第2回は、前回に引き続きルーキーが登場。選抜・インハイでのシングルス優勝、そして日本B代表入りを果たし、超大型ルーキーとして入学した大林拓真(スポ1=埼玉栄)。関東大学春季リーグではルーキーながらシングルス1を任されチームを勢いづけた。また、先日行われた東日本学生選手権ではシングルスで3位、ダブルスで優勝、そしてもちろん団体優勝にも貢献。チームに欠かせない存在だ。そんな大林にお話を伺った。
※この取材は8月28日に行われたものです。
「みんなと喜んだのが3年間の中で一番うれしかった」
関東大学春季リーグ戦では、鈴木ゆうき(社1=宮城・聖ウルスラ学院英智)とともに新人賞を受賞した
――バドミントンを始めたきっかけは何ですか
お姉ちゃんが山口茜選手(くまもと再春館製薬所)と同級生で友達で。山口選手と地元が一緒で、バドミントンクラブにお姉ちゃんとお父さんが行っていました。最初はバドミントンを始める気もなかったんですけど、それに付いて行っているうちに、小学2年生の時にいつのまにか始めていたのがきっかけです。
――山口茜選手と一緒に練習することもあったのですか
そうですね。
――今まで続けていて、バドミントンの魅力は何だと思いますか
難しいですね(笑)。あんまバドミントンをやっている人が言うことじゃないんですけど、負けていたり、調子が悪いなっていうときは、正直自分的にはほんと楽しくなくて。調子良かったり勝てたりするときが楽しいから、なんだかんだいままで続けてきたのかなと思いますし、調子が良くて勝てたときにバドミントン楽しいって思います。バドミントンをやってない方はみんなやっていて楽しいって言うんですけど、バドミントンやっている人からしたら、調子良かったり勝ったりするときは楽しいっていうのが魅力だと思います。
――中学生まで過ごした福井県を離れて埼玉栄高校に進学された理由は
中学2、3年の時に全国大会に出てはいたんですけど、ずっとベスト8という結果でした。全国大会でベスト4以上に入ることとベスト8っていうのは全然違って。勝山(福井県勝山市)の環境もすごく良かったんですけど、ベスト8しか結果を残せなかったので、自分に足りないものが絶対あるんだと思いました。最初に埼玉栄に行ってみたらって言ったのは親なんですけど、嫌とも思わなかったですし、バドミントンもすごく好きだったので。また、福井県にいた時も埼玉栄の練習によく参加させてもらっていて、すごくいい環境だったっていうのも知っていたので選びました。
――高校時代について伺います。高校生活を振り返って印象に残っている試合はありますか
高校3年生の時、団体戦でベスト16、ダブルスもベスト16で、シングルスだけ優勝しました。嬉しかったですけど、ダブルスも団体も1人じゃなかったので、負けたのがすごく悔しかったですし、申し訳なかったです。シングルスで結果を残せたけど、申し訳ない気持ちでした。3年生の時は嬉しいっていう思い出より、申し訳ないなっていう思い出の方が強いです。埼玉栄の時の嬉しかった思い出って言ったら、2年生のときのインターハイです。個人戦は出られなかったんですけど、団体のメンバーに選んでもらって。団体の第1シングルスを何回かさせてもらったんですけど、試合前にケガをしていたけどそれでも他の3年生じゃなくて2年生の自分が出させてもらって。それだけでも感謝の気持ちでいっぱいでした。練習不足で試合中に足がつったんですけど、それでも勝てて。みんなと喜んだのが3年間の中で一番うれしかったです。
――逆に一番悔しかった試合は
一番悔しかったのは、3年生の時のインターハイで団体戦もダブルスもベスト16で負けてしまったことです。
――早大に進学を決めた理由は何ですか
もちろん、実業団に行きたいっていう気持ちもありました。自分の中でも、インターハイで優勝して、そのあと世界ジュニアでもシングルスベスト8っていう結果は残せたけど、実業団でやっていけるっていう自信がなくて。本当に正直言うと、入りたかったチームがシングルスの人数がなくて、入れないっていうのもあったんですけど。でも、自分の中でもまだ全然実業団に入れる実力がないと思っていました。バドミントンが強いところなら日体大とか日大とかいろいろあるけど早稲田大学に入った理由は、高校3年生の時に早稲田大学がインカレで優勝していたのと、練習は結構自由な感じで、実業団の練習に参加したりもできて。他の大学だったら自分の大学の練習に結構行かなきゃいけないっていう決まりじゃないですけど、そういうのがあって。それで、(早稲田大学は)大学の練習もしながら、自分の行きたかった実業団の練習にも参加できて、実業団の選手の技術も学べますし、インカレでも優勝していますし。そういうレベルの高い大学生の選手だったり、実業団の選手だったり、一緒に練習すれば自分が今まで知らなかったプレースタイルとかがもっとわかるかなと思って、バドミントン的な視野が広がるかなと思って早稲田大学にしました。
――早大には埼玉栄高校出身の選手が多くいますが、そのことも早大に進学する理由のひとつになりましたか
埼玉栄の卒業生だけじゃなくても、富岡の出身でインターハイ優勝もしている穂さん(古賀主将、スポ4=福島・富岡)がいたり、横にいる小野寺先輩(雅之、スポ2=埼玉栄)も1個上で、強いのも知っていました。ナショナルにも入っていますし、そういう話もよく聞いたりしていて。埼玉栄の先輩だったら今3年生のお二人もすごく優しくて、ワセダの話をいろいろ聞いて入りたいって気持ちが強くなったのはもちろんあります。
――大学での練習は高校の練習とは異なりますか
埼玉栄の時がちょっときつすぎたので、逆に大学の練習はちょっと楽かなって思います。でも、バドミントンの話とちょっと違うんですけど、高校のときは1、2年生がバドミントンを頑張って伸びるように3年生も仕事をしなきゃいけなくて。だから結構3年生のときも仕事があったんですけど、大学に入ったら1年生が仕事をやるのは当たり前のことで、バドミントンは自分のトレーニングや自主練でいくらでもきつくできるんですけど、大学に入ってきつかったのは、バドミントンよりも仕事かなって思います(笑)。
――夏合宿が大変だったと伺いました
はい。でもいい社会勉強になりました(笑)。4年生も、先輩みんながやってきたことなので。当たり前のことかな、と思います。
――早大のチームの雰囲気はいかがですか
初めて練習に来たときに、仕事きついとかしか言われずに参加したので、最初の練習はすごい緊張していました。でも、埼玉栄の卒業生の先輩じゃなくても、知っている先輩がすごく優しくしてくれて。練習中も楽しいことを言ったり、そういうので緊張がほぐれました。最初入ってきたときはそういうイメージだったんですけど、楽しくて、来年後輩が入ってきても、みんなが同じことを思うような練習環境にしたいと思います。
――早大のなかで仲がいい選手はいますか
小野寺先輩とか(笑)。吉村徳仁先輩(スポ3=富山・高岡第一)とか、浅原大輔さん(スポ3=宮城・聖ウルスラ学院英智)とか。ご飯とかに行くんだったらいつもそういう感じです。吉村先輩は、住んでいるところが近いので、よくご飯とか一緒に作ったり食べに行ったりします。
ミスをしないで丁寧に
――ナショナルB代表にも選ばれていますが、大学の練習とナショナルの練習の兼ね合いはどうですか
ナショナルの練習は、本当に自分が一番弱くて。穂さんとか、他の人の方が全然強くて、ついていくのに精一杯です。次も残れればいいですけど、今年1年はまず頑張ってついていきます。今もついていけているかはわかんないですけど、せっかくナショナルB代表の選手と一緒に練習できているので、いいところを盗むことができればいいなと思って練習しています。
――春リーグのインタビューではプレッシャーを感じたとおっしゃっていましたが、ナショナルに選ばれているプレッシャーはありますか
もちろんそれもあるんですけど、先輩がたくさんいるなかで、1年生なのに出させてもらっていますし、シングルスとダブルス2種目も出させてもらっていて。2個落としたら負ける確率が高くなってしまうので、そういうプレッシャーもあります。シングルスも、自分が第1シングルス取るか取らないかで、チームの流れが結構変わってくるので。リーグの話で言うと、初めての試合で全然足が動かなくて負けて、そこから流れが悪くなっちゃったことがあって。リーグのときにプレッシャーって言っていたのは、ナショナルよりも第1シングルスで流れが変わる変わらない、のプレッシャーだったと思います。
――春リーグについて伺います。今まではシングルスがメインのことが多かったと思うのですが、ダブルスは出てみていかがでしたか
高校のときも団体ではダブルスも出ていたんですけど。大学入って、ナショナルB代表の強い先輩と組むことになりました。もちろん頼もしいですけど、前よりも勝たなきゃいけないっていうプレッシャーもあります。練習では、正直ダブルスの方がシングルスより楽しいです。楽しいですけど、先輩がすごく強いのでプレッシャーがすごいです(笑)。任せてばかりでは絶対勝てないですし、自分もシングルスだけじゃなくてダブルスの練習もたくさんして、なんとか足引っ張らないでついていけるようにと思って練習しています。
――ライバルだと思う選手や憧れている選手はいますか
大学生になってからナショナルに入ったので、ナショナルの中では今高校2年生の奈良岡選手(功大、浪岡高校2年)とかです。練習に入ったら負けたくないですし。大学の中だったら、同じナショナルでシングルスの穂先輩とか。試合入ったときはただただ頑張ろうって思うんですけど、なんだかんだ勝てなくて。でも、負けたときに悔しいって気持ちがいつもあるので、そういうことを考えるのはライバルだと思っているのかなって思います。だから、ナショナルでは奈良岡君で、大学の中では穂さんですね。他大学でいうと、ナショナルに入ってから、リーグ(関東大学春季リーグ戦)のときも当たったんですけど、同級生と当たるときはすごく緊張します。勝たないといけないのは当たり前なので、気持ちの面では同級生はみんなライバルだと思っています。緊張して自分がだめになったら、絶対力は五分五分で(相手と)力は変わらないと思うので、リーグのときは同級生だったらみんなライバルと思って試合に入っていました。
――プレースタイルについて伺いたいのですが、ご自身の強みは何だと考えていますか
高校の時だったら、スマッシュが速いとよく言われていました。高校の時はコースが良くなくても速さがあったので、インターハイでもよく決まっていたんですけど、大学とかナショナルだと、コースが良くて速くても相手に取られてしまって。大学生でも自分よりスマッシュが速い選手はたくさんいますし、大学に入ってからはスマッシュが速いっていうのは自分のプレースタイルじゃなくなってきたのかなと思っています。考えずにやっているのでわかんないですけど、今ではパワーより球回しとかですかね。世界を見ても、桃田(賢斗、NTT東日本)選手とか。もちろんパワーもありますけど、そのプレースタイルだと勝ち上がっている人があまりいないイメージがあるので、パワーに頼らずにミスしないで丁寧にバドミントンができるプレースタイルに今後なっていければと思っています。
――その目標とするプレースタイルに向けて、現在の課題は
やっぱりミスしないっていうのが一番の目標です。練習していると、決めたいっていう気持ちが強くなっちゃって、そうするとミスも増えてきてしまうので。どんな相手でも、身長とかパワーのある選手でも、まずはミスしないっていうことから意識してラリーしていれば、パワーに頼ることもないと思っています。普通のパターン練習だったり、基礎打ちだったり、もちろん試合練習でもミスせずラリーするっていうのを最近は意識しています。
作り置きに挑戦したい
――ここからはプライベートな話題に移ります。大学生活はどうですか
どちらかというと楽しいですけど、やっぱり入学する前に言われていた通り仕事が大変だったりします。大学に入って、正直思っていたよりバドミントンは自分の中ではあまりうまくいってない方だと思います。大学生活自体は楽しいですけど、バドミントンで(大学に)入ったので、そこの部分では少しつらいかなと思っています。
――授業はどうですか
授業は行ってます(笑)。友達と一緒に受けています。
――一人暮らしですか
はい、そうです。
――一人暮らしは大変ですよね
そうですね。でも思っていたよりは楽しいです。
――高校のときは寮生活でしたか
はい、寮です。
――大学に入って一人暮らしを始めたのですね
高校も寮はご飯が出るくらいで、洗濯とかは自分でするので。本当に大きく変わったところって言ったらご飯が出るか出ないかくらいです。大変っちゃ大変ですし、周りからは絶対大変だよって言われましたけど、でも料理を作るのは嫌いじゃなかったので。意外と結構楽しいです。
――自炊しているのですか
はい、意外と料理はします(笑)。
――得意料理は
それめっちゃ言われるんですよ(笑)。なんだろう…ほんとに面倒くさいときは豚キムチ。あ、でもこれ言うとあんまり使えない感じになっちゃう(笑)。
――では、今までで一番凝った料理は
一回やってみて、ほんと面倒くさいなと思ったのは、豚の角煮とかですかね。手順は簡単なんですけど、時間がかかって待っているのが面倒くさくて。
――挑戦したい料理はありますか
一人暮らしなので、作り置きができるといいなと思います。趣味でも面倒くさいときとかあるので。作り置きができるもの…たとえばキーマカレーとか。作り置きができる料理に挑戦したいです(笑)。
――文武両道は大変ですか
そうですね。簡単に目標みたいにみんな言いますけどすごく大変だと思います。
――オフの日は何をされていますか
昨日久々にオフで、海に行ってきました。合宿後がオフだったりするんですけど、3人ナショナル入っていて、本当にちゃんとしたオフがなくて。自分は、オフはよく家にいます(笑)。
――趣味はありますか
料理ですかね。料理は結構している方だと思います。料理の本は、最初は買っていたんですけど、最近はあんまり。お母さんに聞く方が多いですかね。
――オフの日は家にいて、料理している、と
そうですね、夜ご飯くらいは作りますね。
――バドミントン以外に好きなスポーツはありますか
バドミントンしかやってきてないのでわかんないです。でも運動することは好きです。今、大学の練習のアップとかでアルティメットをやっているんですけど、すごく楽しいです。ほんとに強いて出せって言われたらそれですかね。あ、自分の言い方間違っていますね(笑)。アルティメットです、はい(笑)。
――よく聞く音楽はありますか
音楽全然聞かないんですよ。CMとかで流れているのは耳に残ったりして、最近だと「青と夏」とか。そういうのしか聞かないですね。
――試合前のルーティンはありますか
ルーティンじゃないんですけど、アップで結構息上がった状態にしたくて。緊張している時は、一回すごい走ったりとかして息上げるようにはしています。それがルーティンなのかはよくわからないですけど、それが自分のアップ方法ですね。
――最近食べたものでおいしかったものは
あんまりレバー好きじゃなかったんですけど、ナショナルの先輩に焼き肉に連れていってもらって。レバーは食わず嫌いだったけど、すごくおいしかったです。大好物とまではいかなかったですけど、おいしかったです。
――好きな食べ物は
麺類が結構好きです。担々麺が一番好きです。今は暑いので全然食べようとは思わないですけど、夏に入る前とかはラーメンをすごい食べていました。
――早稲田のラーメン屋さんには行かれますか
あんまり馬場に行かないんですよ。あ、この前「鷹虎」っていう馬場のつけ麺屋に行ってきました。
「インカレで4連覇することが目標」
団体にかける思いは人一倍だ
――バドミントンの話に戻ります。ナショナルBに選ばれて、その経験は糧になっていますか
糧になっていています。ナショナルの試合になればプレッシャーとかはないんですけど、ランキングサーキットという全国大会で実業団の選手に結果的に負けてしまって。相手が実業団で、自分が大学生でも、自分はナショナルBなので勝つのが当たり前っていうか、ナショナル以外の試合になるとプレッシャーしかないです。練習とかでアドバイスをもらったりするのはすごく糧になっていて、ナショナルに入っているのはすごく良いことなんですけど、言い方が分からないですね…困るっていう感じですかね、嫌って訳じゃないんですけど、プレッシャーは嫌ですね。結論がわからないですけど(笑)。
――夏合宿もありましたが、秋に向けて練習を積めているという実感はありますか
夏合宿もそうなんですけど、走り込みがすごく多くて。そういう部分では体力がついた自信が出ました。仕事も本当に多くて、練習量は変わんないですけど、他の先輩方より仕事の分やっていることが多いです。やっていることは悪いことじゃないと思うので、日頃の行いが良かったらなんかいいことあるかなって(笑)。あったらいいなって思っています(笑)。
――半年たってしまいましたがルーキーイヤーとしての意気込みは
今ずっとバドミントンをやるなかで「プレッシャー」っていう言葉がたくさん出てきたんですけど、言い訳にできないというか。今後の大会ではまだ1年生ですが、逆に言えば4年生は最後の年っていうプレッシャーがかかったり、まだ自分はわかんないですけど2、3年生も何かしらのプレッシャーはあったりすると思います。1年生だからある意味向かっていけるので、1年生らしく大きい声を出したり、がっついたりというのを毎回の大会の目標にして頑張っていきたいと思います。
――大学4年間の目標を教えてください
まだインカレで4連覇した人がいないので、インカレで4連覇することが目標です。
――大学卒業後の話にもなりますが、オリンピックは視野に入れていますか
もちろんナショナルに入っていますし、バドミントンをやっているので、東京オリンピックとは言わないですけど、(オリンピックに)出られるような選手になることは、バドミントンをやっている上での目標ではあります。
――最後に、大林選手にとってバドミントンとはなんですか
前も聞かれた気がする(笑)。バドミントンとは…。自分のバドミントン人生の中で、楽しかったことよりつらかったことの方が多かったんですけど、多分スポーツをやっていく上でみんなそうだと思います。つらいときが多いからこそ、楽しいこととか勝ったときはすごく嬉しいと思うので。難しい…。自分は頭も悪いですし、本当にバドミントンだけなので、バドミントンがだめになったら本当に終わりっていうくらい自分のなかでは大事なものです。
――ありがとうございました!
(取材・編集 小林理沙子、山本小晴)
色紙には大きく「勝つ」の2文字を書いてくれました!
◆大林拓真(おおばやし・たくま)
1999(平11)年8月7日生まれ。169センチ。埼玉栄高校出身。スポーツ科学部1年。団体戦に懸ける思いは人一倍強い大林選手。春のリーグ戦での最優秀新人賞に続き、京都の大舞台でも活躍してくれることでしょう!対談中は声がちゃんと録音できているか気になり、ボイスレコーダーに顔を近づけて意気込みを語ってくれました。