立大にリーグ戦で10年ぶりの敗戦 試合終了直前にまさかの悲劇が/立大戦

米式蹴球
TEAM 1Q 2Q 3Q 4Q TOTAL
早大 BIG BEARS 20
立大 RUSHERS 14 21

 関東学生秋季リーグ戦開幕から2連勝と好調の早大BIG BEARS。第3戦は、ここまで2勝1敗と同じく好調の立大RUSHERSと対戦した。早大はFGで先制すると、RB安村充生副将(文構4=東京・早実)の3試合連続のTD(タッチダウン)でリードを広げる。第4Q(クオーター)終盤までリードを保った早大だったが、早大陣19ヤード、試合時間残り1秒。立大QBからエンドゾーンに放られたヘイルメリーパスは両校の選手のもみ合いの中で一度はじかれたあと、無情にも立大レシーバーの手に収まった。PAT(ポイントアフタータッチダウン)も決まり、20-21で今季初黒星。秋季リーグ戦では、2013年以来の立大戦での敗北となった。

タックルを受けても倒れないRB安村

 早大のディフェンスから始まった第1Q。DB鈴木晴貴(基理3=神奈川・鎌倉学園)のロスタックルもあり、すぐに攻守が入れ替わる。オフェンスはRB安村の力強いランとQB八木義仁(政経3=東京・早大学院)からWR中尾公亮副将(社4=東京・早実)へのパスが三度決まり、レッドゾーンまで攻め込む。TDとはならなかったが、K曽木聡(スポ4=東京・国学院久我山)が落ち着いてFGを決めて先制した。さらにLB原康介(法2=東京・早大学院)の2試合連続となるQBサックが決まり、再び早大が攻撃権を得る。すると、QB八木からWR上野陸(社4=東京・早実)へのパスとRB安村のスピードが乗ったカットバックによるロングゲインで再びレッドゾーンへ。今度はRB安村がOL陣に押されながら3試合連続となるTDを決め、リードを広げた。その後、守備からはLB原のこの試合二度目のQBサック。攻撃からはWR入江優祐(商3=大阪・関西大倉)へのパスやRB松村拓磨(スポ4=埼玉・昌平)のランが出たが、得点には結びつかず。そのまま第2Qを終えた。

QBにタックルするDL廣瀬灯遥(スポ4=埼玉・立教新座)とLB原

 第3QはKRでのRB安村のナイスリターンから再開。RB花宮圭一郎(文構4=東京・足立学園)のランで敵陣に入ると、続くプレーではワイルドキャット隊形からRB安藤慶太郎(社2=東京・早大学院)がそのままボールを持ち、47ヤードを駆け抜けてTD。追加点でさらに立大を突き放した。しかし、立大も黙っていなかった。RB星野真隆(3年)を中心に攻め、最後はパスでTD。早大はリーグ戦3試合目にして、今季初失点となった。反撃に転じたい早大であったが、オフェンスドライブでは10ヤードを更新できず、立大に早大陣からの攻撃を許してしまう。早大はLB安藤龍生(法2=東京・早大学院)のロスタックルなど激しいディフェンスで応戦。しかし、第4Q最初のプレーでTDパスを決められ、短い時間の間に再び失点した。

 3点差まで追い上げられた早大は、3rdダウンコンバージョンを失敗。立大の攻撃になるが、DL斉藤菜穂都(政経3=東京・早大学院)がQBサックで10ヤード更新を阻止。4thダウンでのPRをWR中尾がリターンし、敵陣からの攻撃となる。QB八木からのパスをWR中尾がスライディングでのレシーブによってレッドゾーンに侵入はしたが、反則やQBサックなどで後退。それでもK曽木が50ヤードのFGをしっかりと決め、点差を6点差とした。早大は立大陣19ヤードからのディフェンス。残り時間を考えると、TDさえ防げば早大の勝利は確実になるシチュエーションだ。DB佐藤新太郎(法4=東京・早実)のパスカットによって4thダウンまで追い込むも、立大はギャンブルを選択。立大QB宅和勇人(4年)のパスをレシーバーがキャッチし、1stダウンを更新されてしまう。早大は徐々に自陣を攻め込まれ、残り時間15秒から立大のWR川村春人(4年)がサイドライン際でパスをキャッチ。すぐにDB木村大地(法3=東京・早大学院)がタックルで止めたが、早大はこの試合最大のピンチを迎える。インバウンズでプレーが終了したため時計は止まらずにそのまま流れたが、立大はアウトオブバウンズで時計が止まったと勘違い。時計が進んでいることに気づかず、プレーをせずに試合終了。と思われたが、審判が残り1秒で笛を吹き、そこから試合の再開を宣言。両校の指導者が審判へ講義し、会場は異様な空気に包み込まれたが、結局1stダウン10ヤード、残り時間1秒で立大の攻撃に。宅和が右へロールし、一カ所に集まった両校の選手がいるエンドゾーンへヘイルメリーパス。ボールは一度はじかれ、空中を舞うと無情にも立大WRの手に収まり、同点のTD。PATのキックも決められ、まさかのサヨナラ負け。20-21の痛い敗戦となった。

敗北が決まり、膝をつくLB石黒哲(政経3=東京・早大学院)

 試合終了の瞬間、BIG BEARSの選手たちはぼう然と立ち尽くし、対照的に喜びを爆発させる立大の選手を静かに見つめた。後半はモメンタムが立大に傾いていたとはいえ、終始リードを保っていただけに敗北に動揺を隠せなかった。これでリーグ戦は、無敗の法大を1敗の三校が追う混戦となった。再び甲子園の土を踏むため。まずは次戦の中大戦だが、ここからの戦いは絶対に負けられない。

(記事 田部井駿平、写真 田島凜星、富澤奈央、安齋健)

担当記者のPICK UP PLAYER

FGを蹴るK曽木(11番)

 ポジションごとの専門性が高い競技であるアメフトだが、KとPは群を抜いて特殊なポジションだ。キックをする場面でのみ出てくるという面だけでなく、得点に直結する場面で出場するため、プレッシャーは計り知れない。大学からアメフトを始め、DBと兼任してK/Pをやっていた曽木は3年生の夏からK/P専属の選手となると覚醒。昨季は総得点で1位になる好成績を残し、TOP8のオールスターであるオール関東24にK/Pで初選出された。ラストイヤーの今季はここまでキック成功率100%を維持しており、立大戦では50ヤードのFGで貴重な追加点を挙げた。長い距離のFGを悠々と決めるその姿には貫禄すら感じる。曽木はリーグ戦前、「勝負どころでしっかり決め切れる選手」が目標であるとわれわれにも語ってくれた。ここからは昨年の上位校との戦い。1点の重みがより増してくる中で、チームの窮地を曽木の左足が救うだろう。

(記事 田部井駿平、写真 富澤奈央)

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得点経過
TEAM PLAY PLAYER(S) PAT PLAYER G/NG スコア
早大 FG #11曽木       3ー0
早大 RUN #33安村 #11曽木 10-0
早大 RUN #30安藤 #11曽木 17-0
立大 PASS #5中畑→#87白岩 #17野田 17-7
立大 PASS #5中畑→#11川村 #17野田 17-14
早大 FG #11曽木       20-14
立大 PASS #10宅和→#14篠藤 #17野田 20-21
星取表(10月17日現在)
  早大 法大 明大 中大 立大 東大 慶大
早大 11/23 11/12 10/29 20●21 44○0 17○0
法大 横浜 10/28 11/12 6○3 20○0 21○14
明大 横浜 アミノ 11/23 10●14 27○7 20○0
中大 アミノ 横浜 横浜 14●20 21〇11 7●3
立大 21〇20 3●6 14〇10 20〇14 11/23 10/29
東大 0●44 0●20 7●27 11●21 横浜 11/12
慶大 0●17 14●21 0●20 7○3 アミノ 横浜
コメント

髙岡勝監督(平4人卒=静岡聖光学院)

――今日の試合を振り返っていかがでしたか

 勝てませんでしたね。色々な運もありますが、この事実を受け止めて、次につなげていきたいです。

――前半はモメンタムをつかんでいましたが、後半になって変わったことはありましたか

 いくつかありました。特にQBがワセダクラブOBでもある5番の中畑くん(中畑周大、4年)に変わって、ラン中心のオフェンスにアジャストし切れなかったところですね。

――ラストプレーの直前に監督も審判と話されていましたが

 その前のプレーがインバウンズで止まっていたので、レディフォープレーで時計が回るということでした。審判が誤って笛を吹いてしまい、1秒でプレーが止まってしまう判定になってしまったと。そこに関しては不運でした。

――今後は絶対に負けられない試合になったと思いますが、今後の意気込みをお願いします

 いずれにせよ1敗もできない状況になったので、次の中央さんをはじめ強い相手にどう戦っていくか。選手とも話しましたが、どちらにせよ自分たちが強くなるしかないので、前を向いてやっていこうと思います。

WR中尾公亮副将(社4=東京・早実)

――今日の試合を振り返っていかがでしたか

 最後は全然ディフェンスだけのせいではなくて、チームとしての地力の差が出たのかなと。今までのチーム全体の取り組みの甘さがああいった場所で出たと思います。

――春にも敗れた立大でしたが、どのような思いで臨まれましたか

 春負けたこともあって、自分を含めて油断は全くしていませんでした。しっかりODK全部が立教を意識してやってきたつもりでした。

――前半は攻守ともに好調でしたが、後半になってなにか変化したことはありましたか

 後半入って1本TDを取ってからは、ODともにメンツを変えたりしたので、少し緩んでしまった部分がチーム全体としてあったと思います。

――次戦の中大戦の意気込みをお願いします

 本当にやるしかない状況になりました。それでもここから全部勝てば、1敗したにも関わらず甲子園の道は残っているので、悔しい気持ちを絶対に忘れないで中大戦臨みたいです。

DB佐藤新太朗(法4=東京・早実)

――2試合連続で完封している中で、この試合に向けてどのような準備をしてこられましたか

 慶大戦は夏合宿、東大戦は約1ヶ月という準備期間があったのですが、立大戦は各大学と同じく2週間でフルスタイルで練習できるのも5回という限られた中でした。その中で負けてしまったのは、僕を含めた4年生の緊張感があまりなかったからなのかなと感じています。2週間あれば対応できると思っていましたが、しっかり準備して試合に臨むのと何となく過ごしてしまうのではプレーの質が大きく変わってくるので。その点で言えば、言い方は悪いですが今日負けて良かったのかなと思います。

――後半は立大の時間が続く中で、流れを止めるご自身のパスカット等ありました。試合全体を振り返っていかがですか

 試合を通してバタバタしてしまったなという印象です。自分はDBとして4年生で唯一出場しているのですが、3年生にいつも助けられてばっかりで何も出来ませんでした。今日も横に塚田がいなかったらもっとミスしていたと思いますし、4年生としてもプレーヤーとしても情けなかったです。

――逆転TDパスを許した最後の場面を振り返っていかがですか

 あの場面は120%気持ちでした。立大戦は春から意識していましたが、残りの30秒は気持ちとパッションだけだったかなと思います。

――負けられない戦いが続く次戦以降に向けて一言お願いします

 今後の中央、明治、法政は負けが許されないので、その3試合とその先のプレーオフで勝つための準備をしていきます。

DL斉藤菜穂都(政経3=東京・早大学院)

――試合を振り返っていかがですか

 秋は絶対勝とうとここまでやってきたんですけど、その結果がこれなので、まだまだ努力、練習が足りないと思います。

――どのようなディフェンスをしていこうと話していましたか

 DLとしてまずランプレーを止めることと、QBが走れるQBだったので、そのスクランブルを止めようというのを意識してやりました。

――第4Qでのご自身のQBサックで悪い流れを変えましたが、いかがでしたか

 味方が漏れていて、QBが逃げてきたので、もう僕はタックルするだけでした。ディフェンス全員で止めたサックだったと思います。

――最後のプレーはどのようなことを考えていましたか

 信頼できる仲間が出ていて、絶対止めてくれると思ったんですけど、それが及ばなかったので、これから練習で詰めていかなきゃいけない部分です。

――次戦に向けての意気込みをお願いします

 もう負けられない試合が続くので、次の中大戦は絶対に勝ちたいと思います。