優勝まであと1つ--。日本A代表がいない中で開催されている全日本総合。3年連続ミックスダブルスでの日本B代表に選出されており、本大会第2シードの緑川・齋藤組に、優勝する大きなチャンスが巡ってきた。それと同時に勝たなければならないというプレッシャーを感じながらも、ここまで着実に登りつめた。緑川大輝(スポ3=埼玉栄)・齋藤夏(ACT SAIKYO)ペアは、念願の全日本総合選手権(全日本総合)での初タイトルをかけて、仁平澄也・朝倉みなみ(NTT東日本)組と決勝の舞台で対戦した。
前のショットを返球する緑川
この日最後の試合となったミックスダブルス。緊張感が漂う中幕を開けた。第1ゲームの入りは、両ペアともにショットがネットにかかるなどミスが出る形で始まった。3ー3とし、ここから仁平・朝倉ペアが3連続ミスでの失点。相手に悪い流れが出始めたところで、緑川・齋藤組の息のあった猛攻がスタート。緑川のスマッシュや、齋藤のネット前でプッシュが決まり、波に乗り始める。8ー4となり、まだまだ攻撃の手を緩めることがなかった。齋藤が前でシャトルを止め、相手を揺さぶる。抜群のコンビネーションを武器に早いテンポで攻め、前へ前へと詰め寄った。ここでインターバルを挟み、7連続得点を挙げる。この勢いのまま攻め続けたいところだが、ミスが出てしまい、一気に4連続失点。相手も徐々に流れを引き寄せ始めたが、攻める姿勢を崩さなかった緑川・齋藤組。緑川がノータッチでスマッシュをコートに突き刺すなど、観客を沸かせるプレーも見られた。最後はプッシュで球を相手コートに押し込み、21ー14。危なげない試合運びを見せ、第1ゲームを先取した。
得点しガッツポーズを見せる齋藤
第2ゲームに入ってからも集中力を切らさず、積極的に仕掛けた。序盤に緑川が相手の足を止めるドロップショットを決める。ここで仁平・朝倉組は齋藤を後ろに下げ、攻撃のリズムを崩そうとする。緑川が前衛、齋藤が後衛という形になっても、前に甘く返ってきた球を緑川が決め、本来の形ではなくともポイント。また齋藤もドロップやクリアを使い、前衛に上手く入ることで対応した。第2ゲームでも緑川がスマッシュを打ち、返ってきた球を齋藤が前で積極的に触り、シャトルを止めることで得点した。この形での攻撃が光り、終始自分たちのリズムで攻撃をすることができた。最後も、齋藤が前でシャトルを止め、相手はそれに反応できず、試合終了。第2ゲームをわずか13本に抑え、初の全日本総合優勝のタイトルに輝いた。
優勝おめでとうございます!
A代表が欠場しているとはいえ、全日本総合優勝という事実は変わらない。「自分の自信につながった」(齋藤)と口にするように、この経験がこれから目指す高い目標へと近づく確実な一歩となっただろう。2人が見据えるのは3年後のパリ五輪。日本A代表の背中を追いながら、「いずれかは自分たちも」(緑川)と闘志を燃やしている。2022年も日本代表として、世界を舞台に戦う緑川・齋藤組。若きペアのさらなる飛躍へ、期待に胸が膨らまずにはいられない。
(記事 山田彩愛、写真 渡邊彩織)
結果
▽ミックスダブルス
緑川大輝・斎藤夏(ACT SAIKYO)○2ー0(21ー14、21ー13)仁平澄也・朝倉みなみ
コメント ※共同記者会見より抜粋
緑川大輝(スポ3=埼玉栄)・齋藤夏(ACT SAIKYO)
――試合を振り返っていかがですか
緑川 A代表がいない中、しっかり優勝できてすごくホッとしています。
齋藤 A代表がいない中で自分たちが勝たないといけないというのがあったので、優勝できたことはすごくホッとしています。
――今年1年を振り返っての総括と今後の目標をお願いします
緑川 ランキングサーキットも3位であったり、優勝を目指している中でなかなかいい結果になっていなかったのかなと思っていたのですが、最後の最後でこういったA代表がいないというチャンスが回ってきて。優勝しなきゃという気持ちでプレッシャーにも多分なってはいたのですが、あまり意識せずにできていたので、今年全体として、最後の締めくくりはすごく良かったのかなと思っています。今後の目標としては、A代表には入れたら入りたいですし、そのまま世界ランキングももっともっと上げて、2024年のパリのオリンピックに出られたらと考えています。
齋藤 コロナ禍でなかなか試合がない中でのランキングサーキットで負けてしまって、自分はすごく悔しくて。そこから合宿とかだけで試合は無くて、自分がどこの位置にいるのかすごく不安もいっぱいあったのですが、今回A代表がいない中でこのようなチャンスをものにできたことは、すごく自分の自信につながったかなと思います。今後の目標としては、A代表にも入りたいですし、そこでランキングを上げていって、2024年のパリオリンピックに出られたらいいなと思います。
――今大会を通じて試合後あまり出来が良くなかったというコメントが多く見られましたが、その中でも最後勝ち切れたのはどんな要因があったのでしょうか
緑川 全体を見たら悪いという感じだったので、ところどころ良かったところとか、ダメなところというのは、瞬時に自分たちでインターバルの時などに話して、ここはこうした方がいいとかしっかりコミュニケーションをとって。ダメな時にいいプレーというのは絶対にできませんが、ダメなときはダメな時なりのいいプレーがあると思うので、そういったダメなところはじゃあ次こうしたらとか、こうしていこうというコミュニケーションが取れていたので、そこが勝ちにつながったのかと思います。
齋藤 今までだとコミュニケ―ションもそうなのですが、いいところも悪いところもそこまで自分たちが話さないで、1本とって次、1本とって次というように試合を進めていました。そこでこの1年間は話すことが増えたというか、自分たちで話してから試合をするというのが次のラリーにもつながりますし、試合もコミュニケーションが取れたので勝ったのだと思います。
――3年後という時間がない中で、来年の1年間で何をしなければいけないか、あるいはどこにいなければいけないか考えていることがありましたら教えてください
緑川 A代表に入れるという仮定で話します。まだまだランキングが今そこまで高くないのが現状で、パリ(五輪)に出るにはおっしゃる通り、時間がないというのは自分たちの中でも話し合っています。時間がないから焦るのではなくて一つ一つの大会を大事にやっていこうと話しています。結果が出てくれば自ずとランキングにもつながって行きますし、そういうところで取りこぼしがないようにやっていこうと二人で話しています。
齋藤 出た試合は一つ一つ大切にしていこうという気持ちでやっています。
――目標を達成するためにプレーの面でそれぞれどんなところが課題になっていると認識していますか。またもし参考にしているペア、選手がいれば教えてください
緑川 まず参考にしているというのはあまりないのですが、いろんな選手、いろんなペアにそれぞれいいところがあって、このペアはこういうところいいなというのであれば、いろんなペアからそういうのを盗んだりとか真似してみたりはします。ですが、あえてその人の真似をすることも大事ですが、自分のものにしなければいけないというのがすごく大事なので、その人の真似するプラス自分のものにするプラスアルファを自分の中で作っていくというのが自分の中であります。自分たちの課題としては、まだまだレシーブからの組み立てというのがなかなかできていません。今大会はシャトルが飛ばない環境下でまだレシーブができていたほうなのですが、シャトルが飛んで相手のスマッシュが速くなったりすると、まだまだレシーブができなかったりするので、そういうところを詰めていきたいなと思っています。個人としてはまだまだパワーが全然足らないというのが自分ではすごく感じているので、こういった飛ばないシャトルの時などは本当に何本打っても決まらないような状況になって、いつまでたっても状況が変わらないという風になっていたので、そういった面でももっともっとパワーをつけていかないといけないのかなと思います。
齋藤 レシーブ面も強化していかないといけないのですが、自分たちの1番の凄みはコンビネーションなので、そこをもっともっといろんなレパートリーではないですが、そこを増やしていければいいのかなと思います。それと自分はタッチの速さをもうちょっと上げないといけないので、タッチの速さと動きの速さを上げる練習をやっていきたいと思います。
――東京五輪で渡辺勇大・東野有紗選手(日本ユニシス)がメダルをとったり、世界選手権でも日本勢の活躍がありましたが、ミックスダブルスの最近の日本勢の評価であったり、他のペアの世界での活躍をどういう風に受け止めているのか教えてください
緑川 世界選手権でB代表の山下(恭平、NTT東日本)・篠谷(菜留、NTT東日本)ペアが3位に入って、単純に凄いなというのと、そのペア二人ができるなら自分たちもという焦りがあったりだとか、いろんな感情があります。ですが、二人で話し合っていってさっきも言った通り、焦るよりは自分たちのペースでオリンピックに向けて二人でやって、素でやっていけたらと考えているので、凄いとは思いますが、いずれかは自分たちもそういう風になろうという気持ちの方が強い感じです。
齋藤 山下・篠谷ペアも渡辺・東野ペアも本当に凄い選手なので、自分たちもそこにおいていかれないようにではないですが、そこについていくというのも大切なことなので、焦らず自分たちのペースで頑張っていければなと思います。