早大の活動休止によって開催が見合されていた早慶対抗競技会(早慶戦)が、先日約2年ぶりに執り行われた。今月行われる全日本に向けて勢いをつけたいところだったが、なかなか周回を決められず、1日目から慶大に大きく引き離されてしまう。大会3日目にしてようやく得点し徐々にワセダらしさを出し始めたが、調子を上げていく慶大に追いつけないまま、ダブルスコア以上の差をつけられて大敗。ワセダの良さが見えたと共に、今後に向けた課題も明確に現れ、次につながる試合となった。
今大会は、序盤から慶大の選手層の厚さに圧倒された。周回をクリアしても、それを上回る数とレベルの高い周回で慶大に突き放されてしまう。ワセダがハンディキャップのある機体を使っていることや活動休止のブランクを経ていたことも、結果に影響していたかもしれない。大会4日目には既にダブルスコアの差をつけられてしまった。
終始風が穏やかで、天気も味方した。
それでも粘りを見せ、迎えた大会最終日。佐々木昇吾主将(基幹4=愛媛・宇和島東)は、慶大のクルーとコミュニケーションを交わしながら飛行し、試合を楽しんだ。サーマルが見つからない状況に苦戦しながらも、余裕をもって飛行することができたと言う。各々が納得のいくフライトをできたようだった。また、この日はチームの結束力も発揮される。最終滑走中には地上で待つクルーが『紺碧の空』を歌うなどして、声援を送り続けた。ゲートクローズが約40分延長されたが、それでも途切れることのない歌声。周回を決めることはできなかったものの、こうしたチームのサポートに佐々木たちは鼓舞されたようだ。
勢いのある声援が飛び立つクルーを活気づけた。
最終スコアはワセダが3788点、慶大が8059点。結果を見れば、慶大との力の差は歴然である。山根知明(創理4=京都・洛南)が指摘するように「1人1人のクオリティーを上げる」ことは、それぞれが全日本に向けて考えなくてはならない。時間は限られているが、できることを着実にやり遂げていくことで、1つでも上の順位に食い込むことができるだろう。全日本は、4年生にとって学生生活最後の大会となる。クルーそれぞれが悔いの残らないフライトをしてほしい。
(記事 佐鳥萌美、写真 岡田静穂)
※掲載が遅くなり、申し訳ありません
コメント
佐々木昇吾主将(基幹4=愛媛・宇和島東)
――きょうのご自身のフライトを振り返っていかがですか
慶大の23が飛んでいるときに近くで飛んでいたんですけど、その後自分だけ降りて慶大に行かれてしまって1個目の高山の旋回機に先に行かれてしまいました。何回か飛び直してもいいサーマルに当たらず、一人だけ先に行かれたのが悔しくて。そこで何回か飛んで何とか弱いサーマルを見つけて、上げ始めたときこのまま何とか時間内に追い付こうと飛び始めました。途中で慶大の23と一緒に飛んでたんですけど、向こうも状況が厳しくて。こっちも厳しいと思いながら無言のコミュニケーションを取り合って慶大のフライトと飛べて楽しいフライトでした。ただ一つ残念だったのは競技終了の時間を地上の判断で何度か延ばしてくれたんですけど、それでもぎりぎり間に合わず降りてしまって、クリアはしたんですけど時間に間に合わず心残りなんですけど、後から聞いた話だと地上でみんなが応援してくれていたみたいで、30分くらい『紺碧の空』と『若き血』を歌い続けてくれていたようでそのフライトもすごく印象に残りましたし、大会を通じていいものになったなと思っています。
――今回の結果をどのように捉えていらっしゃいますか
ダブルスコアの大敗ということなんですけど、おととしの事故からしばらく活動を休止して部員も心に傷を負ってそこから復活してここまでやってきて。機体としても慶大の方がいいのを使っていてハンディキャップがある中でそれでも勝つという気持ちはあったんですけど、結果としては悔しくても自分の納得のいくフライトはできましたし、チームとしてもこの大会を通じて成長できたので、後悔はしていないです。
――この一年の航空部としての活動を振り返っていかがですか
僕は自分が背中を見せて引っ張っていくタイプで、一人走りしてしまいみんなを置いていってしまうこともあったんですけど、こうやって最後には付いてきてくれたというかみんなの行きたかった方向と同じになってきました。この大会でも僕と四年生3人だけで下級生はあまり出られず、地上で応援している中で、「本当に応援してくれるのだろうか」という不安もなかったわけではなくて。でも大会が始まるとみんな一生懸命応援してくれて、僕自身のフライトにも喜びを表現してくれて、最後降り立ったときも僕のところに駆け寄ってもみくちゃにされて(笑)。こんないいチームだったんだなと改めて感じました。
――今後後輩の選手に期待していきたいことはありますか
四年生の力で何とかここまで持ってこれたので来年以降チーム力という意味でも遅れてしまっている部分があるので、三年生以下の選手には巻き返して来年の大会ではいい成績を残してほしいなと思います。
――来月の全国大会に向けての改善点を教えていただけますか
今回フライト自体はいいものができたと思っていて。それでも慶大の一番上手いプレーヤーとは力の差を感じました。まだそこの違いを自分の中でも分かっていなくて、研究している段階なので、この差をあと1週間埋められれば慶大にも勝てると思っているのでそこを研究して自分のフライトに生かしていきたいです。
山根知明(創理4=京都・洛南)
――今日のフライトを振り返っていかがでしたか
他の他大の期待も含めて浮いているタイミングで、結構高くいったタイミングで飛んだので、ゲートクローズという競技が終わる時間は近かったんですけど、1つでも多く回ってチームを活気づけられるようにと考えてやっていきました。
――今大会を終えていかがでしたか
正直慶応のパイロットの方がうまい、上手な人が多くて経験の差も、実力の差も結構歴然としていたので、なんとかして食らいついていこうという気持ちで飛んでいたんですけど、この大会を通じて自分自身他大のパイロットから吸収して、自分自身が成長できた大会になったんではないかと思います。
――天気のほうはいかがでしたか。
だいたい3月って風が強い時がすごい多いんですけど、今大会は割と穏やかで、条件もかなり良く周回がかなり出るコンディションで、自分も周回につなげられたので、そこは天気も味方してくれたのかなと思います。
――練習や調整はこれまでどのようにしてこられましたか
実際に機体に乗って、何回か周回コースを回ろうかトライしたんですけど、なかなか条件が出なかったり、コンディションが悪かったりで一周も結局できなかったんですけど、できることはやろうと思って、色々他のOB会のほうに混ぜてもらって、飛ばせてもらったりして、色んな人にお世話になって練習したのが周回にはつながったんですけど、結局慶応には負けてしまったので、すごい悔しい気持ちはあるんですけど、最低限の仕事はできたので。
――今回の結果をどのように生かされますか?
さっきも言った通り、負けてしまったのは本当に悔しいって気持ちなんですけど、実際去年事故があって、なかなか大会をできるコンディションではなかったので、まず大会ができたというのが1つ嬉しいことだと思うし、来年以降につながる、何周かして来年以降につながるかなと。ワセダの底力を見せられた大会にはなったと思います。来年以降は勝ちにつながるように1つ1つやっていってほしいし、自分自身も応援していきたいなと思っています。
――今回の大会はどのような位置づけで臨まれましたか。
位置づけとして、やっぱり航空部の人生の4年間の中でやっぱり誰もが憧れる目標としてきた舞台、ここの舞台のためにやってきたので、憧れた舞台に立てたことはすごい嬉しかったです。
――今回の勝敗を分けたものは何だったと思いますか。
結果としてはダブルスコア以上の差をつけて負けてしまったんですけど、その結果を分けたのは選手層の差だったのではないかと。慶応は高校からこのスポーツをやっている人がいたり、あと自分よりも実力も経験も圧倒的に多い人たちが集まっているチームなので、そこの選手層の厚さ、選手1人1人のクオリティーの高さというのがチームとしての実力を分けたポイントなのかなと思います。
――この大会で得たものや課題はありますか。
得たものとしては上昇気流を得るために感じる、実際乗ってたら感じるんですけど、そういうところに敏感になって少しでもフォローできるようにする技術というか能力というのは自分自身大会を通じてすごい成長できたし、他の部分で言えばチームの結束力。選手だけではなくで1年生から3年生のクルー含めて一致団結するっていうところも1つ成長できたという風に思います。一方で課題としては、たくさんあると思うんですけど、あげられることとしては、選手1人1人のクオリティーをまだまだ上げないと、3月の中旬には全国大会もあるんですけど、そこで優勝というのはすごい難しいと思うので、そこが今後の課題ではないかなと思っています。
――次の試合に向けて、どのように調整していかれますか。
この大会で得られたものと課題として挙がったものを1つ1つ整理して、なかなかグライダーというのはここに来ないと飛べないので、それ以外の時間が大事になってくると思うんですけど、実際ここにいるときとかに少しずつ自分の良いイメージを確立していって、全国大会につなげていくっていう風に思います。
――全日本に向けての意気込みをお願いします。
慶応に負けてしまったことはすごい悔しいので、この悔しさをばねにチーム、選手が一致団結して1つでも高い順位。具体的には優勝を目指してできるようにまた結束力を強めて、チームとしての力を高めていきたいと思います。