【特集】全日本総合選手権事後インタビュー 第1回 小野寺雅之

バドミントン

 2年連続で全日本総合選手権(総合)ベスト4。小野寺雅之(スポ3=埼玉栄)・岡村洋輝(日本ユニシス)組は若きペアから確かな実力を持つペアへと成長を遂げた。総合で繰り広げた熱戦について、この1年の活躍の背景について、小野寺に話をうかがった。

※この取材は12月5日に行われたものです。

成長を感じた今大会

小野寺の前衛でのプレーは攻撃の要となる


――全日本総合選手権を振り返って


 ほっとはしていますね。保木(卓朗)・小林(優吾)組(トナミ運輸)が棄権するのは知っていたんですけど、あの組み合わせになって。それであのヤマだったらベスト4には入れないといけないと思っていたので、ほっとしました。


――保木・小林組はシード選手ですが、対戦したかったという気持ちはありますか


 当たりたいっていうのはそうですね。やっぱりA代表とはやる機会がなくて、総合か自分たちがランキングを上げてそっちの大会に出るしかないので。でも、やりたい気持ちはありますし、自分たちが上のレベルに対してどれだけやれるかというのはやってみたかったです。


――昨年もベスト4に入り、B代表として活躍されていますが、そのプレッシャーは


 結構ありましたね。1回戦目は後輩で、高校の後輩には負けたくないので、それなりに気持ちがありました。2回戦目はレベルが大体同じくらいの選手だったので、そこはお互いに代表のプレッシャーは考えずに、力を合わせて頑張ろうと話していました。そこは良かったです。でも、準々決勝は大学生ペアが相手で、普通にやれば勝てる相手なんですけど、やっぱり「ここは絶対負けちゃいけない」とか逆に「なんだかんだ勝てるだろう」ってお互いそのスタンスでいたので、ちょっと気持ちの甘い面が出ちゃったのかなと思いますね。


――全試合の中で一番プレッシャーを感じたのは準々決勝ということでしょうか


 はい。


――格上選手と、近いレベルの選手、戦うときにはどちらの方がやりやすいですか


 それは向かっていく方が気持ちは楽ですね。準決勝もそうですけど、本当に自分たちは上の選手には負けて当たり前なんですよ。逆に自分たちの実力がどこまで試せるかなので、二人とも引くものがないです。だからそういう面では、上の人とやる方がいいですね。楽しいです。やっぱりすごくレベルの高い球とかが返ってくるので、こっちも楽しいですし、気持ちも向かっていくだけなので、やりやすいですね(笑)。


――「気持ち」という言葉をよく聞きますが、気持ちのつくり方はどうしていますか


 オンとオフとかは自分の中ではっきり分かれていると思います。オンのときはしっかり雰囲気をつくって練習したり、オフのときはたまにふざけたりすることもあります。練習はしっかり試合を意識してやっています。試合前とかのルーティーンとかはないですね。


――2回戦の西川裕次郎・星野翔平組(NTT東日本)との対戦は1つ大きな山場だったと思います。ストレートで勝てた要因は


 結構前半は負けていて。途中から逆転したんですけど、また追いつかれて。多分あそこで1ゲーム目をジュースで取られていたら、あのままやられていたと思うんですよ。だから多分、20-20になった時に…。なんやろなぁ。うーん。でもやっぱ気持ちじゃないですか。お互い実力は同じなで、そこらへんは技術どうこうというレベルではないので。追いつかれて20-20になったんですけど、でもそこでもう1回引かずに気持ちを高ぶらせて二人でやったのが、そこで2点連続で取れたんだと思います。そのあともその勢いでいけたんだと思います。


――やはりそこも『気持ち』が大事なのですね


 そうですね。自分はあまり技術がないので。高校のモットーというか、それも技術じゃなくて気持ちでやっていこう、という感じでした。だから、そこから高校の時からずっとそれをずっとやってきています。そういう面では、競った場面とかは結構経験しているので、追い込まれた時でも声出してやっています。


――今大会はお二人で助け合いながらプレーしているという印象を受けました


 それは結構成長した部分だと思います。どっちかがだめだったら、そのだめな方につられて、パートナーもだめになってしまうときもあります。この1年間は、お互いが成長したので。ペアが調子悪くてもカバーできて、最後の終盤でパートナーと合っていい感じになると思います。お互いに、絶対いい時と悪い時はあるので、そこで悪い時にどうやるのかというのは自分たちの課題だったので、そこで結構助けることができたのは成長した部分かなと思います。


――所属が違ってもペアを組み続けようと思った理由は何ですか


 高校最後の総合であまり結果を残せなかったんですけど、ちょうどその時ナショナルに選ばれて。「お互いどうなんだ」って聞かれました。バラバラでやっていくならナショナルも外れるし、どんどんやっていくなら入れるよって言われて。お互いに所属が違ってもやっていく気持ちはあったので、そこがきっかけで今に至ります。


――準決勝の相手は昨年と同じく遠藤大由・渡辺勇大組でしたが、昨年と比べて一番変わった点は


 一番違ったのは経験ですね。去年は(準決勝は)1回目だったので、結構雰囲気とかにのまれながらババババッといかれてしまいました。でも、去年を経験している分、今年は変えなきゃなと思ったし、雰囲気も慣れてきました。そこで結構自分たちのプレーは出せたかなと思います。


――相手ペアから「1ゲーム目の前半の攻撃は良かった」と言われていましたが、その手ごたえはありましたか


 そうですね。自分が結構前に入れたので、攻撃をする場面は多くつくれました。相手も緊張とかがあって向かってくるのが怖いと思うので、自分たちが思うように決められました。でもやっぱり、11点からはもう向こうも慣れてきて、でも自分たちの攻撃のパターンは結構一緒なんですよ。試合終わった後にアドバイスとか聞きに行っていて。ずっと同じことしかしてなかったんですよ。最初がーんっていけて良かったんですけど、それをずっとやっていたら、やっぱり相手もやり方を変えてくるじゃないですか。やり方変えてきた中でも、自分たちは同じプレーをしてしまいました。そこは相手にも読まれて、プレーを変えてきて、僕たちは対応できなくて。それでばーんっていかれたので、最初ばーんっていくのもいいけど、「相手が変えてきたらまた違った作戦を考えるといいよ」と言われました。


――前衛である小野寺さんが前に入って攻撃のかたちをつくることが多いと思います。自分が前に入らないとそのかたちをつくれないというプレッシャーはありますか


 結構そうですね。前衛はメンタル勝負なところはあります。後衛はどっちかというとフィジカル、ずっと打たなきゃいけないこともあるので。前衛はネットを挟んで相手との距離が近いので、お互いにどっちが前に入るってなります。メンタルでしっかり入れるっていうのも大事になってくると思います。でもそこは何も緊張しなかったので、最初は勢いよく前に入れたんですけど、相手の方がスピードとかあって。渡辺選手とかスピードのある選手なので、そこを結構読まれて、後半は全然前に入れなかったです。自分たちがサイドバイサイドになって、あっちが攻撃のかたちになってしまいました。そこはもっと自分が前に入るスピードを速くするとか、これからやっていきたいです。


「この1年は勝負」

試合中にもコミュニケーションをとる姿が印象的だ


――最初はあまり結果を残せなかったもののナショナルに選ばれたとおっしゃっていましたが、今は名実ともにナショナル入りを決めています。その中で意識の変化はありましたか


 最初の頃はやっぱりうれしくて。誰でも代表に入ったらうれしいと思うんですよ。最初はうれしいっていう気持ちで、あと、代表だから負けちゃいけないっていうプレッシャーもあって、1年目とか2年目はあまり結果は残せませんでした。だんだんとですね。3年目は結構結果も出てきて、その意識もいいと思うんですけど、これからもっと結果を残すには、またさらに今までの意識とは変えてやっていきたいです。まだB代表で満足していられないです。A代表もあるので、そこにいくには、二人でまだB代表じゃだめだっていう気持ちを持って、やっていかないといけないかなと思います。


――次世代を担う、というのは意識されていますか


 次世代っていうのはあんまり考えてないですね。多分オリンピック終わってから辞める選手とか出てくるので、それが抜けたらホキコバ(保木・小林組)とか、古賀輝・齋藤太一組(NTT東日本)とかその辺が上にいって、それに僕たちもついていけるように頑張っていきたいです。


――今年は国際大会でも結果を残されましたが、一番印象に残っている試合は


 印象に残っている試合…。カナダの試合ですかね。同年代のB代表の金子真大・久保田友之祐組(トナミ運輸)とやった時ですかね。ファイナルの30-28で勝って(笑)。そこからばばーんっていって、決勝は負けてしまったんですけど、勝ち上がることができました。2週連続で、そこからアメリカの試合もあって。結構そこで、勝てたから自分たちの自信になりました。それでそのままの気持ちでアメリカとかも戦えたので、印象に残っているのはその試合ですね。そこで負けていたら、自分たちはまだ自信がなくて、できなかったと思います。勝てたことで、結構いい方向にいったと思います。


――躍進のきっかけとなったのはこの1戦ということでしょうか


 そうですね。あの競った場面で勝てたのが良かったですね。


――高校の同期と比べて、危機感を感じているとお話しされていましたが、今もありますか


 そうですね。自分なりにはまだまだだと思うので。そこで、自分で一番になったらそこで止まっちゃうんですよ。もっと追いつけるように頑張りたいですね(笑)。


――満足しないで上のレベルを目指すというのはその気持ちから来るのでしょうか


 そうですね。満足したらレベルは止まっちゃうんで。常に何かを求めて、これがだめなら違うことをやっていこうとか、そうやっていけばもっと上のレベルに近づくと思います。多分満足したときはもう世界とかで戦って優勝した時じゃないかと思いますね。だから全然満足していないです。


――パリ五輪を目指していると思うのですが、徐々に現実味を帯びてきたという感覚はありますか


 ほんとっすか(笑)?ランキングとか成績は上がってきたんですけど、本当にまだまだだと思うので、まずは早くランキングを上げて、上の選手とやりあいたいというのはあります。そこで、最初は絶対通用しないと思うんですよ。だからそこでまた、自分たちで変えてやっていけばどんどん追いついたり、追い越したりできると思います。まずはランキングを上げてその土俵で戦っていきたいですね。


――パリ五輪までの4年間の計画はありますか


 ほんとでも、次の4年目の年が大事だと思います。ちょうどオリンピックの年で、総合でがらっと変わると思います。それまでにランキングを上げるのと、総合で結果を残すのとどっちも多分求められると思います。だから、この1年は勝負だと思います。


――来年は東京五輪がありますね


 あまり見る機会はないじゃないですか。人生に1回あるかないかの戦いなので。そこでもし(五輪に)出られて、何も分からないまま出場して、頭が真っ白になって終わるよりかは、観客のところでも行って、雰囲気を肌で感じたいです。それを会場に行って味わって、その次のパリ五輪で、自分がこの舞台に立ってやるんだと思いたいですね。


――最後に来年の抱負を教えてください


 えぇ~(笑)。まずは卒業する(笑)。卒業は本当に大事ですね。インカレ(全日本学生選手権)とかでもしっかり勝って、国際大会でも、上位に入れるように。頑張ってランキングを上げていきたいですね。


――ありがとうございました!

(取材・編集 山本小晴)

◆小野寺雅之(おのでら・まさゆき)

1998(平10)年9月16日生まれ。168センチ。埼玉栄高校出身。スポーツ科学部3年。多忙なスケジュールの中、「バドミントンの発展のためなら」と快く取材を引き受けてくださいました。実力もさることながら、このような優しさ、人柄の良さも小野寺選手の魅力となっているのでしょう。主将となる来季にも期待です!