晴れ渡る青空の下、来月、静岡県掛川市で行われる全日本学生王座決定戦(王座)への進出を決めた選手たちの表情は、満面の笑みであふれていた。勝った方が王座への切符を手にすることができる関東学生リーグ戦(リーグ戦)の5位決定戦。早大は立大と対戦した。両チームとも互いに譲らず、一進一退の展開となったが、最後は立大を突き放し勝利。見事、王座進出を決めた。
「王座制覇」を目標にするアーチェリー部。女子がすでに進出を決めているだけあって、男子にとって絶対に負けられない一戦だ。序盤から試合は熱気に包まれていた。高得点が出ると大きな声で選手をたたえる応援する部員と、その声に応える選手。前半の50メートルで棚田歩(スポ3=北海道・帯広三条)が3本の矢がすべて10点(金色)に射つ、30金を出すと、チームは大きく盛り上がり、点数を伸ばしていく。一方、立大も王座がかかっているだけに選手たちの気合いも十分だった。第4エンド終了後には、遠藤宏之監督(平4政経卒=東京・早大学院)自ら円陣に加わり、激励をした。「膠着感があった」(遠藤監督)中で、早大の雰囲気はさらによくなっていった。その後も互いに一歩も譲らぬ中、早大が10点ほどリードして迎えた前半最終第6エンド。立大が数名の選手が点数を落とすなか、早大は棚田や飛戸大知(社3=愛知)らが、安定したショットを披露し、1845-1814と、29点差に広げて前半を折り返すことに成功した。迎えた後半の30メートル。第1エンドに棚田がいきなり60金を出して勢いをつけると、竹内寛人主将(スポ4=愛知・東海)や市川遼治(スポ3=群馬・高崎商科大付属)も30金のショットを見せる。その後リードを保ったまま逃げ切った早大。勝った方が王座という厳しい戦いで底力を見せ、掛川への切符をつかんだ。
応援する部員とグータッチする棚田
試合後、王座進出を決めた率直な気持ちを聞くと、「ホッとしたというのが大きい」と話した竹内。第4戦を終えた時点で1勝3敗と、まさに崖っぷちに立たされた。主将としてチームを引っ張る竹内にとって、苦しい状況であったのは間違いない。その中でもきょうの試合で意識した点を、「自分たちが最高のパフォーマンスができるように意識する」と語った通り、常にチームの目標を見失うことなく、王座への道に向かって進み続けてきた。ここまでつなげることができた要因を聞くと、「後輩たちのおかげ」とチームへ感謝の言葉を忘れなかった。
遠藤監督も円陣に加わり、激励した
「ジャイアントキリングができる」(遠藤監督)という王座。きょうまでのリーグ戦では、8人が72本を射ち、男子は上位6人の総合計で競い、「番狂わせが起きにくい」という。一方の王座は、6射程でのセットポイントで勝ち負けを決めるため、方式が大きく異なっている。そのため、「(地力としては)水をあけられている」近大や日体大に勝利する可能性は大いにあり得るのだ。「王座で最高のパフォーマンスをできるように自分がしっかり引っ張っていきたい」と話した竹内。その目には確かに、王座制覇への道筋が見えているようだった。
(記事・写真 岡秀樹)
結果
〇早大3869-3831立大
コメント
遠藤宏之監督(平4政経卒=東京・早大学院)
――王座進出を決めました。今の率直な気持ちを聞かせてください
とにかくうれしいです。リーグ戦の5試合の内容が非常に苦しかったので、4試合目まで1勝3敗と大きく負け越して、まさに崖っぷちのところから最終戦の勝利。そしてきょうの勝利と。もちろん自力だけではない構図ではあったんですけれど、本当にぎりぎりのところから勝ちを拾って王座にたどり着いた、この結果について本当に大きいと思っています。
――前半4エンド終了後の円陣の時に、監督が激励されていたことが印象的でした
はい、実は時々やります。やりたいからやっています。アーチェリーの試合はメンタルの部分が非常に大きいです。射っている人間の気持ち、パフォーマンスも大きいのですが、それを支える選手たちも自分たちがやれる、自分たちが一体となって選手を支えている。このムードってものすごく大きくて、間接的にもそれが毎回流れよく、誰かがちょっとくらいのミスショットが出ても、空気を悪くせずに、周りが、「でも大丈夫。俺たちはやれる」。この空気を作り続けることが大事です。そういう意味で、前半後半といい感じで現役の子たちが声を出しながら円陣の輪を作っていて、なんとなくはたから見ていてネタ切れっぽいかなと。また結果的にも点数の経過を追っていくと、50(メートル)の前半でほぼ均衡状態が続いていました。そういう相手との相対的な膠着感があるなというのもあって、僕自身がわっと声を出したいなって、こういう形を取りました。
――1ヶ月後に王座を控えている中で、選手たちに期待されているところはありますか
そうですね。やはり目標としての王座制覇です。試合にルール、仕組みが全く変わります。きょうまでの順位決定戦を含めたリーグ戦、関東(学生リーグ戦)の戦いは、8人が並んで72本を射って、(上位)6人の総合計と、番狂わせが起きにくいフォーマットです。それに対して王座というのは選ばれた3選手が、毎回わずか1分、2分という中で、3射ないし6射、6射程でのセットポイントで勝ち負けを決めていきます。これは非常に見ている分には番狂わせが起こりやすい、面白い試合ですし、またある意味、早稲田の地力で言うと、関西の近畿大学であるとか、関東の日本体育大学に対して、正直今シーズンは水をあけられているのが地力としてはあると思います。その中でも、ポイントを取って取って、ジャイアントキリングができる。これが王座の試合形式ですので、そこに集中して準備をしていく。可能性が明確にある以上、そこで我々は王座を取りに行く。そこを期待しています。
竹内寛人(スポ4=愛知・東海)
――王座進出おめでとうございます。今の率直な気持ちを聞かせてください
そうですね。うれしいというのが先に出るかなと自分では思っていたのですが、ホッとしたというのが大きいのもなんだなという風に、ちょっとやっぱり点数的にも、もうちょっと出るかもな、みたいなメンバーで、出そうで出ないみたいな感じで来ていたので、最後の最後で点数はもうちょっとついてくるかなという感じだったんですけど、雰囲気としては最高に形で王座に切符をつなげることができてよかったなと思っています。
――第4戦が終わったところでは1勝3敗と少し苦しい展開となりましたが、そこから王座進出までつなげることができた要因はありましたか
そうですね。一番大きいのは今の3年生が点数的に引っ張ってくれるというところで、4年生的にもいろいろ運営の面を考えるところはあったんですけど、彼らが点数の面でも、部活の雰囲気の面でも作ってくれたなというところはあるので、後輩たちのおかげかなというふうに思っています。
――きょうの試合を迎えるにあたって、チームとして意識された点はありましたか
そうですね。大事な試合というのはおのおの感じていることだと思っていたので、ここまでやってきた自分たちが練習してきたものっていうのを出す場というところで集中するような声掛けを監督からいただいたりとか、自分たちで思って、自分たちが最高のパフォーマンスができるように意識するということだけ考えて、ここ2週間してきたかなと思います。
――王座まで1か月ほどとなりましたが、主将としてどのようにチームを引っ張っていきたいですか
そうですね。メンバーの実力的には優勝もしっかり狙えるメンバーだと思うので、そのメンバーたちをしっかり、自分を含め、王座で最高のパフォーマンスをできるように自分がしっかり引っ張っていきたいと思います。