第2回は早大キッカーの二本柱であるK/P鎌田凜太郎(法4=東京・早大学院)とK/P曽木聡(スポ4=東京・国学院久我山)が登場。アメフトにおいて、僅差のゲームになればなるほど重要度が増すキッキング。昨秋以上の活躍を期待されるお二人に、今シーズンの意気込みを伺った。
※この取材は8月23日に行われたものです。
「(BIG BEARSは)日本一を目指せる場所」
KC(キックオフカバー)でも安定感のあるキックをする曽木
――お互いの紹介をお願いします
曽木 鎌田は、学年が上がっていくにつれて大人になっている印象があります。例えば昨年だったら、甲子園ボウル直前でユニホームをもらえなかったり、自分より辛い状況に置かれるのが多かったです。それでも自分のバリューを出せる感じになっていて、そういった面で前より大人になっています。4年生としてそこらへんは、すごく頼りになるところです。あとは自分より論理的なところがあって、自分は感覚でやっているところが強くて。鎌田が論理的だからこそ、自分のことを言葉で客観的にしてくれて、自分のパフォーマンスの安定感にもつながっています。自分のその感覚じゃ伝えきれないところを、後輩たちにも伝えるところが良さだと思っているので、そういったところでも頼りになるなと思っています。
鎌田 自分でも感覚派と言っていましたが、頼れるところとしては、まず実力がしっかりあって、頼れる背中を後輩や同期の僕にも見せてくれるところです。同じように昨シーズンから試合に出始めて、しっかり結果も示しつつ、昨シーズンしっかりチームで戦い抜いたことで、チームからの信頼もありますし、僕と後輩からの信頼もあります。印象としては、しっかり結果を出して、引っ張ってくれるので、1番頼りになります。
――アメフトをどのような経緯で始められましたか
曽木 姉が元々BIG BEARSに所属していました。僕は高校まではサッカーをやっていましたが、受験を経て体力が落ちていて、ア式のランテストがきついので、正直受験後にそこに受かる自信がなくて…。ただ大学から競技を始めて、日本一を目指せる部も限られていて、アメフトがその特徴を持っていたので、そこでなら自分も日本一を目指せると思いました。真剣にやれるってところで候補に入り、Kというポジションがあるのも知っていたので、サッカーの経験も活かせるなという思いで入部しました。
鎌田 僕は高校からアメフト始めましたが、中学生まではサッカーをやっていました。高校から早大学院に入学して、サッカー部入るつもりでしたが、過去に日本一を4連覇していることを聞いて、勧誘の熱量もすごくて、1回伏見のグラウンド連れてかれて、フラッグフットボール大会を体験して、そこでアメフトの面白さを知りました。いい雰囲気だなというのと、それまでのサッカーでは日本一を意識してやったことがなかったので、本気で日本一を目指せる環境に身を置きたいと考えて、高校からアメフトを始めました。
――ポジションをK/Pにした理由はありますか
曽木 さっき言ったように、やるなら高校までの経験を活かして活躍したい思いがありました。これまでの経験から、自分のキック力にはすごく自信があったので、Kを1年生からDBと兼任してやらせていただいていました。3年の夏からKに専任しましたが、そこもやっぱり日本一のチームを目指しているので、日本一の選手が(各ポジションに)必要だなというところで、自分はそうなる自信があったので、結果K専任になりました。
鎌田 僕は高校からアメフトを始めて、その頃はWRとKを兼任でやっていました。Kを始めたきっかけは、本当サッカーやっていたってだけで、蹴らせてもらって、WRほどの熱量はなかったです。ちょっとやってみようかなぐらいでした。僕が高校生の頃に、今も佐藤敏基(平28社卒)さんというコーチが大学でコーチされていて、高校も同じグラウンドなので僕も教えていただいて、そこで敏基さんの存在を知って、スペシャリスト、Kのかっこよさに憧れを抱きました。敏基さんから「大学でやるならおいでよ」と言われたので、そこで大学でもやろうと思いました。僕は割と最初から敏基さんの影響でK専任を志望して、BIG BEARSにも入部しました。
――K/Pとして心がけていることはありますか
曽木 心がけていることは、頭をクリアにして、自分のやるべきことをやる感じですかね。風やスナップやゴールとか、色々な外的要因があると思いますが、そういったところはコントロールできないので、自分がコントロールできる部分に気を使って、そこだけは意識して、絶対コントロールしようと心がけています。
鎌田 僕は二つあります。まず1人の選手としてチームの中で考えていることは、僕は主にPとして出ていますが、いい意味でも悪い意味でも目立たない選手になろうと考えています。やはりパントは、チームが苦しい状況で陣地を挽回しないといけない状況なので、ボトムのパフォーマンスがよく見られがちで、ミスが目立つポジションです。その中で自分が最後の砦として踏ん張って、いつもと同じプレーを心がけて、安定した陣地挽回をすることで、良くも悪くも目立たないということを意識しています。もう一つは、曽木も言っていましたが、Pとしてはいろいろな外的要因があります。例えばすごい陣地の深いシチュエーションは、チームが本当にやばい場面なのでプレッシャーもかかると思いますが、普段東伏見のグラウンドで練習していること。自分の世界を持ってグラウンドに入ることで、そういった外見要因にも左右されずに、自分のパフォーマンスを発揮するために、伏見で蹴っていることを意識しながらやっています。
――K/Pとして技術的に工夫している点や難しい点はなんですか
曽木 一番大事にしているのは再現性です。どの場所から蹴っても、常に同じキックをしなければ意味はないし、常に同じキックをしようとすると正確性も出てきます。逆にそれを意識しないで練習してしまうと、何の積み重ねにもならないので、再現性を意識しています。その中で難しいなと思うのは、やっぱり身体的なコンディションが日によって全く同じというのは絶対にないと思っていて、そういった体の違いがある中で再現性を求めることはすごく難しいです。他の人に見てもらったり、ビデオを撮ったりして、客観的視点でいつもと同じように蹴るためにはどうすればいいかというところを考えています。
鎌田 曽木と同じところもあって、コンディションは常に自分を客観的に見ないといけません。そこはコンディションも考えつつ、コーチや曽木、後輩などのいろいろな人に自分のフォームを見てもらって、例えばコーチからあるアドバイスいただいたら、とりあえずそれを取り入れて、自分に合うか合わないかはもちろんあるので、合ったら取り入れるし、合わなかったら捨てる。その選択を繰り返しながら自分のスキルアップを測っています。難しいところは、スペシャリストは結果が求められるので、再現性を高めるためにはその方法にも注力しないといけないです。その目的と方法の二つを同時にやるのが難しいですね。例えば、結果が出ないと今の結果が出なかったのはなぜかということを反省すべきところはしっかり受け止める。しかし、とらわれすぎてしまうとその次のパフォーマンスに影響が出てしまい、目的と方法をよくも悪くも自分で客観的に見ることが難しいので、意識しながらやっています。
「甲子園で絶対蹴りたいという思いがある」
パントを蹴る鎌田
――昨年までの満足度や個人的な反省はありますか
曽木 7割ぐらいです。理由はシーズンを通して、大事な場面や勝負どころでしっかり仕事をできたのかなと思っていますが、シーズン半ばでちょっと怪我をしてしまい、一時期パフォーマンスが格段に落ちてしまいました。その中でもグラウンドで立たせてもらい、試合に出させてもらいましたが、そこでのパフォーマンスが落ち、FGのレンジが短くなったなどでチームに迷惑をかけてしまったところが、自分の中では心残りでした。シーズンを通してベストなコンディションで臨むことができなかったのは反省として、7割ぐらいの満足度です。
鎌田 僕は満足度で言うと3~4割ぐらいです。3年生の春からPとして試合に出させてもらい、少しずつ結果を残しながらでやっていましたが、秋シーズンは試合で良くも悪くも目立たない結果ながらチームの陣地挽回を担っていました。しかし、自分のコンディションやユニットとしてのコンセプトが変わるなどいろいろな理由があり、一番自分が出たかった甲子園では、試合に出ることはおろか、そのユニホームも貰えず、とても心残りでした。当時は本当に悔しかったですが、自分の置かれた環境下で何ができるかを考えた時に、曽木の試合当日のコンディションやそれを客観的に見てのアドバイスなどを最後はやり遂げました。自身として甲子園に立ってプレーできなかったのは心残りなので、逆にそれが今のモチベーションというか、昨年は4年生に連れていってもらいましたが、自分は試合出られなかったからこそ甲子園で絶対蹴りたいという思いがあるので、今のモチベーションになっています。
曽木 甲子園での話でいうと、前半最後の0対6のビハインドの場面でFGが回ってきて、決めたら後半に向けてすごく勢い乗っていけるなという場面でしっかり決め切って、3対6で折り返しました。決めた瞬間の周りの歓声がすごく印象的で、次も甲子園のそういった場面で活躍したいとか、チームを勝たせたいなと思っています。
――春季オープン戦ではお二人ではない選手が蹴られるシーンもありましたが、どのように見られていましたか
曽木 僕らがいなくなった後のK/Pの層がすごく薄くなってしまうことが懸念点です。一方で慶太郎(安藤慶太郎、社2=東京・早大学院)とかは、試合でしっかり結果を残していますし、来年に向けて層を厚くしていかなきゃいけないなと見ています。まだ十分なパフォーマンスはできていないと思いますし、そういった意味では自分たちの下級生育成がこれからの課題なのかなと。秋シーズンでもやっていかなきゃなと思っています。
鎌田 僕らも1年生の頃から、今オービックでプレーされている高坂コーチ(髙坂將太氏、令3創理卒)や先輩、敏基さんとからも教えていただいて、右も左も分からない状態からスペシャリストというK/Pという存在になりました。本当にすごく指導していただいて、そういったいい文化をやっぱり引き継いでいかないといけないなと考えています。後輩で蹴っている慶太郎やPとQBをやっている八木義仁(政経3=東京・早大学院)とかはやはり兼任で、どうしても専任の僕らほど時間を十分にほど割くことはできない中で、僕らは専任で何年間もいろいろな方から知見をいただいているので、どう次の世代に早稲田のスペシャリストの文化を引き継いでいくかというのは課題です。やはりスペシャリストってあまり注目されなくて、他の大学だと投げやりになっていたりしますが、それでも大事なユニットなので、ユニットとしてのいい文化を残すためにやれることを探している最中です。
――夏合宿で重点的に取り組んだ点を教えてください
曽木 合宿終わったら、2週間で試合というところで、自分のキックフォームの方向性を固めていかなきゃなと考えていました。合宿なので、二部練もあって、蹴る機会にはすごく恵まれていたので、そういったところではたくさん蹴って、フォームを安定させました。やっぱり蹴って回数重ねないと、いくらフィルムでレビューしても、体に染み付かないと言いますか、エラーが出てくる頻度も多くなってしまうので、そのエラーをどれだけなくせるかをある程度本数を蹴って、固めていこうと考えていました。
鎌田 僕も同じで、やはりシーズン中は常に結果も出し続けないといけないので、さらにフォームの改善もしないといけない状況のままシーズンに入ってしまうと、がっつりフォームを変えることはできません。僕らは合宿が最後の機会と言いますか、思いっきりチャレンジしてフォームを変えられるという中で、自分の自信になるようなものをずっと探していた合宿でしたね。 変えながらも、合宿のユニットで結果を出さないといけない中で、自分の自信につながる合宿でした。いい収穫もあったので、あとはそれをいかに秋シーズン、蹴る機会も増えたり、試合の中とでいろいろなコンディションがあると思いますが、そこで戦い抜くための下準備と言いますか、それはできたかなと思います。
――昨年と今年のチームを比較して感じることはありますか
曽木 昨年は亀井(亀井理陽氏、令5法卒)さんという貫録があって、実力も伴っている人が主将でいて、下級生の視点で見ていても安心感があるようなチームだったと思います。その一方で、今年はそういった貫録もあってタレント性もある人がやっぱり多くないのが、今年のチームの特徴なのかなと思っています。だからこそ、どうすればチームが良くなるかというところを全員で考えていることが、求められていますし、実際取り組んでいます。そこが今年のチームの特色かなと思っています。
鎌田 今年のチームの特徴としては、やはり昨年のチームに比べて圧倒的な実力のある人がほとんどいなくなってしまったので、オフェンスもディフェンスも苦しい状況に陥る回数が増えると僕は考えています。だからこそODをつなぐキッキングユニットの重要性が、昨年よりもすごくあると思っているので、逆にそれがモチベーションになっています。チームが本当に苦しい状況で、僕らがモメンタムをチームに残せるようなことをやりたいです。曽木も思っていると思いますし、苦しいからこそ僕らが頑張りたいです。
――キッカー全体での目標はありますか
曽木 自分が全体のことについて言うのも、ちょっと他の人がどう思うかわかりませんが、昨年はキックが敗因になっていなかったので、さっきも鎌田が言ったように良くも悪くも目立ちませんでした。 今年はそうじゃなくて、キックで勝たせる。僕らが入って、チームや試合の流れを変えていくことを、ユニット全体としても影響をチームに与えられたらいいなと思っています。
鎌田 そうですね。曽木も言ってくれた通り、キックのユニットとしては、やはり昨年よりもチームに影響を与えて、キックで勝てたよねというシーズンにしたいです。キックユニットの目標を達成するためには、僕らとしては日本一のチームにするためには、日本一のプレーヤーが絶対必要だと思うので、キックの得点ランキングだったら 曽木が1番になる必要がありますし、パントユニットとしても陣地挽回の数値的なランキングも1位になる必要があると思うので、そこを目指してやっていきます。
――最後に秋季リーグ戦での意気込みをお願いします
曽木 100パーセント決めるなど、そういった数字的な目標も持っていましたが、僕らが価値を示すべきはその試合ごとの状況で最高のパフォーマンスをすることです。例えその前で外したとしても、勝負どころでしっかり決め切る。そこが自分たちの価値だと思っているので、勝負どころでしっかり決め切れるような選手でいて、ODの選手が安心させたいです。自分が試合の最後に出てきて、1回のキックでチームの勝敗を分けてしまうこともあるポジションだと思っているので、そういった場面を安心して任せてもらえるような選手でいたいと思っています。
鎌田 意気込みとしては、チームが本当に苦しい状況でも自分がチームを救いたいです。そのためには、さっき良くも悪くも目立たないようにしたいと言いましたが、それはボトムというか最低ラインで、今年はラストシーズンなので、自分のキックとパントでチームをしっかり救って、いい影響を与えるようなところまでやりたいですね。目立っていきたいです。
――ありがとうございました!
(取材・編集 田部井駿平、写真 濱嶋彩加、田部井駿平)
キッキングからチームを支えるお二人の活躍に期待です!
◆鎌田凜太郎(かまた・りんたろう)(※写真左)
東京・早大学院高出身。法学部4年。176センチ。76キロ。K/P。昨秋から主にPとして出場機会を増やし、安定感のあるパントキックが持ち味の選手。試合前のルーティンは、Mr.Childrenの曲を聴いて、心を整えるそうです!
◆曽木聡(そぎ・さとし)(※写真右)
東京・国学院久我山高出身。スポーツ科学部4年。175センチ。80キロ。K/P。昨季からK/P専任となり、昨年の関東TOP8のスコアリングキックで総得点1位。甲子園ボウルでもFGを決めた。試合前のルーティンは、水回りの掃除で集中力を高めるそうです!