惜しくも甲子園で敗れた早大BIG BEARS。多くの4年生がチームを引退した後もチームを飛び出し別の舞台で戦った選手がいた。DB大串健人(スポ4=東京・佼成学園)とDL山田琳太郎(商4=神奈川・川和)だ。大串はフラボウルでアメリカの大学オールスターと、山田はドリームボウルで日本選抜のトップ選手たちとプレー。さらに上のステージで切磋琢磨した2人が体感したことを伺った。
※この取材は1月31日に行われたものです。
フラボウルは「自分も出たいなと思っていた」(大串)
笑顔も見せるなど和やかな雰囲気の山田(左)と大串(右)
――最初にお互いの他己紹介をお願いします
山田 大串くんは学生一のCBです。今年のオール関東にも選ばれた実力ある選手です。
大串 琳太郎は学生だけじゃなく、日本が誇るフットボール界の宝だと思います。こう見えて意外とおちゃめな一面があったり、情熱的だったりするので可愛らしいです(笑)。
――まず大串選手に質問です。いつ頃アメフトを始め、なぜ早稲田大学の米式蹴球部に入部することになったか教えてください
大串 高校から佼成学園でアメフトを始めました。当時から早稲田は甲子園ボウルによく出ていたので、何となくですが早稲田でフットボールをしたいという思いは持っていました。高校2年生の時に早稲田大学を受験しようと決めて、部活も他の選手たちより早めに引退して勉強に切り替えました。それが実って、一般入試でスポーツ科学部に合格できました。
――いつ頃から試合に出るようになりましたか
大串 試合にしっかり出られるようになったのは3年生からです。それまではキックチームなどで多少出させてもらっていました。
――お二人ともポジションがディフェンスの選手ですが、今年のディフェンスの総括をお願いします
山田 昨年のディフェンスはたくさんのアサイメントを使い分けていたので、個人の能力がすごく求められました。なので個人の実力にかなりフォーカスされたのかなと思います。
大串 そうですね。琳太郎の言う通りアサイメントがすごく複雑でした。春の段階ではアサイメントがしっかり固まらなかったので不安も多かったです。僕自身も夏合宿にコロナで参加できなかったので焦りも感じました。それでも秋シーズンが進むにつれて、みんなとミーティングを重ねながら改良して、チームの結束を深められたかなと思います。
――どのような経緯でそれぞれフラボウル、ドリームボウルに出ることになったか教えてください
大串 自分はフラボウルに3年生から出場したいと思っていましたが、その時はケガで入院していて申し込めなかったので、今年初めて申し込みました。リーグ戦と甲子園ボウルのパフォーマンスを評価していただき、選出していただきました。
山田 ドリームボウルでは1次選考は監督の推薦で申し込んでいただいて、それが通ったので2次選考で3日間の練習を見て評価していただきました。
――選出が決まった時の気持ちを教えてください
大串 純粋にすごくうれしかったです。僕が1年生の時に当時の早稲田のスーパースターだったブレナン翼(令2国教卒=現パナソニックインパルス)さんが選ばれたのを見て、自分も出たいなと思っていたのが現実になってすごくうれしかったです。
山田 自分は3日間の選考を兼ねた練習が始まる前は選ばれないかなと思っていたので、練習を通して自分にも通用する部分があると思って自信につながりました。できれば練習に一緒に参加した佐久間(WR佐久間優毅、政経4=東京・早実)と一緒に選ばれたかったですが、自分だけでも選ばれたのは良かったかなと思います。
全日本で「通用する部分もあった」(山田)
全日本選抜のユニホームを身にまとう山田
――大串さんはWR糸川幹人副将(関学大)、山田さんはDLトゥロターショーン礼選手(関学大)と、甲子園ボウルで敗れた関学大の選手とも練習などを共にしたと思いますが、戦ったときとなにか違う印象はありましたか
大串 元々関学はお堅い環境でやっている印象がありましたが、糸川くんはノリが良くて僕が会った中では学生一の陽キャみたいな感じでした。
山田 (甲子園ボウルの)試合ではお互いのポジションが同じDLなので直接当たることはありませんでしたが、一緒に練習して彼のファンダメンタルや身体能力の高さを実感しました。
――山田選手は練習で社会人選手のOLと対戦する機会もあったと思いますがいかがでしたか
山田 自分の強みは恵まれた体格とそれに反したスピードだと思うので(笑)、それらを生かしたブルラッシュであったり、それをおとりにしたテクニックを使い勝負して、意外と通用する部分もあって良かったと思います。
――大串選手は外国人選手と試合で実際に対戦してみてすごいと感じたこと、逆にここは通用したなと思ったところはありましたか
大串 まず驚いたのがフィジカルの差で、平均が185センチぐらいで、ピッツバーグの選手には190センチ以上あるWRもいました。四肢も長いので間合いも普段と違い、感覚の修正が必要でした。その中でもファンダメンタルのステップやクイックネスの部分は通用したかなと思います。
――特にすごいなと思った選手はいましたか
山田 2人いるんですけど、同じDLの清家(清家拓也、オービックシーガルズ)さんと梶原(梶原誠人、パナソニックインパルス)さんという方です。清家さんはフィジカルがすごくて、見たことのない体の厚さが印象に残っています。梶原さんは関学大の出身なので、ファンダメンタルがすごくしっかりしていて、テクニックもありすごかったです。
大串 自分はまず同じCBでモンタナ大学のジャスティン・フォード選手です。試合でもファンブルフォースをしたり、激しいタックルを決めたりしていました。もう1人はルームメイトだったケンドリック・ダンカン(ルイビル大学)選手です。彼はSFの選手なのに身長が190センチ、体重が100キロぐらいあり、規格外の選手だなという印象を受けました。
――大串選手は本場NFLの試合も観戦したと聞きましたがいかがでしたか
大串 ジャガーズ対チャージャーズのプレーオフを見ました。27点差を逆転した試合でNFLでも歴代3番目ぐらいの逆転劇だったそうで、ジャガーズのホームだったのもあり会場の熱狂がすごかったです・夢のような時間でした。
――今回の試合で一番学んだことはそれぞれ何でしたか
大串 中途半端に当たりにいっても通用しないので、一つ一つのステップに全力を注いでこだわらないとやれない環境だなと思いました。普段が集中していないわけではないですが(笑)、全てを出し尽くしてプレーしました。
山田 今回の代表では新たなテクニックを特別教わるとかはなかったですけど、トップ選手のプロフェッショナルな意識を感じました。1プレーの重みが学生とは違い、一回のミスで評価がしっかり下がるのに驚きました。
大串 今の話を聞いていて思い出したので付け足していいですか?
――――もちろんです
大串 フラボウルはNFLのスカウトもかなり集まっているので、注目度が上がっていて、本気でNFL選手になろうと夢見る選手たちの本気度が見えました。練習のマンツーマンでも日本だと順番で誰が行くかを決めていますが、強いやつとやりたいやつがどんどん入っていくみたいな感じで、順番は無視して俺だ俺だの精神だったのでそこにはカルチャーショックを受けました。
フラボウルに「チャレンジしてほしい」(大串)
現地でユニホーム姿を記念撮影する大串
――フラボウルでは周りに海外の方しかいなかったと思いますが、コミュニケーションに不安はありませんでしたか
大串 最初はノリで行けるかなと思っていましたが、さすがにリスニングやスピーキングはしばらく苦労しました。2日目ぐらいまではミーティングでも聞き取れたことを少しメモするぐらいしかできませんでしたが、3日目以降は独特な言い回しにも慣れてきて、うまくメモや通訳の機械を生かしながらコミュニケーションを取れるようになりました。
――普段のチームとではミーティングなども違ったと思いますが、なにか発見などありましたか
大串 ミーティングへの姿勢が日本とは違いましたね。わからないことがあると、「ヘイ! コーチ!」と言ってわからないことをつぶしていく作業がありました。コーチのパッションもすごくて、コーチと選手が対等な関係に感じました。選手が遠慮して話さないみたいなことはありませんでしたね。
山田 学生チームのミーティングでは新しいアサイメントを落とすときなどはその場でみんなに一斉にやりますが、今回の日本代表では時間がないのもあって事前に資料を配布してミーティングでは疑問点だけ聞くというかたちで効率の良さが徹底されていました。
――これからに生かしていきたいことはありましたか
大串 自分は社会人でもアメフトを続けるんですけど、今回でフィジカルやフットボールへの姿勢などの日本のスタンダードでは通用しなかった部分を知れたので、こだわっていきたいと思います。
山田 自分はアメフトを続けるか決めていないんですけど、BIG BEARSに還元したいことで考えると、フィジカルや技術はもちろん、日本のトップ選手の意識の高さをチームのスタンダードにしていきたいです。
――今年のチームで期待している後輩はいますか
大串 DBから言うとDB主任をやるであろう丈也(DB鈴木丈也、社3=東京・早大学院)にポジションをうまくまとめてほしいです。2年生だと塚田(DB塚田隼也、商2=東京・早大学院)くん、木村大地(DB、法2=東京・早大学院)くん、鈴木春貴(DB、基理2=神奈川・鎌倉学園)くんは来年からもディフェンスを支える子たちだと思うので、どんどんリーダーシップを発揮して活躍してほしいです。
山田 DLは1年生の柳嶋(DL柳嶋将歩、政経1=東京・早大学院)くんと伊藤(DL伊藤貫太郎、商1=東京・成蹊)くんです。今年のDLは上級生が少なくなり、その分下級生の成長が必要になるので、挙げさせてもらった2人にはすごく期待しています。
――今後の意気込みをお願いします
大串 フラボウルに関しては応募は誰でもできるので、行きたいと思っている人は絶対行ってほしいです。海外に挑戦できる機会は少ないと思うので、チャンスを逃さずチャレンジしてほしいです。
山田 BIG BEARSはチームとして日本一を掲げてますが、それだけじゃなくて選手一人一人が日本一になることを目標にしてほしいです。
――今後の意気込みをお願いします
大串 来年からパナソニックインパルスでプレーするので、1年目から試合に出てライスボウルで活躍したいです! その気持ちは誰にも譲らずにガンガンやっていきたいと思います。
山田 高い目標に向かって挑戦していきたいです!
――ありがとうございました!
(取材・編集 田部井駿平、荒井結月 写真 荒井結月、五十嵐香音、早大米式蹴球部提供)
大学での4年間を表す言葉を色紙に書いていただきました!
◆大串健人(おおぐし・けんと)※写真
2000(平12)年4月25日生まれ。東京・佼成学園高出身。スポーツ科学部4年。DB(ディフェンスバック)。175センチ。76キロ。最近はポケモンにハマっている大串選手。バイオレットを購入し、プレーしているそうです。
◆山田琳太郎 (やまだ・りんたろう)
2001(平13年)4月1日生まれ。神奈川・川和高出身。商学部4年。DL(ディフェンスライン)。196センチ。120キロ。最近ハマっているものはラーメン二郎の山田選手。同期や後輩とよく食べに行くそうです。