【連載】全日本総合選手権直前特集【第1回】吾妻咲弥×吉田瑠実

バドミントン

 全日本総合選手権(総合)を最後に競技生活を引退する吾妻咲弥(スポ4=福島・富岡)。今大会は吉田瑠実(スポ2=埼玉栄)にとっても吾妻と組む最後のダブルスだ。そんな2人が目指すのは互いに楽しいと感じられるプレー。多くの試合が中止となった今年1年を振り返り、総合にかける思いを伺った。

※この取材は11月19日に行われたものです。

今年のインカレにかけていた

昨年の総合では世界ランキング2位相手に健闘した

――他己紹介をお願いします

吉田 いつも輪の中心にいて、いい言い方なのかな。にぎやかなところには絶対います。自分的にはこのチームの中にいてほしい存在。

吾妻 うれしい!もう大丈夫それで(笑)。

吉田 もういいですか(笑)。そんな感じですかね、パートナーとしても人としても。

――では吉田選手の紹介をお願いします

吾妻 後輩だからかな。今まで出会った後輩たくさんいるんですけど、すごく考えているなと思ったし、ダブルス組んでいてもすごく話しやすかったです。やっぱりチームで一緒に戦っていても心強いし、何対戦でも安心して任せられるし、すごく信頼できるなと思います。

吉田 ありがとうございます!

――昨年の全日本総合選手権に出場されてから1年たちますが振り返ってみていかがですか

吉田 コロナとかで全然練習できていなくて。でも今年にかけていた部分も結構あったので、いろいろなくなったのはすごくショックだったんですけど、その中で今回は試合ができるということなので、それに向けて頑張っていきたいなと思います。

吾妻 私は試合が去年の総合ぶりなんですよ。今回は本当に久しぶりの大会だし、私は引退試合っていうのもあって。去年(インカレで)優勝を狙っていたというのはもちろんなんですけど、去年は組み始めてすぐのインカレで自分も3年で優勝したいという思いがあったので、そこが1番悔しかったですね。2人で出られる大会が、今回ラスト1回チャンスがあるということなので、そこに向けて楽しんで臨めたら良いんじゃないかなと思います。

――全日本学生選手権(インカレ)が中止と聞いたときのお気持ちは

吉田 もうバドミントン辞めてもいいかなと思うくらいこの今年のダブルスにかけていたので、ああどうしよう、っていう感じでした。特に何も考えずに。

吾妻 2人でも話したんですけど、今年狙っていたっていうのがあって、お互いに思っていることも同じでしたし。でもコロナの状況も見てなくなるんじゃないかという予想も少ししながらでしたね。公式戦がなくなるっていうことって初めてで、何も考えられなかったというのが大きいですね。

――ショックは大きかったですか

吾妻 大きかったですね。最後の年というのもあって。

――バドミントンに対するモチベーションはどのように保ちましたか

吉田 保っていないですね(笑)。

吾妻 私は逆にコロナを経験して、こんなに部活の人たちと切磋琢磨(せっさたくま)して、一つのことに集中して夢中になって頑張ることって当たり前じゃないんだと感じたと同時に、最後の年に向けて今まで以上に意外と楽しんでバドミントンができたかなっていうのはあります。でも、やっぱり去年ほどのモチベーションは保てなかったですね。

――今年のチームの雰囲気としてはいかがですか

吾妻 毎年早慶戦で代替わりするんですけど、コロナの関係もあって公式戦が中止ということが決まって、代替わりを例年よりも早くするということになるという異例の状態でした。やっぱりそこが私たちも何か残して終われたのかなっていう不安もありましたし、3年生は突然部のトップにならないといけないというところで最初難しいところではあると感じましたね。でも今は個人戦というのもあるので、それぞれの目標や、それぞれの目的に向けて取り組めているのではないかと思います。

――吉田さんから見た吾妻選手をはじめとした4年生の姿はいかがでしたか

吉田 みんな親しみやすくて、後輩とも関わってくれるので、この代のチームの雰囲気はすごく良かったと思います。まささん(小野寺雅之、スポ4=埼玉栄)のメニューもすごく良かったですし、川本さん(寛樹、文構4=埼玉・早大本庄)もまささんがいないときもどうにかしようと頑張ってくれているのがすごく伝わってきたし、吾妻さんはもういてくれるだけでいいので(笑)。

 

「こんなにバドミントンをしなかったのは初めて」(吾妻)

――自粛期間はどのように過ごされましたか

吾妻 私は兄弟が下に2人いるんですけど、ずっとバドミントンをしているので、こんなに家族との時間を取れたのって競技を始めてから初めてだったと思ったし、寮生活もしていたので家族と暮らせることってすごくなかったので、ある意味特別だったのかなと思いましたね。その反面、こんなにバドミントンをしなかったのは初めてだったので、体壊しました。ヘルニアなったもん(笑)。やらなすぎて、本当に運動不足すぎて(笑)。

吉田 私は最初トレーニングをしていて、いつバドミントンが始まってもいいようにしていました。でも、どんどんコロナがひどくなってから、もう(大会は)ないだろうってなって、ほとんど特に何もせずに過ごしました。

吾妻 8月の最後のインカレの予選会が自粛中に中止というのが出て。春リーグ(関東大学春季リーグ戦)がないだろうなっていうのは思っていたんですけど、東(東日本学生選手権)に向けて、東があるからコンディションを落としちゃいけないなという危機感はどこかで思っていたんですけど、東日本がなくなって、それが1番モチベ―ションが下がったきっかけかもしれないですね。

吉田 東がないならインカレもないだろうなって思いましたね。

――練習はいつから再開されましたか

吉田 6月の始めくらいですかね。

――練習形式などで今までと変更した点はありますか

吾妻 コロナはもちろん初めて経験したので、私はそのとき4年生で、トップでやっているじゃないですか。だからどうやったらいいんだろうと考えました。それでトレーナーと相談して、アルコールであったり換気であったりというのを注意しながらやっていたのですが、メニュー自体は大きくは変えていないですね。

――久しぶりの練習で感じた点はありましたか

吉田 コロナの期間に落ちたなっていうのはありましたね。明けてからの練習をいつもと同じくらいの強度でやるので、筋力落ちている状態でそれをやったことによるけががすごいですね。

吾妻  間違いない。私はスタートからけがをしていたので。ほんとに最後の1年何しているのって感じでした。せっかく練習できるようになったのにけがって(笑)。

――練習できなかった期間はどのくらいですか

吾妻 全部で3カ月くらいかな。

――練習できなかった期間の影響は大きいですか

吾妻 はい。初めて味わったよね。あんなの。

吉田 何をしていいかも分からず。

吾妻 何かやったら体おかしくなっちゃうし、3カ月やらないって初めての経験でしたね。

 

『感謝』の気持ちで

「楽しかった」と振り返る昨年のインカレ

――全日本総合選手権の組み合わせをご覧になっていかがですか

吾妻 1回戦の相手は高校生なので、頑張りたいですね。次はもう第1シードの選手なので。

吉田 そこまで行けたらいいなと思いますね。

――2試合目がポイントとなりそうですか

吾妻 そこにたどり着きたいですね。

――去年の全日本総合選手権から強化してきた点は

吾妻 自分たちのダブルスって、基本お互いの打つ球とか動きっていうのを体で覚えているので、パートナーがこっちに動いたからこっちに動こうっていうのをそれぞれが考えている部分があって、そのラリーの中で攻めに入ったときのリズムの良さ、テンポの速さっていうのは2人が体で覚えていると思います。そこは自分たちもやっていてすごく楽しいなって感じるのがあるし、あとは落ちていた分を微調整。組む回数も少なくなってしまったので、微調整、微調整というかたちで、まだまだ本格的にどこが良くなってきたかっていうのはこれからかなという感じですね。

吉田 はい、同じくですね。

――緊張感のある大会だと思いますがどのように感じていますか

吾妻 でもそんなに強い緊張感は感じてないですかね。

吉田 ちょっと慣れたかなって思う部分もあります。高校のときから出ているので、最初ほどは緊張しなくなりました。

吾妻 でも大学の試合と違って、自分の世界観というか、自分の試合を作るのは難しいなって感じますね。やっぱり相手のペースにもなっちゃうし、自分のやりたいようにはならないっていうのが難しいけど、またそこが面白いっていうのも感じるし。私は今回、本当に今までとは違った考え方で、緊張するとかではなくやっぱり最後というのがあるので、楽しみたいなっていうのを強く思っていますね。

――楽しみたいということですが、競技生活引退ということに関して寂しさなどはありますか

吾妻 でも高校生のときからこの年でバドミントン人生は終えるって決めていたことだったので、それで今年1年の大会がなくなったっていうのはすごく寂しいことではあるんですけど、最後1回チャンスがあるので。なにも考えずに終わるっていうよりかは、今までのバドミントン人生でいろんなことを経験してきたり、いろんな人に支えてもらったりっていう感謝をしっかりと持って最後やり切れたらいいのではないかと思います。

――吉田選手にとって最後の吾妻選手との試合ですが、どのように臨みたいですか

吉田 これってはまったプレーを2人とも分かっているのでそれを出せたらいいなと思っています。

吾妻  去年のインカレのように。2人ともすごく楽しかったんですよね。本当に1試合がすごく長くて試合の進行遅らせていたんですけど、すごく楽しかったっていうのがあって。

吉田 楽しかったっていう思い出のほうが強いですよね。それしかない。

吾妻 展開的には上手くいっていなくて最悪な展開ばかりだったんですけど。

吉田 本当に苦しかったはずなんですけど、2人で話すと楽しかったね、しかでてこないような。

吾妻 あれをもう一度味わいたいですね。

――総合までに残りの期間で強化していきたい点は

吾妻 私は本当に今まで大会がなくて、今年が最後というのがあって、運動不足を解消しなきゃいけないし、戻すっていう作業が本当に難しくて時間がかかると思うんですよ。

吉田 高齢者みたい(笑)。

吾妻 去年以上のクオリティを出すって本当に難しいなって思っていますし、なによりスポ科の卒論の提出日が12月11日です。すごく追い込まれると思うので、今から早めにバドミントンに手を付けたくて、すごい今卒論頑張っているんですよ。とにかく早く提出して、バドミントンに打ち込めるのは本当に最後だと思うので、運動しまくります。

吉田 最近サーブ周りがちょっとうまくいかなくなっているので、そこを調整していきたいのと、あとは吾妻さんのそれをカバーできるくらい動けたらなと思います。

吾妻  ありがとうございます!

――最後に全日本総合選手権に対する意気込みをお願いします

吾妻 去年自分たちが楽しいと感じたその感覚を味わいたいので、そこに向けて自分たちが調整していって頑張るのと、自分は今まで16年間やってきたバドミントン人生の感謝の気持ちを大切にして楽しんでやり切りたいです!

吉田 1年間試合がなくて、でもこの試合だけは無観客というかたちをとるなどして、いろいろかたちを変えてでもやってくれる影の支えてくれている人たちに感謝して、自分たちのベストを尽くして楽しんでいきたいと思います!

――ありがとうございました!

(取材・編集 渡邉彩織)

総合への意気込みを書いていただきました!

◆吾妻咲弥(あづま・さや)(※写真右)

1998(平10)年6月22日生まれ。165センチ。福島・富岡高出身。スポーツ科学部4年。学校で友達と授業を受けたり、ご飯を食べたりすることができなかった1年間は、少し寂しかったそうです。女子ダブルスに加えて、ミックスダブルスにも出場する吾妻選手。16年間の最後の試合に『感謝』の気持ちを持って臨みます!

◆吉田瑠実(よしだ・るみ)

2000(平12)年11月30日生まれ。155センチ。埼玉栄高出身。スポーツ科学部2年。取材した日の朝は起きることができず、1限のオンライン授業を受けられなったというエピソードを教えてくれました。高校生のときから出場している総合の舞台で、吾妻選手との最後のダブルスを楽しんでプレーします!