50年前、大隈講堂近くで航空部のグライダーを見たという鎌田薫総長(昭45法卒=東京教育大付駒場)。長い年月を経て、「いつかは乗りたい」という念願をようやくかなえた。日頃から航空部を支えている早大航空部OB、大学関係者らも招き盛大に行われた今回の搭乗会。主務の土居原悠史(人4=東京・高輪)が、「最大の誠意を示そう」と意気込んだ『おもてなし』の全貌に追った。
まず行われたのは宿舎の見学。この場所で、同じ目標に向かって戦う総勢46名の部員が合宿を行っている。日々の努力を肌で感じた鎌田総長は、「きちんと使っているという点では統制が取れている」と評価し、目を細めた。その後ランウェイに移動し、いよいよ搭乗会がスタート。鎌田総長が搭乗したのは、デュオディスカスという最新鋭の機体だ。部員によるグライダーの説明を聞き終えると、リラックスした表情で機体に乗り込んだ。
鎌田総長を乗せたMW
大勢の部員が声をかけ合い機体を運び、いざ離陸。猛スピードで走り出したデュオディスカスは、瞬く間に雲の向こうに消えていった。約10分間のフライトを終え帰還した鎌田総長。「ワクワクしました」と語る無邪気な笑顔が印象的であった。引き続き部員らとの歓談を楽しむと、最後はウインチの見学へ。ウインチとは、機体の腹部に取り付けられたワイヤーを巻き取り空へ飛ばす機械で、大学やOBの支援によりこのたび新しいウインチの購入が決まっている。見学中に機械が故障するアクシデントにも見舞われたが、イベントは無事終了。貴重なひとときを過ごした鎌田総長は、ご満悦の様子で会場を後にした。
部員、鎌田総長、OBら関係者と機体
搭乗会を取り仕切った土居原は、「少しでも恩返しできたのかなと思うとうれしい」と、安堵(あんど)の表情を浮かべた。早大航空部創立から86年。伝統を守り続けることができたのは、OBらの献身的なサポートがあったからこそだ。そして、最大の恩返しは『結果』で示される。「大学航空界をリードするべく、もっともっと頑張ってもらいたい」(鎌田総長)。その言葉に応えるため、たくさんの人の思いを乗せ、大空で夢をつかむ。
(記事 川浪康太郎、写真 越智万里子)
早大で使われてきたウインチ
コメント
鎌田薫総長(昭45法卒=東京教育大付駒場)
――50年越しの搭乗ということでしたが、乗ってみた感想はいかがですか
ワクワクしましたよ。念願かなって(笑)。
――離陸前に恐怖心は感じませんでしたか
それはないです。むしろ楽しみでした。
――訓練の様子などをご覧になって、航空部の印象はいかがでしたか
非常にチームワークがしっかりしていて、女子も力仕事をしている人が多くて新発見でしたね。
――風の力だけで飛ぶグライダーという乗り物についてはどのように感じましたか
グライダーってそういうもんですからね(笑)。逆に風だけでも安全飛行ができるという意味では一番安全な飛行機だという印象を持っているから、心配とかはなかったですね。ただ邪魔をしてはいけないという、それだけですね。
――宿舎も見学されていましたが
きれいとは言えないけど、きちんと使っているという点では統制が取れているし、部の活動がしっかりしていることの反映だろうなという印象でした。
――最後に、航空部へのメッセージをお願いします
きょうは本当に貴重な経験をさせていただいたし、航空部の活動がきちんとできているということを認識させていただいて、すごくよかったと思います。大学航空界をリードするべく、もっともっと頑張ってもらいたいと思いました。ますますの活躍を期待しています。
土居原悠史(人4=東京・高輪)
――今回のイベントを開催する経緯を教えてください
きっかけとしては、ウインチの老朽化による故障が続いていて、新しくウインチを変えるということで大学とOBから大きなお金をもらっているのですが、そのご支援に少しでも報いたいなと思って今回の搭乗会を企画しました。
――鎌田総長が来られるということで、準備したことや心がけたことはありますか
今までいろいろな搭乗会を開いたのですが、最大の誠意を示そうということだけを考えていました。
――実際に話をされて、鎌田総長の印象はいかがでしたか
今まではパンフレットとかネットとかでしか見ていなかったのですが、間近で話したらすごく気さくな方で、この学長あってこその早稲田大学だなという風に思いました。
――鎌田総長が搭乗されたデュオディスカスという機体は特別な機体なのですか
特別なものですね。慶應大学が最初にデュオディスカスを導入したのですが、それに負けるわけにはいかないということで、OBの方々に買っていただいた機材になっているので、すごく思い入れのある機体ですね。もちろん最新鋭機の複座機なので、あれでソアリングトレーニングをできるということはすごく練習になるものだと思います。
――部の外の方との交流を通して、改めてそういった方々の支えを感じられましたか
きょうだけに限らず、もちろん金銭的な部分もあるのですが、競技スポーツセンターの方から大会のたびに激励をいただいたり、分からないことがあればサポートしてくれるということはいつも感じています。少しでも恩返しできたのかなと思うとうれしいです。
――最後に、航空部としての今後への意気込みをお聞かせください
総長とも話したのですが、航空部の高校と大学の一貫教育という体制を整えていきたいという思いがあります。次の主務の椙田くん(秀斗、政経3=埼玉・早大本庄)が早大本庄高校の出身で、彼ならきっとそういったことを実現できるのではないかなと思っています。私がいるうちにそういった基礎固めをしようと意識して、部活をしていきたいと思っています。