最終回はWR目黒歩偉主将(スポ4=東京・佼成学園)、RB安村充生副将(文構4=東京・早実)、WR中尾公亮副将(社4=東京・早実)の3人が登場。今年のチームの先頭に立ち、率いるお三方に話を伺った。
※この取材は8月27日に行われたものです。
「思っていた以上に勝てなかった」
試合に出られない状態でも、チームをサポートする目黒主将
――春季オープン戦全体を振り返って、いかがでしたか
目黒 思っていた以上に勝てなかったなというか、内容としても結果としても、思っていたより振るわなかったなっていうのが春全体の印象です。それこそ去年甲子園も行って、去年出ていた選手とか、オフェンス、特にスキル陣は下級生中心だったので、パスユニットやランとしても、もうちょっと結果が出るかなと思っていました。ですが、ラインズもほぼ一掃したのもありましたし、ディフェンスも去年はほとんど4年だったので、そこも含めて思っていた以上にはまらなかったなっていうのは春の印象です。
中尾 自分も率直にあんなに負けると思わなかったなっていうのが正直な感想です。立命と関大に勝ちたいなと思って春臨んだんですけど、結果的には明治とか立教、関東の大学にも負けてしまって。甲子園に行ったのもあるし、自分たちの力を過信してしまっていたのかなって振り返ると思います。個人としても4年生で副将っていう立場であるのに、活躍できなかったのがすごく春は心残りだったなって思います。
安村 春の試合は負け方もすごい良くなくて、どんどんズルズル負けるみたいな試合がほとんどで。そこで変に負け癖がつくのはあまり良くないなとは思ったんですけど、勝ち切れるプレーがオフェンスで出ませんでした。去年から出ていたけど、そういうところで勝ち切れなかったのはやっぱり自分に責任があるのかなと思いました。ですが、その分やっぱり危機感はみんな得たと思うので、秋にどれぐらい結果が出るかっていうのはすごい楽しみなところです。
――春季オープン戦は怪我人が多かったように見られました。秋のリーグ戦でもそういった場面はあると思いますが、どのように戦っていくかというのは見えましたか
目黒 自分がいつも春シーズン全員に試合ごとに伝えているのは、出ている11人がその時に1本目なので、それこそ怪我であったり今年は特に体調不良とかでなかなか人数がいないポジションが多かったりとかがあったんですけど、そういう状況はやっぱり秋シーズンも想定されます。そういった中でないものねだりをするのではなくて、いるメンバーでどうやって戦っていくかっていうのがやっぱり大事だと思います。そういったところは全員に意識づけをして、いつ誰が出てもいいように準備はしていこうっていう話はもう再三伝えていました。
中尾 春は確かに怪我や体調不良が多くてっていう部分もあったと思いますけど、怪我、体調不良が出たことによって試合に出られた選手とか、経験を積めた選手っていうのも春いたと思います。春はああやって怪我とか体調不良が多くて、ちゃんと自分が怪我をせず頑張っていればチャンスが来るんだっていう意識はみんなにも芽生えたと思うので、逆にそれがチームの底上げみたいになって、秋はちゃんと全員が試合に出られる準備っていうのをして臨んでいけたらいいなって思います。
安村 自分も中尾と一緒で、怪我や体調不良でその下の選手が出るっていうのはもう1回全員が経験しています。そこでデプスが今低い人でも、しっかりチームの結果につながるっていうのが自分たちでも分かっていると思うので、そこは再三言い続ける必要もあると思うんですけど、1回経験した分、秋は大丈夫なのかなと思っています。
――関西の大学との試合で感じたことはありましたか
目黒 去年も3試合関西とやって1個も勝てず、今年も春2試合とも勝てなかったんですけど、やっぱり関西と戦って思うのは、試合においての戦い方というか、試合展開やその時の流れのつかみ方、そういったところが関西うまいなっていうのがこの2年間を通じて関西とやって思います。 去年の甲子園で前半スコア的にはほぼドローだった中で、やっぱり後半ズルズル持っていかれたり、今年はもう前半のうちに割と点差を離されて、後半ちょっと追い上げたけど間に合わないみたいなパターンでした。どれだけ試合の最初から最後まで、試合の気持ちを切らさずに戦えるかっていうのがやっぱり関西と関東、特にうちはそうですけど、そこが1個の大きな違いなのかなとはやっていて感じましたね。
中尾 自分も早稲田は立ち上がりがすごく弱いなっていうのはこの春シーズンもあったなって思っていて。最初点差をつけられて、後からちょっと盛り返そうと頑張るけど間に合わないみたいな試合展開が、それは関西の2試合だけではなくて、全体的にそれがこの春あったなと思っています。やっぱり関西は歩偉も言っていた通り、他の関東の大学と関西の試合を見ていても、前半はいい勝負していたのに後半は結局負けてしまっているみたいなのが多かったり、試合運びみたいなところが去年の甲子園とかも含めて、いまいち関東は最後まで詰め切れていなかったりする、日頃から詰め切れていなかったりする差とかがすごく出てしまっているのかなって思いました。
安村 自分は2人が言ったこともそうなんですけど、関西は関東に比べて圧倒的に個の力っていうのがすごく強くて、しかもチーム的にもそこに結構頼るというか、個を信じたプレーをするなっていう印象があって。そういう面でやっぱりうちは推薦とかがあまりない分、その個の力っていうところでまだまだ及ばなかったのかなっていうのがあったので、しっかり個の力を磨かないとなと思いました。
――夏合宿についてお聞きします。夏合宿前に幹部の皆さんからどのようなことをチームに伝えられて合宿に臨みましたか
目黒 この合宿の目的として、やっぱり春シーズンああやって結果が振るわなかった中で、どうチームとしてまとまっていくか、ユニットごとの干渉だったりとか、そういったところを目的としていこうっていう話は幹部の中でもして全体にも共有はしていました。やっぱり合宿は、合宿だから頑張るってわけではないですけど、夏合宿だからこそできることや入る気持ちというか、そういう雰囲気的なところもあると思うので、そういったところも大事にしつつ、いかに合宿で成長して帰ってくるかっていうのは1個大きな目標として掲げていました。
中尾 合宿はやっぱりチームとしてすごい大きく成長できる場だと思っています。10日間アメフトのことだけ考えて生活できる期間だったと思うので、アメフトをいかにこの春の結果も踏まえて自分たちでどう考えて、アメフトに対してしっかり向き合えるかっていうのはすごい重要だなと思っていました。アメフトと向き合って、チームとしてすごい成長できるような期間だったのかなと思います。
安村 意識していたことは闘争心と結果にこだわるってところです。監督(髙岡勝監督、平4人卒=静岡・聖光学院)もずっと言っていたんですけど、自分たちからもしっかり結果と日々の練習の闘争心っていうのは意識していました。
――合宿を振り返って、個人やユニットとして得た手応えはありますか
目黒 先にフィールドトレーニング系、走り物とかを持ってきて、その後にファンダメンタルのところを入れてみたり、結構しんどい中でどう頑張っていくかみたいなところも練習メニューの形として表していました。そういったところも、やっぱり向こうでしんどいことをやって帰ってきた分、向こうでできていたことはもうこっちではスタンダードでできるようには徐々になってきているなっていうのは全体として感じています。あとはそれこそフットボールとかやっていても、合宿前、春シーズンとかでは見られなかった雰囲気というか、盛り上がりが合宿でも作れて、そのままこっちに持ち帰ってこれたので、そこは1個大きな収穫だったかなとは思います。
中尾 自分はオフェンスの横ユニット(パスユニット)っていう話をすると、チームとしてこの夏の期間は闘争心を出そうっていうのと、ちゃんと結果にこだわろうっていうのを意識してやってきていました。横ユニットとしても、春あまり結果が残せなかったってこともあって、結果にしっかりこだわろうよっていう話をしていて、合宿は結構雨とかも多かったんですけど、その中でもしっかり最後までボールに食らいつくとか、ディフェンスにつかれていても最後どれだけ球を取り切れるかみたいなところは、すごい横ユニットとして意識できたのかなと思っていて。 個人としては2年生、3年生と怪我とかで合宿を完走できなかったんですけど、初めて合宿完走できて、自分なりに辛い時どれだけ頑張れるかっていうところに関して自信がついたかなと思います。
安村 自分は縦ユニット、ランのユニットっていうので、ランユニットは春シーズンは数字的に見たら平均獲得ヤードが7ぐらい出ていて。ただロスが多いっていうのが課題になった中で、やっぱりランの精度っていうのはすごく求めてずっとやっていました。その中でラインズの人数が足りなかったりとかで結構しんどいことをずっとやっていた中で、その中でもやっぱり勝負はしんどい中でもこだわっていくっていうのをすごく大切にしてOLをやっていたので、最後の粘り強さとかっていうのは合宿を通じて獲得できたかなと思っています。個人としては、やっぱりラRBは層が厚くてプレー数が少ないので、もっともっとプレーはしたかったなっていうのが感想です。
「まだまだ勝ちにこだわる」
春季オープン戦でもTDを生み出した安村副将
――チームの形が徐々に固まってきていると思いますが、その中で残っている課題や、リーグ戦に入ってからも修正していくべき点はありますか
目黒 1個挙げるとするなら、ユニット間の連携はもっと強固なものにしていかなきゃいけないとは感じています。それこそ春シーズン特に顕著だったのは、オフェンス、ディフェンス、キッキングの3ユニットがそれぞれ独立してしまっているっていうか、オフェンスはオフェンスで、ディフェンスはディフェンス、キッキングはキッキングみたいな。それぞれがお互いにそこまで干渉する場面がなかったので、オフェンスがしんどい時はディエンスが支える、ディエンスがしんどい時はオフェンス、プラスキッキングで、試合としてもチームとしても雰囲気を作っていくみたいなところを、やっぱりもっとお互い3ユニットがそれぞれもう少し支える関係性になっていかないと、それこそ厳しい試合になってきた時に、これはオフェンスが悪かったからとか、ディフェンスがあれだったから、キッキングでターンオーバーがあったからみたいな、責任転換ではないですけど、そういった形にもなりかねないと思います。やっぱりもっと3ユニット、特にもう少し連携を強めて、お互いにより干渉していけるようにはしていかなきゃいけないのかなとはやっていて感じます。
中尾 最初から最後まで集中してやりきるところをもっとチームとして意識していけたらいいなと思っています。やっぱり春スロースターターだったりっていうのは、最初からギアを上げて日頃の練習からも最初からしっかり取り組むっていうのと、アメフトで言ったら、笛までやりきるとか、最後までやりきるっていうこともやっぱり意識していかないと、秋厳しい接戦の試合とかで最後逆転で負けてしまったりすると思うので、最初から最後までアメフトでも日常生活でも、ちゃんとやるべきことを最初から最後まで集中して遂行することができたら、チームとしてより強くなっていけるのかなと思います。
安村 自分はまだまだ勝ちにこだわる、勝負どころにこだわる、個々の力を上げるっていうところにもっと注力していきたいなっていうのがあって。チームスポーツなんですけど、11対11と言えど個々の力でそれぞれ圧倒していかないと勝てない中で、厳しい試合展開でどれだけその1対1の勝ちが多いかっていうので勝敗が決まると思います。ちょっとの自分の負けっていうのを軽く受け止めずに、練習から全員がその1つの負けっていうのに真摯に向き合っていってほしいなと思っています。
――秋のリーグ戦で注目してほしい選手を教えてください
目黒 自分は3年のDLの堤(堤祥悟、教3=東京・早実)です。彼は今年3年生ながらDLのポジション主任をやっているんですけど、DLの中でもそうですし、学年の中でもリーダーシップを発揮して、積極的にチームに対して自分が試合で活躍するためにどうするかみたいなのをいろいろ考えて動いてくれます。3年生ながらというか、思いきりのいいプレーでたくさんサックとかを量産してもらって、ディフェンスをディフェンスラインから作り上げていけるようなユニットにつり上げていってほしいなって意味も込めて堤でお願いします。
中尾 自分は直属の後輩で3年生のWRの入江くん(入江優祐、商3=大阪・関西大倉)に注目してほしいなと思っています。入江くんは去年から試合にずっと出続けているんですけど、もうWRの中でもスピードとルートの走り方みたいなところはずば抜けているなって思っていて。その上で試合経験も去年から出ていたのですごくあって、大事なところでいつもキャッチしてくれるので、この秋も彼のビッグプレーに期待してもらえたらなって思います。
安村 自分は1年生のRBの大谷(大谷優輝、政経1=東京・早大学院)とDBの吉川(吉川大紀、社1=東京・佼成学園)です。やっぱり1年生でもユニフォームをもらって、2人ともしっかり試合に出て活躍する選手だと思うので、注目してほしいなと思います。
――目黒さんにお聞きします。春の対談で「絶対的な選手がいないからこそ、まずは全員の熱量の差を埋めていきたい」と話されていましたが、現在の熱量の差についてはいかがですか
目黒 春シーズンに比べると、そこの差はどんどん縮まってきたかなっていうのを感じています。特に最上級生の4年生がどんどんリーダーシップっていうか、自分たちが最後の代っていうのもあるので、どんどん練習に対してもチームに対しても動きかけてくれているので、そういったところを見て下級生も「あ、やんなきゃな」と感じて徐々に動き出してくれるようにはなっています。もっともっと全員をできる限り上のレベルに引き上げていかなければいけないのはそうなんですけど、春シーズンに比べたらそこの上と下の差というか、そこの熱流の差はだんだん縮まってきたかなとは思います。
――安村さんと中尾さんにお聞きします。春は副将の役割として「グラウンドでの存在感」を挙げられていました。秋のリーグ戦では、どのように存在感を出していきたいですか
中尾 1番はまず自分が結果を残したいなと思っています。春はあまり個人としてプレーで結果を残せなかったんですけど、やっぱり自分が副将として、4年生としてプレーでしっかり結果残すことがチームの士気も高めることになると思いますし、試合の勝利っていうのにも直接関わると思うので、グラウンドでの存在感という面ではもちろん声も自分は出しますけど、1番は自分がプレーでしっかり結果出すことっていうのはこだわっていきたいなと思います。
安村 自分も春はなかなか怪我とかで出場機会が少ない中で、自分のプレースタイルっていうのを模索していて、大体そこが固まってきたなっていう感覚もあります。秋は去年よりもいいラッシングヤードを出して、しっかり成長してチームを日本一に導けるようにやっていきたいなと思います。
――主将や副将として、新体制になってから変化した部分や成長した部分はありますか
目黒 心の持ち様はほとんど変わっていなくて、やっぱり思い描いていたような感じでこの春シーズンやってきたし、今もそのままやっていけばいいかなとは個人的には思っています。ただ成長した分で言うと、少し人に頼れるようになったかなと。自分が選手をやっていないってのもあって、何かしらの形で部に貢献しようと思ったら、みんなは練習もあるので全部自分でここもやって、ここもやってみたいなのが春シーズンは特に多かったんですけど、副将2人もそうですし、他の主任陣であったりとか、 そういった役職のあるメンバーとか、特に下級生の学年幹部とか、そういったところにもだんだんやるべきことを投げたりするようにできるようになったのは1個個人としては成長した部分かなとは思います。
中尾 コミュニケーションを取ったりする、他人と関わるのがすごい増えたなって思っています。この幹部の2人とかとも春シーズンの最初と比べたら話すようになったと思いますし、自分から学年の幹部の子たちと話したり、同じポジション、レシーバーやリターナーの子ともコミュニケーションを取るようになりました。今のチームに対してとかもそうですし、単純に個人的なプレーの話とかもそうですけど、いろんな人とコミュニケーションを取ることがこの春の最初と比べたら増えたなと思います。
安村 自分は練習での存在感の無さっていうのが春はあったのかなっていうのが課題でした。そこで誰にでもしっかり求めるっていうことを最近はずっとやっています。良し悪しは分からないですけど、ミスした選手に厳しく言いに行ったりとか、いいプレーはいいって言ったり、ダメなところはしっかり叫んでその選手のところに行ってっていうので、いいかは分からないけど、春に比べたら存在感はついているのかなっていう。コミュニケーションとしても雑にはなっているんですけど、しっかりチーム内とかはコミュニケーションは取れています。
――甲子園ボウルに続く秋季リーグ戦に向けて意気込みをお願いします
目黒 日大戦がなくなってしまって、リーグ戦は6試合なんですけど、まず本当に1戦1戦目の前の試合に対して、勝利に貪欲にやるしかないと思います。残り慶応まではちょうど1週間、そこから大体2週おきで試合があるんですけど、しっかりと毎試合毎試合次の試合に対しての気持ち作りっていったところもチームとしてやっていって、もう本当にあとは本気でやるしかないので、ひたすら勝利に貪欲に頑張っていけたらなと思います。
中尾 この秋の試合は春の試合と違って、甲子園ボウル行くまでに絶対に1試合も負けてはいけません。春はほとんどの試合で負けてしまった分、やっぱり自分たちの中で勝つイメージみたいなものがあまり湧いてないかも分からないけど、それでも初戦からずっと負けてはいけないので、勝つことへの執念みたいなものはしっかり持って、初戦からしっかり勝ち続けたいなと思います。
安村 チームとしては2人が言ってくれたことなので、個人的な目標や意気込みで言うと、1000ヤードっていうのを意識しています。どの試合でも自分がしっかり活躍して、最終的に甲子園でもしっかりとしたランプレーを出して、日本一に導いていけたらなっていうふうには思っています。
――ありがとうございました!
(取材・写真 田部井駿平、編集・写真 矢彦沢壮真、写真 安齋健)
秋季リーグも楽しみです!
◆目黒歩偉(めぐろ・あい)(※写真中央)
東京・佼成学園高出身。スポーツ科学部4年。168センチ。70キロ。主将。WR。主将として誰よりも厳しく、自分にも厳しい目黒主将。チーム全体で昨年の自分たちを『凌駕』し続けます!
◆安村充生(やすむら・みつき)(※写真右)
東京・早実高出身。文化構想学部4年。174センチ。80キロ。副将。RB。下級生の頃から活躍していた安村副将。ラストイヤーも全力で駆け巡って敵をほんろうします!
◆中尾公亮(なかお・こうすけ)(※写真左)
東京・早実高出身。社会科学部4年。172センチ。68キロ。副将。WR。練習中から誰よりも大きな声でチームを鼓舞する中尾副将。秋季リーグ戦もチームを盛り上げ続けます!