【連載】甲子園ボウル直前特集【第6回】髙岡勝

米式蹴球

 第6回は髙岡勝監督(平4人卒=静岡聖光学院卒)の登場!監督として3度目の甲子園ボウルに挑む髙岡監督に、秋のリーグ戦の振り返りや甲子園ボウルへの特別な思いを熱く語っていただきました!

選手たちの努力が誇らしい

――関東大学秋季リーグ戦(以下リーグ戦)優勝が決まった時の率直なお気持ちは

髙岡 コロナの3年間があった中で、またここに戻ってこられたというのは嬉しく思っています。学生やコーチと一緒に頑張ってこられたのは嬉しいことですし、彼らの努力が誇らしいです。

――2017年のシーズンに監督就任しましたが、その時思い描いていたプランというのは

髙岡 一期が2年という中で結果を出していかないといけないということもありますし、長いこと監督をやろうというプランもなかったので、毎年4年生と同じ気持ちで勝負だと思ってやってきました。そのため、就任時に大きなプランを描いていたというわけではなく、毎年1年生から4年生のメンバーでどのようにして勝っていくかということの積み重ねです。

――監督就任から3度目の甲子園ボウル出場となりますが、過去2度の甲子園ボウルを振り返っていただきます。就任2年目の甲子園ボウルを振り返っていかがですか

髙岡 コーチとして甲子園ボウルに出場したことはありましたが、この斉川(尚之、平31スポ卒)の時が監督としては初めての甲子園ボウルでした。その時から現在ヘッドコーチをやられている坂本コーチも入られて、無我夢中で突っ走った1年間でした。

――その翌年の甲子園ボウルについては

髙岡 斉川の代から池田(直人、令2法卒)になった時に、甲子園で関西と何が違ったのかというのを考えました。一番感じたことは、リアクションの速さや第4Q(クオーター)を走り切れるだけの体力など、普段のリーグ戦とは違うフットボールのフィジカル面の違いだったので、そこを強化した1年間でした。結果として、体力的な部分は追いついていたものの、関学の大村監督がよくおっしゃっている「モメンタムなんか存在しない」「1プレー1プレーを積み重ねていくだけ」という、すぐにできることではないような関学さんの負けない文化やアイデンティティーを感じさせられた甲子園ボウルでした。

――普段のリーグ戦は1Qが12分なのに対して甲子園ボウルは1Qが15分ですが、その難しさというのはありますか、

髙岡 池田の代のリーグ戦で法大に逆転して勝利した試合があり、我々の後半の勝ちパターンという時間の制限で考えると、甲子園ボウルもブレナン(翼、令2国教卒)がTDで逆転して通常であれば相手もそれに合わせてプレーしてくるので早稲田の勝ちパターンだったのですが、それ以上に12分長かったということで(※結果的に逆転を許して敗れた)、全体の組み立て方という点で戦い方の違いがありました。

3回目の甲子園、強い思い

――早大のようなスポーツ推薦の選手がいない、いわば“雑草軍団”が日本一になったら、学生フットボール界がより盛り上がっていくのではないかと思いますが、その点はいかがですか

髙岡 今回は私が監督就任してから3回目の甲子園ボウルですが、チャレンジという点で特に強い思いがあります。過去2回は早大学院のクリスマスボウル(全国高校アメリカンフットボール選手権大会決勝戦)に出場したメンバーが主力となっていた時で、スポーツ推薦がいなくても付属校から来るメンバーがスポーツ推薦に近いようなメンバーでした。今年はスターティングメンバーを見ていただいても分かるように、早実野球部出身の選手や他の学校で全く違う競技をやっていた選手がいるチームなので、そういったチームでもみんなで目標を達成するために努力をすれば頂点に立てるという明るい材料を与えられればなと思っていましたので、そういった点で今回のリーグ戦優勝というのは私の中で思いがひとしおでした。

――監督はご自身も早大BIG BEARSで主将をされていましたが、当時を振り返っていかがですか

髙岡 自分で言うのも何ですが、僕は本当にダメな主将だったので(笑)。自分の過去を反面教師として、どういうチームが理想なのかというのを考えてきました。私が大学を卒業した後、(フットボールの)社会人チームだったり他の競技で世界にチャレンジしたりする中で、いろいろな方との出会いがあり、チームってどれだけみんなを同じ方向に向かせられかだなということを考えさせられて今に至ります。

――3年生以下の選手は甲子園ボウル初出場となりますが、何を感じてほしいですか

髙岡 甲子園の舞台というのはお客さんもすごいですし、それまでにもマスコミの方が取材に来てくださったり、いろいろな方から応援をいただいたりする一方で、「早稲田なんて」という声もあったりして、非常に注目が集まる場です。そこにお客さんとしてではなくてチームの一員だと感じることや、普段戦わない秋の関西のチームはこんな感じなんだというのを目の前で見ること、試合に出るメンバーはスピードやアグレッシブさというのをしっかり体験した上で、毎年この場に来るんだ、毎年この場で勝つんだという思いを共有してもらいたいと思います。

――亀井理陽主将(法4=東京・早実)が主将に就任してからの変化や、現在のチームに与えている影響についてお伺いしたいです

髙岡 亀井くんはまじめというか、私と違って喜怒哀楽をあまり出さずにメンタルが常に安定していて、私以上に大人だなと思います(笑)。春シーズンで関西の2チームに負けて春の課題が見えてきたところで、キャプテンとして全体を見させるために春の日大戦ではユニフォームを脱がせてベンチを見てみろという話をしました。一丸となって戦っていく上で、全体を見られるように成長したと思います。その結果として今回リーグ戦でOLの選手ではほぼ聞いたことがないMVPを取ったということで、変なオーラを出すカリスマキャプテンでは無いのですが、みんなが納得するリーダーに成長したなと思います。

――甲子園ボウルで引退となる4年生はどのような代でしたか

髙岡 特徴のないというか、大人しいというか、激しく無いというか、なんとなくまとまっているというか、いい人の集まりというか(笑)。激しく言い争うとかいがみ合うということが必ずしも4年生ではないんだなというような代でしたが、それでもみんなの思いがそれぞれにあった代でした。改めて振り返ってみると、今年は副将がリーダーとして存在した代だなと思いますね。

キーマンとなる選手を教えてください!

――関学に勝つための早大の戦い方と、キーマンとなる選手を教えてください!

髙岡 とにかく関学さんは強いので、コーチや学生とともに知恵を振り絞って叡智を集結させて、持てる限りの力をどう使っていくかですね。キーマンとするならば、オフェンスは3人のRB(萩原、花宮、安村)がどれだけランプレーを展開できるか、ディフェンスはDL山田琳太郎(商4=神奈川・川和)のサイズを生かした動きでどれだけ(相手QBの)鎌田くんの動きを封じられるかということかなと思います。

――理想の監督像というのはありますか

髙岡 人から言われることというのは絶対に覚えないし、自分が約束したことをやるというのが大事だと思っています。うちのチームの文化として、自分の意志でこうします、というのを手助けできる監督というか『仲間』なのかなと思います。

――改めて、甲子園ボウルへの意気込みをお願いします

髙岡 結果は相手のことがあってなのでどうなるのか分からないですが、春からこれをやるんだということをやり続けてきました。自分たちがやろうと思っていることや決めたことをどれだけやれるかというのを見ていただける場が甲子園ボウルだと思っています。甲子園までの練習も含めてやり切ったと思えるようにしてほしいですし、それが結果を含めたパフォーマンスに出てくると思うので、みんなが頑張っている姿を観客の皆さんに見てもらいたいと思います!

(取材・編集 安齋健 写真 安齋健)

甲子園ボウルでの意気込みを書いていただきました!

◆髙岡勝(たかおか・まさる)

静岡・聖光学院高出身。1992(平4)年人間科学部卒。