【連載】『~挑戦~ 逆襲への第一歩』 第2回 土屋遼太

野球

 昨年は正捕手の座をつかみ取り、チームの主力となった土屋遼太(教4=東京・早実)。ことしは副将にも就任し、多方面での活躍が求められる。その中での今季にかける意気込み、そして副将としての決意を伺った。

※この取材は2月12日に行われたものです。

手応えと課題

――まずは昨年のリーグ戦について、土屋選手自身レギュラーに定着して1年目のシーズンでした。簡単に振り返ってみてどのような一年でしたか

やっとレギュラーとして1年間試合に出場できたのでほっとしたという気持ちと、結果を出せなかったので悔しいという気持ちが両方あります。

――春季リーグでは3試合で複数安打を放つなどまずまずの成績であったように思いますが、いかがでしたか

春は良かったですね。

――その一方で秋季リーグでは打率もかなり下がってしまいましたが、その要因はどのようなところにあったと思われますか

春に比べて、迷いがあったかなという風に思いますね。リーグ戦中もどういう打撃フォームにしようかな、とかいろいろと悩み過ぎてしまったと思います。

――その迷いというものは秋季リーグが始まる前からあったのですか

オープン戦の終盤は調子が良かったのですが、リーグ戦に入ってからどのフォームにしようかなと悩んでしまったりしました。なので最初から悪かったわけではなくて、リーグ戦に入ってから悩んでしまったという感じですね。

――悩み始めるきっかけになった試合などはありますか

2カード目の明大戦ですかね。

――秋季リーグ戦途中には2番に入るなど、打順の変更もありましたが、どのような気持ちでしたか

いや特にはないです。何番でも自分にできることは限られているので、足も速くなければ、長距離を打てるわけでもないので、特に変わったことはなかったです。

――特に役割などを意識することはありませんでしたか

たぶんバントの確実性を買われて2番にして下さったので、そこだけはミスをしないようにということは意識していました。

――守備面やリード面に関しては一年を通してどのように感じましたか

具体的には細かすぎて言えないのですが、たぶん有原(航平、スポ4=広島・広陵)とバッテリーを組んで抑えるのはどの捕手でもできるかなと。そうではなくて若い投手を勝ち投手にしてあげるというのが難しかったなという気もします。

――守備の面での盗塁阻止率についてはいかがですか

数字としてはもっとできたなと思いますね。

――先ほどもお話に出ましたが、昨年は有原選手が大活躍されました。実際に球を受けていて何かそれまでとの変化を感じることはありましたか

結果から言うと、秋は最優秀防御率のタイトルを取っているので間違いなく変わっていると思うのですが、球が低めに集まるようになったかなと。打者からすると一番見えにくいところに球を投げられるようになったことで結果につながったのかなという感じがします。

――有原選手以外の投手に関して何か感じた印象はありますか

選手層が結構若いので特に悪かったところはないかなと思います。点を取ってあげてれば勝てたはずなのにという試合が多かったので、良くやってくれたなと思います。

――チームとしては、春季リーグ4位、秋季リーグ3位という不本意な成績に終わったと思いますが、この結果はどのように捉えていますか

常に勝つことが当たり前のチームなので、おっしゃる通りで本当に不本意ですね。

副将としての働き

副将、捕手としてワセダを勝利へ導く

――新チームになってから、土屋選手は副将に就任されました。その経緯を教えてください

監督とスタッフが中村(奨吾、スポ4=奈良・天理)を主将にして、土屋を副将にすると決めたので、選手の意見とかではないですね。頼まれたらそれをやるという感じです。

――副将への就任を頼まれたときの気持ちはいかがでしたか

それなりの役職には就くだろうなと思っていたので、特に驚いたということはないです。

――副将としてはどのような働きをしていきたいと考えていますか

主将があまりしゃべらなくて、彼はプレーでみんなを引っ張ると思うので、自分はちゃんと言葉とかで引っ張っていければなと思います。

――最上級生としては後輩たちの育成も課題の一つであるかと思いますが、いかがですか

育成する力も特にないですし、自分が必死にやるだけですね。自分が必死にやっていれば、それを見ていいと思えば真似をするだろうし、駄目だと思えば他の選手をまねするだろうし。それくらいしかできないですね。

――捕手同士でコミュニケーションを取ることは多いですか

自分は捕手全員がライバルなので、何も教えないです(笑)。そりゃそうですよ。レギュラーが決まっているわけではないし、そんなにずば抜けた能力があるわけでもないから、常にライバルなので、「あいつ、あそこできてないなあ」と思ってもそんなに教えないです。

――1年生の頃の取材で、「チーム全体を引っ張っていける選手になりたい」とおっしゃっていますが、そこに近づいてきているのではないでしょうか

本当ですか(笑)。近づいてきてればいいですね。周りの評価がそうなっていればいいです。

――主将には中村選手が就任されましたが、土屋選手から見てどのような主将ですか

あまり前に出て言葉で「こうしていこうぜ」みたいなことは言わないけれども、陰で俺を見とけよっていう感じですかね。

――主将に就任してからの中村選手に何か変化は感じますか

彼らしく自由にやっているなと思っています。特に変わることなくやっていて、それが逆にいいのかなと思います。

――お二人でチームのことについて話し合ったりされることはありますか

やっぱりきょねんに比べたらするようになりましたね。

――言える範囲でいいので、具体的にはどのような話をされているのでしょうか

言える範囲はないですね(笑)。

――中村選手にチームのことについて一緒に話し合ったりする方はいらっしゃいますか

学生コーチとは必然的に話すことになりますね。それはことしだけではなくて、きょねんの主将とか副将とかもやってきたことだとは思います。

――ここからはこの冬の期間についてお聞きしたいと思います。土屋選手はけがをされていたと伺いました。具体的にはどのようなけがだったのでしょうか

体のある関節を痛めていました。でも別にこれから先に影響することでも何でもないので、一時的に痛めていたというだけです。

――では現在は通常通りの練習をされているのですか

はい、そうです。

――けがをされている中で、冬季キャンプなどが行われましたが、何か心がけていたことはありますか

不信感を漂わせないようにはしていました。けがをしていると屋内に行って練習することが多くなるし、トレーニング室にこもることもあるし、ケアのためにみんなとの練習から外れることもあるのですが、そればかりやっていると立場も立場なので後輩からしてもおかしいなと見えるはずですし、けが人でも極力グラウンドに顔を出すようにしていました。

――少し離れた視点でチームを見てみて何か感じたことはありましたか

まだ新チームが始まったばかりだったで、あまり「こうだな」というふうには思わなかったのですが、とりあえずけがをしていることに対しては常に「やばいな」と思っていました。

――これからアメリカキャンプ、宮崎キャンプと続いていきますが、まずは個人的にどのような部分を強化していきたいと考えていますか

きょねんは自分自身チャンスで打てなかったという場面がかなりあったので、それは打てるか打てないかは結果として、その前にしっかりときょねんよりも強くバットを振れるようには鍛えていくというのは個人的な目標です。< /p>

――それではチームとしてはどのような部分を強化していきたいですか

きょねんのリーグ戦のメンバーから見ても、抜けているのは東條さん(航、平26文構卒=現・JR東日本)だけなので、戦力的には十分かなとは思うんですけど、このチームとしての実戦はまだ踏んでいないので、キャンプとかでしっかり実戦練習をしたり、オープン戦を戦ったりして、実戦の中でいままでやってきた練習ができるのかというところがカギかなと思います。

優勝に向けて

今季のチームの展望について話す土屋

――チームのことについてお伺いします。打撃陣はきょねんの中軸がそのまま残っています。どのようなかたちで点を取っていこうと考えていますか

オーソドックスに、3番、4番、5番とか、中村や武藤(風行、スポ4=石川・金沢泉丘)がいるところにどれだけ走者をためて打線を回せるか、逆に言えばどこからでも走者がいれば点を取れる打線かなと思うので、どれだけ走者をためた状態で後ろにつなげるかというのがカギかなと思います。

――その中で土屋選手はどの位置で、どのような働きをしていきたいですか。

監督が何を求めるかは分からないですが、走者がいたら返せるのが一番いいですよね。いなくても次につなげるのがいいですけど、それは理想の理想なので。そのときそのときで自分なりに何ができるのかを考えることが自分の仕事かなと思います。

――一方の投手陣は横山選手(平26スポ卒=現・東北楽天)が抜けて、終盤の投手起用に不確定な部分もあるかと思いますが、いかがですか

みんな争っているし、その争っていることが大事だと思うので、いまこうやって切磋琢磨(せっさたくま)してやっていけば、先発、中継ぎ、抑えとどこをやってもやれると思うし、「もうこいつが投げるから俺は投げられない」と思うと、もうどこにいっても投げられないと思うので、そういった意味ではいまいい環境でやっていると思います。

――土屋選手自身が球を受けていてことしの活躍に期待を持っている選手はいますか

2年になる竹内(諒、スポ2=三重・松阪)という左投手がいるのですが、いいかなと思います。よく見ておいてほしいです。

――野手で期待している選手はいますか

いやみんな自分よりも打撃もいいし、足も速いし、期待っていうよりもみんな頼むぞ、という感じです。

――ここまでのお話も踏まえて、ことしのチームはどのような戦い方をしていくことになりそうですか

まだ実戦をやっていないので点の取り方も分からないですが、おそらくオーソドックスに変わったことはしないと思うし、走者が出たら送って、返せる場面をつくって、返すべき人が返して、それの繰り返しかなと。いままで通りでやることは変わらないと思います。

――特にきょねんのチームとことしのチームとの違いは何かありますか

きょねんはまだ自分たち個人個人に能力もなければ自信もなかったので、まとまり切ることができませんでした。ことしは個人の力で戦えるところまで高めて、その結果チームが一つになれればいいかなと思っています。

――いま「個人の力」という話がありましたが、ことしは中村選手や有原選手といったプロ注目の選手がおり、世間的なワセダへの注目度も高まっています。このことに関してはどのように感じていますか

野球部が注目されるのはことしだけではないし、中村、有原の二人だけと考えれば、斎藤さん(佑樹、平23教卒=現プロ野球・北海道日本ハム)の代は3人もすごい方がいらっしゃったので。野球に関するところはもちろんですけど、野球以外のところで、「ワセダはちゃんとやっているな」、「制服もきちんと着て、あいさつもできて、しっかりしているな」と思われるようにしたいなと思います。

――リーグ戦の開幕も近づいてきますが、ことし特に意識する相手はいますか

きょねんのリーグ戦で負けた相手は全部です。強いて言うなら、明大、法大ですね。オープン戦はどこと当たろうが自分たちを試す場なので相手どうこうはないですが、リーグ戦はその2校ですね。

――他の大学の捕手を意識して見ることはありますか

見ますね。明大の坂本誠志郎は年下ですけど、やっぱり優勝している捕手なので、捕手は結果がすべてだと思うし、いい捕手だなと思います。

――それではまず春季リーグ戦に向けての目標と意気込みをお願いします

優勝しかないですね。しばらく優勝から遠ざかっているし、最後に監督を胴上げできるようにしっかりやっていきたいなと思います。

――それでは最後に、副将としてチームをまとめていく上での意気込みをお願いします

1年間が終わって卒業してから何年かしても「土屋さんはすごかったな」とか、いい意味での印象が残るような働きかけをしていければいいかなと思います。プレーや結果はもちろん、普段の生活態度などを見てもあの人すごかったなと思われるような存在になれるように頑張っていきます。

――ありがとうございました!

(取材・編集 井上雄太)

土屋

◆土屋遼太(つちや・りょうた)

1992(平4)年7月20日生まれ。173センチ76キロ。東京・早実高出身。教育学部4年。捕手。右投右打。以前に韓国を訪れた際には、日本の野球環境の豊かさを改めて実感したそうです。私たちも素晴らしい球場で野球を観戦できる環境に感謝しなければいけませんね。