第4回はAS朝稲鷹一(文構4=東京・早実)、AT小林和音(スポ4=東京東大付中教高)、SC今津遥香(人3=京都女)の3人が登場。チームをそれぞれの方面からサポートするBIG BEARSの精鋭たちにお話を伺った。
※この取材は8月25日に行われたものです。
「選手と同じ熱量で悔しいと感じられた」
自分の役職について話す朝稲
――お三方がBIG BEARSに入った理由を教えてください
小林 自分は元々、トレーナーになりたくて部活を探していました。それで、授業でBIG BEARSのトレーナーをしていた先生のトレーナーをするメリットや、大変だけどいい経験になるなどのお話を聞いて、興味を持ったので部に連絡しました。
朝稲 3年間アメフトをやってきて、引退した後にNFLの試合を観たのですが、あまり良くわかりませんでした。それで、もっとアメフトについて詳しくなりたいと思い、大学でアメフトができる場所がないか探していた時に、日本一を目指していますし、レベルの高い環境であると思ったのでBIG BEARSに入部しました。
今津 私は中、高時代は創作ダンス部で日本一になることを目標に6年間やってきました。ですが、高校3年のときにコロナの影響で大会が中止になって、不完全燃焼の状態で中、高時代を終えました。大学に入ってまた日本一を目指せる環境がないか見ていた時に、私の高校の先輩に関学大のアメフトのトレーナーをしている方がいて、「早稲田に行くならBIG BEARSを見てこい」と言われ、見学に行ったら、気迫のある環境だったので入部を決めました。
――ご自身の役職の業務内容について教えてください
小林 アスレチックトレーナー(AT)というのはチームの安全管理や健康管理、それに加えてケガをした選手の救急対応や復帰までのリハビリを担当しています。また、傷害予防のためのテーピングやエクササイズの指導もしています。
朝稲 アナライジングスタッフ(AS)は下級生の間は練習運営が主になっていて、練習中の時間を測ったり、練習で撮影した動画を共有するためにアプリにアップロードしたりをしています。学年が上がるにつれて、戦術的な部分を任されるようになっていって、最終的には試合中に選手たちへ次のプレーを指示したり、コミュニケーションを取ったりという感じです。練習運営から始まり、最終的には戦術など試合の勝敗に大きく関与できるポジションかなと思います。
今津 SCはウエイトトレーニングのサポートや新人期間に新人のトレーニングを3か月ほど見て、身体づくりの基礎のサポートを担っています。また、フィールドトレーニングの練習の仕切りをすることと、栄養面に関して、新人期間は新人の食事の調査をしてアメフトをする上でどんな食事をすればいいかという指導を最初にしつつ、上級生は増量するメンバーをピックアップして、食事を見るのもしています。あとは、ウエイト関連の数字の管理をしています。
――それぞれのユニットのやりがいや、やっていて楽しいなと思うことを教えてください
小林 ケガをした選手がリハビリを一緒に頑張っていって、最後はケガをする前以上のパフォーマンスをする姿を見たときです。ケガしたときの辛い時期を知っているので、グッとくるものがあります。コロナ禍から体調管理や感染対策は大変な部分もあるので、チームの練習や試合が安全に運営されているのは、目立った部分ではないですが、チームが安全に運営されているのはやりがいだなと感じます。
朝稲 ASは試合の勝敗に関われるのが一番のやりがいかなと思います。試合前に対戦相手をスカウティングして、ゲームプランを選手たちと考えて、それがハマって勝利した試合は、チームの一員として勝利に貢献できたという実感があったので、昨年の法大戦はうれしかったです。逆に昨年の関学大戦のように自分たちの力が及ばなかった試合では、選手と同じ熱量で悔しいと感じられたので、良くも悪くもやりがいだなと思います。
今津 試合の結果に直接的に関わる訳ではない役職ではあるのですが、新人期間にガリガリだった選手が、すぐにとは言わずとも、期間を経て試合に出ている姿を見たり、ウエイトトレーニングやフィールドトレーニングや食トレをして着実に身体が大きくなっている選手を見たりすると、頑張っていんだなと思ってやりがいを感じます。
――逆に大変だったことはありますか
小林 自分が入学した年がコロナ禍だったので、チーム内の体調管理や感染対策はミスをするとチームの活動が止まってしまうので、かなり責任も重く、緊張感を持ってやっていました。チームを安全に運営するのは大変だったなと思います。また、他の競技とは違ってアメフトならではの重篤な事故につながるケガなども多くなってきているので、そういったあたりの対応は選手の擁護にも関わってくるので、かなり緊張感と責任感を持ってやっているところなので大変かなと思います。
朝稲 ASは上級生と下級生で対戦な部分は違うのかなと思います。下級生のときは任される仕事があまり多くないので、上級生がやっている仕事と自分がやっている仕事のギャップはあるのかなと思います。上級生になると、自分の1つの決定の重さは日々痛感しています。上級生になるとオフェンスやディフェンスやキックのユニットに責任を持って練習しなければならないので、自分が決めたプレーや練習の数でチームの勝敗が左右するとなると責任感がすごく重いなと思います。
今津 トレーニングに関して、社会人のコーチからいろいろ教わったり、自分で勉強したりなど努力はするのですが、やはりウエイトに関してはアメフトをずっとやってきた選手からすると持っている知識が多い選手もいますし、そういった選手にも仕事の1つとして指摘をするという面で、男社会に突っ込んで聞く場面があって、そういうところで自分に打ち勝たなければいけないというところが大変なところだと思います。
――ASについて、アメフトへの膨大な知識が必要だと思うのですが、どのようにアメフトを勉強されたのですか
朝稲 ASは経験者、未経験者問わず募集はしていて、未経験者でも活動できるとは言っているのですが、今年の4年生に限った話をすると経験者が多いです。僕だけでなく、森薗(森薗元信、文4=埼玉・川越東)もそうなのですが、部活外の時間にNFLを見るなどカテゴリーに関係なくアメフトに触れるというのは大事にしていました。
――ATについて、アメフトという競技はケガとは切っても切れない関係にあると思うのですが、ATとして行っている大事なことはありますか
小林 BIG BEARSのATは結構歴史があり、先輩たちが積み上げてきたものが大きいです。その中でも、先輩が後輩の勉強を見てあげるというのがあって、それは下級生が上級生になって、いろいろなケガに対応する重要な部分なのかなと思います。
――SCについて、アメフトはフィジカルが重要な部分だと思うのですが、フィジカルづくりを手伝うときに気を付けていることや気にかけていることはありますか
今津 ウエイトだったらフィジカル強化のためにウエイトを行っていますが、エラーがあるとそれがケガにつながることもあります。フィジカル強化といえども、正しいフォームで選手がトレーニングを行えることを意識しています。
「改めて選手たちの日本一に向かう気迫が感じられました」
夏合宿を振り返る小林
――夏合宿を乗り越えた後の選手たちの印象を教えてください
小林 合宿は普段の練習とは違って、11日間、精神的にも体力的にも普段よりもきついことをしていて、ケアをするATの視点からすると、いつもでは考えられないような疲労が溜まっていたり、「明日大丈夫なのかな」という選手もいたりしたのですが、そういう選手たちを夜にケアして、いざ練習になって疲労を感じさせずに身体も動いていて、気迫を感じて、日を追うごとに「やってやるぞ」という気持ちが疲労と反比例するようにすごく見えました。気迫というか気持ちの面で改めて選手たちの日本一に向かう気迫が感じられました。
朝稲 僕は2年間、合宿に行っていて、2年生の頃は雨が降ってまともに練習できない日がありました。3年生の頃はコロナにかかっている人がいて半分しか参加できなくて。今年も体調不良者は出てしまったのですが、最終日まで大きな練習メニューの変更なく合宿をできたのは僕としては初めてのことでした。帰ってきてからの選手たちの表情や雰囲気を見ると、合宿はすごく意味のあるものなのだなと思いました。本当に合宿のやる意味を4年生になって初めて実感できたというか、「合宿はやったほうがいいな」と思えたのは今年が初めてでした。
今津 先程和音さんもおっしゃっていた通り、10泊11日の練習で午前も午後も練習が詰まっていて、心身ともに疲弊している選手たちが身体は動かなくても気持ちで頑張っているのをすごく感じました。選手の気持ちの強さを感じた合宿でしたし、東伏見に帰ってきてからの練習も何か違うものを感じて、目つきが変わった感じがして、個人としてもチームとしても大きく変わった合宿だったと思います。私としても選手を尊敬できる機会になりました。
――春シーズン、合宿を終えて、現在のチームの強みを教えてください
朝稲 昨年よりも現時点では4年生がまとまっているのかなと思います。シーズン終わった時には4年生がまとまっていたと感じたのですが、シーズンが始まるがん段階に比べると昨年よりも最上級生のまとまりやみんなが同じ方向を向いているなと感じます。
――目黒歩偉主将(スポ4=東京・佼成学園)が主将になってから練習の体制を変えたと聞いているのですが、そういったことも影響はありましたか
朝稲 ミーティングの数が増えました。否が応でも4年生や上級生で話さなければいけないのでチームの中で考える時間は増えたと思います。
小林 春シーズンの最初の頃は目黒が話してそれを聞いている人が多かったのですが、春シーズンの中盤や終盤あたりや合宿は特に4年生をはじめ、リーダーたちや3年生、2年生も含めチームに対して思っていることを話す機会が増えたのかなと思います。それが朝稲も言っていたみんなが同じ方向を向いているところにつながってきていると思います。
今津 今までのチームは選手とスタッフが分断していた感じで、スタッフも選手にどうやって介入していけばいいかわからない感じが多かった部分もありました。目黒さんがスタッフにいろいろな介入をしてくださったり、主務の麻有里さん(片井 麻有里、政経4=東京・早実)がいろいろ言うようになったりなどが今までと違うなと思います。選手とスタッフの一体感というのがあるチームというのが今の強みと思います。
――スタッフと選手でも仲いい方はいらっしゃるのですか
今津 選手からもスタッフに対する気配りが増えた気がします。
小林 目黒と主務の片井さんの力だと思います。
――秋シーズンに注目してほしい選手はいますか
小林 自分は4年のLBの堀田(堀田峻平、文構4=東京・早実)に注目したいなと思います。ケガも1年生から4年生の間であったりして、その度にリハビリもしていたのですが、合宿を乗り越えるなどここぞの時の気持ちの強さであったり、プレーも見ていてかっこいいので、試合でもまだ津選手だなと思います。注目してほしいなと思います。
今津 同期で3年のQBの八木ちゃん(八木 義仁、政経3=東京・早大学院)です。頑張ってほしいという気持ちがすごく強いのと、プライベートがああ見えて変なのですが、真面目なところはすごく真面目で、授業を一緒に受けることもあるのですが、一生懸命何かを書いているなと思ったら、前日のプレーを全部書き出して自分がもっとこうすればいいということをびっしりノートに書いていて、それを見ると頑張ってほしいなと思います。
朝稲 堀田と宗村(宗村尚輝、スポ4=京都・立命館宇治)が4年生でLBが今2人しかいないのですが、2人とも出た場面はほとんどないのですが、ただ、2人ともいなくなった場面もほとんどなかったと思います。どっちかが出て試合を支えてくれていてというところで堀田と宗村は注目というか、活躍は絶対にしてくれるだろうなという2人です。もちろんDリーダーの廣瀬(廣瀬灯遥、スポ4=埼玉・立教新座)も下級生を巻き込んで、DLだけでなくディフェンス全体のことを考えてくれています。廣瀬は昨年から唯一ディフェンス幹部に入って他の動機とは1つ違う、もう1回戦い終わった戦友のような感じです。廣瀬は期待とかではなく全幅の信頼を置いています。
――最後に秋シーズンの意気込みをお願いします
小林 入部してから、まだ1回もなったことはないですが、1度も日本一を経験しておらず、自分たちの代では入部したときから尻上がりに成績が良くなっている感じなので、おととしは法政に負けて甲子園に行けず、昨年は関東で優勝して初めて甲子園に行けて関学に負けてしまって。やはり甲子園で負けた景色や先輩たちの言葉は自分の中ですごく残っていて、常々目黒も言っていますが、本当にやるしかないので、覚悟を決めて日本一までやり切るしかないなと思っています。
朝稲 僕はたまたま昨年からディフェンスを任せてもらって今年で2年目になって、エースを任せてもらっています。歴代にいろいろなエースの方はいましたが、自分はトップレベルで頑張っている自信があるので、やはりしっかり証明するためにも日本一になって名実ともにナンバーワンエースになりたいと思います。
今津 自分自身はラストイヤーではないのですが、自分が4年生と一緒に関わらせていただいている機会もすごく多いので、4年生くらいの気持ちでチームに何ができるのかを考えて、自分だけでなく、ユニットとしてできるように最後、どんな形でもいいので今年はやり切ったと思えるように行動しつつ、日本一になれるように頑張りたいです。
――ありがとうございました!
(取材・写真 田部井駿平、編集 近藤翔太)
仲良しな3人を撮らせてもらいました
◆小林和音(こばやし・かずと)(※写真左)
東京東大付中教高高出身。スポーツ科学部4年。AT。けがのケアなど豊富な知識を持つ小林さん。小林さんをはじめとしたATの方々のサポートがあり、選手がフィールドに復帰していきます!
◆朝稲鷹一(あさいね・よういち)(※写真中央)
東京・早実高出身。文化構想学部4年。AS。高校時代は選手だった朝稲さん。選手の気持ちも理解するASが考えるアサイメントは頼りになります!
◆今津遥香(いまづ・はるか)(※写真右)
京都女高出身。人間科学部3年。SC。今対談で唯一の3年生だった今津さん。ラストイヤーは来年ですが、今年もチームのために全力で勝利に貢献します!