粘り強い試合運びで決勝進出 日本一まであと一つ/東日本国際大戦

野球

全日本大学野球選手権 6月15日 神宮球場

TEAM 10
早 大
東日本国際大
(早)伊藤樹、香西、○安田-印出
◇(二塁打)なし (三塁打)なし (本塁打)吉納(6回)

 準々決勝で九産大に快勝し、準決勝に進出した早大。この日は南東北大学野球連盟の代表校である東日本国際大と対戦した。先発したエース・伊藤樹(スポ3=宮城・仙台育英)は5回に適時二塁打を浴び、2点を先制されるも、直後の6回に吉納翼副将(スポ4=愛知・東邦)が逆転の3点本塁打を放つ。しかし、その裏に暴投で追いつかれるが、その後はお互いに要所を抑え、息をのむ展開に。延長にもつれ込み、10回に吉納副将の犠飛で1点を勝ち越すと、2回戦の大商大戦同様、延長タイブレークで勝ち越した1点を守り切った。緊張感漂うゲームを勝ち切った早大は前回王者・青学大が待つ決勝戦に駒を進めた。

 先発を任されたのは、大商大戦で10回を完封した伊藤樹。この日も圧巻の投球を見せたい伊藤樹であったが、ボール球が先行する展開が続く。それでも4回まで粘り強く投げ、相手打線を無安打に抑える。しかし、5回に安打とバント処理のミスで走者を2人背負うと、暴投で走者を二、三塁に進めてしまう。続く黒田義信(2年)に適時二塁打を浴び、2点を先制された。

 先制を許した直後、先頭の石郷岡大成(社3=東京・早実)が俊足を生かし、内野安打で出塁。続く寺尾拳聖(人2=長野・佐久長聖)のバントを相手投手が二塁に送球するも石郷岡の足が勝ち、野選となった。後続が続かず嫌な流れとなったが、2死から吉納副将が迷わず振りぬいた打球は右翼スタンドに。勝負強い副将の一打で試合をひっくり返した。

6回に3点本塁打を放った吉納副将

 この試合で初めてリードする展開となった早大。逃げ切りたいところであったが、6回に伊藤樹の暴投で同点に再び追いつかれる。ここまで幾度となくチームを勝利に導いてきた伊藤樹であったが、悔しい途中降板となった。続いてマウンドに上がったのは香西一希(スポ2=福岡・九州国際大付)。テンポの良い投球で流れを渡さず、最少失点でこの回を終えた。

 その後は両チームが好機を作るも気迫のあるプレーを見せ、互いに一歩も譲らない展開が続く。8回、先頭の尾瀬雄大(スポ3=東京・帝京)の安打と山縣秀(商4=東京・早大学院)の犠打で勝ち越しのチャンスを迎える。吉納副将の二ゴロで尾瀬は三塁に進塁したが、印出太一主将(スポ4=愛知・中京大中京)の中堅前に落ちそうな打球を相手外野手が好守を見せ、無得点に終わった。チャンスを生かせなかった早大は、その裏に二塁打と犠打で1死三塁のピンチを迎える。スクイズや内野ゴロでの勝ち越しも考えられる絶体絶命の状況で、相手打者の放った打球は前進守備の内野手と中堅手・尾瀬の間へ。しかし、打球の先にいたのは早大が誇る鉄壁の遊撃手・山縣。忍者のような守備範囲の広さでスライディングキャッチを見せ、勝ち越しを許さなかった。

8回のピンチを切り抜け、ほえる香西

 9回にも互いに走者を出しながらも得点できず、10回から大会規定により、無死一、二塁で延長タイブレークに突入した。先頭の尾瀬が四球を選び、無死満塁とチャンスを拡大する。山縣は遊ゴロに倒れ1死となったが、このチャンスで吉納副将が犠飛を放ち、欲しかった1点がついに早大に入った。その裏、9回からマウンドに上がっていた安田虎汰郎(スポ1=東京・日大三)が同じく走者を一、二塁に背負った状況から試合が続行される。一塁走者が生還すれば逆転サヨナラ負けという状況でも安田は落ち着いた投球を見せた。先頭打者を右飛に打ち取ると、二塁走者が飛び出しているのを見逃さず、吉納副将が捕殺。一気に逆転の芽を摘み取ることに成功した。四球で再び走者を一、二塁に背負うが、最後の打者を得意のチェンジアップで見逃し三振に。苦しい試合展開の中でも踏ん張り、9年ぶりとなる決勝進出を決めた。

最後の打者を抑え、ガッツポーズをする安田

 1点を争う緊迫した展開となった東日本国際大戦。ミスに付け込まれ、何度も相手に流れが行きかける試合であった。それでも、先発の伊藤樹、中継ぎの香西、安田が粘り強い投球を続け、苦しい試合を勝ち切った。前回出場以来、9年ぶりの全日本制覇に向けてあと一つ。立ちはだかるのは、前回大会王者の青学大。準決勝もコールドで勝利するなど、投打ともに厚い戦力層を持つ優勝候補の一角である。六大学野球連盟の代表として、『強い早稲田』を頂上決戦でも披露したい。最高の景色はすぐそこまで迫っている。

(記事 橋本聖、写真 近藤翔太)

吉納翼(スポ4=愛知・東邦)

ーー先制され苦しい展開でしたが、今日の試合を振り返っていかがですか

本当に苦しい展開ではありましたが、今年の早稲田の粘り強さの本領を発揮する場面だったというのが逆に現れたので、みんなで体現することができて非常にうれしく思います。

ーーなかなか流れが早大に来ませんでしたが、試合中のチームの雰囲気というのはいかがでしたか

誰1人として下を向くことなく、絶対チャンスは来るから、ものにしようという前向きな声も出ていました。自分がホームランを打つまでは本当に可能性のない打撃をしていたので、そういった意味ではしっかり修正できてよかったなっていう風に思います。

ーー6回の3点本塁打を振り返っていかがですか

感触は良かったですし、追いつかれはしましたけど、あそこで1本出てなかったら今日の試合は落としてたと思うので、本当に良かった1本だと思います。

ーー10回の打席はどのような気持ちでしたか

とにかく1点ずつという早稲田の泥くさい野球をやるだけだったので、1点取れて良かったの一言です。

ーー決勝戦への意気込みをお願いします

明日、日本一を取って監督を胴上げします!