【連載】『~挑戦~ 逆襲への第一歩』 第6回 吉永健太朗

野球

 華々しいデビューを飾った1年目。しかし2年目の昨年度は勝ち星に恵まれず、自身の不調も重なり試練続きの1年となった。大学野球の酸いも甘いも知り尽くしたこの2年間。復活を誓う3年目の春に背番号『16』は何を思うのか。その胸中に迫った。

「結論を出せないままシーズンに入ってしまった」

昨季は試練の一年となった

――きょうの練習内容を教えてください

個人的には投手の守備をやってから犠打の練習をして、午後は投球練習をしました。

――新チームの雰囲気はどのような感じですか

しっかりやるところはやって、盛り上がるところは盛り上がるいい雰囲気のチームだなと思います。

――3年生になって引っ張る立場になるかと思いますが、これまでと意識は変わりますか

そんなに変わらないですかね。自分は声を掛けて引っ張るという方ではないので、一つ一つの練習を一生懸命やっています。

――投手陣の雰囲気はいかがですか

いい雰囲気で、仲もいいと思います。

――現在のご自身の調子に関してはいかがですか

きょねんはすごく調子が悪かったのですが、ことしはいまのところ順調に来ているのでこのままうまくいきたいなと思っています。

――シーズンが終わって取り組んでいることはありますか

やはりフォームが昨年は良くなかったので、フォームを安定させることを意識して取り組んでいます。

――では、ここで2013年のシーズンを振り返っていただけますか

先ほども言ったようにひどかったので。やはり有原さん(航平、スポ4=広島・広陵)が1戦目で勝って、2戦目投げさせてもらったのに負けるということを繰り返して優勝できなかったのですごく悔しい思いをしました。

――春秋で3勝4敗。1年次の7勝2敗を思うと物足りない成績ではないでしょうか

本当にその通りです。

――秋季リーグ戦に目を向けると四死球が24個です

多いですね(笑)。それはいままでも散々言われてきて。でも(四死球を)出そうと思って出しているわけではないので、どのように改善すればいいのかということをいま考えています。

――四死球が増えたことには投球フォームの問題も関係してきますか

そうですね。やっぱり高校より考える時間が増えて、それはいいことではあるのですが、その反面考えすぎて分からなくなってしまったというのがあったので…。

――もともと考えると深みにはまっていってしまう方なのですか

そうですね、細かいところまで考えるタイプなので。考えすぎは良くないなということを学びました。

――考えすぎて負のサイクルに陥ってしまったということでしょうか

はい。ちょうど昨年がその1年でした。

――全体的に制球に苦しんでいたなという印象があります

いろいろなことを考えてバラバラになっていました。

――秋は全体的に直球が多かったようですが、変化球の調子は悪かったのですか

変化球は全然ストライクが入らなくて、(カウントを)取りに行った直球を打たれてしまって…。直球も取れなくて変化球も取れなくて、じゃあちょっと力を抜こうと思ったら打たれるという話ですね。

――シンカーも調子が悪かったのですか

はい。

――1年次は球が通用していましたが、きょねんは研究されていると感じることはありましたか

研究されているなというのもあったのですが、自分自身が良くなかったので。思い通りの球を投げることができたら抑えることはできるのではないかと思います。

――よく言う『2年目のジンクス』に苦しんだのかなと思ったのですが、そのあたりはいかがですか

『2年目のジンクス』と言われたらそうなのかもしれませんが…。そうですね、多分そうだと思います。

――1年次、2年次で対照的な成績になってしまったことに関して思い当たる節はありますか

それはもう本当に『考えすぎ』です。

――考えすぎたことが悪循環を生み出してしまったのですね

考えることが悪いことではないのですが、ただ考えたことに対して結論を出せないままシーズンに入ってしまいました。自分の中で悩みがあるのに試合で投げてもやっぱりいい結果が出るはずもないので。

――勝てない理由に「踏ん張りどころで踏ん張れない」ことを挙げていましたが、ピンチになると動揺したりしてしまうのですか

いや、それはないです。全然緊張とかはしないです。ただ、そのストライクが入らないということが自分の中にあるだけで、ちょっと自信を持てないということですね。

――昔から大舞台に立ったときでも緊張はあまりされなかったのですか

そういう舞台を経験してだいぶ慣れました。最初はもう緊張して全然駄目でした(笑)。

――投球フォームに関して1年秋には固まりつつあったそうですが、やはりきょねんはしっくりこないなという部分もありましたか

そうですね。結局こういう結果になっているので良くなかったのかなと思います。

――それも現在試行錯誤されているのですか

いまはだいぶまとまってきているので、それの精度を上げる段階ですね。

――秋に関しては、失点だけ見たらもう少し勝てた気がします

それは(笑)。そう思うときもありますけど結局点を取られているのは自分なので、それは自分が悪いです。

――秋の明大、法大戦と「ここで勝ったら勝ち点を取れる」という試合で勝てていない気がしますが

やっぱりエースがいて、一人だけでは優勝できないという中で自分で勝てなかったというのは本当にチームに申し訳なかったです。

――勝ち切るために必要なことは何だと思いますか

精神力ですかね。力は必要なのですが、力があっても気持ちが弱ければ結果も出ないと思うので。最終的には強い気持ちのある方が勝つんじゃないかなと思います。

――メンタルトレーニングはされるのですか

いや、しないです。何かありますか?(笑)でもあるみたいですね、紙を見て集中力を高めるみたいな。そういう話も聞きますけどあまりやっていないです。メンタルトレーニングというよりは、それまでやってきた練習の積み重ねで自信が出るだとか、試合をやってきて「ここまでやってきたから自分はできる」という感じですね。練習が一種のメンタルトレーニングでもあるのかなと思います。

――明大には昨季だけで2敗(通算だと1勝3敗)しています。苦手意識があるのですか

苦手意識は…あまりないですね。打たれているという意識もないです。自分で崩れているので。

――崩れてしまう原因というのは

フォームですかね。何度も言ってしまうのですが、フォームがバラバラなので。ストライクを取れたらそんなに打たれることもないかなと思うのですが、ただそのストライクが入らないところを狙われてしまいますね。

――逆に慶大相手には負けなしですが、勝てる要因には何があるのですか

勝てるなという気がします。

――得意としているのですか

そういうわけではないです(笑)。慶大のときだけなぜか(打線が)10点ぐらい取るので。さすがに10点あったら負けないです。逆に10点あると「打たれてもいいや」と思うのですが、案外打たれないものです。

――最終週で確実に勝っていることから、仕上がりがゆっくり、もしくは尻上がりなのかと思ったのですが

いや、全然そんなことはないです。

――たまたま慶大には勝ってしまうということでしょうか

そうですね。慶大戦でなぜか点を取ってくれて、慶大にはあまり打たれないという。

――もしかすると慶大打線が吉永選手を苦手としているのかもしれませんね

どうなんですかね。ワセダにちょっと意識があるんじゃないですかね(笑)。

――今季も早慶戦が楽しみですね

そういう話をしていると危ないです(笑)。何も考えないで勝つというのがいいのですが、「勝っていますね」というと負けるかもしれないです(笑)。

――欲を出さずにいきますか

はい、いつも通りで。

「ここから追い上げていく」

復活への強い思いを述べる吉永

――ところで早慶戦では通算10勝目に到達しましたが、改めて目標はありますか

やはり30勝したいという思いはまだありますね。

――あと20勝です

全てのカードから勝ち星を取り続ければいけるので。本当に完璧な投球をしないといけないですね。でも逆にプロへ行くためにはそれぐらいの投球をしないといけないと思うので、ここから追い上げていきたいです。

――奪三振数は現在112です。300奪三振も意識しますか

(300奪三振まで)いきたいですね。別に数字を意識してやるわけではないですが、結果としてそういう目標はあります。

――意識していなくてもそういった数字の記録が出るとうれしいものですか

そうですね。試合中は「これを取ったら(奪三振は)何個目だ」とかそういうのはないのですが、試合が終わって「(奪三振を)何個取ったからあと何個だ」という意識はします。

――モチベーションになりますか

なりますね。

――リーグ戦で高校時代の同級生と何度か対戦したと思いますが、もう意識することはないですか

いや、あります。絶対打たせないとかそこまでの特別な感情はないですが、打たせたくないという思いは強くあります。

――次の打者で同級生を迎えるときの気持ちはどのような感じなのでしょうか

高校のときに打撃練習や紅白戦で対戦とかもしていたので、そのときの気持ちを思い出しますね。ワクワクします。

――高校の先輩と投げ合うときは「投げ勝つぞ」などの意識はありますか

意識はしますが、どちらかというと打ってやろうという気になりますね。

――六大学で警戒している選手はいますか

(しばらく考え込んで)あ、立大の岡部(通織)さんです。本塁打を打たれているので。

――昨秋の早慶戦前も、手ごわい選手に岡部選手の名前を挙げていました。やはり対戦していて怖い打者なのですか

唯一いい打者だなと思います。

――逆に対戦が楽しみな選手は

やはり高校の同期と対戦するのが一番楽しみですね。

――高校の後輩も試合に出場されるかと思いますが

後輩もいるのですがやっぱり同期ですね。

――3年生になると後輩もさらに増えることと思いますが、目をかけている下級生はいますか

1年生だとまだいないですね。入ってきてそんなに日にちが経っていないので。2年生だと中澤(彰太、スポ2=静岡)とか石井(一成、スポ2=栃木・作新学院)とか吉野(和也、社2=新潟・日本文理)ですかね。(リーグ戦の)メンバーとしてやっているので、いいなと思います。

――下級生にアドバイスを送ることはあるのですか

少しあります。

――逆に上級生からアドバイスを受けることは

有原さんはすごいのでいろいろ教わっています。特に技術的なことを。変化球とかですね。

――小宮山悟特別コーチ(平2教卒=千葉・芝浦工大柏)から投球に関して何か言われたことはありますか

最近はちょっと教わっていないですね。教わったかな…教わったかもしれないです。でも以前見ていただいたときは結構言ってもらいました。

――昨年末の藤枝キャンプには帯同していませんでしたが、そのときは何をされていたのですか

けがをしていました。

――ではこちらで療養されていたということですか

そうです。体のけがなのでちょっと治療していました。

――どこを負傷されたのですか

脚です。ちょうどその1週間前にリレーがあったんですよ。練習で最後リレーをやったのですが、ラストの1本でちょっと(脚が)つったかなという感覚があって。若干肉離れっぽくなってしまって、走ることはできたのですがダッシュはまだできないからとりあえずこっち(東伏見に)にいようということになりました。合宿へ行って制御の利かない状況でやるのは危険だと思ったので。

――脚の状態はいかがですか

そうですね、もうほとんど大丈夫です。

「ことしこそ優勝に貢献できるように」

――開幕まで2カ月を切ろうとしていますが開幕投手は狙っていますか

そうですね、なれたらいいなと思います。

――秋のときは有原選手のけがもあって開幕投手を務めましたが、今度は実力でその座を勝ち取りたいですか

という気持ちはありますけど…。はい、あります!

――初戦で投げたいなという気持ちはあるのですか

それはありますね。初戦は相手もエース格なので。

――先発に対するこだわりは

ありますね。先発はやっぱり。

――春に向けて伸ばそうとしているところはありますか

伸ばすというよりは、まず自分のかたちをしっかり作って安定させるということが伸ばすことですね。

――復活に向けて新しく取り組んでいることや変えたことはありますか

秘密です。

――シーズンが始まる前にすること、試合前の儀式などは何かされていますか

特にないです。

――大学野球も折り返しとなりますが、残り2年間どのように過ごしていきたいですか

やはりことし1年はチームとしても自分としても大事な時期なので、いい結果を出せるようにしっかりとやりたいと思います。

――ここまでワセダは3季連続で優勝を逃していますが、今季こそはという思いは

もちろんです。

――優勝には吉永選手の復調が必要不可欠です。最後にことしの目標をお願いします

昨年チームに迷惑を掛けたので、ことしこそは優勝に貢献できるよう頑張りたいと思います。

――ありがとうございました!

(取材・編集 川口真由)

吉永

◆吉永健太朗(よしなが・けんたろう)

1993(平5)年10月13日生まれ。182センチ、82キロ。東京・日大三高出身。スポーツ科学部3年。投手。右投右打。ことしの目標に『復活』の二文字を掲げた吉永選手。「自分で言うの恥ずかしいな…」と少々照れながらも、一字一字丁寧に書き上げてくれました。有言実行で完全復活を遂げ、前回優勝した2年前の春に匹敵する活躍を期待しています!