まさかの2回戦敗退。学生日本一の座はまたも射抜けず

男子アーチェリー

 「意外な終わり方をしてしまった」。池田亮主将(人4=東京・国際)が試合後に真っ先に口にした言葉の通り、夢への道は思ったよりもはるかに早く途絶えた。アーチェリー部が1年の集大成として臨む全日本学生王座決定戦(王座)。昨年2位の早大は創部史上初の優勝を目指し、大一番に挑んだ。しかし結果は決勝トーナメント2回戦の拓大戦でまさかの敗退。ことしも悲願の栄冠を手にすることはできなかった。

 歯車の狂いが生まれたのは1日目の予選ラウンドだった。関東学生リーグ戦(リーグ戦)後、厳しい部内選考を勝ち抜いたベストメンバー4人で臨んだ早大の目標は、予選を3位以内で通過すること。リラックスした早大らしい雰囲気で序盤から得点を積み重ね、後半3エンド終了時までは2位につける。しかしここで会場を襲ったのは突然の大雨。目まぐるしく変わる天候に集中力を切らしてしまい、点数を伸ばせない。ラスト3エンドで徐々に順位を落としてしまい、予選を5位で終えた。この結果を受け、翌日の決勝トーナメントで初戦となる2回戦の対戦相手に決まったのは、拓大。リーグ戦では苦戦の末に何とか勝ち星を勝ち取った相手だが、結果的に王座の舞台でも同じダークホースに苦しめられることとなる。

主将として集大成の戦いに臨んだ池田

 1人72射で行われる予選ラウンドとは打って変わって、1セットにつき1人2射、最大4セットという非常に少ない本数で行われる決勝トーナメント。集中力と正確性が求められる戦いだ。前日の結果を受けて決勝トーナメントの射に臨んだのは、池田、野村翼(スポ3=愛知・岡崎北)、市川遼治(スポ1=群馬・高崎商大付)の3人。サポートに回った鬼塚聡(スポ3=千葉黎明)を筆頭に、全部員の応援を背に大事な1射を放つ。しかし大舞台からの緊張と、よく知る相手だからこそ奪われる集中力に、いつも通りの実力を発揮できない。第1セット。3人の総得点が拓大を下回り、先制点を奪われる厳しい展開に。明るく自由に射つことで高得点をたたき出し盛り上がりを見せる拓大とは対照的に、「みんながちょっとずつ悪い感じで射ってしまった」(池田)という早大は、表情が晴れないまま試合が進む。第2セットこそポイントを取り返し同点に追いついたものの、残り2セットは相手にポイントを献上。「本番では何が起こるか分からないというのを一番実感した試合だった」(鬼塚)。まさかの2回戦敗退で、悲願達成への道はついえた。

この涙を糧に新たなスタートを切る

 「悔しいです」。試合直後に涙を見せた市川は、何度もこの言葉を繰り返した。優勝まであと一歩のところで終わった昨年の王座を経て、さらなる成長を見せていたこの1年。リーグ戦では常に高得点を記録し、「ことしこそは優勝できるのではないか」(野村)という自信を持って臨んだ一戦だった。だからこそ募る悔しさは大きい。この試合をもって、現体制での試合は最後となる。1年間主将としてチームを引っ張ってきた池田は「失敗をしっかり見つめてほしい」と語った。「良いところを伸ばすだけではなく悪いところをしっかり見つめていかないと次のステップには上がれないので、そういうところに注視してほしい」。王座制覇はもう夢ではなく、目標に変わっているのは間違いない。その座をつかめるかどうかは、きっとこの失敗を見つめられるかどうかにかかっている。4年生の思いを胸に、アーチェリー部はいま新たな一歩を踏み出す。

(記事 吉田優、写真 川浪康太郎、山下夢未)

結果

▽予選ラウンド
早大 5位 1927点


▽決勝ラウンド
2回戦 ●早大2-6拓大

コメント

池田亮主将(人4=東京・国際)

――王座を終えて率直なお気持ちをお願いします

みんなも同じようなことを言うかもしれないですけど、意外なところで意外な終わり方をしてしまったというところですね。もちろん想像しなきゃいけないというか、最低のことを考えて最善のことをしなければいけないんですけど、本当に最低のところになってしまったというのはちょっと意外でした。

――拓大はリーグ戦でも接戦となった相手でしたが、戦ってみていかがでしたか

関東の大学同士でよく知っていた相手だっただけにやりづらかったっていうのはありました。本当に相手のことを知らないようなところであれば気にせずに自分たちのことをやればいいだけなんですけど、相手のことを知りすぎてしまっていたのでそっちに意識が行ってしまったというのは敗因の一つだったかもしれないですね。

――自分たちの射を振り返ってみていかがですか

どうしても波に乗れないというのが結構大きかったですね。誰かがすごく大当たりをしてそれに引っ張られるという感じでもなく、みんなちょっとずつ悪い感じで射ってしまってどうしても全体として点数が下がってしまったというのが印象的です。

――試合中にはどのような声掛けをしていましたか

うーん、きょうは何とも声を掛けづらくて。きのうのランキングラウンドの順位が良かったのでその調子でしっかりやってもらえれば良かったんですけど、なかなかそういう風にもいかなかったのが声を掛けづらかった原因かなと思います。

――きょうで現体制の試合が最後となりますが、なにか思うところはありますか

もちろんこの試合に向けてやってはいたんですけど、引退する実感というか、そういうのを計算してやっていたわけではないので、王座を大事にして臨むつもりではあったんですけどあまり感慨深いというのはいまはないですね。きょうで一応区切りではありますけれど、大学にいる間はまだアーチェリーは続けますし、チームから離れてしまうというのは残念なんですけど、これからもサポートとして関わっていくので、まだアーチェリー部の気分でいたいです。

――競技自体はこれからも続けられるのでしょうか

社会人までは続けないです。大学までで終わりにしようと思っています。

――今後チームに期待することはありますか

自分たちがやっていなかったんですけど、失敗をしっかり見つめてほしいなと思います。もちろんこうやって競技をしているので相手に負けるということはやはり失敗ですし、負けに限らず勝っていても失敗はあると思います。ただ良いところに流れてしまわないで、しっかり欠点を見てそれを改善していく。良いところを伸ばすだけではなく悪いところをしっかり見つめていかないと次のステップには上がれないので、そういうところに注視してほしいですね。やはり失敗は見たくないものですし、だから流してしまいがちだと思うんですけどそこは一度立ち止まってほしいかなと思います。

――次期主将の野村翼選手(スポ3=愛知・岡崎北)に伝えたいことなどはありますか

3年生までは競技だけやっていればよかったので比較的点数を出しやすい環境にあると思うのが、これからは主将という責務の下、周りや後輩のことを常に気にしなければならないところですかね。あと余裕を持ってほしいなと思います。自分の競技に集中するだけではなく、その中でも成績を残して周りを見るっていうのは大事だと思うので頑張ってほしいなと思います。

――最後にこれまでの4年間を振り返ってみていかがですか

いろんな人に出会えたのは大きかったと思います。高校のときは個人でしかやっていなくて、部というのは自分の中ではかなり大きな団体だったんですけど、4年間で所属していた選手やOBさんまでを含めると100人以上の人と関わったんですよね。私の中ではこんなに人と関われる機会がなかったので、様々な人との出会いの場だったかなと。たくさんの人に出会えたからこそ自分がどういう風にあるべきか、どういう風な人間になりたいか、ならなければならないかをすごく考えるきっかけになったので、これから社会に出たときに自分の責務を果たしていけたらなと思います。

鬼塚聡(スポ3=千葉黎明)

――きょうの試合を外から見て感じたことは

結果として、射った人たちだけの責任になってしまいそうな終わり方になってしまったので、自分を責めずに、来年、再来年がある人たちはそれに向けて頑張ってほしいと思いました。

――苦しい戦いになりましたが、その原因は何だったと思いますか

試合前の目標として、初日の予選順位を3位以内に、というのがあったんですけど、5位スタートになってしまい拓大と当たったというのが始まりかなぁと思います。

――拓大は関東学生リーグ戦(リーグ戦)の時も苦戦を強いられた相手でしたが、印象は

ルールが無いというか、自由にやっている印象だったので、部の雰囲気的には勝てると思っていたんですけど、逆に自由さに主導権を握られてしまったと感じます。

――今回の王座で得た収穫と課題を教えてください

本番では何があるかわからないというのを今までで一番実感した試合でした。これからはどんな事にも対処できるような準備をしていきたいです。

――これから新体制となります。意気込みをお願いします

この1年だけ頑張るというのを繰り返しているといつまでも変わることができないと先ほど先輩方に言われました。私は技術指導という立場から後輩たちに引き継いで、来年だけでなく、ずっと王座で優勝できるように結果を残したいです。

野村翼(スポ3=愛知・岡崎北)

――きょうの試合を振り返って

自分の実力を発揮できなくて悔しい試合でした。

――具体的にどういった点で実力が発揮できなかったと感じたのですか

実力的には、きのうの予選ラウンドでより上位を狙えたことと、きょうの団体戦でももっと点数を出すことができたはずなんですけど、普段どおりの点数を出すことができなかったので実力が発揮できなかったと感じました。

――一方で、王座で得た収穫は何かありますか

ないですね(笑)。できなかったことの方が多かったなぁという感じです。

――今回の王座、緊張はされましたか

多少はあったんですけど、だいぶ試合慣れもしてきて自信を持って臨めたかなと思います。

――プレーには特に影響は無かったということですか

はい。自信はあったんですけど、きょうに向けての調整がうまくいかなくて、そこで点数が伸ばせなかったと思います。

――今回は王座までに70メートルを練習する時間が多くあったと思いますが、その点についてはいかがですか

リーグ戦から王座まで間が空いてしまって、勢いに乗り切れなかったというのは感じています。70メートルを練習する時間が長かったことについては、70メートルの感覚をつかむという点では良かったんですけど、リーグ戦から時間が空きすぎて調整が難しかったというのはありますね。

――次期主将として、今後どのようなチームづくりをしていきたいですか

ことしの王座は強いメンバーが揃っていて、ことしこそは優勝できるのではないかという思いで試合に臨んだんですけど、それでも優勝できなかったので団体戦の難しさがカギになってくると思いました。今までどおりの応援のスタイルは活かしつつ、団体戦でしっかり結果を出せるような策を考えて1年間取り組んでいきたいです。

――最後に、個人としての今後の目標などがあればお願いします

ここ1年間でだいぶ実力もついてきたので、もっともっと上を目指していきたいなと思っています。

市川遼治(スポ1=群馬・高崎商大付)

――きょうの試合を終えた率直なお気持ちをお願いします

とにかく悔しいです。やっぱり一番最初に出るのは悔しいという気持ちですね。そこまで悪い調子ではなくこの舞台まで来て、きのうも緊張せずいつも通りに射てて、きょうを迎えられました。始まる前まではいつも通りの気持ちで臨めたんですけど、やっぱりいざ試合となって自分の番が来てみるとすごく緊張して、いつも通りにということができなくてそのまま終わってしまったという感じです。悔しいです。

――きょう射つことはいつ決まりましたか

きのうの予選ラウンドで早大の中で3番手の成績だったので、きのうの時点で決まりました。

――きょうは予選ラウンドの72射とは変わって1セット2射という少ない本数での試合でしたが、そのあたりは難しかったですか

そうですね。きのうの72本射っての試合というものとは、少ない本数のために準備してく中での試合とではやはり違いますし、最初の準備が大切だったかなと思いました。

――この2日間で得た収穫と課題はいかがでしょうか

記録会とかそれほど大きくない試合では練習と同じ意識や気持ちを持てていたんですけど、やはりこういう大きな舞台に立つと緊張のあまり慌ててしまって、練習でいつも意識していることが意識できなかったりとか、試合の中で自分の流れがつくれなかったりしたことがありました。

――1年生ながらこの3カ月で多くの試合に出場しましたが、この経験を生かして今後目指していきたい選手像はありますか

この試合で4年生が引退されてしまうということで、池田(亮)主将とかが抜けてしまうと戦力的には大きな損失になってしまうとは思います。その穴を埋めたいという気持ちもあるんですが、やはり先輩たちを超えていくという思いでやっていきたいです。

――今後最も近くに設定している目標は何でしょうか

直近で大きいものが国体の関東ブロックが8月中旬か下旬にあって、それには群馬県の代表として出場することができるので、そこを突破して本選に出たいというのが一番近い目標です。

――最後に今大会をもって引退される4年生への思いをお願いします

自分と関わっていただいた時間は3カ月ととても短かったのですが、積極的にコミュニケーションをとっていただいた先輩方ばかりで、自分としては3カ月よりももっと長い期間一緒にいたような感じがしたので、感謝の気持ちが一番大きいです。