第3回はOLゴントナーニコラス武(国教4=米国・市立ウェストレイク)とOL長島太一(教4=埼玉・早大本庄)が登場。あと1ヤード進めるため。あと1秒パスプロをもたせるため。5人全員の息を合わせ、一つの生き物として動くOL。そんなアメフトの中でも特殊なポジションを務めるお二人に話を伺った。
※この取材は8月25日に行われたものです。
「この先輩方と一緒にやりたいと思ったのがOL」
春季オープン戦でセンターを務めた長島
――お互いについてご紹介お願いします
長島 ニコラスは、今年の代の中でも一番のフィジカルを持っている選手なので、当たった時に強さを感じる選手だと思います。
ニコラス 長島は、ずっと一緒にOLとしてやってきて、技術の高さや、またリーダーシップを持っている選手だと今年特に感じていて、 精神的にもユニットの中で欠かせない存在になっていると思います。
――お二人はいつフットボールを始められましたか
ニコラス 元々アメリカに住んでいて、中学1年生の時に親の影響で始めました。
長島 大学に入ってから始めました。
――BIG BEARSに入ろうと思ったきっかけはありますか
長島 父がアメフトをやっていたというのもあって、元々アメフトには興味がありました。最初はサークルに入ろうと思っていたので、サークルに入った高校の先輩に連絡を取ったところ、BIG BEARSを紹介され、魅力を感じて入りました。
ニコラス 僕はずっとアメフトをやっていましたが、高校が弱小校だったこともあり、高校3年生で一区切りつけようと思っていました。しかし、 早稲田に入って、また、BIG BEARSが強いことも知り、高校時代負け続けたからこそ、4年間自分が勝てる環境に身を置きたい、自分の好きなアメフトを本気でやりたいという気持ちにかなう環境がBIG BEARSにはあったため、飛びつきました。
――どのような経緯でOLになりましたか
ニコラス 僕の高校時代は人数の関係でOLをやっていたのですが、DLの方が得意で、大学ではDLをやろうと思っていました。実際に1年生の時はDLだったのですが、チームのニーズや、自分の適性、また先輩方やコーチと話す中で、自分はOLが向いているということが分かりました。アメフトを続けるか迷っていた時期に、自分の適性を考え、とりあえず一回はOLとして頑張ってみようと思い、OLにコンバートしました。
長島 高校時代ラグビーをやっていて、ある程度身体のサイズが大きかったため、ラインのどちらかをやりたいと思っていたのですが、入って間もない頃に、この先輩方と一緒にやりたいと思ったのがOLの先輩方であったため、OLを選びました。
――これまでの3年半で印象に残っている試合はありますか
長島 昨年の東北大戦が、よくない意味で印象に残っています。自分はそれまではタックルをやっていたのですが、昨年の10月からセンターをやり始めました。実際に東北大戦で出してもらう機会があったのですが、目も当てられないくらいのスナップで、試合を壊しかねない出来だったため、ずっと引っかかっています。
ニコラス その反動で今一番長島がスナップ上手です。僕は2年生の春に初めてスタメンとして出場した桜美林大戦です。今振り返ると、自分は強かったわけではないですし、直せる所もたくさんありました。ただ、OLにコンバートして数ヶ月しか経っていない段階でいきなりスタメンとして出場することになり、 勝つことができました。この頃の自分は「自分が大学アメフトでOLをやることができるのか」と自分に懐疑的な目を向けていたため、この勝利をきっかけに、自分はOLをできるんだ、この場にいていいんだと思えるようになりました。また、高校時代負け続けていたこともあって、自分がスタメンとして出場した試合で勝利するのが初めてで、試合自体も2、3年振りに勝ったので、試合後父に電話をかける程嬉しかったことを覚えています。
――昨年の甲子園ボウルで印象に残っていることはありますか
ニコラス 自分は2プレー程しか出場できず、試合にはほとんど出ることはできなかったです。ただ、甲子園という会場、及び関学という相手、前日から現地入りして練習することなど、全てにおいて、試合に出ていない自分でさえ少し気を抜いたら飲み込まれそうな空気感を感じたことが印象に残っています。
長島 自分も昨年は全く甲子園ボウルには関わっていません。昨年の主将である亀井さん(亀井理陽氏、令5法卒)の練習相手をよくしていたのですが、 この人達でも勝てないことがあるのか、と思いました。自分達にはまだ遠い場所であると感じました。
――春季オープン戦を振り返って、試合を通して感じたことを教えてください
長島 自分は昨年までほとんど試合に出られなかったのですが、今春は少しずつ全ての試合に出場することができました。振り返って、改めて試合に出ることは楽しいと感じました。試合に出ることができるようになったからこそ、試合内外でフットボールについて考えることも増えました。自分が相手に通用したことがわかると、自信に繋がり、通用しなかったら原因を考える、というようにして少しずつよくなっていく感覚を実感することができて楽しかったです。ただ、今年の春シーズンはほとんど勝つことができなかったため、自分が出た試合で勝った時の嬉しさを味わったことがないので、秋に勝ってもう一つ楽しむことが増えたらなと思います。
ニコラス 自分は試合にがっつり出させてもらっていたのですが、自分の活躍が本当にひどかった試合もありましたし、また自分としては悪くなかったが、チームは負けてしまったという試合もありました。総合的に見て、今のチームはまだ何も成し遂げておらず、今のままでは、絶対に日本一という目標を達成することはできない、今の3倍の努力が必要だと、春シーズンが終わってから感じました。
――今年の夏合宿は昨年と比較していかがでしたか
ニコラス めちゃくちゃしんどかったです(笑)。単純に練習がハードになったこともあります。また、自分が最高学年になったことによって、自分たちが引っ張らなければいけない、下級生に上級生としての姿を見せなければいけない、どれだけきつい合宿でも弱さを見せてはいけないという気持ちがあったため、精神的にも人生で一番しんどい10日間だったと思います。
長島 昨年までは先輩方におんぶにだっこでもどうにでもなる状況ではあったのですが、今年は自分から行動しなければいけないということを改めて実感した合宿になりました。
――ニコラス選手はオフェンス賞を受賞されましたがどういった部分が評価されたと感じていますか
ニコラス 合宿を途中で抜けてしまう人も多い中で、最初から最後まで戦ったこと、またOLは5人出場するポジションということもあって他のポジションより1人あたりのプレー数が多くなってしまう中でも、10日間プレー数をこなすことができたこと、合宿を通してOLとして成長できたことが評価されて受賞に繋がったと思います。
長島 あの3人は合宿の最初から最後までリーダーシップを発揮して皆を引っ張っていました。特に小林(亮生、先理3=埼玉・早大本庄)は1学年下ではありますが、チームにとって欠かせない選手になっています。
「(理想の選手は)2人ともパッと思い浮かんだ」
試合前のパート練習で汗を流すニコラス
――センターとタックル。それぞれのポジションで大変なことや、やりがいを感じることがあれば教えてください。
長島 センターの大変なところはスナップですね。スナップをミスすると、そもそもプレーを始めることができず、試合を壊してしまうこともあるため、プレッシャーはとても大きいです。やりがいは、これをやりがいといっていいのか分かりませんが、写真映りがいいことですね(笑)。ずっとボールを持っていたり、真ん中にいることも多いので写真を撮ってもらう機会も多いですし、映りがいいのはモチベーションに繋がっているところもありますね。
ニコラス タックルは大変なこととやりがいが表裏一体ですね。タックルは端にいるので基本的に相手のエンド(DL)と1対1で戦う機会が多く、特にエンドとのパスプロは、アメフトの中でもトップクラスに難しいプレーで、4年間やってきましたが、いまだに完璧には程遠いです。だからこそ上手くいった時にやりがいを感じますし、楽しさにも繋がります。
――お二人の理想の選手像を教えてください
ニコラス 2人ともパッと思い浮かんだ人がいると思います(笑)
長島 僕も同じ人を思い浮かべたと思います(笑)
ニコラス 同時に言ってみる?
2人 (声をそろえて)亀井さん!
長島 自分達の代の中でも、僕とニコラスは2人1組の練習で亀井さんと組むことが多かったので、亀井さんのヒットをDLの人以上に受けてきて、あの強さはすごいなと思いました。
ニコラス リーダーシップという側面でも、理想の選手だなと思います。OLにとって、何事にも動じず、尚且つ闘志むき出しで戦う人が理想像としてあるのですが、そういった意味で別の選手を挙げるとすると、笹隈さん(笹隈弘起氏、令5スポ卒)は自分の理想に近い選手です。
長島 亀井さん以外に挙げると、自分がセンターをやって、過去にセンターをやってきた先輩方は改めて凄いと思いました。昨年センターをやっていた直野さん(永田直野氏、令5創理留)は一度もスナップミスがなくシーズンを終えていますし、横田さん(横田皇紀氏、令5政経卒)もクレバーにアメフトを理解して、正解の動きをしていて、一昨年の太さん(越智太氏、令4基理卒)も、大きい体で頭を使っていて、しっかり動けていて、過去の映像などを通して、先輩の凄さを実感しています。
ニコラス 村山さん(村山浩暉氏、令5法卒)も、タックルとしては、エッジのパスプロがとても上手で、IQも高く、一瞬の判断力もある選手で、理想ですね。 同期や後輩にもすごい選手はたくさんいますし、誰か1人を挙げるのは難しいですけど、色んな選手の良いとこどりした選手になれたらいいなと思います。
――ユニット全体での秋の目標を教えてください
ニコラス 日本一のOLユニットになることです。120kg超えは1人もいませんし、圧倒的なサイズを持ったユニットではないですが、練習量は負けていません。頭を使って、足を動かして、強くヒットできるユニットを目指し、それに近づいていると思います。日本一のOLユニットになって日本一のチームに貢献することが目標です。
長島 勝たせられるユニットになるのが目標です。OLが強ければ、ランやパスなど、プレーの幅も広がりますし、勝ちに直結すると思います。ニコラスも言っていたように、フィジカルがとても高いユニットというわけではないので、泥臭く最後までクレバーにプレーをして勝てるユニットになりたいと思います。
――この秋注目している選手を教えてください
長島 OLの小林亮生を挙げたいです。一個下なのですが、センターとしての経験値は自分よりあります。春は自分が出場することができましたが、秋はどちらが出られるか分からないくらい成長している選手なので、注目しているというよりは一番危機感を持ってやっていかなければいけないチームメイトですね。
ニコラス 同ポジでは、昨年から試合に出ている飯田星河(法3=東京・早大学院)、もう1人選ぶとしたら、他ポジですが、伊藤寛太郎(商2=東京・成蹊)ですね。伊藤は練習の際、エンドで僕と当たる機会が多いのですが、ものすごく速くて、どんどん上手くなっていて。スポンジのように吸収してどんどん強くなっているのでこの秋どのくらい強くなって他のチームを破壊していくのか楽しみです。
――このリーグ戦で意識している対戦校はありますか
ニコラス 僕らは春に負け続けていたので、どこか1校を意識するというのではなく、全ての試合に100%全力で臨まなければいけないと思っています。もちろん最後の法政は強いだろうなとは思いますが、それだけを意識するというような心構えで臨んだら他の試合も落とす気がするので選べないです。
長島 僕は直近に控えている慶應のDL鎌田(泰成)が怖いと思っています。今年の春早慶戦が出来なかったため、鎌田と対戦した経験が今のOLにはないので、早稲田のOLがどこまで通用するのか楽しみでもあり怖くもあります。
――自分の見てほしいプレーはありますか
ニコラス OLは淡々と仕事をこなし、TDして選手を目立たせるのが仕事なので、俺を見ろというのは気が引けるのですが、あえて選ぶとするなら、僕は下半身が強いので、ブロックなどで相手と当たった際に、しっかり押し込んで、あわよくば青天できるほどのプレーを見てほしいです。
長島 OLは、5人がしっかり仕事をしないとランもパスも崩壊させてしまうような特殊なポジションなので、自分だけの、ここを見てほしいというのはあまりないですが、ユニット全部が仕事をしているのを見てほしいです。また、試合を壊さず次のプレーにしっかりと繋げられるスナップの制度を是非見てほしいです。
ニコラス (長島が)本当にスナップ上手くて。
長島 スナップが出て当たり前だと思ってほしくないと、センターをやって思いました(笑)。スナップを成功するのはすごいことだと思って見てほしいです。
――ラストイヤーへの意気込みを聞かせてください
ニコラス 学生アメフトの集大成であり、僕らがこの4年間入れ込んできた全てが出る舞台です。他のチームも、過去の自分達も、全てを凌駕して頂に立つ、日本一を獲る、そのために全てを賭けて戦うつもりで僕はやります。そして絶対に日本一になります。
長島 練習を積み重ねて、どんな相手が来ようとも勝って、どのチームにも勝てるチームになりたいです。
――ありがとうございました!
(取材 田部井駿平、編集 長屋咲希、写真 星野有哉、濵嶋彩加、田部井駿平)
チームを支える一蓮托生のポジション・OLの全員に期待です!
◆ゴントナーニコラス武(ごんとなー・にこらす・たけし)(※写真右)
米国・市立ウェストレイク高出身。国際教養学部4年。182センチ。115キロ。OL。試合前のルーティンは、朝はマックのパンケーキ単品2つ、昼はウィダー3つ、試合直前に決まった5曲を聴いて試合に臨みます。自分のリズムをつくるため細かく決めているそうです!
◆長島太一(ながしま・たいち)(※写真左)
埼玉・早大本庄高出身。教育学部4年。183センチ。110キロ。OL。試合前のルーティンは、朝ごはんを白米にすること。朝の食事から体調を整えています!