関東学生リーグ(リーグ戦)の最終戦をブロック4戦全勝で迎えた早大は、昨年のリーグ優勝校である日体大と対峙した。雨が降る中での50メートルは調子が上がり切らず苦しい滑り出しになる。天候が回復した30メートルでは挽回を図り、池田亮(人3=東京・国際)や鬼塚聡(スポ2=千葉黎明)を中心に得点を重ねる。しかし50メートルでの点差が響き、最終得点3827-3957で初の黒星を喫した。
序盤、雨の中で始まった50メートル。天候に左右されるかと思われたが「3月中の練習は雨でもどんどん射つという練習を数多くした」と仙譽晋一郎副将(スポ4=山口・宇部フロンティア大学付属香川)が自信を見せるように、コンディション対策をしてきた早大の選手たちは明るさを前面に押し出して的を狙っていく。ガッツポーズが出たり、部員が応援で盛り上げたりとチームの雰囲気は決して悪くない。しかし、どこか日体大に気負うところがあったのか思うように点が伸びない。その間にも日体大は冷静に得点を積み重ね、約100点差を付けられえ前半を折り返す。
部員の声に応える衣斐
迎えた30メートル、天候は回復し早大は徐々にペースをつかみ奮闘する。「点数を考えるのではなくて、できることをしよう」と衣斐直也(スポ4=岐阜・大垣西)が語ったようにそれぞれが落ち着きを取り戻す。鬼塚が60金を射てば、野村翼(スポ2=愛知・岡崎北)が本来の実力を見せ始め、次期主将の池田も安定して高得点を叩き出す。部員もより一層の声援や応援歌を送り、円陣ではお互いを鼓舞する。前半とは打って変わって、拮抗(きっこう)した試合展開に持ち込んだ。早大が追い上げを見せるも、日体大は突き放す。そして試合終了後、結果が発表されると選手たちは肩を落とした。
気合いを入れる男子チーム
ブロック最終戦という大一番で敗れたことに対し、「良い面も悪い面も両方見えた」と橋本尚記主将(政経4=東京・早大学院)は前向きに振り返る。今回のリーグ戦で若い力が躍動したという収穫と、メンタル面や射つ時間の使い方など課題を得た早大。「どんな相手であろうと実力を出し切る」(橋本)ことをモットーに2週間後の3位決定戦に臨む。相手は慶大。6月に行われる王座に弾みをつけられるよう、この宿敵を破ってリーグ戦を締めくくりたい。彼らの目指す『理想のチーム』に向けて、挑戦はまだまだ続く。
(記事 比留田孟徳、写真 山下夢未)
結果
▽男子
●早大3827-3957日体大
コメント
橋本尚記主将(政経4=東京・早大学院)
――きょうの試合をご覧になって、いかがでしたか
いままで調子の良い試合が続いていたので、点数的には割と残念かなと思っています。雰囲気もそんなに良くはなかったので、まだまだ修正が必要だと感じました。ただ、2か月後に控えている王座までできることを詰めていって、自分たちが理想とするチームをつくることができたら良いかなと思います。
――具体的な『理想のチーム』とは
リーグ戦のときと王座のときでは、実際に理想とする雰囲気は違うと思うんですけど、リーグ戦やエイトの試合においては選手や応援が無理をしない程度に盛り上がるというか、周りの音であったりとか、例えばきょうみたいな、相手の日体大さんが上手いっていう雰囲気を自分たちの応援や声で遮断していく一方で、選手が無理に声を出して点数を落とすことがないように、選手の負担にならないように応援がしっかり声を出すというのが自分たちの理想です。それにはもちろん選手が10点に当てていたり、明るい顔をしてくれることも必要なので、選手も応援も共に雰囲気づくりに関してお互い加担していくことで、理想のチームはできるのかなと思っています。
――日体大はやはり手強い相手でしたか
はい、本当にそう思います。前々から分かっていたことではあったんですが、どんな相手であろうと実力を出し切るということをチームではモットーにしていました。リーグの抽選が決まったときから日体大さんは最後に当たるということが分かっていて、加えて最終戦までには王座の出場もおそらく決まっていて、お互いの純粋な試合になるといいますか、しがらみがない中で点数を競う試合になるだろうし、相手が強いということも分かっていたので、いかに自分たちの戦いができるかにこの2カ月間重点を置いていました。結局のところ自分たちの実力は出し切れなかったので、そこが反省点かなと思っています。
――リーグ戦を通して特に活躍が目立った選手は
次期主将の池田くんがやっぱり非常に頼もしい存在でしたね。主将になることが決まってから、彼は自分の中で努力しているというか、今までが努力してないとかいうわけではもちろんないんですけど(笑)、筋トレなどの泥臭いこともしっかり全部やるようになったし、周りの選手のことも見るようになったかなという風に思っています。アーチェリーに対してより真摯(しんし)に向き合うようになったという点で、彼が1番頑張ってくれたかなと思います。
――リーグ戦を総括して、いかがですか
良い面も悪い面も両方見えた5試合だったかなと思っています。1試合目では、自分たちのつくろうとしていた雰囲気や方向性は合っていたんですけど、緊張で点数を落としましたし、2戦目では、相手がちょっと強かったけど自分たちの雰囲気がちゃんとつくれて実力が出せましたねっていう感じで。きょうみたいな悪い面が露呈した試合もあって、本当に両方の面が見えましたね。王座に向けて悪い面を修正できるっていう点では、ある意味良い5試合だったかなと思っています。
――3位決定戦に向けての意気込みをお願いします
きょうの点数は褒められる点数ではないですし、3位決定戦というのは優勝決定戦や王座出場が懸かる5位決定戦よりも意義がないというか、一般的に見ると勝つことに価値はあまりないと思うんですけど、そこでいかに点数を出せるかというのがこれまで応援してくださったOBの方やコーチの方々に対する恩返しであったり義務かなと思います。全体的に見た試合の意義とかではなくて、自分たちがやるべきことをしっかりやる、これが自分たちを支えてくださった方々への礼儀かなと思っているので、最後まで理想のチームを目指して戦いたいです。
仙譽晋一郎副将(スポ4=山口・宇部フロンティア大学付属香川)
――きょうの試合を振り返っていかがでしたか
きのうの練習の最後に調子を崩してしまって、それが最初の50メートルの時に影響してしまったのですが、30メートルは切り替えて上手くいけたと思いました。50メートルのミスを反省して練習してこなくてはいけないなという気持ちですね。
――4戦全勝同士の日体大にはどのような思いで臨みましたか
相手が日体大さんということで高得点を射ってくるんですけど、1カ月前に自分たちのチームはきょうの日体大さんくらいの点数を出せたので、普通にやればいい勝負ができるんじゃないかなと思ってました。
――全勝同士に加えて、きょねんのリーグ王者にチャレンジャーであるという意識などはありましたか
僕自身そういう意気込みでいったんですけど、やはり50メートルの最初はそれを意識しすぎて自分で沈んでしまいましたね。けれど30メートルの終わりにかけてだんだん良くなってきました。
――後半は安定していただけに、出だしが悔やまれますか
スタートから自分の気持ちを平淡にといいますか、冷静に、揺れを無くしていればもうちょっとよかったんじゃないかなと思います。
――チームの雰囲気は明るく見えましたが上級生としての声かけなどはしましたか
僕は試合を通して射つ側なので射つことに集中してあまり声かけというのはできなかったんですが、応援の人たちは点数が低いときもなんとか声でサポートしてくれるという形だったので応援はよかったなと思います。
――前半が雨、後半は晴れというきょうのコンディションはどのような影響がありましたか
3月中の練習は雨でもどんどん射つという練習を数多くしたんですが、やはり1カ月以上経つと忘れてしまうというか。でもきょうはそんなに雨の影響は出てないかなと思いますね。
――前回池田選手が「日体大は対策しづらい」とおっしゃっていましたが、具体的な対策などはありましたか
僕自身そんなに対策というものは考えていなくて。対策というよりは自分たちのやれることをやっていこうということでした。
――4年生として衣斐選手と引っ張っていくなかで責任など感じますか
第1戦はかなり感じて気負ってしまった部分があったんですが、きょうは気負うこと無く射てたと思います。
――きょう見えた改善点などがあれば教えてください
このあと全体錬の点取りがあって、僕は射つのが遅い方なので、そこでもったいぶらずに1分半以内には3本射ち終わるような練習をしたいですね。
――次の3位決定戦に向けて一言お願いします
3位決定戦は自分はシックスに入ってしっかりチームに貢献できるように、2週間頑張っていきたいと思います。
衣斐直也(スポ4=岐阜・大垣西)
――きょうの試合を振り返って
チームの点数も個人の点数も良くなかったです。強豪の日体大さんに対して悪いというか、苦手というイメージがあったのかなと思います。
――監督やコーチからの厳しいお言葉をどう受け止めましたか
僕たちの目標は王座で優勝することで、そのためには日体大さんより強い大学にも勝たないといけないので、今回の結果をしっかり受け止めて、どこにも負けないチームをつくる必要があると強く感じました。
――衣斐選手から見た日体大の印象は
とても明るくて、チームづくりが上手だと思いました。点数の出し方や射型も上手いです。あとは、僕たちと違って日体大さんは最後まで射線に残らないんですよね。楽そうに素早く射つことができていて、良いチームだなと思います。
――50メートルが終了した時点で約100点差ありましたが、30メートルでどう挽回していくかというような話し合いはありましたか
特にありませんでした。点数を考えるのではなくて、できることをしようという思いだったので。個人個人で負けないぞ、30メートルでしっかり巻き返すぞっていう感じでした。
――ご自身のきょうの調子は
あまり良くなかったです。最近あまり練習時間が取れていないので、短時間でも結果を出せる練習方法を考えていきたいです。
――リーグ戦を通して得たことは
毎週試合があるというハードな日程の中で、オンとオフをしっかり切り替えなければ体にガタがくるので、その切り替えの仕方を今回のリーグ戦では学べたかなと思いました。
――下級生の活躍については
僕自身が今、部全体の競技力を向上させるトレーナーという役職に就いているんですけど、後輩が点数をバンバン出してくれているので、(選手)個人としては悔しいですけど、役職の身からすると頼もしいですね。
――王座までの約2カ月で修正したい点はありますか
今回も露呈したんですけど、強豪と当たると日和ってしまう、弱気になってしまうチームなので、そういうメンタル面を治すことと点数を伸ばすことです。効果的な練習をたくさんして今後も頑張っていきたいと思います。
――3位決定戦に向けての意気込みをお願いします
今回負けてしまってとても悔しい思いをしたので、きょうと相手は違うんですけど、3位決定戦では勝利を収めたいです。
鬼塚聡(スポ2=千葉黎明)
――今の率直な感想を教えてください
チームは負けてしまったんですけど、個人としては東日本大会に出られるような点を取れたのでよかったと思います。
――60金も射っていましたが調子は良いですか
最近ちょっと下がってて、今回ちょっと点が出たって感じなので、順位決定戦に向けてもっと上がっていけばいいなと思ってます。
――4戦全勝同士の戦いでしたが試合前に意気込みなどはありましたか
少し自分勝手になってしまうんですが、東日本大会に行きたいなと思っていたので、その点を取りたいなと思っていて、またその点数を取ればチームも良い点数が取れるのではないかと思って挑みました。
――チームの雰囲気はいかがでしたか
二的を射ってたんですけど、相手が2人とも少し調子悪くて、自分たちが結構勝っているペースだったので、良い雰囲気でできてるかなと思ったんですけど、他の的が結構圧倒されてたようでもあったみたいで、チームの中にばらつきがありました。
――きょうの天候の影響はありましたか
僕はあまり気にしないので変わらなかったと思います。
――ベストは尽くせましたか
そうですね。50メートルの点がちょっと低くて、このままでは東日本大会への点数が危ういなと思ってたら、30メートルが結構頑張れました。
――最後に3位決定戦に向けての意気込みをお願いします
相手がどこであっても自分たちのすることをしっかり見定め、やれることをやって頑張りたいと思います。