8月27日〜9月2日にかけて第26回東京六大学対抗競技会が埼玉・妻沼滑空場にて行われた。新体制となってから初めての大会であり、全日本学生競技大会(全国大会)を見据え、腕試しとなる今試合。最終日まで慶大と記録を競い、白熱した試合となった。団体では準優勝、個人では藤芳一大(政経4=群馬・高崎)が優勝、大森悠矢(基理4=神奈川・鎌倉)が準優勝という結果を残した。早大の個人優勝は2000年に行われた第3回競技会以来であり、23年ぶりの個人優勝という快挙を成し遂げた。
着陸前の機体
今大会は決められた周回コースをまわり、その飛行距離とタイムで得点をつけるというかたちで6日間競技が行われた。大会初日から早大が1位をとり、幸先の良いスタートを切った。その後も大森、藤芳が周回をしてそれぞれ1000点を獲得。安定したプレーで早大が得点を重ねるが、慶大が着実に追い上げてきて41点リードした状態で最終日を迎える。そして最終日、選手層の厚い慶大が立て続けて周回し、得点を抜かれてしまい早大が2位に。その後逆転することができず、惜しくも団体優勝を逃してしまったが、個人では優勝、準優勝が早大が占めるという輝かしい成績を残し大会を終えた。
熱い戦いを繰り広げた部員たち
新体制の初陣となった今大会は、強豪校慶大との首位争いで盛り上がりを見せた大会だった。しかし惜しくも最終日で慶大に逆転されてしまい悔しい思いをしたが、大森主将は今大会を「慶大と戦える、そのレベルまで到達できたということが実感できた点が非常に良かったと思います。」と振り返る。慶大の選手層の厚さ、競技歴の長さなどに負けることなく、ここまでの接戦に持ち込めることができた早大航空部の今後の活躍に目が離せない。
(記事 荒井理沙、写真 狩野元希、部提供)
※掲載が遅くなり、申し訳ありません
結果
▽団体
準優勝 15650点
▽個人
藤芳 1位 5310点 大森 2位 4531点
コメント
大森悠矢(基理4=神奈川・鎌倉)
――六大学戦に臨むにあたり目標としていたことは何ですか
4月から監督を交代いたしまして、今回六大学戦、10月に関東大会、2月に早慶戦、3月に全日本グライダー選手権が行われ、この4つの競技会に向けて普段の訓練で飛行技術を磨いています。そのトレーニングの中で、まずは団体の優勝と個人優勝というものを目標にこの六大学戦に臨みました。
――今大会は慶大と接戦でしたが、チーム全体と自身のプレーを振り返ってみていかがですか
慶應義塾大学航空部はやはり名門校です。(慶大は)高等学校から航空部があるので航空部歴の違いがある中で技量の差、やってきた分の重みの違いや組織力など。かなり上の大学であることは間違いない中でしたが、六大学戦が行われた6日間は天候が良く上昇気流も多く発生していました。かなり条件が良かったので、発生した上昇気流を確実に掴んで得点を積むことができ、慶大に負けず劣らずの得点を出すことができました。また、この競技は単に周回コースを回ってくるだけではなく、いかに早く回ってこれるかということが重要になります。その部分も慶大に引けを取らず、速度もかなり良いタイムで回れた日もあり、慶大に食らいついていけたなと思います。僕は去年から六大学戦に参加していたので、競技会の勘であったり調子というものもわかってきた中でこの六大学戦をベースにこれまでの日々の訓練でトレーニングを積んできたので、そこに向けてかなり良いパフォーマンスができたと感じています。
――六大学戦での収穫と課題点などは見つかりましたか
まず、収穫できた点に関しては大きく2つあると思います。1つ目はクルーの面です。もちろんパイロットが実際にフライトして得点が生まれますが、今年度は1年生が多く入ってきてくれていて、1年生もこの大会のルールを理解してくれたと思います。地上で選手を全面的にバックアップするようなサポートが非常に重要になってくるので、今回地上クルーのサポートであったり下級生にも大会を経験させてあげることができました。また、僕としては条件がよくて得点が多く入ったので、競技会というものはこういうものなんだよっていうことを肌で実感させてあげられたということとクルーのレベルがかなり上がってきたなと思うところがあったので、そこは1つ良かったと思うところです。加えて、2つ目に関してはフライト面です。慶大はかなり強いチームではありましたが、4月に監督交代してから積み上げてきたものが着実に実を結んで、慶大と戦える、そのレベルまで到達できたということが実感できた点が非常に良かったと思います。次に課題に関しては、今回個人優勝を取ることができましたが、やはり団体で取れなかったのは10名程度選手が出ていた慶大の選手層の厚さであったり。確実に周回をしてポイントを積み重ねているという点で早稲田が足りていないところだと思うので、戦術として各パイロットを飛ばす順番が重要な要素になると思います。その辺が今大会は爪が甘かったところがあったことが課題です。次の1か月後の関東大会に向けてブラッシュアップできたらなと思っています。
――5日目まで首位をキープしてきましたが、その時の心境などはいかがですか
5日目まで首位キープできていましたが、首位キープと言ってもたかが1000点程度。1周回ってきた分の最高得点が1000点になるので、1周回分のキープしかできていませんでした。そのため、安心していたということもなくて、僕たちは確実な得点を積んでいくことしか考えていなくて。特に首位だから勝ってるんだぞって特に気にすることはなくその日の点を着実に取っていくことを意識していました。
――選手層の厚さ以外に慶大との勝敗をわけたものはありますか
各パイロットの技量というものもあるかなといます。かなり早くて30分ちょっとかかる周回コースを慶大の最速で回ってきたパイロットは25分のタイムで回ってきていて。ログの分析などをすると最短時間で上がるスピードで違いがあるので、その辺は各パイロットの技量もやはりまだまだ早稲田が負けているなと思うところもあります。どのようなところに違いがあったのかしっかり分析した上で今後の訓練にも臨んでいきたいと思います。
――主将としてどのような気持ちで今大会に挑みましたか
12月に幹部交代をして主将に就任したのですが、体育会の航空部ですのでやはり勝負という面において本当に勝ちにこだわってやっていきたいということは主将に就いた時から思ってやっていました。新たに4月から監督も交代して心機一転、新監督の下で半年間非常に辛い訓練をやってきました。その中で勝ちにこだわってきた結果が少しずつ時間できた大会だったので非常に嬉しく思う反面、先ほどあげたように課題点も多く見つかった大会でもあるので、改善していけたらなと思います。まだまだ競技会はあるのでそこに向けて頑張っていきたいなと思っています。
藤芳一大(政経4=群馬・高崎)
――六大学戦に臨むにあたり目標としていたことは何ですか
まず、団体の目標としては優勝を狙えると思ったので団体優勝を目標にしていました。個人としては、自分は23という機体の一番手で自分の後に後輩があと2人いたので、点数を取ってなるべく早い時間で後輩にバトンを繋ぐということを目標にしていました。
――六大学戦での収穫と課題点などは見つかりましたか
まず収穫として、6日間やって一番自分が良かったと思うところは減点がなく点を積み重ねられたという点です。かなりルールがたくさんあって、大きい減点になると一つの減点で100点や200点など大きな痛手になってしまいます。自分は今回の大会の前に出た大会が今年の2月の早慶戦だったんですけど、そこで100点の減点をしてしまって。そこからかなり精神的にも苦しい状況になってしまった経験があったのでその反省を活かして減点なしで大会を終えることができたことが一番の収穫です。次に課題に関しては、点数自体は自分で思っていたよりも取れていたのですが、どの日においてももうちょっとここをこうしておけば良かったなというところがありました。1日の中で1番点数が高い人をデイリーというふうに呼ばれるのですが、もっとデイリーを取るチャンスがあったにも関わらずちょっとした判断ミスであったり、準備不足、シミュレーション不足のところで少し時間がかかってしまい、慶大の機体に抜かれてしまうといことがありました。そういうところを普段から意識していけないというところが改善点だと思います。
――5日目まで首位をキープしていましたが、その時の心境などはいかがですか
リードはしていましたが、そこまで点差が開いていなかったというところと2日目に慶大に1日で2周差、2000点弱ぐらいの差をつけられました。3日目、4日目で早稲田の方がちょっと点が高いという状況は続いていましたが、リードしているという実感はあまりなくてほぼ並走しているような実感でした。そのため、毎日毎日できるだけ高い点を取って、できるだけ早い時間で次飛ぶ後輩に回すということだけを考えて飛ぶように意識していました。
――個人でも首位をキープしていましたが、心境はいかがでしたか
個人の方では結構運が良かったなと感じていて、自分が飛ぶ順番が早い時間に飛べていて。その時の条件、運に助けられたという部分が大きかったと思います。個人1位を取りにいこうとして緊張してしまうことがないように、減点のないことが高得点に繋がるかなと思っていたので。気をつけて確実に点を取れるようにというところだけを意識して競技に臨むようにしていました。
――慶大との勝敗をわけたものはありますか
選手層の厚さが1番だと思います。あと、戦術的な部分で慶大のほうがかなり早稲田に比べて余裕があって、慶大の選手層を生かした戦略というところも上手くいっていたのでそこが1番の差だったと思います。また、普段の合宿から大会を意識した練習が(慶大は)できていたようで、そこも早稲田と比べると慶大が上回っていたポイントになると思います。
稲葉宏人(基理4=大分・東明)
――六大学戦に臨むにあたり目標としていたことは何ですか
団体優勝です。個人優勝は1番手が有利なところもあるので、大森主将に任せました。
――今大会は慶大と接戦でしたが、チーム全体と自身のプレーを振り返ってみていかがですか
チーム全体としてはこれまでの大会史上最も盛り上がり、切磋琢磨して楽しかったです。毎晩のミーティングでは選手以外も大いに盛り上がり、途中参加したりSNSで速報がわかるようにしたりなど、その場にいないメンバーも楽しんでいたように思います。 自身のプレーは、課題が多く残る結果となりました。各機体の2番手としてやるべきことを慶大の2番手よりも明らかにできていなかったと感じます。実力が出せなかったというよりは、実力差で負けたと感じています。(その中で)接戦となったのは1番手の実力差のおかげであり、2番手同士では明らかに敗北していたと思います。
――六大学戦での収穫と課題点などは見つかりましたか
収穫はチーム一丸となる雰囲気を掴めたことです。これは今後の大会に必ず生かされると思います。課題点は自分の実力不足です。また、チームとしての大会に向けたシミュレーション不足というところを次の大会に向けて解決しなければいけないと思いました。
――5日目まで首位をキープしていましたが、その時の心境などはいかがですか
慶大が強いチームなのは分かっていたため、勝てる確率は50%くらいと思っていました。ただ、順位は気にせず自分ができるベストフライトをしようと心がけました。
――慶大との勝敗をわけたものはありますか
2番手同士の実力差、大会に向けたシミュレーション不足だと思います。また、減点の考え方の違いなどもあると思います。
――副将としてどのような気持ちで今大会に挑みましたか
チームを支える、盛り上げる、勝たすという気持ちでした。ただ、今となれば優勝に向けた志が他のメンバーより少なかったようにも感じます。
小島健人(基理3=東京・渋谷教育渋谷)
――六大学戦に臨むにあたり目標としていたことは何ですか
2番手ということで条件がかなり良いタイミングで回ってくるだろうなと思っていて、僕個人としては毎日デイリーを取るという目標を掲げて試合に臨んでいました。
――今大会は慶大と接戦でしたが、チーム全体と自身のプレーを振り返ってみていかがです
チーム全体としては、まず選手のところでいうと1番手の藤芳先輩がかなり早いタイムで確実に周回をしてきてくれていたので、僕は毎日必ず出番が回ってくるというところが非常にありがたかったです。そこで得点に繋がるチャンスが増えたのかなという風に思っているので、個人の技量の高さを感じるとともにチームとして戦っているという実感を得ることができました。また、選手以外にもクルワークをしてくれている下級生ももちろん一緒に戦っていて、上空でどういうところにどういう機体がいるかっていう情報や雲がどういうふうにできているかということも自分でもできるだけ意識してみるようにしてはいますが、やはり把握しきれない部分もあるので。そういう時に他の機体がどこにいるかという情報をまとめたシートをクルーが作ってくれていたおかげでその前に頭の整理、状況の整理ができて、ある程度戦略を立ててから離陸することがやりやすかったです。そういうところで非常にチーム力を感じた一面でした。
――六大学戦での収穫と課題点などは見つかりましたか
収穫としては、僕は以前、新人戦という大会には出場していますが、実際のレース形式の競技会に出場するのは初めてだったので、普段の練習とは違う他機との距離を保った飛行であったり減点をもらわないといった新たなルールでやっていくというところが正直あまり意識できていなかったというとことは改めて大会の中で意識して飛ぶ必要があるなと学ぶことができたので、非常に大きな収穫かなという風に思いました。それと同時に自分の技量の追いつかなさも実感して、先ほども言ったように確実に自分にチャンスは回ってきていたのにも関わらず無駄にする場面も何度かあって、大会期間であったり普段の自分の練習において意識や丁寧さという部分の意識が足りなかったのでチャンスを活かしきれなかったというところが非常に悔しかったと感じています。そこは今後の課題だと捉えています。
――5日目まで首位をキープしていましたが、その時の心境などはいかがですか
正直リードしている感覚は全くなくて、常に毎日立ち続けないといずれ抜かれるなという風に思っていたので、まずはその点差を広げられないように自分がしっかりと得点をするんだというところを常に胸に思って飛行をしていました。特に慶大は選手層が厚く得点できる選手も多いので、自分がしっかりと周回しないとたとえ早稲田が全員回ったとしても慶大にタイムの差で抜かれてしまうという風なこといなりかねないので、少なくとも全員回れるように自分の次に3番手の選手にバトンをつなげるように毎日早く回ってこようという風に意識していました。
――今大会の4年生の活躍を見て感じたことなどはありますか
毎日900点以上1000点に近い点を取る4年生の2人を見て本当に技量のレベルと感じました。あと、かっこいいなという風に思っていたのが率直なところです。早くそこのレベルにいけるように自分自身次に大会に向けて努力していかなきゃいけない部分が大きく見えてきたかなという風に2人を見て思いました。
森祐翔(法3=佐賀・佐賀西)
――六大学選手権に臨むにあたり目標としていたことは何ですか
団体としての目標はもちろん優勝することで、個人的には、初めての大会でしたので、周回をして、チームに貢献するというのが目標でした。
――今大会は慶大と接戦でしたが、チーム全体と自身のプレーを振り返ってみていかがですか
チーム全体としてはクルー全員が選手が飛びやすい雰囲気を作ってくれて、自信を持って飛ぶことができました。自身のプレーでは力不足感が否めませんでした。上がらなければならないところで上がることができず、不甲斐ない個人成績となりました。
――六大学戦での収穫と課題点などは見つかりましたか
今年度からライバルに追いつくために、色々なことにチャレンジしてきました。そのチャレンジが実り、自分たちの自信につながったことは非常に良い収穫だった思います。 課題点は渋い条件で粘るフライトがあまりできていなかったことだと思います。
――5日目まで首位をキープしていましたが、その時の心境などはいかがですか
先輩や同期がたくさん得点をとっており、すごく頼もしく感じました。同時に自分ももっと得点して貢献しなければという焦りがありました。
――慶大との勝敗をわけたものはありますか
選手層の厚さや最後の粘りが要因だと思います。選手数が多いことは、試合を有利に進めることができます。早稲田も選手を育成して追いつけるようにしていかなければならないと感じました。また、弱いサーマルにしがみついて、ワンチャンスをモノにするという場面が慶応では多く見られました。早稲田ではあまり見られず、改善の余地があると感じました。
――今大会の4年生の活躍を見て感じたことなどはありますか
全員が毎日周回していて、すごく頼りになる先輩だと感じました。先輩たちに続いて周回して支えていけるよう、頑張っていきたいと感じました。