違ってしっかりと踏ん張らないとプレーできない面などから下半身が強くなってきているとやっていても感じるので、帰った後が楽しみだなと思います。

――今後もオープン戦等続きますが、秋に向けてどのようなチームに仕上げていきたいですか

目標は10連勝で終えることなので、そのためになにができるかということを一人一人意識して取り組んでいきたいと思います。

小野田俊介(社4=東京・早実)

――このキャンプではどのようなことを狙いにしていますか

実戦を多く取り入れて、リーグ戦に向けて仕上げていくことですね。今までは体力的なトレーニングだったりバットを振る数を増やしたりということをしていたのですが、それを実戦的なものに切り替えていくという意味で、非常に充実したキャンプになっていると思います。

――春季リーグ戦を簡単に総括していただきたいのですが、最後に優勝を逃してしまった原因というのはどこにあったと思いますか

ケイオーが勢いに乗っている中で、自分たちから崩れてしまったというのが大きかったかなと思います。たとえ相手がどんな状態であっても自分たちはぶれずに戦っていくことが必要だったのかなと思います。

――きょうからキャンプは後半へと入りますが、前半は振り返ってみていかがでしたか

前半は打撃などは自分の思った通りにできていたのかなと思います。それでもこの後半になってきて疲れが出てきていて、気を抜いたらすぐに崩れてきてしまうので、そういった部分に気を付けていきたいと思います。

――おとといのオープン戦は久しぶりの実戦となりましたが感覚としてはどうでしたか

紅白戦などをやっているので、リーグ戦以降初めての対投手という感じはそれほどありませんでした。ただ、初めて見る投手にあまりうまく対応していけなかったので、そのあたりは基本に忠実にということを意識してやっていきたいです。

――ケガの方はもう万全に戻りましたか

そうですね。トレーナーやコーチの協力もあって今のところ順調にやれています。

――キャンプ後半はどのようなことを意識して練習に取り組んでいきたいですか

さっき言ったように、自分から崩れないということ。また、後半になって一層精度の高いプレーというのが求められてくると思いますし、キャンプ終了後もすぐに東北への遠征もあるので、そこへ万全の準備をしていけるようにしたいです。

髙梨雄平(スポ4=埼玉・川越東)

――きょうの午前中はどのような練習をされましたか

キャッチボールと投内連携、ランメニューをして、最後に打撃練習をしました。

――軽井沢の気候はいかがですか

最初は暑かったのですが雨が降って、いまは涼しくて少し寒いぐらいですね。練習にはいい環境だと思います。

――ご自身の合宿での狙いは

自分は2戦目の先発を狙っている立場なので、そこに向けて(東京に)帰ってからのオープン戦で結果を出せるようにいま体を追い込んでいます。

――全足利クラブとのオープン戦では3回6奪三振でしたが、短いイニングで多くの空振りを取れた要因というのは

春のリーグ戦が終わってからトレーニングメニューだったりフォームだったりを少し変えていく中でボールが力強くなっていったのかなと思います。

――春に見つかった課題を克服したことがこのような結果につながったということでしょうか

克服というよりは春の南郷キャンプのときにフォームの修正という課題を見つけたのですが、それを徐々に直していくことでフォームが固まってきて結果につながったんだと思います。

――新しく取り組んでいることは

いままで球種が少なかったので、新たな変化球に取り組んでいます。先日のオープン戦でも幾つか使いました。

――新しい変化球の手応えはいかがですか

いまのところはすごくいいかなと思います。

――ご自身の調子も含め、仕上がりはどれくらいですか

体を追い込んでいるので体調は決して良くはないのですが、投げるということに関してはすごく良くなってきているなと思います。

――これからオープン戦が始まりますが、秋に向けてどのようなアピールをしていきたいですか

自分としては1点もやらないという気持ちで毎イニング、毎打者投げていきたいですね。そのように結果を出してアピールしていくしかないのでオープン戦を頑張っていきたいと思います。

中澤彰太(スポ2=静岡)

――春季リーグ戦を終えてから夏に向けてはどんな練習をされてきましたか

リーグ戦が終わってからは実戦が多かったですね。

――その中で夏を迎えて今合宿で目指しているところは

全体的に守備も走塁も打撃も技術向上とチーム戦術の部分を確認する合宿にしようと思って臨んでいます。

――合宿前半戦はどんな練習を

東伏見での練習の延長線上ということで実戦が多いですね。

――通常練習との違いの部分は

特にないと思います。本当に延長線上という感じですね。

――先日行われたオープン戦についての自己評価は

個人的には1番打者として出た初めての試合だったのですが、初回に出塁できなかったことが反省点です。途中デッドボールで代わってしまったので残りの打席については何とも言えないですが、初回に塁に出られたら良かったなと思いました。

――合宿で重点的に取り組んでいるところは

守備と打撃です。守備では春に記録上エラーにはならなかったのですが、後方のフライを(落下地点に)入っているのに落としてしまったりしていたので、そういうところを突き詰めることです。打撃については、秋は何番を打つかわからないので、与えられた打順での役割をもっと意識できるようにしていきたいです。

――先ほどの練習でも難なく守備をこなしている姿が見受けられました。手応えは

あります!

――春から打順変更がありうるという打撃面ではどんな対応を

1番という打順は好きなので、この打順でもいつも通りの自分でいこうと思っています。

――体力面での強化はどのように

練習の中のランのメニューがけっこうきつくなってきているので、体力向上というのが自然にできているかなと思います。

――これから本格的に夏季オープン戦も始まります。秋季リーグ戦に向けてつかみたいことは

やはり打撃で自分の与えられた打順の役割を果たしてチームの勝利に貢献できるようにしっかりやっていきたいです。