第3回はWR嘉屋光希(文構4=東京・早大学院)とDB鈴木丈也(社4=東京・早大学院)が登場。4年生だけでなく、3年生以下にも実力のある選手がそろう両ポジションで中心となるお二人に話を伺った。
※この取材は8月22日に行われたものです。
「入っていなかったかもしれない」
ボールをリターンする嘉屋。WRだけでなくリターナーもこなす
――お二人とも早大学院アメフト部出身ですが、当時から関わりはありましたか
嘉屋 ありました。ポジションが(自分は)WRで(鈴木は)DBでマッチアップする場面が多かったので、その中でコミュニケーションをとっていました。あとは当時キックの管轄をしていたので、キッカーをやってもらったり、コーチ含めてコミュニケーションをとったりしていました。
鈴木 個人的には大学からの方が仲は深まったのかなと思います。いろいろありまして、嘉屋くんは高校の頃は一度部活を抜けていたことがあって、3年生の時に戻ってきたので、同じ部活でしたが時間としてはそこまで一緒にいなかったのかなと思います。大学に入ってから一緒にいる時間が増えて、今ではお互い寮に入っているので東伏見にいる時間も長いです。遊ぶ回数も増えました。
――お互いのことを紹介してください!
嘉屋 丈也は意外と社交性があって、傍から見ると殻に閉じこもってそうなプライベートを過ごしているのですが、アメフトのことになると上級生とも下級生とも積極的にコミュニケーションをとっています。アメフトに懸ける一面みたいなのに(プライベートとの)ギャップがあって、見ていておもしろいです。プレーのことに関しては、丈也は本当にアメフトが大好きで、特に高校から大学にかけては戦術の面など頭の部分で勝負しているなって感じ取れます。自分がレシーバーとしてやっている中で「なんでそこにいるんだよ」みたいな嫌な場所に丈也がいてやりづらさを感じますし、アメフトに懸ける情熱は人一倍強いのかなと思います。
鈴木 僕は嘉屋くんのことは『センスの塊』だと思っていて。アメフトのセンスはもちろんなんですけど、プライベートでも絵がめちゃくちゃうまかったりとか、ギターが弾けたり、歌がうまかったり、いろんな才能があって、魅力が尽きないです(笑)。レシーバーとしての技術に関しても、元々のポテンシャルが高くて、大学に入っていいコーチに教わる中でさらに伸びているのかなと思います。レシーバーとしての能力では、ユニットの中で一番かなと僕は思っています。
嘉屋 めちゃくちゃ褒めるじゃん(笑)
鈴木 本心なんで。
――フットボールを始めたのはいつですか
嘉屋 お互いに高校1年生の時に勧誘されて始めた感じです。
――ポジションは最初から今のポジションだったのですか
鈴木 最初はRBでした。(早大学院時代の)最初の1年間はRBをやっていて、ディフェンスの人が足りなかったのと自分が元々DBというポジションに興味があったこともあって、コーチからスカウトされてDBにコンバートしました。そこからはずっとDBをやっています。
嘉屋 ずっとWRですね。そもそもアメフトを始めたきっかけも、体験会のフラッグフットボールでレシーバーをやった時に、走ってボールを捕るだけで周りから喜ばれて、こんなにおいしいポジション他にないなって思ったのがあって(笑)。実際にWRとしてやっていく中で、WRがどれほどおもしろいポジションなのかということも理解していって、WR以外をやるくらいだったら辞めてもいいやってくらいの気持ちでやっていました。
――大学でもアメフトを続けることにした理由は
鈴木 高校3年生の秋大会で、みんなが勝てるかなと思っていた試合でボロ負けしてしまって。あっけなく終わってしまったのが納得いかなくて、それまでは大学に入ってもアメフトをやろうかなってくらいの気持ちでしたが、(引退試合を経て)やると決心しました。大学の練習にもかなり早い段階から行っていました。
嘉屋 僕の場合は本当に大学でやるつもりではありませんでした。というのも、高校の時点でしんどくて部を抜けていた時期があって、高校3年生の時には最後の1年間だけ頑張ってみようという気持ちでやっていたので…。それでも、いざ大学に入ってバイトとかいろいろやっていたのですが、まったく面白味がありませんでした。高校の時のように、たくさんの仲間と一つのことに情熱を注げる環境というのが当たり前ではなくて、そういう環境に身を置いて頑張ることが自分のためになるということに気づいて、夏頃に入部しました。
鈴木 僕が一番早くて、嘉屋くんが一番遅かったっていう感じですね(笑)
嘉屋 夏頃の入部は普通認められなくて、コロナの影響で入部期間が延びていなかったら入っていなかったかもしれないので、ちょっとだけコロナにも感謝しています(笑)
――大学に入ってから現在まで、印象に残っている出来事や試合などはありますか
嘉屋 自分は出ていないのですが、昨年の甲子園ボウルが最も記憶に残っています。大学3年生の春から試合に出る機会が増えて、先輩たちと一緒に日本一を懸けて戦って日本一に貢献したいという気持ちでやっていたのですが、秋にヒザのケガをしてしまって。必死にリハビリして甲子園ボウルまでにケガを治すことはできたのですが、結局試合には出られませんでした。これまで自分が出られなかった試合のなかで甲子園ボウルが一番悔しかったですし、試合に出て悔しい思いをすることもあったのですがその悔しさともまた違ったので、4年生になってその悔しさを糧に現在取り組んでいます。このラストイヤーに情熱を注げているのは、やはり甲子園での経験が一番大きいですね。
鈴木 大学2年生の春の法大戦ですね。14―13で早稲田が負けたのですが、負けた原因が僕のミスでした。これまで長年スポーツをやってきた中で、自分のミスで試合に負けたということを初めて経験しました。自分が直接的に敗北に関与したことにすごく考えさせられて、自分の実力の無さに悔やむ部分もありつつ、かといって何からやればいいのかということで思い悩んで、一番の挫折というか考えさせられた試合でした。そこから1つのプレーに対する自分の意識がすごく変わって、例えば試合形式の練習での1プレーにおいて自分のミスでタッチダウンを取られた時に、同じように悔しいと思えるというか、1つのプレーに懸ける思いはその試合が起点となって今に繋がっていますね。
――春季オープン戦を振り返っていかがですか
鈴木 自分は試合に出られていないのですが、サイドラインから見ていて選手が成長したなと率直に感じました。試合に負けてしまったことはチームとして重く受け止めなければいけないことですし、ディフェンスとしても反省点は多かったのですが、個人にフォーカスしてみると春シーズンの最初と比べて大きく成長したなという選手がいました。本人は気づいているか分かりませんが、自分が試合に出られない状況で、この人に託せるなという安心感がありました。自分が試合に出られたらなという悔しさもあるのですが、今試合に出ているメンバーに対して自分は何ができるのかということを深く考え続けたシーズンでした。
嘉屋 良かった点は昨年に比べて試合の結果につながるようなプレーができたことです。昨年は試合には出ていましたが、佐久間さん(佐久間優毅、令5政経卒=現オービックシーガルズ)にパスがいって、自分は結果を残せずにケガをしてしまってという感じで、自分が貢献できていることはあるのかという気持ちでやっていました。今年の春は、立命大戦でオンサイドキックを自分で抑えて、結果的に蹴れませんでしたがFGまでの展開に持っていけたり、関大戦でも多少キャッチできたりと、何もできない状況からは脱却できたのかなと思っています。悪かった点はチームの勝ちに執着できなかったことです。パスユニットでは個人が活躍して結果を出すということにフォーカスしていたこともあって、一つ一つのプレーを見ると勝っていたり上手くやれていたりする部分もあったのですが、勝利に直接関われた部分があまりなくて、チームを勝たせられるパスユニットを作り上げることの重要性をユニット主任の上野陸を中心に話し合っています。この夏はパスユニットのチーム内での信頼を考えながら成長してきているので、秋はレシーバーで勝たせられるようにしたいです。
――夏合宿で特に力を入れて取り組んだことを教えてください
鈴木 DBのユニットとしてはすごく簡単なことなのですが、とにかく元気にやろうということですね。合宿はすごく大変なフィールドでのトレーニングやウエイトトレーニングがあって、自分はフットボールをすることはなかったのですが、きつい時こそ気持ちを前向きにさせてモチベーションを上げる声かけというのはすごく意識しました。結果として下級生もユニットを盛り上げてくれて、完璧とは言えないですが、合宿全体としていい練習ができたのではないかなと思います。
嘉屋 DBの雰囲気の良さというのは、練習でバチバチにやり合うWRとして感じることが多くて、その雰囲気に負けじと自分たちも盛り上げてやろうという相乗効果がありました。合宿の練習自体は例年よりも厳しかったなというのが正直なところです。苦しい時にどう頑張るかがこのチームに一番求められていることですし、ここを乗り越えられるかどうかで秋シーズンの結果も変わってくるということも全員分かっていたので、そういったことが今回の合宿のテーマだったと思います。WRとしては個々人が成長したと思います。今まではWR同士が仲良くてワイワイやるようなポジションだったのですが、合宿の中で一対一の勝負の重要性やQBとWRの呼吸を合わせるために細かいところまで徹底してやる意識が個人に芽生えてきたなというのをひしひしと感じました。合宿で得られたことは、チーム、ユニット、個人のそれぞれで大きいものがあると思うので、これを持ち帰って継続させれば秋は勝てるチームになると思います。
鈴木 今の話にあったのですが、DBとWRとのバチバチ感みたいなのは、合宿において本当にいい雰囲気でできたなと思います。キツい時に頑張るということがテーマとしてある中で、監督から合宿の前にいただいた言葉というのが「勝負にしっかりとこだわれ」ということでした。その言葉を自分たちに落とし込むとなると、DBは目の前のWRにどう勝つか、WRは目の前のDBをどう抜いてどうキャッチするかということなので、一対一の練習ではこのことにフォーカスして取り組んでいました。試合形式の練習でも、目の前の相手に対してどう勝とうかということに対して気持ちを全面に出して取り組めていましたし、雰囲気の良さはここに起因していたのかなと思います。お互いに干渉しあって取り組めた合宿でした。
嘉屋 バッチバチだったね…(笑)
鈴木 バッチバチだった。
――シーズンに向けて、ユニットとしての目標を教えてください
嘉屋 一言で言うと、「レシーバーでチームを勝たせる」ということです。
鈴木 春シーズンを振り返ると、DBのミスで点を取られた試合がすごく多くて。試合の中でどのようにしてDBが活躍して、DBがチームを勝たせられるかはレシーバーと同様に大事なことかなと思います。ただ守っていればいいという感覚で試合に出ている選手はいないと思いますが、止めればいいというよりは、自分たちがどれだけアグレッシブになって相手の攻撃から自分たちの攻撃に持ってこれるかという気持ちが秋シーズンにはもっと必要かなと思います。
嘉屋 先ほどレシーバーで勝つと言ったこともそうなのですが、僕は個人的に今年のWRは実力のある選手が本当に揃っているなと思っていて。昔から試合に出続けている陸(上野陸、社4=東京・早実)もそうですし、副将の中尾公亮(社4=東京・早実)や下級生の入江(入江優佑、商4=大阪・関西大倉)、吉規(吉規颯真、政経2=東京・早大学院)など、勢いのある選手がたくさんいるので自分も負けずにやらないといけないなというのはずっと思っています。ただ、そういった実力のある選手たちがたくさんいても、春シーズンの試合ではあと一歩のところでキャッチできなかったりQBとずれてしまったりで勝利という結果に繋がらないようなプレーが少なからずあって、それはすごくもったいないなと感じています。実力はあるので細かいところから徹底してやることで勝利に向けてWRを使ってもらえるという信頼につながると思うので、練習から細かいところを突き詰めて完成度の高いユニットになっていけばと思いますね。
――チーム全体のことについてお伺いします。目黒歩偉主将(スポ4=東京・佼成)の存在についてはいかがですか
鈴木 今までの主将とは全然違うなと思っています。4年生に対しても自分が頑張っている感を出さないというか、彼自身は何とも思ってないと言うのですが、ずっと陰でいろんなことをやってくれていて、自分はもっと感謝されてもいい存在だなと思いますね。主将として彼はいつもすごく厳しいことを言ってくれるのですが、その言葉だけを受け取っている選手というのがすごく多いのかなと思っていて、そういった発言をしている彼が普段からどのようなことをしていて、チームのためにどれほど頑張ってくれているかというのを自分は今年の春シーズン中盤あたりからすごく感じました。
嘉屋 歩偉は今まで会った人間の中で、最も徹底している人間だなと思います。自分が同じポジションで歩偉のプレーを見ていてすごく上手いなと思いますし、自分が考えていること以上のことを考えて実践できているので、全ての面ですごいと思わせられています。それがなぜなのかという背景というのは、やはり誰よりも練習しているし誰よりもアメフトのことを考えているし、そういった点で自分は全く勝てていないなと感じました。この部分が彼自身の主将としての行動にもあらわれていますし、一番チームのために行動しているのは歩偉だなということを思っています。最も日本一に向けて徹底しているのが歩偉ですね。
――自分以外で秋シーズンの活躍が楽しみな選手を教えてください
鈴木 いろいろな顔が浮かぶのですが…。嘉屋くん次第で言う人を変えます。
嘉屋 えー(笑)。じゃあ、オフェンスは國元孝凱くん(QB、社4=東京・早大学院)にします。高校からずっと一緒にやってきたので、築き上げた信頼を見せつけたいですね。自分にパスを投げてほしいという期待を込めての一票です(笑)。同じポジションなら後輩の吉規ですね。自分は(自分のことを)技術があるタイプのレシーバーだと思っていたのですが、それ以上にアメフトやレシーバーとしてのセンスがありますし、小柄ですがブロックや球際で熱いプレーをするので、いい刺激を受けています。今年の秋は活躍するのではないかと思います。ディフェンスは塚田(隼也、DB、商3=東京・早大学院)ですかね。一緒に練習していて結構厄介な存在ですし、学院の頃はずっと同じポジションだったので自分の弱点も知られていて、そういったずる賢さみたいなのも試合で発揮してくれるのではないかなと思います。
鈴木 最後まで絞れなかったのですが、2人挙げさせていただきます。3年生の鈴木晴貴くん(DB、基理3=神奈川・鎌倉学園)と1年生の吉川大紀くん(DB、社1=東京・佼成学園)です。晴貴くんは練習でめちゃくちゃ良いプレーをしていてハッスルしているのですが、試合では昨年から出ていましたがあと一歩のところで良いプレーがあまりなかったので、今年は彼のビッグプレーをもっと見たいなと期待しています。吉川くんは1年生の春から試合に出ていて経験を積んでいるので、今年の秋もめちゃくちゃ楽しみだなと感じています。ディフェンスでもそうですが、キックでも出番があると思うので。伸び代の塊ですね。
――ご自身のプレーでの注目ポイントを教えてください!
嘉屋 スピードですね。レシーバーとしての技術うんぬんというのはありますが、昨年の佐久間さんのようにやはりスピードで勝てるのが一番かっこいいなと思いますし、自分もスピードに自信がないわけではないので、そこを活かしてビッグプレーを起こしたいですね。
鈴木 やっぱりインターセプトしたいですね。昨年の間瀬さん(間瀬琢巳、令5法卒)は、後ろにいることの安心感がすごかったですし、秋シーズンのインターセプトもめちゃくちゃしていたので。あの姿を見て憧れをすごく感じたので、そこを目指したいというか、超えたいです。
――リーグ戦で意識している対戦校はありますか
鈴木 中央大学です。自分の知っている上手い選手がたくさんいて、昨年はタイブレークにもつれ込む試合をして苦しめられましたし、昨年から試合に出ている選手も多いので、中央大学さん相手にどうアプローチして勝つかというのは選手もスタッフも全員が意識していると思います。もちろん他にも大事な試合はたくさんありますが、一つの意識する試合としてはやはり中央大学かなと思います。
嘉屋 法政ですね。自分は2年、3年と一度も法政とやったことがなくて個人的に戦ってみたい相手というのもありますし、学院の頃に法政二高に負けているので、その雪辱を果たすためにも勝利にこだわって戦いたいと思います。
――最後に、秋シーズンへの意気込みをお願いします!
嘉屋 自分が試合を勝たせられる存在感を出していきたいです!
鈴木 全身全霊をかけて、日々の練習から頑張ります。出し切りっす。ずっと出し切りたいです!
――ありがとうございました!
(取材・写真 田部井駿平、編集 安齋健)
OD両方の空中戦に注目です!
◆嘉屋光希(かや・みつき)(※写真左)
東京・早大学院高出身。文化構想学部4年。178センチ。77キロ。WR。試合前のルーティンは、レッドブルを補給すること。飲めば何でもできる気になるそうです!
◆鈴木丈也(すずき・じょうや)(※写真右)
東京・早大学院高出身。社会科学部4年。165センチ。72キロ。DB。試合前のルーティンは、ラーメン二郎を食べに行くこと。普段のリズムを崩さないように心がけているそうです!