【米式蹴球】鍛え抜いたファンダメンタル 立命大に及ばず 甲子園ボウルの切符逃す

米式蹴球

全日本大学選手権 準決勝 11月29日 スピアーズえどりくフィールド

TEAM 1Q 2Q 3Q 4Q TOTAL
早大 BIG BEARS 10 14 31
立命大 PANTHERS 14 14 42

 全日本大学選手権準決勝。会場にはスタンドを埋め尽くす観客が駆けつける中、早大BIG BEARSは甲子園ボウル進出をかけた大一番を迎えた。準決勝の相手は昨年同じ舞台で敗れた立命大。その雪辱を晴らすべく、東西のエンジ対決に臨んだ。試合は、序盤から相手に次々とターンオーバーを許し、苦しい時間が続く。10ー21で迎えた後半、QB船橋怜(政経4=東京・早大学院)やRB長内一航(文構3=東京・早実)がタッチダウン(TD)を重ねたものの、立命大の勢いを止められず。後半の追い上げも虚しく、31-42で試合終了。LB功能誠也主将(教4=東京・西)率いる2025シーズンの挑戦は、ここで幕を閉じた。

試合終了後の選手たち

 早大レシーブで試合が開始される。直後、QB船橋が厳しい体勢から投じた2本目のパスがまさかのインターセプトに。自陣10ヤードから立命大に攻撃権を渡してしまう。そして開始30秒、相手QBのスクランブルを止め切れず、そのまま先制TDを許す。続く攻撃では、QB船橋からWR中原秀城(スポ4=愛知・南山)やWR吉規颯真(政経4=東京・早大学院)へのパスを中心に着実にボールを前進させる。しかし、WR安東純心(スポ2=沖縄・首里)がキャッチ後のタックルでボールを弾かれ、痛恨のファンブル。再びターンオーバーとなった。それでも、ディフェンスで DB森慶太郎(教4=神奈川・鎌倉学園)やDB杉田俊(社学4=東京・早実)らが中心となりランプレーを封じ、相手に歯止めをかける。攻撃に戻るとここでもQB船橋が投じたボールがインターセプトされ、攻めあぐねる時間が続いた。さらに、DL伊藤寛太郎副将(商4=東京・成蹊)が相手にタックルを試みたが、立命大の蓑部雄望(3年)へのロングパスが成功し、自陣深くまでの侵入を許す。そのまま押し切られ、TDランで0-14とリードされた。そしてのLB原康介副将(法4=東京・早大学院)ロスタックルなどで相手をパントに追い込み、回ってきた攻撃権だったが、チームの要である RB安藤慶太郎副将(社4=東京・早大学院)がパスをキャッチした際に足首を負傷し、痛恨の退場となった。

MIPを受賞したWR吉規

 第2クォーター(Q)開始直後には、4thダウンギャンブルを失敗するものの、ディフェンスではランプレーを許さず無得点に抑える。攻撃では、WR吉規へのパスやQB船橋のランプレーで敵陣になんとか侵入すると、K小林賢多(国教4=千葉・八千代松蔭)が自身今シーズン最長となる42ヤードのFGに成功し、3点を追加。守備でもDL伊藤が気迫のこもったQBサックを決めるなど活躍を見せた。ロングパスで立命大にTDを許した後、前半最後の攻撃シリーズは、WR安東の好リターンで開始する。WR松野雄太朗(社4=東京・早大学院)がエンドゾーン間際でのパスを成功させ、さらにRB長内が中央突破を試みるも相手の強力なブロックで決めきれない。両チームのタイムアウト後、最後はLB原までもRB長内を押し込み、TDに成功。貴重な追加点を奪い10ー21で前半を終了した。

今季最長のFGを決めたK小林

 なんとか流れを変えたい後半だったが、後半最初のオフェンスシリーズから連続でTDを決められ、10ー35とリードを広げられる。ここから早大は、WR吉規へのパスを中心に、ゲームを展開する。WR松野がエンドゾーン間際でパスをキャッチすると、QB船橋がボールを運び、逆転への弾みをつけるTDを奪った。

 迎えた最終Q、開始直後にはエンドゾーンまで7ヤード地点から立命大RB蓑部が中央を突破し、この日6つ目のTDを許す。しかしここから早大も意地を見せる。DB宮澤源(文構2=東京・麻布)がインターセプトを決めると、RB長内のランで敵陣に侵入する。スペシャルプレーを織り込みながら、RB長内が最後はOL陣が開けた道を抜け、TDを奪う。次の攻撃でも、QB船橋が24ヤードのスクランブルを決め、試合終了1分45秒前にTDを追加した。これまで全てのキックを成功させたK小林も正確にポイントアフタータッチダウンを決め、31ー42までスコアを伸ばした。しかし最後は、立命大にニーダウンで時間を流され試合終了。涙の準決勝敗退となった。

TDを決めたQB船橋

 今春は、立命大相手に0-49で敗れた。思えばこの悔しさこそが今シーズンの原点だった。鍛え抜いたファンダメンタル、強化したフィジカル。その積み重ねが身を結び、関東優勝を達成し、春には歯が立たなかった相手に堂々と勝負を挑むまでに成長した。それでも、日本一には届かなかった。試合を終えた功能主将は、日本一への厳しさを痛感しながらも「本当にみんなで成長できたかな」と振り返る。一歩ずつ、着実に。この悔しさを胸に、早大BIG BEARS日本一への挑戦が、再び始まる。

(記事 大村谷芳 写真 沼澤泰平、荒川聡吾、河野紗矢、堤健翔、吉川柊真)

得点経過

TEAM PLAY PLAYER(S) PAT PLAYER G/NG スコア
立命大 RUN #5竹田 #9横井 0-7
立命大 RUN #23蓑部 #9横井 7-14
早大 FG #11小林       3-14
立命大 PASS #5竹田→#1木下 #9横井 3-21
早大 RUN #33長内 #11小林 10-21
立命大 RUN #24漆原 #9横井 10-28
立命大 PASS #5竹田→#7有馬 #9横井 10-35
早大 RUN #15船橋 #11小林 17-35
立命大 RUN #23蓑部 #9横井 17-42
早大 RUN #33長内 #11小林 24-42
早大 RUN #15船橋 #11小林 31-42

コメント

LB功能誠也主将(教4=東京・西)

ーーどのような気持ちで試合に臨みましたか

 本当に負ける気はしていませんでした。準備はやり切っていましたし、自分たちがやってきたことをしっかりやり切れば絶対に勝てると思っていました。

ーー前半は、特にオフェンスで苦しい時間が続きました

 やはり相手のディフェンスのプレイスピードが速いなどの部分があったので、オフェンスは苦しかったかなと思います。ただ、アメフトはオフェンスだけではないので。その中でディフェンスが本当によく頑張ってくれてました。春は(立命大に)めちゃくちゃにやられましたが、オフェンスの分までディフェンスもキックもカバーして、しっかり進められたので、そこは本当に大きな成長だったかなと思います。

ーーLB功能主将ご自身もプレーで貢献されました。振り返って

 今だから言えるのですが、自分自身、秋の初戦に大きなけがをして、そこからみんなが頑張ってくれてここまで来ました。僕が試合に出られる機会をみんなが作ってくれましたし、つないでくれた機会でした。僕がプレーで引っ張るのはもちろんですが、色々な状況がある中で僕がいちばん落ち着いて、フィールドを広く見てプレイすることが大事かなと思っていました。僕のリーダーシップにみんながついてきてくれた部分は大きかったです。

ーー春の立命大戦での完封負けから始まったチームだとおっしゃっていました。成長は感じましたか

 成長した部分はあったかなと思っています。フィジカルでいうともっともっとできたらと思う部分はありましたが、ファンダメンタルに関しては、春にタックルできなくてやられていたところをしっかり一発で締められる機会もたくさんありました。そういう意味では積み重ねたことがしっかり出た部分は大きくあったかなと思います。ただ、まだまだだと思います。

ーー改めて今年はどのようなチームでしたか

 今年すごく良かったのは、特に秋シーズンで勝ちながら課題を常に見つけて、潰しながら次も勝っていけたことです。辛い中でも勝ちながら次のチャンスを持ってこられたところがすごく大きかったと思っています。できていないことはいくらでもありましたが、その中で自分たちの弱い部分にみんなが向き合ってくれて、それに真摯に取り組んだというところがここまできた結果になったと思いますし、まだまだできる部分でもあるかなと思います。本当にみんなで成長できたかなと思っています。

ーー後輩にはどのようなことを伝えたいですか

 いちばん伝えたいことは、今できることを最大限にやってほしいなということです。今年のチームはVチームとJVチームなど色々分けて、練習も別にしてすごく難しい立場に置かれた選手もたくさんいました。ただやはり、日々の積み重ねや努力は、自分がチャンスをつかむためにもそうですし、チャンスが巡ってきた時に発揮できると思っています。色々な立場に置かれると思いますし、苦しいところもたくさんあると思いますが、今に本気になって、是非次に向けてまた頑張ってほしいと思っています。

QB船橋怜(政経4=東京・早大学院)

ーーどのような気持ちで試合に臨みましたか

 すごく準備してきましたし、準備したことをしっかりと発揮できれば勝てると思っていました。

ーー前半は苦しい時間が続きました。振り返って

 相手がすごく特殊なことをしてきたわけではないですが、僕たちはテンポを作ろうと少し無理にパスを投げてインターセプトをされたり、ファンブルで相手にボールを渡してしまったりした場面がありました。前半にボールを渡してしまったことがいちばんの敗因だと思っています。

ーー後半は、スクランブルやパスなどでTDも決まりました。意識したことはありますか

 特に前半と変えたことはありませんが、しっかりとディフェンスを見てパスを通すというところと困ったら無理に投げずに自分で走るというところを修正できたことが後半のオフェンスにつながったと思います。

ーーエースQBとして戦ってきて、成長を感じた部分はありますか

 自分の強みはパスだと思っていたので、そこは成長できたと思っています。ただ、今日の試合の前半などはやはりまだまだ足りなかったと思うところもあります。その一方で、リーグ戦の後半から今日にかけてパスを投げ切るところと自分で走るところ、そこをしっかりとできるようになったことは成長したところだと思います。

ーー試合を終えた今、どのような気持ちが大きいですか

 オフェンスの成長は素直に感じています。春は何をしてもドライブが続かないというところから始まり、しっかりとドライブを続けられるようになりましたし、全ポジションが成長して、プレイの精度も夏にかけて見直してきた部分が少しは出せたと思います。オフェンスとして確実に成長が見られたというところは良かったと思います。

ーー後輩へ伝えたいことはありますか

 後輩も本当に上手ですし、特に2年生のQB木庭(修克、国教2=東京・三田)は、パスの能力はもちろん、QBとして、オフェンスのリーダーとして、仲間に対して声かけや要求をすごくできる選手です。すごく期待していますし、昨年、今年と準決勝で終わってしまったところを後輩には超えてほしいなと思います。