第5回は主務として部の運営に尽力している中根智華主務(教4=東京・関東第一)。主務として多くの仕事をこなしながら選手としても練習に励む。そこにはやりがいだけではなく、苦悩もあった。そんな中で迎えたラストイヤーのインカレ。今の心境についてお話を伺った。
※この取材は9月25日に行われたものです。
「勉強の方も頑張る」
チームの一員として後輩にアドバイスをする中根
――まずバドミントンを始めたきっかけを教えてください
たまたま家族で体育館に行って。地域の体育館とかあるじゃないですか。小学校1年生くらいの時に、お姉ちゃんとお母さんと私の3人で行って、バドミントンを遊ぶ感じでやっていたら、そこに、入ることになる小学校のクラブの人がいて、「やってみない?」ということで始めました。ちゃんと始めたのは小学校3年生の時なんですけど、月1回小学校でやるクラブみたいな、そういう感じでちょっと打って楽しむっていうのがきっかけです。
――小3からはチームに入って練習されるようになったのですか
そうですね。週に3日とか練習して、練習を真面目にやるようになってから試合にも出るようになったという感じです。
――中学は地元の中学に進学されたのでしょうか
そうですね。そのまま公立、区立の中学に行きました。小学校の時に一緒だった子と一緒に行って、部活でちゃんとやっていました。
――高校は関東第一高校に進学されていますが、その経緯は
学校自体には女子のスポーツ推薦がなくて、形的にはスポーツで行った感じなんですけど、一般で入って、バドミントン週7日やるかたちでした。東京だと中高一貫校が多くて、中学が区立だと高校からスタートすることになるので、中高一貫校だとチームができあがってしまうので、高校からの子もいるようなところで、その中でも強いところっていうのもあってその高校を選びました。
――高校の練習は厳しかったですか
大学よりも全然きつくて。アップとかで4、5キロ走ってから体育館に行って3時間練習して帰るっていうのが週7日あって、オフが不定期だったので。土日も遊べるような時間を作らないような設定にされていて。9時から3時みたいな。遊ぶには微妙っていう感じです。午後だったら3時から7時とか微妙な時間に設定されていて遊ぶ時間はなかったです(笑)。
――バドミントンを中心とした生活だったのですね
そうせざるを得なかった感じです(笑)。
――関東第一は野球など他のスポーツも強いですね
スポーツコースは野球とかサッカーとかバドミントン、あとバレーがあって、男子だけのスポーツクラスがありました。でも女子はなくて、普通科で勉強してそれから練習だったので。
――中高時代を振り返って、アピールポイントなど、どんな選手でしたか
ずっと東京にいて、今も東京にいるんですけど、強い選手じゃないし、ベスト8くらいのプレーヤーだったので、自分をどうアピールするかっていうストロングポイントはなかったです。その代わりに勉強をしっかりして、進学に備えていたっていう選手でした。
――文武両道ですね
文武両道っていうか、武の方があんまり。戦績とかを残して行ける学校とか選択肢が少なかったので、それを補うために勉強をする選手でした。
――でも週7日練習して勉強もするのは大変ですよね
じゃないと将来がなかったので。自分がそんなに強くないっていうのも把握した上で、次のステップに進むために勉強していました。プレーヤーとしては活躍した方じゃないし、ある程度まではいるよねーっていう選手でした。トップではないし、学校も最強っていう感じじゃないし、全国常連ってところでもないので、勉強の方も頑張るみたいな感じでした。
――早稲田への進学はどのように
早稲田の教育学部の自己推薦制度っていうので、2年生の代がラストなんですけど。今は廃止になっちゃったんですけど、スポーツ系と文化系っていう二つのコースがあって、高校時代に頑張ったことがある人が自分を推薦できるっていう自己推薦のを出して入りました。小論文と英語のテストと面接がありました。バドミントンの成績もアピールしながら勉強もちょっとっていう感じです。
――進学先に早稲田を選んだ理由は
高校時代の顧問の先生が関東第一高校から早稲田に行っている先生で、お手本だったので、先生と同じ道というか、しっかりと指導していただいたので、それにならって自分も早稲田に行って強いチームとしてやりたいと思って受験しました。
――これまでのバドミントン人生を振り返ってターニングポイントはありますか
区立の中学校だったので、高校を私立にして自分よりも強い環境に行ったことだと思います。それまではベスト8くらいまでだったし、強い大会とか経験値がなかったので、自分よりも(レベルが)高いところに行って、全国大会に出るっていう目標とか、早稲田にくるとか、高い目標を持てるようになったことが、高校の選択の時に強いチームを選んだってことなのかなと思います。それがターニングポイントだと思います。
主務になって視野が広がった
――ここからは主務のお仕事について伺いたいのですが、主務になることが決まった経緯は
結構限定されていたんですけど、今までの主務の人たちは選手をサポート面をしていた人が主務になるっていう風潮があって。同期の中で試合に出られていないというのもあって、候補はいたんですけど、最終的には自分の中で他に貢献することが見つけられていなかったので、主務としてやっていければ良いなと思って決めました。
――主務としてどのような仕事をされているのですか
副務の時代からなんですけど、毎月の練習予定の体育館の兼ね合いとか練習時間を決めています。あとは試合の申請をしたりとか、申請をするに当たって、会計と連絡を取って振り込みをしたりとか、遠征時の旅館を取るとか、いろいろ交通の便の予約ですね。飛行機の予約を取ったりとか。あとは新入生歓迎会とか、来月に早慶戦があるのでその運営です。忘年会など部の行事も一応主務とか幹部で決めるときのリーダー的な感じで行っていて、毎月何かしらあります。毎日何かしらは考えて、一応それが仕事です。
――とても大変そうです
3年生とか2年生の後期くらいから携わってはいたんですけど、その時代は何したら良いか分からないとか、パソコンとかも慣れていなくて、結構毎日大変だなぁと思いながらやっていました。でも、今はラストの年なのでやるしかないなと思っています。それに自分が一番知っている代なので、しっかり指示しないといけないなと思いつつ、今は早慶戦の準備を進めている感じです。
――ホテルの予約も主務の仕事なんですね
でも遠征はそんなにあるわけじゃないので、春合宿と夏合宿、あとは東日本の大会が北海道であったんですけど、北海道の試合と、インカレ。今度は小田原であるんですけど、そんなにないので、そういうことも一応仕事の中に入ってはいます。
――後輩の副務に教えながら、という感じでしょうか
そうですね、引き継ぎというか。今は結構指示を出す側なので、やる仕事よりも指示側という感じです。だから負担は減ってはいます。
――試合よりも業務の負担の方が大きいですか
試合に出たい気持ちももちろんありますし、来月のインカレは自分も出ることになったんですけど、それ以上にチームを支えるというか。練習は練習でやって、その後とかに旅行会社に行ったりとか、競技スポーツセンターで練習時間の確認をしたり、あとは書類を書いたりしているので、練習は他の選手と変わらないです。
――練習もこなしながら主務の仕事を行うのは忙しいですか
忙しい時ももちろんあるんですけど、慣れてくればそんなに時間を取らないでできるので、面倒くさいですけど、そんなに大変ではないですね。聞いていると大変そうですけど、やっているとそんなでもないです。だんだんこなせるなーくらいです。
――主務としてチームを見るようになって、今までと違いはありますか
今まで選手として見てきた時は、強い選手ばかりですし、尊敬する部分をすごく見ていました。でも主務になってからは、1人1人の人間性とかが見えてきて、この人面倒くさがりだなとか(笑)。連絡がまめだなとか、1人1人と関わるので見えてきた部分があります。結構性格が分かったので、主務になってマイナスはないですし、結構広く見えるようになったのかなと思います。
――高校時代は役職とかはありましたか
中学、高校は一応キャプテンというか部長はやっていました。関東第一のときは、自分たちの代に強い選手が集まっていたわけでもないので、その中でキャプテンはやっていて。そんなにすごいってわけじゃないんですけど、一応そうやってやってきたので、大学に入ってサポート側に回るというのは割と抵抗がありましたね。最初は雑用みたいに思っていたので、最初はテンパりました(笑)。
――今はどうですか
今も一番のやりがいを感じているわけじゃないです。ただ仕事としてあるし、それをやらないと回らないので、やっている感じです。
――オフの日にもそういった仕事があるのでしょうか
オフの日はやらないです。学校とかやっている日にやっちゃう感じなので。基本オフの日は潰さないで、自分の予定ばっかり入れています。
――オフの日は何をされていますか
1人で出かけたりもしますし、同期とどこかカフェとか行ったり、家で寝ていたりとかいろいろしています。
実は緊張しい
――趣味とかありますか
すごくプライベートな話なんですけど、最近サッカーにハマっていまして。サッカー見るのが好きです。あとは1人で買い物行きます。1人でぶらぶらするのが好きです。新宿のルミネとか行ったりとか、1人で映画見たりとか。
――1人で行動するのがお好きなんですか
はい。温泉も1人で行きます。千葉の方の温泉に行きました。楽なんですよね。1人行動…。さみしいやつになっちゃった(笑)。
――好きな音楽とかありますか
試合前に失恋ソングとか聞くタイプなんですけど、その歌が好きなので暗くならないんですよ。失恋ソングが一番好きです。
――気分を上げるような曲ではないのですね
ないですね。失恋ソングを聞いて、そのまま試合行くぞってなれます(笑)。
――ルーティーンはありますか
ないです。めちゃめちゃ緊張しちゃうので、じっとしていられないんですよ。ルーティーンとか覚えても忘れちゃうかもしれないので(笑)。できないです(笑)。
―― 緊張するタイプですか
めちゃめちゃ緊張します。試合も緊張しますし、前で喋るのもめちゃめちゃ緊張します。緊張しいですね。中学からずっとで、直らないです。
「やり切りたい」
忙しい中主務と選手を両立している
――ここからはチームについてお伺いしたいのですが、チームの雰囲気はいかがですか
代が変わってからずっとなんですけど、インカレで男女アベック優勝するっていうことがあるので、全員優勝したいっていう気持ちでいます。
――男女のチームの仲は
他の大学とは違って男女で練習していて、毎日男女でやっているので。男女として見るよりも部員としてお互いが接しているので、仲は結構良いと思います。
――早稲田の仲でも男女一緒に練習するのは珍しいですよね
一応男女としての別はあるんですけど、同じバドミントン部として分けて考えずに、OBとかも男女でやっているから一緒に目標も考えてねって言われているので。それは伝統なのかなと思います。
――女子部の雰囲気はどうですか
結構下級生に強い選手が多いので。人数は全然多くないんですけど。下級生が多く出ているので、結構話し合いというかそういうのをしないといけないチームだなと思っています。あんまり上下関係というのはないので、逆に思っていることを言うような関係なのかなとは思います。
――最上級生となって下級生とコミュニケーションを取る上で気をつけている部分はありますか
4年生として話すというよりも、同じ目標を持つメンバーとしてこう考えているって話すとか。たとえば、同じ目標を持っているから、自分だけのことを考えて話すんじゃなくて、チームのためにと思ったことを話すとか、マイナスなことは発言しないとか。4年生だから仕事をしないとかじゃなくて、出ている選手のためにいろいろ試合間に氷のうを当てるとか、飲み物を用意してあげるとか、4年生というよりもチームのメンバーの1人としてどうあるべきか常に考えています。
―― アイシングをしているときにアドバイスとかはされますか
試合によってですね。プレーヤーの方が強いし、分かっていると思うんですけど、見ているところでこうしたら良いんじゃないとか、緊張をほぐすようなことを言っています。笑顔になってくれるような、アドバイスとかじゃなくて、そういう一言でやる感じです。
――東日本学生選手権ではご自身もダブルスベスト8に入りましたが、振り返っていかがですか
ペア替えを行って、自分はインカレを目指すっていうのを決めていました。パートナーが去年のインカレでベスト8っていう成績を残しているので、自分と組んで成績が落ちるとかそういうのがあったらいけないなと思って、自分もちゃんとやらなきゃいけないというそういう思いでやりました。勝って、勝って、という目標じゃなくて、目の前の1戦を戦って、その結果という感じです。
――ペアを組む鈴木ゆうき選手(社2=宮城・聖ウルスラ学院英智)とは仲が良いですよね
2個下ではあるんですけど、学年の差はなくて、いろいろアドバイスをもらっていて、私生活でも遊びに行ったり、ご飯食べたりとか一緒にいることが多い選手ですね。
――そんな選手と組んで勝ち取ったベスト8という結果はいかがでしたか
自分もうれしいですし、彼女の戦績を下げてはいけないというプレッシャーの中で東日本でそういう戦いができたので、まずはほっとしました。うれしいというかほっとしているという感じです。お互いそうだと思うんですけど。
――インカレ初出場になると思うのですが、今の思いは
3年半積み上げてきたものを出せるようにしたいです。ここに勝たなきゃいけないとかはもちろんあるんですけど、どういうときが一番強いかっていうのを考えたら、やっぱり楽しんでいるときの自分たちが一番強いよねっていう話をパートナーともしていて。バドミントンを楽しむこととそれに伴って戦績が大事なのかな、というのは自分たちの中であります。
――目標っていうのは
公式戦の経験がないので、ベスト16のあたりがヤマ場かなと思っていて、しっかりそこまで頑張ろうっていうのを組み合わせが出た時にちょっと話しました。
―― インカレが大学生活最後の試合でしょうか
一応早慶戦はあるんですけど、公式戦としてはインカレが最後です。バドミントン人生も終わりです。なので、今年が最後だし、インカレが最後になります。
――ラストにかける思い、というのは
やり切るっていうことですかね。それくらいしかできることがないので、ある意味プレッシャーもないです。出たことがないので。去年よりも、あの先輩よりも上にっていうプレッシャーを抱えていない分、逆に自分の力を出し切らないといけないなと思います。出し切っても勝てるか分からないので、ちゃんと出し切れるようにしないといけないと思います。周りの選手の方が強いので、ベストを出し切りたいです。
――小3からのバドミントン生活が終わってしまうのは感慨深いですね
終わりなんですよね。14、15年あるんですけど、そんなに長かったとも思わないですし、終わってしまうんだっていうのも…。いろいろありますね。
――バドミントン生活が終わってしまうのはさみしいですか
終わったときに思うんですかね。今は目の前の大会が大きいので、終わったときに感じるんじゃないですかね(笑)。でもやり切ったという方が強いんじゃないですかね。
――ここまで長く続けられた要因は
周りの人間関係かなと思います。小学校の時もチームの監督さんが良い方で、かなり自分の中でいろいろ勉強して、中学校も同じ監督さんだったので、ステップアップのために高校を選んで、高校時代もその先生にいろいろ学ばせてもらって、大学時代も同期とか先輩とか後輩との関係で続けてこられたのかなと思います。どれもこれも人間関係じゃないですか。好きなことやっていてもつらい時はあるし、それって自分だけじゃなくて周りの人がいるからなのかなと思います。練習が厳しいとか、自分が勝てないとか、自分が勝ってもチームが負けてしまうとかつらいことはあるんですけど、それは多分他のメンバーが頑張っている中で支えてもらったので、周りに恵まれましたね。
――最後にインカレへの意気込みをお願いします
男女アベック優勝を目標にしているので、それを達成するために自分がやるべきをやるのと、自分は出場選手としてもやり切る、それだけです。
――ありがとうございました!
(取材 望月清香 編集 望月清香、山本小晴)
ラストのインカレでは自身のベストを出してやり切ってほしいです!
◆中根智華(なかね・ちか)
1997(平9)年7月24日生まれ。151センチ。東京・関東第一高校出身。教育学部4年。初めての色紙に戸惑いの表情を浮かべ、悩んだ末に「やりきる」としたためた中根選手。これまで練習の傍ら勉強や主務の業務、さらには就職活動など様々なことに全力で挑戦したそうです。インカレではバドミントン人生の全てを出し切って、最高の笑顔を見せてくれるでしょう!