第19回東京六大学対抗競技会が、9月3日~10日の8日間にわたり埼玉・妻沼滑空場で行われた。懸念されていた悪天候によるノーコンテストも二日のみと、天候にも恵まれた今大会は、新体制となった早大航空部にとっての初戦である。大会初日に上位校と大きく点差が開くも、徐々にその差を縮めていき、終了目前の7日目に東大を破り2位に浮上。最終日には周回数を重ねるも、首位の慶大との差は埋められず団体2位で大会を終えた。個人では山田ゆり(文構4=千葉・日出学園)が優秀選手賞、浦西雄哉副将(政経4=東京・海城)が3位に入賞した。
チームとしてまとまれていないなど、不安を抱えながらも始まった大会初日。早くも他大学にリードを許してしまい1位の慶大、2位の東大とここで大きく離される。必死に得点を重ねていくもなかなかその差が埋まらない。しかし「尻上がりに調子を上げられた」(土居原悠史、人科4=東京・高輪)と言うように、日を追うごとに得点数を上げていく。競技開始から5日目、この日は浦西、山田、明妻祐也主将(教4=市立千葉)の3人が周回を成功させ、さらに山田がデイリー1位を獲得するなど本格的に流れに乗る早大。ここで2位の東大との差を一気に詰めていった。
周回を達成した山田
競技開始から7日目、ついに東大を逆転し迎えた大会最終日。今大会から見えた課題でもある二番手以降の周回もこの日は上手くいき、一番手の山田、浦西を筆頭に計4周回を達成。順調に得点を重ねていくも、初日の点差が響き慶大には悔しくも届かず。しかし、前日に逆転した東大に追いつかれることなく、団体2位で大会を終えた。また、毎日周回を達成させチームの得点に大きく貢献した山田は優秀選手賞に、浦西は3位に個人でもそれぞれ入賞を果たした。
大空へと飛び立つ明妻主将
「最後1日でベストな結果を残せた」(佐々木昇吾、基幹3=愛媛・宇和島東)と、選手達にとってもチームとしてもいいフライトができた最終日。悔しさや課題を残す結果ではあったものの、最後にはチームでの得点でその日一番を記録し、新体制での初戦を好スタートで切ることができた。次にチームを待つのは、昨年苦い思いをした関東学生競技会(関東大会)。一番手が周回し帰ってきた後、二番手以降に上手くつなげることが今後の大会で、そして宿敵慶大に勝つためのカギとなるだろう。この課題を修正し、きょねんの雪辱を晴らすため、チーム一丸となって勝ちに向かう。全日本学生競技会への出場権を懸けた関東大会まであと少し。
(記事 冨田千瑛、写真 石川諒・高橋豪・坂巻晃乃介)
大会終了後の早大航空部
結果
▽団体
早稲田 14547点 2位
▽個人
山田ゆり 4839.45点 優秀選手賞
浦西雄哉 4621.22点 3位 ※上位入賞者のみ掲載
コメント
明妻祐也主将(教4=市立千葉)
――新チームでの初戦となりましたが、今回の大会へのチームの雰囲気は
決していいものではなかったです。僕らの一つ上の代の人が抜けてしまって正直かなりがたついていたんで、全然まとまっていなくて。でも僕らの強みとしてチームの4年生全員が5時間滞空できるくらいの技量を持っていたことがあって、フライト面に関しては自身がありました。チームの運営面では団結力がなくて。大会直前の合宿でも練習を一回止めて、宿舎の中で話し合いをしたりして、そのくらいだったんですけど。その中でも変わったこととして、一つ下の代との結びつきがありました。今までは僕らが下の代を引っ張っていくという状態だったんですけど、下の代も僕らを支えてくれるような自発的な雰囲気ができてきて、そこが少しよかったなと思います。
――今回の新チームでの目標はありましたか
ただ勝つのではなくて、ミスをしない。一番手の山田・浦西がしっかり回ってきてくれるんですが、その一つ下が回さないと彼らの活躍も活きてこないし、チームとしても点数にならないから。あと、そのフライト自体が減点されたりといった、つまらないミスをしない。当たり前のことを当たり前にやる。最終日だけは慶應に負けない、と言っていて。実際にこれができたのは最終日だけだったんだんですけど。ミスをしないで、減点をしないで、勝つというのが目標でした。
――2位という結果を受けてお気持ちをお聞かせください
めちゃくちゃ悔しいです。早慶戦で絶対に勝つ、という気持ちです。(笑) 関東大会でもそうだけど、一日一日今回の最終日みたいな飛び方をして絶対負けないぞという気持ちですね。
――大会前半と比べ後半では得点が高くなっていますが
大会前半はこの大会の運営を回すことで頭がいっぱいで、大会自体を成立させることにすごく神経を使っていたので。だからこの大会の運営は任せて大丈夫だなと思ってからは、フライトに集中できました。
――今大会でのご自身のフライトで感じたことは
周りの人に応援されてるなと思いました。4月からのチームの運営で、うまくチームをまとめることができなくて。教官にも結構怒られたりもして、かなりへこんではいたけど一つ上の先輩が励ましてくれたり相談にのってくれたりして。応援してくれる人がたくさんいた。今回の大会にも来てくれたり、絶対回してくれよって言ってくれる同期もいて、これは絶対に回さなきゃという気持ちは強かったです。
――今回の大会から運営面でも、ご自身のフライトでも得た収穫や課題はありますか
めちゃくちゃあります。(笑) よく言われることではあるんですが、大会中と普段の訓練の緊張感の差。大会中は大会中で飛ぶことには専念したり、独特の大会中の雰囲気は出せるんですけど、訓練中とは雰囲気が違って。あとは、一番手任せになっているので、彼らが頑張っているにも関わらず僕らが次に続いてこないと点数も伸びてこないから、二番手以降を得点することが最大の課題です。きょうは4周できたので、他の大学にも引けをとらないようなスピードでそれができたから勝てた。きのうコーチから「一度でも慶應に勝ったことあるか」と聞かれて、それがなくて悔しかったのできょう絶対勝とうと思って。総得点は負けているけど、今回みたいに戦えば勝てるんだなと。強いといわれているけど、慶應に勝てないことはないと思いますし。慶應に勝ってこそだと思うので、2位でも悔しいです。
――最後に、関東大会に向けて意気込みを
勝ちます!勝つためのイメージは少し掴めたので、それに寄せていくように頑張ります。
浦西雄哉副将(政経4=東京・海城)
――今大会を振り返って
初日で慶大と東大に点差をつけられてしまったのですが、それを4日間の試合の中で東大を逆転して2位になれたのは良かったと思います。
――個人のフライトを振り返って
私は一番手で早い段階に回ってこなければなりませんでした。それはうまくできたと思います。
――学年が上がってから初めての大会でした
きょねんは関東(学生競技会)と早慶戦(早慶対抗競技会)でたくさん飛びました。関東大会では結果につながらなくて、一番手としてどう飛ぶかをずっと課題にしながらやっていたので、今大会では他の大学のエースたちに引けを取らないフライトができて良かったと思います。
――最上級生となり気持ちの変化は
3年生で一番手として飛ぶときは4年生をどうにかして助けないといけないというプレッシャーがあったのですが、自分が4年生になってからは全部自分の責任なのでその方が気楽にフライトができたと思います。
――個人では3位でした
毎日しっかりと結果を出すことができたというのが、個人入賞につながったと思います。
――団体優勝の慶大との差は
慶大は一番手の後に二番手、三番手とつなげることができています。早大は私が回ってきた後に次の人が周回できなかったり、得点できても低いポイントだったりでうまく流れをつくることができませんでした。最終日のきょうは2番手も早い段階で周回できたので、きょうの点数だけでいえば慶大に勝っています。二番手、三番手が周回することができれば、慶大に差をつけられずにいい勝負ができたと思います。
――今後に向けて意気込みをお願いします
きょねんの関東大会では悔しい思いをしているので、全国(全日本学生選手権)に行くのは絶対条件として、ウイスキーパパチームを優勝に導きたいと思います。
土居原悠史(人科4=東京・高輪)
――新チームでの初戦、大会までの雰囲気は
大会まではいろいろ問題があるチームと言われてたんですが、大会を通じて一つにまとまれたのかなと思っていて。これからシーズンが始まっていく中でもっともっと雰囲気良く戦っていけたらなと思います。
――大会全体を振り返って
初日に大きくリードされてしまって、どうなるかなと思ったんですけど。だんだん毎日毎日少しずつ2位だった東大との差を縮めていくことが出来て、最終的には2位い上がれて、尻上がりに調子を上げられたのは良かったかなと思います。その反面きょうの最終日は勝っていたんですが、慶應にはほぼ全日程で負け続けていたので、そこをもう少し奮起して次の大会に繋げたいなと思います。尻上がりではなくて、もっと早い段階から調子を上げられるようなチームになれればなと思います。
――こういった大会でも、早慶はやはり意識されますか
めちゃくちゃ意識します。
――ご自身のフライトに関して、率直なお気持ちをお聞かせください
なかなか得点できるタイミングで飛ぶということが数回しかなかったのですが、その中で結果を出せなかったということは素直に反省があります。何度かチャンスをいただいたのに得点できなかったということは、まだ実力不足なところがあると感じます。
――今回の大会から得た課題や収穫は
チームとしてはまず、一番手の浦西・山田は毎日ちゃんと周回してきますし、それなりに安定した実力を持ってるんですけど、やはり二番手三番手は不安定で、そこがもう少し固まっていければと思います。
――次の大会に向けての意気込みをお聞かせください
もう関東大会を控えているので、勢いこのまま、全国大会に行けるように頑張ります。
山田ゆり(文構4=千葉・日出学園)
――早大は総合2位でしたが率直な感想は
慶大に大差で負けてしまいましたが、私と浦西(雄哉、政経4=東京・海城)は一番手としてなんとか目標だった毎日周回を達成できました。ただやはり慶大はその後の二番手、三番手に上手くつなげることができていたのですが、ワセダはそれができなかったので、後進を育てていくということが課題だと思います。
――ご自身のフライトに関しては満足していらっしゃいますか
個人では2位という成績で、この一週間毎日周回はできて、その中で良かったと思えるフライトは実際あったのですが、メンタル的に弱っているときのフライトはあまり良くなくて、そのときに減点してしまったり、かなり心の乱れの振れ幅があったので、今後はメンタルを鍛えてずっと安定して飛べるようにしていきたいと思っています。
――5日目には最高得点の1000点を出しましたが、その日のフライトを振り返って
ちょうどその日はタイミングが良くて、自分が飛び始めるときに積雲ができ始めるというすごく良い条件で飛ぶことができました。私が乗っていた機体はクラブ機といって他の大学の性能の良い機体ではないので、ハンディキャップがついています。その高性能機はどんどんスピードを出して遠くまで飛ぶことができるのですが、私の機体はそういうことができないので、早く高く上がって、高い高度をキープしたまま飛び続ければすごく早く回ることができるのですが、その日はすごくタイミングも良くてすぐに高度を上げることができてキープハイができました。また雲の中でも上がる雲と上がらない雲がある中で、試合を通して自分の中でだんだんどの雲が上がるのか(見極めることを)鍛えることができて、上がる雲だけを選んで飛ぶことができました。
――山田選手の代になってから初めての大きな大会でしたが、どういう意識で臨みましたか
この大会を迎えるまでには、3,4年生の対立や、教官方と学生との意見の食い違いがあったりして正直大会前はチームとしてあまりまとまることができなくて、ここ2,3か月はずっとこのままではまずいということを話し合っていたり、改善しようという意識を持ち続けていました。その中で初めて迎えた大会だったので、いかに皆がチームとしてまとまってやるかということを意識することができたと思います。
――このような状態の中で2位という成績を残せたことは大きかったのでは
そうですね。さっきも言ったのですが私の機体はハンディキャップがあるので、得点すればずごく高得点が出るということで、それが積み重なって2位になったのですが、他の高性能機より5分10分遅くてもその機体よりも高い点数が出ます。なので慶大は性能の違う機体ですごく速いのですが、ハンディキャップで私は2位にのし上がっている状態なので、今後はもっと速さも突き詰めていきたいと思っています。
――次戦の関東学生競技会への意気込みをお願いします
関東大会では勝たないと全国大会に出ることができないので、どうしても全国大会に出て、きょねんは全国大会には出てそこでは2位だったので、1位を獲って有終の美を飾れるように、私を含めて二番手以降も育てて、チームもまとまって全国大会につながっていくような試合ができると良いと思います。
佐々木昇吾(基幹3=愛媛・宇和島東)
――今大会の目標について教えてください
航空部は大体大学から始めて4年間でひと通り終わるスポーツなんですけど、まぁ社会人でも続ける人もいますが、4年間で初心者から初めて選手まで、となります。そのなかで大体選手は4年生から選ばれるんですけど、3年生のうちから大会に出たいというのが入部した時からの目標で。そして迎えた周回を競う初めての大会で、チームの目標としてはもちろん優勝があるんですが、個人としてはその優勝に貢献出来るように毎日周回することを目標にしました。そこには及ばなかったですけど、それなりに、満足とは言えないまでも結果は残せたので良かったかなと思います。
――今大会全体を振り返っての感想をお聞かせください
最終日が1番いいタイムで周回できたんですけど、条件が良かった事もありますし。そこまでの7日間の間で競技ができた5日間で色々課題が見つかって、その課題を克服していく中で、さらに最後のいい条件が重なってベストな結果が最後に残せたかと思います。大会全体を通して自分が成長できた1週間だったと思います。
――個人のフライトについて思ったことはありますか
初めての大会ということで、しかも4年生の中に混じってやるということでかなり緊張していて、いい結果を残せるかどうかずっと不安な気持ちもありました。それで何回か周回と得点もしていて、けど本当なら周回すべきタイミングでというか、できるはずのタイミングで失敗したこともあって。正直言って自分の力を全部出せたかはわからないって感じだったんですけど、最後の最後の今日でタイム的には一番早いタイムで回れたので。もうちょっと最初から最後まで安定したフライトができれば良かったんですけど。でもできなかったものは仕方ないですし、最後1日でベストな結果を残せたので良かったと思います。
――今回気付いた今後の課題について教えてください
グライダーってよく言われることなんですけど頭のスポーツって言われてて。ここまで2年半くらいやってきて、ただ普通に飛ぶだけの技量は充分に、充分までとは言えなくてもある程度は身について来たので。あとはどう考えて飛ぶかというところが一番大事だと思ってます。いくら旋回が綺麗ですごい上手くても、どうやって飛ぶのかを自分の頭でちゃんと考えられないと勝てないスポーツなので。今まではずっと技量を、上手く操縦することに重きを置いてきましたし、もちろんグライダーをやめる時まで追い求めることではありますけど。これからは頭を鍛えるというか、色々考えて飛べるようにならないと、これより上に進めないというか、進歩ができないっていうのを今ひしひしと感じているので。もっと考えて飛べるようにら頭のいいパイロットを目指してやっていきたいと思います。
――関東大会への意気込みをお願いします
関東大会では機体が決まっていて、私は早稲田のエース機であるウィスキーパパの方の選手として登録されているんですが。この六大学戦で得たことや反省点を次の合宿で全部克服して、六大学戦では2番手だったんですけど、関東でも2番手として、チームの優勝に貢献出来ればいいなと思います。ウィスキーパパはきょねん関東で負けてしまって、全国に行けていなかったので、次こそはウィスキーパパを全国に連れていきたいと思っています。