【特集】王座直前特集『一心同体』【第1回】園田稚×塚本美冴

女子アーチェリー

 第1回となる今回迎えるのは3年連続の出場となるエース・園田稚(スポ3=エリートアカデミー)と初出場となる伸び盛りのホープ・塚本美冴(スポ3=東京女学館)だ。高校時代から世代の先頭を駆け抜け、早大入学後も絶対的エースとして君臨する園田とアーチェリーを始めたのは大学入学後ながら、地道な努力で才能を開花させ、驚くべきスピードで進化を遂げて全日本学生王座決定戦(王座)メンバー入りを果たした塚本。異なる道をたどって大舞台へたどり着いた3年生コンビが紡ぐ、王座に懸ける思いとはーー

※この取材は6月3日に行われたものです。

「負けないことを目標に」(園田)

今年に入り、好調の園田

――初めにお互いの他己紹介をお願いします

塚本 同期の園田稚です。中学からアーチェリーをやっていて、中高でエリートアカデミー入っていました。すごくアーチェリーが上手くて、 私も稚みたいに上手くなりたいなって思っているような存在です。

塚本 同期の塚本美冴です。大学生からアーチェリーを始めた人って普通は王座メンバーには入れないんですけど、めっちゃ努力して王座のメンバーに入って、本当にすごいなと思っています。なんか自我が強いというか(笑)。個性豊かでこだわりがすごい強いので、話とか聞いてたらすごい面白いので、同期としてすごい楽しいです。

――先程まで行われた選考を突破し、王座メンバーに晴れてなったということで、今の率直な気持ちを教えてください

塚本 大学からアーチェリーを始めて、最初の2年間の王座はずっと応援していました。早稲田の人が戦っているということでは(精神的な距離が)近い試合だったのかもしれないですけど、自分が出るっていうところには少し遠い存在というか、憧れみたいなところがありました。そこに今回、選考を通して、自分がメンバーに入れるのいうのはすごい嬉しいなって思っています。選考中はすごい緊張していたのですが、選考が終わって、自分が選手になれたんだという実感が少し湧いた感じがするので、本番に向けてさらに調子を上げていきたいなという気持ちです。

園田 去年も(王座)メンバーに選んでもらって、最後の最後で近大に負けてしまって。悔しいなと思いがすごいあったので、今年こそは早稲田大学初の王座制覇を目指したいなと思っていました。そのためには選考で負けるわけにはいかなかったので、しっかり調整して選考に臨みました。これからもっともっと調整して王座に向かっていければなと思います。

――昨年の王座が終わってからの2022年度を振り返っていただいて、どんな2022年度でしたか

園田 私はすごい低迷してたなと思う期間でした。思うように成績を出すことができない期間で、ナショナルチームの選考会とかもあったのですが、結果が全然良くなくて、本当に落ち込むことが多い期間でした。でも年が明けてからは、しっかり自分と向き合って練習をして、伸びてきた期間でもあるので、すごい自分の中では悔しいこともいっぱいあったのですが、成長できた期間かなと思います。

塚本 去年の王座終わったあたりはまだまだ全然点数も出ていなかったのですが、点数が出ないなりにもインカレターゲット(全日本学生個人選手権)に出ることができて、全国大会に出るのが初めてだったので、 そこで全国レベルの選手と同じ会場で射てて、もっと上手くなりたいっていう気持ちが強くなりました。それ以降もフィールドでもインドアでもインカレに行くことができて、どんどん全国大会とかで経験を詰めたので、自分の中では、技術的にだけでなく、気持ちの面で成長できた1年だったのかなって思います。

――4月になり、3年生になって以降を振り返っていかがですか

園田 私は4月に入ってから負けないことを目標にしていて、リーグ戦(関東学生リーグ戦)も(強い選手が)いっぱいいる中で(個人成績でも)勝つことが大事だと思っていましたし、ユニバ(ワールドユニバーシティゲームス)の選考もあって、絶対に負けちゃいけないなと思ってた試合で勝つことができて、東日本(東日本学生個人選手権)もめっちゃ風が強かったですけど、勝つことができてました。なので、いい波に乗っているというか、いい流れが来てるので、そのまま王座まで持っていきたいなと思っています。

塚本 私はなんか3月頃からちょっと調子が良くなってたのですが、リーグ戦や東日本、前月にはフィールドの大きい試合もあって、 その中で調子を落とさずに維持し続けることが目標としていました。そこで今、王座選考までいい感じの調子を続けられて、結構充実した期間だったのかなというのはあります。

――今回、王座メンバー争いが激しかったと伺ったのですが、その点に関してはいかがでしたか

園田 やっぱ経験者組はもちろんメンバー争いに入ってくるのですが、未経験からも美冴とかがいて、女子は本当にみんな上手いなと思っていたので、今回は去年よりも激しい争いになると思っていました。実際に激しい争いになってたので、早稲田の層の厚さを感じました。

塚本 選考の最初の方では結構点数が出せたのですが、その後はやっぱり緊張とかもして、点数が大きく変動するようなところもあったので、最後の選考が終わった結果を見ても、差がほとんどないような感じでした。今まで自分が射ってきた中ですごい1本、1点の重さというのを感じた選考になったなと思ってます。

――激しい争いで選ばれた4人になると思うのですが、どんなチームになると思いますか

塚本 どんなチームになるんだろう。めっちゃむずい。いろんな人がいるからね。

園田 やっぱみんな自我は強い人だから、 どうまとまるのかなと思うし、逆に言えば、抑えてる面をどれだけ見せられるのかも重要だと思うので、切磋琢磨できるチームになるのかなと思います。

塚本 ほぼ稚が言ってくれたのですが、やっぱりいろんな長所が持ってるメンバーだと思うので、それぞれのいいところを足し合わせたら、すごい爆発的な力を出せるチームなんじゃないかなと思います。

――現段階での個人としての強みであったり、自信を持ってるところと課題や改善していきたいところがあれば教えてください

園田 長所は明るいところです。チームが落ち込んだ時とかに明るくなるようにできると思います。短所としてはあんまり深く考えなくて行動するところがあるので、チームを惑わせないようにしっかり考えて行動したいと思います。

塚本 長所は何事もとりあえずやってみようというか、挑戦心を持って常に試合を迎えられるところかなと思います。短所は稚とは逆で(笑)。色々考えすぎるところがあって。試合中に考えちゃいけないようなことを考えすぎて、一周回ってよくわからなくなるみたいなことがあるので、切り替えるところは切り替えられるように意識して王座に向かいたいなって思います。

――アーチェリー選手としてはお互いのことをどのように見ていますか

園田 (塚本は)始めてからの期間がめっちゃ短いのに、本当にいろいろ知っています。ここをどうしたら右に行く、ここをどうしたら左に行くとかをめっちゃ知っています。私はそういうの全然考えなくて、なんとなくで、あっち行ったな、こっち行ったなと思ってるのですが、塚本は結構原理とか考えて競技しているなと思って見ています。「風が吹いてるから」とかをいつも説明してくれて、すごい頭いいんだなと思うし、ちゃん考えて練習してるなというのも思います。あとはやっぱり自分のルーティーンとか、決めてることをしっかり守って競技してるので、そういうところをしっかりしてるのが強さにつながっているのかなと思います。

塚本 稚はいつももうすごい(笑)。チームがどんなに外してても当ててくれるので、安定感がもうとにかくすごいなって思います。普段の練習量とかも見てても、誰よりも本数を射って、すごい努力してて、 アーチェリー部の部員として、目指すべき存在なのかなっていうのは思います。

――ここからはお一人ずつ、質問させていただきます。まず園田選手からお伺いします。 今年に入ってからどの大会でも結果を残されている印象がありますが、その要因として考えられるものはありますか

園田 1回試合に出てすごい失敗して、自分の行動を見つめ直した時、勝ちへのこだわりが全然ないなということに気づきました。勝っても負けても、「良かったな」、「調子悪かったな」みたいな。あんまり言葉で表現するのも苦手で、なんとなく勝った、なんとなく負けたみたいなことが多かったです。そういうのを直して、「勝てる試合は絶対に勝とう」とその負けた時に思って、そういう風に練習もして、今年に入ってからは好調に行けてるのかなと思います。

――過去2回の王座では一番手で射っていましたが、今年は何番手を射ちたいというのはありますか

園田 今年も一番手で射ちたいです。早く射って早く終わりたいです(笑)。なんか一番手は難しいと言われることが多いのですが、私としては三番手とかが一番嫌で。 一番手は絶対に決めないと次に繋がらないから(難しい)と言われるのですが、三番手はもうこれ以上外せないみたいな雰囲気を感じながら射つのでそれが苦手です。そうなると余計に外しちゃうことが多いので、一番手で楽に決める方が私には合ってるのかなと思うので、今年も一番手を任せてもらいたいなと思っています。

――今まではなぜ一番手だったのでしょうか

園田 今までは射つタイミングが早いので、早く射って後ろに時間残せるから一番手で起用されていました。それがクセになって味をしめてしまいました(笑)。

――今回の王座は次期主将として臨むこととなりますが、その点で思うところはありますか

園田 もちろん今度の王座でも王座制覇したいのですが、私の代でも王座制覇したいなと強く思ってるので、今回の王座でチームをどういう風に引っ張ったらいいのかとかをしっかり先輩たちから学んで、来年に生かせるようなチームプレーをしていきたいなと思います。

――続いて塚本選手にお伺いします。アーチェリー歴3年目にして王座メンバー選出となりましたが、ご自身で予想はされていましたか

塚本 入部した時から周りには上手い先輩も稚もいた中で(自分は)未経験で。(王座メンバーは)ちょっと遠いような感じもあったんですけど、今年の春合宿から帰ってきてから、 なんか少しつかんだのが突然当たるようになって、早稲田で点取りした時は大体600点超えるようになったあたりから、王座メンバーに入れるように頑張ろうという気持ちが出てきました 。

――高校以前からアーチェリーを始めている人と遜色ない成績を残せているのはなぜか自己分析をお願いします

塚本 私の強みなのかなと思うのは、射型とか自分の感覚と結果とかを観察して照らし合わせられるところなのかなと思っています。 観察して、こうなのかなと思ったことと、自分ができることが一致して、点数が出るようになりました。でも、感覚的にすごい夢のような点数を射っているというよりかは感覚通りの点数で今は射てているのかなと思います。

――高校以前からアーチェリーを行っている方々と遜色ない点数を出せていることをどう捉えていますか

塚本 インターハイの結果とか少し興味があって見ることもあるのですが、高校から始めた人でも点数を出せているような子がいるので、なんか大学から始めたからと言って、2、3年で点数が出せないわけじゃないという気持ちがあったので、自分もそうできるよという嬉しい気持ちもあります。

「王座はアーチェリーを上手くなりたいという気持ちを奮い立たせてくれる」(塚本)

大学からアーチェリーを始め、見事王座メンバーに選ばれた塚本

――お二人への質問に戻ります。王座での個人での目標を教えてください

園田 まずは予選1位です。それから団体メンバーに入って黄色しか射ちません。全部9点以上に射ちます。

塚本 初めての王座で緊張するかもしれないんですけど、自分がしたい試合をしたいと思います。自分の射ちたいようにちゃんと射つということが目標です。

――王座メンバーを見て、自身はどのような役割を担うと思いますか

園田 私はみんなを安心させる立場になれたらなと思っています。初めて王座出場する人が2人いて、緊張は絶対すると思うので、 「稚が点数は出してくれるから安心して」みたいな風に思ってくれると嬉しいです。そういう安心感のあるプレーをできたらいいなと思っています。

塚本 私は挑戦者というか、王座初心者なので、初々しい心を出していけたらなというのは思っています。 王座を経験している経験値もすごい重要だと思うのですが、初心者の挑戦者の心も時には必要になることがあるかもしれないので、とにかく挑戦者という気持ちでチームを励ましていけたらなって思ってます。

――準優勝した昨年のチームと比べられることも多くなるかと思いますが、その点はどのように考えていますか

園田 62代(今年のチーム)は62代なので、この代で作ってきた1年間の総まとめだと思っています。あと(昨年は)準優勝で、まだ王座制覇というすごいところが残ってるので、この代で王座制覇を取って、先輩たちに恩返しできたらいいなと思います。

塚本 もう(園田と)一緒になっちゃうのですが(笑)。結果を比べられるのはしょうがないかもしれないのですが、62代らしく王座を戦えたということが全面に出せるように王座を戦っていけたらなと思います。

――お二人にとって王座とはどのようなものですか

園田 王座はその代の総まとめかなと思います。その代の王座が終わったら代替わりになっちゃうので、その代がやってきたことの集大成を飾るものだと思っています。

塚本 なんか稚が部にとってについてのすごいかっこいいこと言ってくれたのに、私は個人的なことになっちゃうのですが(笑)。私にとっての王座はアーチェリーを上手くなりたいっていう気持ちを奮い立たせてくれる、心の中の根底にあるもの、原動力みたいなものかなと思っています。

――早大の王座制覇の鍵となってくるものはどういったものだと思いますか

園田 オンオフの切り替えをしっかりできたらもっと近づくのかなとは思います。やっぱり楽しいチームなので、「楽しい楽しい」となってしまって、切り替えがうまくできない時もちょっとあるなと思います。しっかりみんながそれぞれ様子を見て、集中する時と楽しむ時って切り替えて試合ができれば、王座制覇ができると思ってます。

塚本 王座の場というのは早稲田全員が優勝目指してるシーンで緊張はすると思います。なんかベタな答えになっちゃうのですが、そこでいかに平常心で、いつも通り射つということをどこまで追求できるかというのが鍵になるのかなと思っています。 みんなちゃんと射てば9点には入るっていう実力をすごい持ってるメンバーだと私は思ってるので、そこをいかに王座本番でできるかというところかなと思います。

――お二人が意識している選手や大学はありますか

園田 去年も言ったと思うのですが、日本体育大学の渡邉麻央が気になります。今年もやはり気になりますね。注目選手ですね。

塚本 私はまだそんな全国の場での経験もないですし、知識もないので、あんまりまだ浮かばないのかなという感じです。

――最後に王座に向けての意気込みをお願いします

塚本 大学からアーチェリーを始めて、ずっと挑戦し続けてきたので、 王座でも自分の100パーセント出せるように出して、部の王座制覇に少しでも貢献できるように。挑戦の心を忘れずに、全力を出して早稲田の力に少しでもなれるように頑張っていきたいなと思います。

園田 今年こそ早稲田大学が王座制覇をするので、そこでかっこいいところを見せられるように頑張りたいと思います。

――ありがとうございました!

(取材・編集 梶谷里桜、星野有哉 写真 矢彦沢壮真)

王座への意気込みを一言で書いていただきました!

◆園田稚(そのだ・わか)(※写真左)

2002(平14)年4月23日生まれ。エリートアカデミー/東京・足立新田高出身。 スポーツ科学部3年。同期の山下健友選手(スポ3=愛知・東海)から「大分弁で王座への意気込みを」とのリクエストがあった園田選手。「しんけん頑張るけん!」とのことです!

◆塚本美冴(つかもと・みさえ)

2003(平15)年2月5日生まれ。東京女学館高出身。 スポーツ科学部3年。園田選手いわく、こだわりがとても強いという塚本選手。同期でよく行く定食屋さんではとんかつ定食しか食べないそうです!