関東学生個人選手権(個選)の予選が埼玉・はらっパーク宮代にて行われた。例年春に行われていた関東学生リーグ戦(リーグ戦)がなくなり、今期を占う重要な場となった今大会。男子のみ予選を行い上位100名が決勝に進出できる中で、早大からは13名が出場し、11名が予選を通過する。新体制として初となる試合でまずまずの滑り出しを見せた。
例年であれば4月にリーグ戦、6月に全日本学生王座決定戦(王座)の流れとなり、王座後に新体制となる。しかし新型コロナウイルスの影響によりリーグ戦は中止、王座は9月に延期。早大アーチェリー部も今月初めに新体制に移行した。そのため、今試合は新体制初であり、王座選考の舞台である本選にもつながる。選手個人としてもチームとしても今後を占う重要な試合であった。 新型コロナ感染対策としてマスクの着用が義務付けられるなどの制限がある中での開催。ほとんどの選手が実戦までしばらく間が開いていたため、まずは試合勘を取り戻すことが求められた。風がなく射ちやすいコンディションも味方し、多くの選手が実力通りの結果を出して順調に予選を突破。出場した13名のうち11名が2週間後の本選へと駒を進めた。
今試合を2位で通過した棚田(写真右、アーチェリー部提供)
その中でも特に光ったのは4年生の活躍だ。2月の全日本学生室内個人選手権(インカレインドア)で2位となった棚田歩(スポ4=北海道・帯広三条)は全体の2位、市川遼治前主将(スポ4=群馬・高崎商大付)が4位、相木将寛(創理4=東京・駒場東邦)が10位で通過。早大の上位3人となって上級生としての貫禄を見せた。 この試合の目標を「練習通りの射形ができるように」として臨んだ棚田。679点という最終的な点数については「せっかくなら680点に乗せたかった」と少し悔しさをのぞかせたが、調子を取り戻したことには満足気な様子だ。市川も数カ月ぶりの実戦に「少し緊張した」と硬さはありつつも安定した射を見せ、666点でまとめた。
久々の実戦となった選手が多い中でもうまく調整して臨むことができ、次につながる収穫の多い試合となった。一方で思うように実力が発揮できず、課題の残る選手も見られた。ここから修正し、2週間後の本選でどれだけ成長した姿を見せられるか。また、本選からは女子の試合も始まる。田邉正騎新主将(教育3=東京・早稲田)を中心とした新体制はいよいよスタートだ。念願である王座制覇に向け、戦いの幕が明ける。
(記事 朝岡里奈、写真 部員提供)
結果
▽男子リカーブ
2位 棚田 歩 679点
4位 市川遼治 666点
10位 相木将寛 653点
21位 北 遼祐 638点
26位 浦田大輔 632点
32位 中野勇斗 621点
33位 杉田蒼月 620点
39位 藤澤博斗 614点
91位 田邉正騎 562点
99位 駒崎友彰 551点
100位 篠原純弥 547点
(ここまでが予選通過)
103位 山本治輝 544点
110位 服部朝樹 530点
コメント
市川遼治前主将(スポ4=群馬・高崎商大付)
――今日は久しぶりの試合だったと思いますが、調子はいかがでしたか
コロナ禍の状況で最初の方はなかなか本数を稼ぐことができなかったんですけれども、6月7月ぐらいから練習量は元に戻していって、最近ですとコロナ前までの体力に戻ってきていました。それに伴って調子も、また前の通りには点数も戻ってきていて、今日も状態としてはそんなに悪くないのかなと感じていました。
――今日の試合で目標としていたことはありますか
例年と違う選考の仕方で、本選に出場するためのボーダーが低いということが予想されていたので、普段通りの射ち方であれば全く予選通過は問題ないと思っていました。なので今日に関しては点数面での意識というより、普段通りの自分の射ち方で丁寧に射っていくということに集中して臨みました。
――その目標は達成できましたか
そうですね、本当に今日は日差しがあって暑い中の試合だったんですが、特に風もなくもちろん雨も降らず、環境面ではベストコンディションな試合ではありました。自分の感じからしても狙いに行くようなことはあまりなく、久しぶりの試合で緊張したということがあったんですけれども、変に4年生だからという意識もせず自分の射形に集中して今日は臨めたのではないかと思います。
――点数や順位などに関してはいかがですか
点数面で言いますと、欲を言えばもう少し、670点以上は欲しかったですね。でも最近は70(メートル)メインで射っていてショートも久しぶりということもあって、そこで今回666点が出せたので点数は問題ないかなという感じですね。順位につきましても、僕が最後見た速報では4位か5位ぐらいだったのですが、そちらもそこそこかなという感じでした。重要なのは次の本選に出場して王座の出場権を獲得するということなので、予選に関しては特に順位には執着せずに臨みました。
――リーグ戦がなくなり王座も延期された状態で60代に移行しました。59代の1年を主将としての立場で振り返ると、どんな1年でしたか
もともと実力ある同期や後輩がたくさんいるということで、僕の59代は当初からこのチームだったら歴代から見ても本当に強いチームになるだろうなと思っていました。実際練習を重ねていく中で、練習の中の点取りではあったんですけれども、男子チームの歴代新記録に匹敵するような点数も出せた瞬間もありました。点数面でも本当に強くなっていて安定感のある層ができて、8番手ぎりぎりではなく9番手10番手もしっかりいるようなチームになってきたと感じていました。本当にいいチームになってきたんですけれども、残念ながらコロナの影響でリーグ戦が中止で王座も延期となり、そういった状況でリーグ戦が戦えなくなってしまった、また59代の中で最後に王座を迎えることができなかったことについては、自分では本当にすごく悔しく思っています。
――今後60代に期待していることや伝えたいことはどんなことでしょうか
まだコロナの状況は収束する兆しが見えない中ですし、今後の予定されている試合なども中止になることも予想されます。60代の子たちに関しては、前々からどんな状況でも対応できるような準備をすることと、試合がなくなっていく中で逆に言えば練習の量が増やせるということなので、そこはあくまでマイナスばかりにとらわれずに、しっかり自分の時間を作れるというようにプラスで考えて、予定を立てながらしっかり準備して活動をしてほしいなと思います。
――最後に、本選への意気込みをお聞かせください
次の本選が王座選考に絡んでくる本当に大事な大会でありまして、また私自身も本選としては4年生で残すところ最後、学生の中では最後の試合でありますので、しっかり最後にいい形で終われるように調整し、かつ自分が頑張ることが結果的にチームのためにもつながってきます。次の試合に関しては点数も意識しつつ、自分のアーチェリーを十分に出せるようなパフォーマンスをやっていきたいと思います。
棚田歩(スポ4=北海道・帯広三条)
――今日の試合を振り返っていかがでしたか
コロナが明けた後から、自分の試合の勘を取り戻そうと思って記録会のような試合を2試合ぐらい入れたんですが、その時に比べたら本当にしっかり前までの実力通りできたなという感じはあります 。
――今日の試合の目標は
今日は予選は通れると思っていたので、自分の持っている射形を、いつもの練習通りにしっかり試合でも出すということを目標にやっていました。
――その目標は達成できましたか
最初の50メートルの段階では結構できていたんですが、僕の同的の(同じ的で射っていた)子が今回1位だったんですが、30メートルになって、その子とちょっと点数で争っていてだんだん点数への意識が強くなって、思ったより後半はそういった意識ができていなかったなと思います。
――今日は2位になりましたが、この順位に関してはいかがですか
最近、コロナ明け以降あまり調子が良くなくて苦しんでいたんですが、久しぶりにこうしてそれなりの点数が出せて2位という形だったので、自分的には良かったかなという印象はあります。
――点数に関してはいかがですか
結果点数は679点ということで、せっかくなら680点に乗せたかったなというのが個人的な印象ではあります。でも想像していたよりも点数がしっかり出せたので、ちょっと悔しいなという思いの反面、総合的に見ると合格かなという印象です。
――風や暑さなど環境についてはどうでしたか
風は競技に影響するほどではありませんでしたが、暑さに関してはやはり感染症対策でマスクをつけなければいけなかったり、そういう面でしんどかったなという印象はあります。
――マスクとありましたが、コロナによる普段の試合との違いや、それによる心境の変化はありましたか
そうですね、試合の流れだったり自分の矢しか抜かないことだったり、マスクをしなければいけないという点において、やはり普段の試合とは違う部分が多くて慣れが必要だなという部分もありました。でもそういう部分も含めて今日の試合は自分の中ではしっかりできたなという印象です。
――コロナで試合ができなかった期間はどんな練習をされていましたか、また感覚の違いはありましたか
僕は射つこともできなかったので弓を引いたり筋トレしたり、そういう地道なトレーニングを続けていました。やっぱり射ってこその感覚というのはあるんだなと思いましたね。射たなかったら弓を引くだけとは感覚が違って、最初の頃は全然まともにいつも通り射てなくて苦しんでいました。
――王座が延期となったまま、代が替わり新体制となりました。今の気持ちをお聞かせください
やはり僕らの代で王座制覇という目標に向けて挑戦したかったという気持ちはあります。でもこのコロナの中で試合が、王座がやれるということだけでも自分は嬉しいですし、とても光栄なことだなと思います。代としては引退してしまったんですけども、自分の目の前の目標に向けてこれから頑張っていきたいなと思います。
――本選に向けてこれからどんな準備をしていこうと思っていますか
ここからは距離が変わって70メートルになり、王座とも同じ距離になるので、しっかり本選で自分が早稲田のトップとして引っ張れるような気持ちでやっていきたいと思っています。またそうやって自分が引っ張ることによって、後輩が安心して射てると思ってくれるように頑張っていきたいなと思います。
田邉正騎主将(教3=東京・早稲田)
――まずはご自身の今日の試合を振り返ってみていかがですか
満足いかない結果でしたね。全体的に技術面であったり、メンタル的にも自分の良くないところが出たかなと思います。点数は自分の満足いかない結果でしたし、順位も非常に焦りを感じるものになってしまったなと思います。今後しっかり挽回できるように調整していきたいです。
――コロナによって普段の試合と違うところや、それによる心境の変化はありましたか
コロナの影響で全体的に人数が削減されていたので、そのぶん間隔というか人と人との距離というのは大きく保たれていて射ちやすい環境ではあったと思います。ただ、マスクの着用が義務付けられていたので、屋外スポーツというところで熱中症などの体調の変化というのも気をつけていかないといけないのかなと思います。
――今回はいつぶりの試合だったのですか
4カ月ぶりくらいですかね。
――なかなか練習ができない期間があったと思いますが、調子の上下はありましたか
コロナ前はリーグ戦が予定されていたのでしっかり調整が進んでいたのですが、このような状況になったことで思うように練習ができませんでした。今回も練習不足であったり、実力というものがうまく発揮できなかったのかなと思っています。
――部としての活動ができなかった期間はどのように練習されていましたか
アーチェリーは屋外でやるスポーツで十分な広さがないと練習ができないので、家では実際に矢は射たずにイメトレというか技術的な確認というのと、筋トレ部分でどうにか補うという形しかできなかったですね。
――個人として、本選に向けての意気込みや目標を聞かせてください
予選では自分の満足のいかないパフォーマンスでありましたし、点数もそれに直面しました。本選までには猶予もあるのでしっかり調整と練習を重ねて、自分の悔いのない戦いができるように頑張りたいと思います。
――続いて主将としての話に移ります。今大会が新体制として初の大会でしたが、チームとしてどういうスタンスで臨んでいましたか
今回の個選予選が我々の目標とする王座に直接つながる試合とは言えないんですけれども、予選を経て本選、本選を経て王座という形というのを全員で共通認識とさせました。そういう点ではしっかり各々が未来を見据える視点というものを持ってこの大会には望んでいたのかなと思います。
――今日のチーム全体の結果を振り返っていかがですか
もちろん個人個人で結果の差はあると思うんですが、しっかり大会に向けて調整できている者もいたということでまずまずのスタートなのかなと思います。我々の目指す王座に向けての入念な準備ができていた者もいるのでこのまま進めていこうという部分と、その反面満足のいかない結果なのかなという部員もいたので、しっかり王座を見据えながら今後の練習に励んでもらえたらと思っています。
――主将としてこれからどんなチームを作っていきたいと思っていますか
まず最初に王座という我々の目指す試合が1年間の中で2回行われるので、両方制覇というものを視野には入れています。けれども市川さんや棚田さんといった4年生が主力であった59代に比べて、やはり我々はチームで戦わないといけないということを強いられています。個々の強さを底上げしながらも全国に立ち向かっていけるよう準備、目標立てというものをして、王座を制覇できたらと思っています 。