関東学生リーグ戦も終盤に差し掛かり、この日は早大と同じく3連勝中の明大と対戦した。勝てば全日本学生王座決定戦(王座)出場が決定する大一番で、早大女子アーチェリー部発足以来最高得点となる2615点を記録。同ブロック最大の強敵を150点近くの大差で退け、王座出場権獲得に花を添えた。
早朝は予報通り暴風雨に見舞われた立大レンジだったが、午前9時を回る頃にはすっかり天候も回復し、想定よりも良好なコンディションの中試合は開始した。本来の早大は50メートルを比較的苦手としていたが、この日は序盤から快調に飛ばしていく。各選手が今季自己ベストに迫るペースで得点を重ね、エンドごとに行われる円陣でもこれまで以上に手応えを感じていることをうかがわせる掛け声が飛び交った。
積極的に声を掛けるなどして、ここまでチームをけん引している狐塚
雲の間から日が差し込み始めた後半の30メートルでも早大の勢いは止まらない。「試合中は自分のやるべきことに集中できた」(狐塚佑姫、社4=岐阜・聖マリア女学院)という言葉に代表されるように、試合を通じて各選手が集中力を切らすことなくプレーを続ける。結果としてさらに明大との点差を広げた早大は、創部史上最高得点を記録。チーム全員の力でたたき出した2615点だった。
チームの一体感が歴史に名を刻む結果を呼び込んだ
「リーグ戦を重ねるにつれてどんどんチームの雰囲気が良くなっている」(舩見真奈、スポ4=山形・鶴岡南)、「全員が試合をつくっていくという気持ちで動いている姿が頼もしい」(狐塚)と、最上級生の2人の言葉が表すように、ことしの女子アーチェリー部の雰囲気の良さは特筆すべきものがある。最上級生がチームをけん引し、2、3年生がのびのびとプレーできる雰囲気をつくり出す。さらに第2戦からチームに合流した中村美優(スポ1=北海道・旭川)を始めとした1年生の存在が、上級生たちに良い意味での緊張感を与えてくれているという。「当初想定していた以上の良いチーム状況」と、遠藤宏之監督(平4政経卒=東京・早大学院)が評するように、今の女子アーチェリー部はすべての歯車がうまくかみ合っている印象だ。王座出場を確定させてもなお、狐塚は「まだまだできることはたくさんある。次はどこまでいけるか楽しみ」と目を輝かせて語ってくれた。次戦の法大戦でブロック優勝をつかみ取り、王座制覇への足がかりとしたい。
(記事、写真 森迫雄介)
結果
○早大2615-2474明大
コメント
遠藤宏之(平4政経卒=東京・早大学院)
――ここまでの女子部の戦いぶりはどのように映っていますか
王座に出ることは開幕前から織り込み済みでしたので、想定通り順調に来ているというのが第一です。ただ、非常に良い方向でさらに(目標を)上回る実績を上げてくれていると思います。大きいのはやはり4年生の2人が、期待通りではありますが、最上級生らしい中核的な仕事をしてくれていることです。2年生、3年生の中でも経験の浅い者も、上位4人の中にきっちり入ってきてくれている。チーム全体に「うかうかしていられない」という良い緊張感、刺激、競争をもたらしてくれている。そういったムードが特に開幕前より顕著になっていますね。さらに嬉しい誤算として、1年生でスポーツ推薦で入ってきた中村美優(スポ1=北海道・旭川)を始めとして、3人の新入部員の存在が負けられないという思いに拍車をかけるだけでなく、後ろからのサポートの手厚さも増しました。アーチェリーは一見個人スポーツに見えますが、後ろからのサポートや、切磋琢磨する気持ちというのが結果にも響きます。色々な要素が良い方に作用し、当初想定していた以上の良いチーム状況になっていると思います。それがまさに歴代最高スコアを出すというきょうの結果にもつながりました。そういう意味でも今のメンバーは歴代最強とも言えます。残り第5戦はありますが当然勝ちに行きますし、優勝決定戦ではおそらく日体大が出てくるはずなので、関東優勝校を決める戦いになります。王座も当然日体大を始めとして強豪校が出場しますが、王座制覇という意味では歴代の中でも最も近い距離にいるので、非常に期待できる良いチームだと思います。
――最後の円陣で日体大戦が楽しみだとおっしゃっていました
我々の点数が日体大に肉薄しているということです。日体大は非常に高いレベルで戦っている学校ですので、高校時代から有名な選手をと並べてきています。それに対して今までは客観的に見たら差がありましたが、ことしはそれに匹敵する水準にいます。接戦になると思っているので、楽しみです。
舩見真奈(スポ4=山形・鶴岡南)
――王座出場が決まった今の気持ちは
毎年優勝決定戦まで行っているので、王座は確実だとは思っていましたが、しっかりと今のチームで掴めたことは非常に嬉しく思っています。
――開幕戦の自己ベストに次ぐ得点でしたが、きょうのご自身のプレーを振り返って
荒れた天候になる予報でしたが、結局非常に射ちやすい天候の中で射てたということと、リーグ戦を重ねるにつれてチームの雰囲気も良くなっていったので、非常にプレーしやすい環境で臨めたからこそ点数が出せたのだと思います。
――早大女子アーチェリー部史上最高得点を記録したことについては
今のメンバーから考えたら2600点は確実に超えられるだろうなというのは思ってはいましたが、試合特有の緊張もある中でしっかり点数を出せたことは良かったと思います。ことしのリーグ戦における日体大の点数にも負けず劣らずの点数を出せたので、優勝決定戦でも勝つチャンスは十分ありますし、王座も必ず取れるという自信を持つきっかけになるのかなと思います。
――これから重要な試合が続きますが、何か意気込みがあれば
チームとしては1年生にも雰囲気になじんでもらってきていて、全体としての雰囲気も良くなっているので、これからも引き続き良い雰囲気を保てたらと思います。王座は70メートルの試合になるので、一人一人しっかり70メートルの目標を立ててもらって、早め早めに行動してもらえたらと思います。
狐塚佑姫(社4=岐阜・聖マリア女学院)
――王座出場が決まった今のお気持ちを
王座出場権を獲得できたことには一安心しています。しかし私たちの目標はその先のリーグ目標点数や、優勝決定戦での勝利と王座制覇というところにあるので、今日の試合ではリーグ戦の目標点数を超えられたことと、これまでワセダが見たことのなかった2600点の壁を超えられたというところが一番嬉しいです。やっと優勝決定戦や王座で戦うための目標としてきたレベルになって来たなという気がしています。
――ご自身のプレーを振り返って
個人的には前回の試合から感覚が悪くて不安要素を多く持ったまま試合に臨みました。ただ、昨日の時点で今日はどう射つかを決めていたということもあり、試合中は自分のやるべきことに集中できました。その中で、攻めて射つ気持ちが足りないのが今の課題です。王座でビビりながら射っても点数は出ないので、強気で射つ姿勢を残りの時間で身につけたいです。
――ここまでのチームの雰囲気、状況はどう映りますか
戦力として少しでもチームの点数に貢献したいという気持ちが全員から伝わって来ます。私は「私たちは強いから自信を持とう」ということと「勝つイメージをしっかり持とう」ということをずっと伝えてきたのですが、まさにその言葉通りの強いチームになってきた気がします。雰囲気の面でも、4年生がこういうチームにしたいということ伝えているところへただついてくるのではなく、全員が試合をつくっていくんだという気持ちで動いている姿がすごく印象的で、とても頼もしいです。また、OGさんから1年生が入部してまだ2週間とは思えないくらいなじんでいるというお言葉をいただいたように、とても良い雰囲気で1年生をワセダの雰囲気に引き込めていると感じます。
――創部以来最高得点を記録したことについて
2600点台は、舩見とも『私たちの代で見てみたいね』とずっと企んでいた世界なので、今回見ることができて本当に嬉しいですし、チームのみんなにありがとうって言いたいです。出てるって分かった時はもうニヤケが止まらなかったです。実は、もう一つの目標であるアベレージ625点というところへもかなり近づいていて、チーム全体のレベルが上がったことで2600点台に乗せることができたのだと思います。
――次戦以降への意気込みをお願いします
目標点数は更新しましたが、まだまだできることはたくさんありますし、次はどこまでいけるのか楽しみな部分ではあります。燃え尽き症候群にならないようにチームの意識を盛り上げていくのが私の役割でもあると思います。点数はもちろん、王座で勝つための試合にしていきたいです。