【連載】『〜挑戦〜 逆襲への第一歩』 最終回 中村奨吾主将

野球

 昨年は日米大学選手権で活躍し、秋季リーグ戦でも4本塁打を記録するなど飛躍を見せた中村奨吾主将(スポ4=奈良・天理)。しかしその一方で得点圏打率は1割2分5厘と打線低迷の一因となってしまった。今季は最終学年となり、攻守にわたってそのプレーでチームをけん引する背番号『10』に期待が懸かる。今後の野球人生へ向けても重要となる一年を前に、思いを語ってもらった。

※この取材は2月12日に行われたものです。

重圧はない

主将としての考えを話す中村

——いまはどのような練習をされていますか

ノックもやり始めて、この冬はバットを振り込んでいますね。

——まだグラウンドに雪も残っていると思いますが

きょうはもうフェアゾーンは雪をのけて、練習ができたので全部メニューはできました。

——照明器具の工事などもありこの1ヶ月はあまりグラウンドで練習できなかったのでは

そうですね、室内でやることが多かったです。

——室内練習場ではどのような練習を

守備だと基礎を、あとは打撃練習と振り込みというかたちでやっていました。

——やはりスイング力から上げようという意識で振り込みをされていたのでしょうか

チームとしてそういう意識を持っているので。自分としても一つ一つ課題を持ちながら取り組んでいる途中です。

——では春に向けて打撃を中心としたチームを目指しているのでしょうか

そういうわけではないのですが、しっかり守備から入ろうと思っています。去年は打てなかったので、点が入らないと勝てないというのもありますが、まず守りをしっかりしてそれから打撃という風に考えています。

——では他大学の投手を想定した練習などはされていますか

いまの時期からイメージは持ちながらやってはいます。ワセダには(他大学のエース級の投手に)似たようなタイプの投手はそういないので、マシン打撃でそれぞれが想定しつつ打っています。

——昨年は得点力不足に苦しみましたが、何か克服にために変えた部分はありますか

それは一人一人の意識の持ちようしかないと思います。それだけの自信を練習から付けていこうという風にやっています。

——ここ最近のチームの雰囲気はいかがですか

この時期はいい悪いとかはないのですが、チームとしてというよりは一人一人が意識して課題を持ってやっていく時期だと思います。チームとしてはこれからのオープン戦に入ってからだと思いますね。

——主将になられて数ヶ月、慣れてきましたか

そうですね。でも4年生が助けてくれたりするので、自分一人で引っ張っているということではなくて、自分としてもそういう意識はありません。練習中でも土屋(遼太、教4=東京・早実)や武藤(風行、スポ4=石川・金沢泉丘)が助けてくれるので、みんなでやっていこうという雰囲気があります。

——主将をされるのは初めてでしょうか

はい。

——練習以外でも主将として動くことはあると思いますが、大変ではないですか

そうでもないですね。別にやることと言ってもあいさつであったり、そう大変なことではないのであまり大きな変化はないです。

——どういった経緯で主将に就任されたのでしょうか

(当時の)3年生と4年生で投票をして、それを基に多数決ではなく監督が決めるというかたちで決まりました

——ご自身をどのような主将だと考えていますか

自分がやらないといけないというのはありますが、背中で引っ張るからといって言葉で導くのがおろそかになってはいけないと思いますし、口だけで言って行動が伴っていないと、それではみんなはついて来ないと思っています。どういったキャプテン、というのはないと思いますが、しっかり自分のこともやって、チームも付いて来る、チームのことを見ながら自分もしっかりできるようなそういう主将でいれたらと思います。

——ではあまり理想の主将像などは持たずにやっていくと

そうですね、あまりそういうことを意識して見てこなかったのでそういうのはないですね。

——実際に冬季オープン戦で10番を背負われましたが、背負ってみて何か感じることはありましたか

重圧はないのですが、ずっと1番で2年間やってきて慣れていたので、付け心地があまりまだ良くないというような感じはあります。

——周りの見方も変わってくると思いますがいかがでしょうか

周りの目も変わってくると思うのですが、自分は自分のやることをやるだけなので、そこは変わらないと思います。

——ここ数年は主将の成績が落ちる傾向にありますが、それを見て何か原因を感じられることはありましたか

プレッシャーとかもあるのかなとは思いますが、キャプテンだから(成績が)落ちたとかそういった言い訳もしたくないですし、キャプテンというかたちではありますが、試合に出ていたら一人の選手なのでそこは別に意識することはないかなと思います。

——前主将の東條航さん(平26文構卒=現・JR東日本)から何か声は掛けられましたか

冬の間にどのようなチームにしていきたいのかということを考えて、後はあまり気負わずに気楽にやればいいのではないかという風に言われました。

——冬季キャンプでも「チームの方向性を決めておきたい」とおっしゃっていましたが方向性は決まりましたか

チームがまとまるのも大切なことですが、一人一人が自覚を持ってやっていければ自然とチームはいい方向に向いていくのではないかと思います。

——やはり4年生が中心となって頑張ろうという意気込みも感じられます

4年が引っ張らないといけないというのもあるのですが、まだそれができていない部分もあります。しっかり自覚を持って4年生がやっていければと思います。

——天理高時代の同期である安田紘規選手(青学大)も同じく主将に就任されましたが、何かお話はされましたか

電話で少し話しましたね。

——どういったことを話しましたか

安田はずっとキャプテンをやってきているので大丈夫だと思うのですが、自分は高校の時もそういった(主将をやるような)タイプではなかったですし、「大丈夫か」というようなことを言われました。

——高校の時は全く主将や副将などには就かなかったのですか

そうですね。

4年生全体で雰囲気をつくる

——昨年までは自由にプレーできていた面もあったかと思いますが、やはり気持ちに変化があるのではないでしょうか

自由というわけではなかったですね。レギュラーを取れるか取れないかという選手は自分のことを精一杯やらなければいけないと思うのですが、レギュラーとして出ているメンバーは自分のこともやりながら周りも見ながらやっていかないといけない立場だと思うので、それが自分の役割だと思っています。

——下級生や周りの選手にアドバイスを与えたりはしますか

聞いてきたら答えるようにしています。少し気になったりしたら言うようにはしているのですが、特に自分から技術的なことを言ったりというのはないです。

——よく一緒に練習する選手はいますか

練習は学生コーチの直原(大典新人監督、人4=高知・土佐)とやっています。あとは割と近くでいつも練習をしているのは中澤(彰太、スポ2=静岡)と石井(一成、スポ2=栃木・作新学院)ですね。あいつらも考えて練習していますし、何か聞かれれば教えますが基本的には自分から何か言うことはないですね。

——直原さんと練習されているということですが、やはりアドバイスを受けつつ練習されているのでしょうか

いえ、直原は何も言わないですね。ティー(打撃で)ボールを上げてくれたり、打撃投手などの手伝いをやってくれるだけですね。OBのコーチもいるのでそういった方に技術指導は任せているということだと思います。

——普段練習するにあたってメニューなどは誰が考えていますか

監督と学生コーチが考えていますね。自分たちにもたまにどういう練習がしたいか聞いてくれて、意見することもありますが基本は監督と学生コーチが話し合って考えてくれていると思います。

——岡村監督も同じくことしで4年目となりますが監督の印象は

基礎基本の徹底を大切にしていて、練習でもそういう部分が多いので、シーズン中でもそういった(基本の)練習をすることもあります。基礎ができていれば応用にも効くという考え方なので、その考えが全体としてさらに浸透していけば、チームとしてもっとうまくなれるのではないかと思います。

——中村選手自身も体格が変わってきたと思います。体重は意図的に増やしてきたのですか

意図的ではないですね。冬のトレーニングをしているうちに自然と大きくなったり、夏場越えてまた大きくなったりというのが毎年重なっています。

——けがもあまりされませんね

そうですね。小さなけがはたまにありますが大きなけがはありません。

——2年春に優勝を経験していて、そのチームに比べていまのチームにまだ足りていないものは感じますか

練習中の緊張感はまだ自分たちの中でつくり出せてないのかなというのは感じます。ずっとメンバーに入っていたり、試合に出ているという選手もまだ少ないのでまだ試合での本当の怖さとかも分かってないと思います。優勝した時の明大戦の緊張感とかは練習とかではつくり上げられないものですし、それに少しでも近づく練習をしていければ、試合でも緊張感のある場面で落ち着いてプレーできるのではないかと思います。

——実戦経験という面でまだ不安があると

実戦経験もそうですし、きょねんはあまり緊張感のある試合はなかったですし、そういう緊張感のある練習もできていなかったので、チャンスの場面で力が発揮できなかったのだと思います。

——補うために取り組みを変えたりされていますか

それは4年生がどんどん雰囲気をつくっていかないといけないと思います。

——春秋共にあと一歩のところで明大に勝ち点を奪われましたがやはり苦手意識はあるのでしょうか

苦手意識はないと思いますけど、やはりそれだけ明大が粘り強いということなので、逆にワセダもそれくらいの粘り強さを見せないといけないですね。簡単に勝てる相手ではないので。明大もそれくらいの意識で戦ってきていると思うのでもっと粘り強く、負けている試合でも逆転できるように精神力や技術面で練習から突き詰めてやっていきたいなと思います。

——他大学で特に警戒しているチームや選手はいますか

どこもやはり選手は残っているので、特にどこというのはないので他の5大学全部だと思います。

——昨秋は明大戦を境目に調子が下降したように思われますが、原因はあるのでしょうか

夏場の練習が思うようにいかなかったというのが原因だと思います。

——それはスタミナ面で不安があったということでしょうか

何というか、「このままやっていれば大丈夫だろう」という気持ちがありました。リーグ戦の始めも調子が実際は良くないのに結果が出ていたので「調子が悪くてもある程度やっていけるのかな」という思いがあって。もともと調子が悪かったというのもあるのですが、あの試合を境目に調子が悪くなったのではなく、調整不足でうまくピークを持っていけなかったということですね。

——左投手との対戦成績も11打数2安打とあまり良くありませんでした

秋はそういう結果になっただけで春は左(投手)からも打っていたと思いますし、特に苦手意識があった訳ではなかったですね。

——2年から二塁手に転向して3年目となりますが、確実に自分のポジションにしたのではないでしょうか

まだ二塁手というポジションは深いと思うので、もっと突き詰めていければなと思います。

——二塁手として伸ばしていきたい点はどういった点でしょうか

自分としてはまだ二塁手としてそんなにうまいとは思っていないので、守備では全ての面でもっと安定していければと思っています。

——どのような二塁手でありたいと考えていますか

理想というものはないのですが、投手が打ち取った打球を普通にさばいたり、派手なプレーというよりも捕れるかギリギリの打球をさばくと投手も「そんなに(球を)捉えられてないな」と思うはずなので。そういったことを考えながら守っています。

チームのために

打撃だけでなく広い守備範囲と華麗な守備も魅力

——ここ最近で伸びているなという選手はいますか

レギュラーを狙っていこうという選手はみんな伸びてきていると思います。

——それでは優勝へ向けてカギとなってくる選手は

やはり優勝を狙っていく上で自分と有原は結果を出して引っ張っていけば、後も付いてくると思いますし、絶対に優勝できると思うので、二人で引っ張っていければと思います。

——中村選手、有原選手共に注目度は高まっていますが意識はしますか

やはり注目されることはうれしいので、おごらずプレーしていきたいと思います。

——アピールしていきたい部分などはありますか

何かが飛び抜けているタイプではないので総合的にアピールしていければという思いです。

——昨季4本塁打と長打力が伸びたように感じられますが秘訣(ひけつ)は

たまたまですね。しっかり(球を)捉えた結果だと思います。

——チームとして盛り上げる存在はいますか

誰かが盛り上げるというよりは4年生全体でいい雰囲気をつくっていければチームとして盛り上がっていけると考えています。

——米国、宮崎でのキャンプではどういった狙いで臨みたいでしょうか

アメリカでのキャンプというのはなかなか経験できないと思うので、アメリカの選手がどういう動きをするのか、というのを見て勉強になると思います。アメリカでは技術の向上というよりは経験を増やすことがメインになってくると思います。見ながら、感じながら宮崎に移って技術や体力アップ、アメリカで学んだことを行動に移していければ力になると思います。

——今季、打順でのこだわりはありますか

3番を打ちたいという気持ちはあります。でもチーム状況でどうなるかは分からないので、そこはしっかりと任された打順で役割を果たしていきたいです。

——冬季オープン戦では2年時以来となる1番を任されていましたがいかがでしたか

久しぶりだったのですが、1番を打つ選手はもっと他にもいるのではないかと思いますし、自分が任されるのであればしっかり塁に出て得点につながるように仕事をしていかないといけないと思います。

——どんな選手が1番打者にふさわしいと考えていますか

自分が2年の時は怖いもの知らずで、どんどん積極的に向かっていっていたので、自分としてはそういう選手が出てきてくれればと思います。自分も4年になって、下級生の時のように自分のことだけ頑張ればいいという風にはできないので。1番の選手には出塁率の高いことも大事だと思うのですが、思い切りのいい選手が打つべきかなとは思います。

——それでは、個人としてのこの春の目標をお願いいたします

具体的な数字は掲げないのですが、チームのためにしっかりプレーしていければ個人としても結果を残せると思いますし、チームのためにもなると思うのでそういう意識でやっていきたいと思います。

——最後に今季のチームとしての目標をお願いします

やはりどこのチームも優勝したいという気持ちで練習していると思いますし、それはうちも同じです。けど、「優勝したい」ではなくて「絶対に優勝するんだ」という気持ちを持ってみんなで意識高くやっていければチームとして優勝といういい結果が付いてくると思うので。みんなでそういう意識を持ってやっていきたいと思います。

——ありがとうございました!

(取材・編集 盛岡信太郎)

中村主将

◆中村奨吾(なかむら・しょうご)

1992年(平4)5月28日生まれ。180センチ80キロ。奈良・天理高出身。スポーツ科学部4年。内野手。右投げ右打ち。1年次には三倉健選手(教4=徳島・鳴門工)、有原選手とともに『三倉組』として横浜などへ観光へ行っていた中村選手。いまや『三倉組』として出掛けることはなくなったそうだが、神宮での3人の躍動に期待したいところです!