【連載】『真の王者への道』 第9回 横山貴明

野球

 昨年度はリーグ戦10試合に登板し無失点という好成績を残した横山貴明(スポ4=福島・聖光学院)。血行障害や故障に悩まされてきた横山も、昨春の全日本大学選手権(全日本)で完全復活。ラストイヤーの今季は副将に就任し、個性豊かな投手陣を背中で引っ張っていく。チームとしての目標、そして個人としての目標を胸に、勝負の春に挑む現在の心境をうかがった。

※この取材は2月13日に取材したものです。

「体重は4キロ増。投げていても違いを感じる」

満面の笑みで取材に応じる横山

――きょうはどのような練習をしてきましたか

午前中は外野で走って、午後はフィールディングの練習をしました。朝方は雪があったので外野のフェンス沿いだけはしっかり雪かきしました。

――2月初めは練習強化期間だったそうですが主にどのような練習を

投手は主に走り込みが多くて、走ってばっかりでしたね。最近ようやく強化期間が終わって、ピッチングの練習も始まっています。まだ球数とかは投げていないのですが、走るのに関しては頑張っています。

――オフ期間の投手陣はやはり走り込み中心ということで

そうですね。いまの時期にしっかり走っとかないと(春季)リーグ戦に間に合わないので、走るしかないです。

――走り込みの他に強化してきたことなどは

自分としてはウエイトトレーニングを重視してやってきたので、体重も4キロくらい増えました。

――シーズンが始まると体重が減ったりしますか

変わらないですね。キャンプでも体重は減らないので、このままいくと思います。

――体重が増えると球速も変わってくるのでは

と、思うんですけどね(笑)。自分もそう思うのですが、人によって違うので。たとえば高梨雄平(スポ3=埼玉・川越東)とかは体が重いと動けないから絞るタイプですが、自分は体重があった方がいいかなと思っています。

――12月末には静岡で冬季キャンプがありましたが

すごくきつかったです。基本的には走り込み中心で、やっぱり練習では走るしかないんですよ。

――冬季キャンプというのは初の試み

いつもは東伏見でちょっとした強化練習みたいな感じでやっていましたが、今回は良い設備でやることができて良かったです。

――東條航主将(文構4=神奈川・桐光学園)体制が始まって3ヶ月経ちますがいかがですか

自分は副将ではありますが、投手をまとめる役割として考えています。有原(航平、スポ3=広島・広陵)とか高梨とか個性の強いタイプが多いので、バラバラにならないようにまとめていきたいです。みんな自由なので練習に気が入らないときがないように、自分が引っ張っていきたいですね。

――六大学のブログで「言葉で引っ張るよりもプレーで引っ張りたい」とおっしゃっていました

あまり人に話すことが得意ではないんです(笑)。東條とかはうまくしゃべれるのですが、自分はしっかり練習してその姿を見せることでまわりを引っ張っていきたいですね。

「結果を出せる自信がある」

――昨季を振り返って

ほとんど投げていない時期が多かったので、全日本ではぎりぎり間に合いましたが、1年間フルで戦えなかったことがくやしいですね。だから今シーズンはケガをせずにやれれば、結果を出せる自信はあります。ただケガをしないようにというのが大きいです。

――やはり不安要素として大きいのでは

ケガをしないようにというのは、難しいですね。もっとうまくなりたいと思うと思い切り練習したいですが、ケガを怖がると中途半端になってしまいそうで…。歯がゆい感じではあります。

――春季リーグでは中継ぎで活躍するもケガで戦線離脱しました

春は…ちょっと残念でしたね。でも全日本では頑張れたのでよかったです。

――全日本では好投を見せ、勝ち星もつきました

良い場面で岡村監督(猛、昭53二文卒=佐賀西)が使ってくれました。ケガしていてずっと投げていなかったのであの場面で使ってくれると思っていませんでした。そこで結果を出せたのはすごく良かったです。

――岡村監督が「信頼している証」だとコメントしていました

自分は全く感じていなかったので、そう言ってもらえて本当にうれしかったです。

――秋季リーグ戦では抑えとして安定感を見せチームに貢献しました

前半はあまり調子が良くなかったのですが、法大戦あたりから良い感触が出てきたのでそこから調子が出てきたように思います。監督さんも後ろで固定して使ってくれていたので、良い経験になりましたね。最後っていうのは本当にプレッシャーがあるので、自分が崩れたら終わりというところで投げさせてもらえたのは良かったと思います。

――プレッシャーには強い方ですか

どうですかね(笑)。強い方だとは思っていますね。

――全然緊張していないようにも見えますが

いや、すごく、緊張しますよ。有原とかは全然緊張していないみたいですけど(笑)。

――たまに「失敗したなー」という感じの表情が見られます

顔に出ちゃうんですよね、良くないとは思うんですが(笑)。イチロー選手(現メジャーリーグ・ニューヨーク)とかはヒット打っても無表情じゃないですか。そこでどうしようか迷うのですが、でも野球ってたくさんの人に見てもらうスポーツなので無表情だと面白くないじゃないですか。良いプレーしたら喜んで、悪いプレーしたらくやしがってみたいな表情を出した方が楽しいかなと思ってもいます。

――昨季を振り返ると無失点でした

あまり安定した投球ができていたわけではなくて、しっかり投げられていたのは秋の最後の方だけだったので、たまたま抑えられたのかなって思っています。四球が多かったのでもっと楽にピッチングできるかなと思います。

――秋の最後から安定してきたというのは

立大戦が終わった後に、それまでの投球がひどすぎたので「これはだめだな」と反省して大幅にフォームを変えてみました。高校のときのフォームが大学に入ってから崩れていたのでそれを見直したというか、良い方向に行くように変えてみたら、それが功を奏した感じです。

――高校3年時の甲子園でも、PL学園戦の前にフォームを変えていたそうですが、シーズン中に変えることに抵抗はないのですか

そうですね。でもそのまま投げている方がこわいくらいですね。当時PL戦の前にも「このままではだめだな」と思って変えた感じです。フォームを変えることに関して抵抗はなくてむしろポンポン変えてしまうので、去年の秋からは「これにしよう」と思ってそのフォームで継続してやってきています。それでうまくいってくれればなと思っています。

――冬季オープン戦では先発して5回無失点でした

やっぱり先発やりたいので、先発して結果を残さないといけないですよね。あの時期は吉永(健太朗、スポ2=東京・日大三)とか有原はリーグ戦の疲れもあるので自分とか高梨でしっかり投げる時期だと思っていました。

――もちろん先発にこだわる気持ちも

ことしのドラフトでプロに行きたいと思っているので、そのためには先発しておきたい気持ちがあります。先発できていないと厳しいかなと思うので、あとは抑えだったら1シーズン無失点とかやらないといけないと考えています。

「小山田と2人で『横山田』でした(笑)」

ラストイヤーに全てをかける

――野球から離れると、ご自身ではどんな性格だと思いますか

結構出かけるのが好きですね。いつも仲良くしているのが丸山(スポ4=東京・都武蔵野北)とか小山田(スポ4=茨城・古河三)がいるんですが、あいつらは正反対で完全にインドア派ですね(笑)。なので遊びに関してはなかなか合わないです。自分は、オフの日だからゆっくり寝ていようとかは思わなくて、朝7時くらいに起きて出かけてしまいます。

――丸山選手、小山田選手、横山選手と名前に「山」がついていますね(笑)

そうなんですよ(笑)。1年の時、自分と小山田はスポーツ推薦という共通点もあってまとめて「横山田(よこやまだ)」って呼ばれていました(笑)。

――丸山選手は一般入学でした

一般で一浪して入学したので、すごいですよね。でも変なやつです(笑)。ふざけています。

――部のホームページでは野球のことを「存在意義」と言っていました

そうでしたっけ(笑)。難しいですけれど、やっぱり野球がなかったら何をやっていましたかね。スポーツはやってなかったでしょうね。野球以外何もできないんですよ(笑)。

――試合観戦とかもしませんか

サッカーとかはやっていたら見ますけどそれくらいですね。もちろん野球も好きですが、相撲がずっと好きですね。昔は琴光喜が好きだったのですが、今は琴奨菊を応援しています。なんかのほほんとした感じの顔が好きです(笑)。がぶり寄りがすごいです。

――オン・オフの切り替えは得意ですか

練習は真面目にやっている方だと思います。だらだらやっているのが好きじゃないんです。きょうとかも練習長いですけれど、メリハリつけてやりたいなっていうのがあって。練習中にだらだらやって、そのあとも残って自主練したりするのは合理的でないと思うので、練習は集中してやりたいなと思っています。

――だからこそ休日も切り替えが早いのでしょうか

寝てられないんですよね。たくさん寝て疲れをとるっていうタイプではなさそうです(笑)。

――年末年始には帰省されましたか

そうですね。帰る場所が実家ではないですけれど。今は福島の喜多方に家があるのでそっちに帰っています。でもまだ慣れなくて…居心地が悪かったです。

――横山選手の活躍にご家族も喜ばれているのでは

あんまり見せないですけどね。父とか怖い感じなので(笑)。基本的に眉間にしわ寄せています。でもたぶん喜んでくれていると思います。

――12月8、9日には野球部で被災地支援も行いました

初めて被災地をまわりました。まだまだ何も進んでいない感じでしたが、球児たちはがんばっていました。いまのところ聖光学院が福島では一番強いので、頑張ってもらいたいなって思っています。そんな感じで地元の子たちにも指導してきました。

「みんなの気持ちが一つになる学年」

――副将にも就任し、最終学年にかける思いも大きいのではないでしょうか

1年の時は雑用ばかりで練習もできなくて厳しい学年でしたが、そのときのつらい思いを共有しながらみんなでやってきました。だからこそみんなの気持ちが一つになる学年だとは思うので、そういう学年で優勝したい気持ちは強いです。

――横山選手個人としてはプロに行きたいという思いも

1年間フルでケガをしないで戦うことが第一ですね。あとは今まで無失点できているので、それをどこまで伸ばせるかなというのはあります。

――ケガを気にしながら挑戦するというところの兼ね合いがやはり課題になりますね

そうなりますね。そこが一番難しいです。

――3月は沖縄キャンプ、オープン戦と続きます

去年はキャンプで肉離れしたので、今回は気をつけて無事に帰ってきたいです。しっかりストレッチするとかしかないですね。トレーナーも学生しかいないので、しっかり自分で管理したいと思います。

――春季リーグ戦に向けて意気込みを

目標はグランドスラムを達成したいですが、春のリーグ戦とらないといけないので。春は秋より緊張すると思いますが、優勝できる力はあると思うので、どれだけ実力を出せるかが重要になってくると思います。優勝したいです。

――ありがとうございました!

(取材・編集 加藤美樹)

横山

◆横山貴明(よこやま・たかあき)

1991年(平3)4月10日生まれ。180センチ、83キロ。福島・聖光学院高出身。スポーツ科学部4年。投手。右投右打。野球以外のスポーツは全くできないという横山選手。中学や高校のときのサッカーの授業では、パスを回されるのが怖いからいつもキーパーだったそうで「キーパーって下手なやつがやるじゃないですか」と照れ笑い。マウンドで躍動する姿からは想像もつかないですね!