佐々木が個人優勝!団体戦は準優勝に

航空

 悔しい結果となった早慶戦から1週間、全日本学生グライダー競技大会が熊谷の妻沼競技場で行われた。早大からは主将の佐々木昇吾(基理4=愛媛・宇和島東)、大庭康聖(基理4=神奈川・山手学院)、山根知明(創理4=京都・洛南)の3名が出場した。4年生にとって学生最後の大会となる今大会。主将佐々木は、最終日に首位に立ち、個人優勝を果たした。団体戦での優勝を狙っていた早大だったが、最後まで慶大に追いつくことはできず、準優勝で大会を終えた。

 大会期間中に獲得した総得点により順位が決まるグライダー競技。初日に粘りのフライトを見せ1周回を達成した早大だったが、その間にライバル慶大は2周回を決め、差をつけられてしまう。2日目から5日目は天気の影響により条件が整わず、全校通して得点が入りにくい状況が続いた。「初日と最終日が勝負になると思っていた」という佐々木の言葉通り、初日につけられた差を巻き返すため強い意気込みを持って望んだ最終日。3名全員が周回を決めることができれば慶大に逆転し優勝が見えてくるという中で、1番手佐々木がデイリートップである1000点を獲得する。2番手大庭も安定した周回を見せ、旋回点をクリアしていく。3周回達成への期待が高まったが、「他機をうまく利用できなかった」(大庭)ことから時間がかかってしまい、周回を終えた時には競技終了時間が迫っていた。最終日は競技終了が早いこともあり、3番手山根にバトンをつなぐことは叶わなかった。

発航の態勢に入る大庭

 最終日を迎えるまで個人4位だった佐々木だが、最終日に最高得点をたたき出したことから首位に立ち、個人優勝を果たした。入部直後から個人の目標として「高校時代からグライダー競技をしていた慶應の山崎(山崎大輔)に勝ちたい」と考えていた佐々木。4年間の競技人生をかけて挑んだ今大会で、有終の美を飾ることとなった。団体戦では悲願の優勝とはならなかったが、首位慶大との差はおよそ600点。ダブルスコアをつけられ大敗した早慶戦から目に見える成長を遂げ、覇者ワセダの復活の兆しを垣間見た。「来年以降につながるいい流れを作れた」(山根)「後輩たちに伝えられることの多かった大会だった」(大庭)と前向きに捉えた。

表彰式での佐々木(中央)と大庭(左)、山根

 早大航空部で起きた事故を仲間とともに乗り越えてきた4年生。この1年間の苦労は計り知ることができないが、最後まで諦めずに戦い抜いた背中は後輩たちにも頼もしく見えているだろう。紺碧の空を制するという思いは次のステージに託された。

(記事、写真 村上萌々子)

大会後笑顔の部員たち

結果

▽団体 早稲田23(佐々木、大庭、山根)2687点 2位

▽個人 佐々木 1776点 1位

 大庭 911点 5位

※上位入賞者のみ掲載

コメント

佐々木昇吾(基理4=愛媛・宇和島東)

――今大会の目標を教えてください

団体全国優勝でした

――大会全体を振り返っていかがですか

天気予報をずっと見ていて、初日はいい天気だったんですけど、あとの間の何日間はグライダー的には条件が良くなくて、初日と最終日が勝負になるだろうなというのが分かっていたので、そこまでどうやってコンディションを持っていくのかが大事だと思ってやっていました。大会全体を振り返ってみると、初日は粘りのフライトであまりサーマルの高さが高くない中でなんとか1周回れたフライトで、対して慶應は2周回っていたのでそこでまず差がつけられました。それ以降は巻き返しを狙いつつも、大会全体として得点がなかなか入らない中で最終日を迎えて、最終日は閉会式の都合で競技時間が短いのでなんとか3周回れば慶應に逆転できるということで、頑張ったのですが、時間の関係で3人回すことはできなかったのですが、2人は回れて出来る限りのワセダの意地を見せることはできたのかなと思います。

――今日のご自身のフライトを振り返っていかがですか

今日は結果的にはサーマルを2つだけつかんで、きれいな効率的な周回ができたのですが、昨日のフライトは人がサーマルを周回している下に入った時に、人についていくばかりという昨日の反省がありました。きょう回っているときは、人の下に入りたくても高度差が少なくて入れない、というルールの関係で入れないということがあって、そこで昨日の反省を活かして自分で前を切り開いていこうと思って、結果がすごくいいサーマルに当たってきょう1番のいい周回ができました。

――きょうの天気はいかがでしたか

前日の予報の段階から、大陸からの高気圧が入ってきて上空が冷たいという情報が入っていました。上空が冷たいと地上に日射が入って気温が上がった時にサーマルができるので、きょうはきのうの段階からいい条件になることは予想できていました。実際に始まってみて、順番が12番で正直言って1番とか2番の人が有利で自分たちはビハインドになるのではないかと少し不安だったのですが、結果的に12番目で飛ぶくらいが1番条件が良くて、だいたい予想通りなのですが予想以上に自分たちに有利に気象条件が働いてくれたなと思っています。

――個人優勝は接戦を制してつかんだものでしたが、その勝敗を分けたものは何だったのでしょうか

正直に言って個人優勝を意識したのはきょう自分が飛び終わってからで、最初から個人優勝を狙っていたわけではなく、あくまで団体優勝を狙っていました。そのためにできるだけ早く確実に回ってこようと思っていたのが、結果的に団体では慶大に及びませんでしたが、その心持ちで飛んだことが個人優勝に繋がったと思っていて、名前は個人優勝ですが団体みんなでとったものだと思っています。

――大会を通じたご自身のコンディションはいかがでしたか

自分のコンディションは常にベストです。何よりも夜しっかり寝て次の日を万全にというのが、大会に限らずいつもの合宿から心がけていることで、それがうまく言ったのが今大会だと思っています。

――4年間最後の大会でしたが、どのような大会でしたか

いい大会だったと思います。これはあくまで個人的なことなのですが、入部直後1年生の時からずっと考えていたことは、高校時代からこの競技をやっている慶應の山崎に勝ちたいというのが個人的な目標で、それを個人優勝という形で達成することができたのはよかったなと思います。とは言っても、自分1人の力だけで達成したわけではなく、他のクルーや大庭や山根に支えられてできたことだと思うので、この感謝の気持ちは忘れずに、この経験を後輩に伝えていければと思います。

――同期の方へのメッセージをお願いします

自分勝手なことも多かった主将だったと思うんですけど、最後まで支えてくれて、個人優勝も一緒にすごく喜んでくれてすごく嬉しかったです

――後輩の方へのメッセージをお願いします

これから新しい代になって大変なことも結構あると思うのですが、僕らも4年生になる直前まで部活ができない中でもここまでできるんだというのは見せられたと思うので、3年生以下の後輩たちも残りの時間自分のやるべきことをしっかりやって、自分たちが納得する4年間にしてほしいなと思います

大庭康聖(基理4=神奈川・山手学院)

――大会全体を振り返っていかがですか

自分は2番手という立場で佐々木が帰ってきた後に3番手山根に繋げるという役割たったのですが、今大会を通じて周回するのに時間がかかってしまって最終日も山根に繋げなかったというのがすごく残念です。ただ主将の佐々木が個人優勝してくれてすごく嬉しかったですし、今年1年結構辛かったんですけどやってきてよかったなと思います。楽しい大会でした。

――質問

最初に時間がかかりすぎたなというのがあって、その理由としては大会特有ですがたくさんの機体が近くを飛ぶということがあります。その機体をマーキングとしてうまく利用するというのが大会では重要になってくるのですが、まだ自分はその点では甘いところが多くて、他機をうまく利用できずに周回に時間がかかってしまうということがありました。自分は卒部なのですが、この経験を後輩たちに繋げていきたいなと思います。

――気候はどうでしたか

1日を通して条件が良いコンディションが予想されていて、自分が飛んだ時間もすごく対流があって周回しやすいコンディションでした。

――団体戦での勝敗を分けたものは何だと考えていますか

個人優勝したのがワセダの佐々木で、自分が慶大の2番手と同じ点数を取れば団体で優勝できたはずなので、そこでできなかったのは自分の責任だと思っています。2番手の力の差が団体優勝の勝敗を分けたと考えています。

――大会を通してコンディションはいかがでしたか

自分のコンディションは大会通して良好でした。ただ自分はフライト前緊張してしまうのでコーチの方やクルーが緊張しないように笑わせてくれたりしたので、今回は結構リラックスして飛べました。

――4年間最後の大会でしたがどのような大会でしたか

いい大会だったと思います。もちろん目標だった団体優勝でしたし順位も大事ですが、やはり一昨年悲しい事故があって、この1年間は自分たちは事故なくそして来年以降に繋げていける大会にしたいなという思いでずっとやってきたので、フライト面もそうですし大会での過ごし方など色々後輩に伝えられることもあったと思います。そういう面でいい大会だったと思います。

――同期の方へのメッセージをお願いします

同期の人たちは4年間一緒にやってきて、自分は副将をやってきて、副将なのにふざけちゃうキャラなのですが、そのふざけたキャラに付き合ってくれて、協力してくれるような同期がいたからこそ自分もめげずにやってこれたと思います。最高の仲間だと思いますし、今後も一生付き合っていきたいと思います

――後輩の方へのメッセージをお願いします

自分たちは1年間事故なく安全にということでコーチの方やOBの方と一緒に歩いてきたのですが、安全はもう当然としてもっと上を目指してほしいですし、さらに次の1年は競技で個人団体優勝をして覇者ワセダとしての姿を目指して、より強い航空部を作って言ってもらえればと思います

山根知明(創理4=京都・洛南)

――大会全体を振り返っていかがですか

私は3番手という立場だったのでいつでもいけるように準備していくということのほかに、前の2人をいかに気持ちよく送り出すかということが主に自分に与えられた役割だと思っていました。できる限りクルーと一緒に役割を果たせるようにというのを意識してやっていました。事故から1年間チームとして辛いことがたくさんあった中で、団体は取れなかったですが個人優勝を取れたということで、来年以降に繋がるいい流れを作れたのではないかと思います。

――大会を通したコンディションはいかがですか

良くも悪くもいつも通りでした。なかなか飛ぶ機会がなかったのでその中で自分のモチベーションを保つというのが難しかったです。

――4年間の最後の大会でしたがどのような大会でしたか

やっぱり自分たちの代の最後の試合というのもありますが、辛い事故を乗り越えてきた今のメンバーでできる最後の大会というのもあるので、自分自身というよりは今のメンバーが今後に何か希望を持てるような大会にしたいなと思っていたので、そういう面では本当に来年以降に繋がる意味のある戦いだったのではないかなと思います

――同期の方へのメッセージをお願いします

自分は不器用な方だと思うので本当に周りの支えがないとやっていけなかったタイプだと自分でも思うのですが、そういう意味では同期の支えがなければそもそも航空部を続けられなかったかもしれないですし、試合にも出られなかったかもしれないので、同期には感謝しかないです

――質問

事故で辛い思いをしているので安全というのは大前提だと思うんですけど、ワセダの航空部としてやっている以上は勝利を目指さなくてはいけないと思います。きょうの悔しさを活かして、来年以降は団体優勝のトロフィーを奪い返してほしいなと思います