【連載】甲子園ボウル直前特集【第3回】OL笹隈弘起副将×DL金子智哉副将×AT江川祐希副将

米式蹴球

 第3回は主将を支える役割を担うOL笹隈弘起副将(スポ4=東京・早大学院)、DL金子智哉副将(教4=大阪・豊中)、AT江川祐希副将(スポ4=埼玉・越谷北)の登場。甲子園ボウル制覇を狙う現在のチームの雰囲気や甲子園ボウルに抱く思いについて熱く語っていただきました。

結実

リーグ戦を振り返る笹隈

――まず関東大学秋季リーグ戦(以下リーグ戦)優勝から3日経ちましたが、現在の率直な気持ちを聞かせてください

笹隈 率直な気持ちはすごく嬉しくて、自分自身大きい大会で優勝したことがないスポーツ人生だったので、一つの節目である関東優勝というのを成し遂げられたのはすごく嬉しかったです。でも、その先に甲子園(甲子園ボウル)があるので気を引き締めなければいけないな、と今は考えています。

金子 僕もこのために二浪して、四年間やってきたので素直にすごくうれしかったです。

江川 優勝が決まって嬉しい思いはもちろんあって自分自身この代が始まってからやってきたことがきちんと実を結んでいると実感しました。でも昨日から再開した練習のハドルでもいったのですが、やっと日本一を目指すための甲子園への道のスタートラインに立ったなという嬉しい思いの一方で、もう一回気を引き締めてやらなければいけないなという思いが今は強いです。

――副将の立場からみて現在のチームの雰囲気はいかがですか

笹隈 もともと法大戦前はやはり負けたら引退という緊張感がある中で練習できていて、特にユニットの練習とかでもすごくコミュニケーションがとれていて、普段は発言しない選手が発言していたりして、そういった面ではすごく気が引き締まるような練習ではあったと思います。でもこれから心配なのは、自分たちがやれるという自信を持つことはとてもいいことだと思うのですが、それを持ちすぎることです。僕たちはまだ1回も日本一になったことがないので、そこはあまり調子にのらずにしっかりとストイックに愚直にやっていく。それが今のチームに必要なことだと思っています。

――選手のお二人に、リーグ戦を無敗で突破できたことはどのように感じているか伺いたいです

笹隈 僕は全勝で来れたことは結果的にすごくよかったことだと思っていて、どの試合でも気持ちが切れなかったということをすごく感じています。チーム的に考えても全勝で来れたことはすごく大きいことだなと思います。

金子 同じく全勝で来れたことは結果としてすごくよかったとは思うのですが、内容は別にいいものではなかったので、出たメンツも変わってくるとは思いますが各々が1試合1試合を振り返って、甲子園を集大成として課題をもって臨んでほしいと思います。勝ったこと自体は良かったけど内容はまた別かなと思います。

――リーグ戦のなかで選手のお二人から見てターニングポイントとなった試合はありますか。

笹隈 明大に勝ってからの準備は本当にみんなが頑張ってくれたと思っていて、明大に勝たなければああいった高い意識での練習はできなかったのではないかと思います。だから明大戦がターニングポイントかなと思います。

金子 対戦校の勝敗の関係で僕たちも中大戦を終えた段階で法大に勝てば関東優勝が決まるという状況だったので、ディフェンス幹部もオフェンス幹部と共に意識の中では常に法大というのがありました。去年やられたのが法大というのもありますし、中大にタイブレークの末に勝った後の法大戦に向けての準備というのがターニングポイントだったのではないかと思います。

――次は江川さんにお聞きします。スタッフの中でもリーグ戦を通して一つになっていったという感覚はありましたか

江川 スタッフは試合でやることは変わらないのですが、シーズンを通して各ユニットとも連携がうまく取れるようになっていったというか、お互いの気遣いや思いやりという部分で先回りしてお互いに補完しあうことができるようになっていきました。私がユニットの中で感じているのは、私たちのATというユニットは安全管理含め、選手のけがの管理などをしているので、そういった部分においてのお互いの責任感というのはシーズンが深まっていくにつれて大きくなっているのかなと思います。

――(選手)リーグ戦を通してオフェンス、ディフェンスともに精度が高まってきたなという印象なのですが、選手のお二人から見て、今のオフェンス、ディフェンスの調子はいかがですか

笹隈 オフェンスとしては、QBの國元(孝凱、社3=東京・早大学院)をどう気持ちよく投げさせるかということは本当に注力してやっています。多少プレッシャーがかかってしまうと國元自身が思い切り投げられないというポイントがリーグ戦で散見されていたので、その点でどうパスプロをもたせるかということにすごく注力してやっていました。その中で國元が思い切って投げられるかというのが甲子園でも勝つポイントだと思うので、そこは継続してやっていきたいと思っています。

金子 ディフェンスはすごく精度にこだわっていて、見てもらえればわかると思いますが、DLの枚数だとかLBの枚数だとかそういった面ではすごく多種多様なアサインメントを使用しています。その中でそれを精度の低い状態でやっても何も意味がないので、今までの早稲田にはないくらい細かいところにこだわってミーティングを積み重ねています。アサインメントひとつひとつの精度が今のディフェンスでこだわっているところです。

頼れる主将

亀井主将の存在感について語る江川

――話が少し変わりますが、亀井理陽主将(法4=東京・早実)がリーグ戦のMVPに選ばれたことについて、主将を支えてきたお三方はこの結果をどのように感じていますか

笹隈 やはり僕自身は同じポジションということもあってより亀井には強い思いがあって、亀井が努力していることはよく知っていたのでリーグ戦でMVPとったときは自分のことのようにうれしかったです。甲子園ではチャック・ミルズ杯とかそういったものを主将の亀井にはとってほしいので絶対に日本一にならないといけないなと考えています。

金子 亀井がMVPに選ばれたのは当然なのかなという風に思っていて、対峙していて亀井以上のOLには当たったことがないくらい、亀井が対面にいるだけで全く緊張感が変わってきます。主将としてはもちろんですし、選手としても超一流なので(亀井の)MVPは僕自身もうれしかったですし、対峙する身としても当然なのかなという納得感があります。

江川 ATなので練習前のグラウンドに早く来ることが多いのですが、亀井はいつも一番というくらいに早く来ていてしっかり準備して練習に取り組んでいるなというイメージがあります。練習中グラウンドを見ていていつも思うのですが、チームとしてやらなくてはいけないことを、多くは語らないけれど一番身をもってやっているなと思っているのでMVPというのはチームにとって絶対に納得のいくものだと思いますし、実際に嬉しかったです。

――亀井主将がチームに何をもたらしているのか、どんな主将になっていったのかを聞きたいです

笹隈 人としてすごく優しくて、思いやりを持っているのですが、僕は日本一を目指すチームには思いやりだけではよくないと思っていて、でも亀井は思いやりだけでなく厳しいところはしっかり言うということができると思います。オンオフの切り替えもそうですし、日本一を真剣に目指している、そんな人だと思います。

金子 今年のチームは一番モラルについて主将が言っている代なのではないかと思っています。試合前のハドルでもいつもモラルについて言及していますし、今まで主将はプレーで引っ張るとか威厳を見せるみたいなところがあったのですが、我々副将がこだわらないといけない部分も主将が一番体現しているというか、全ての選手の見本となるような選手だと思っています。

江川 さっき言った練習中の存在感に加えて、私がスタッフとして思うのは、よく亀井がインタビューでも言っている『一丸』というスローガンを掲げたうえで、スタッフのことも含めて『一丸』と言っているというところです。池田さん(直人、令2法卒)の時も同じような感じだった気はするのですが、ここ二,三年と比べてそういったところは今までの主将とちょっと違うなと思っています。そういう意味では試合の後半が始まる前のハドルでも亀井が仲間を信じようと言っていたのですが、そういったところからも『一丸』ということを大切にしているのが伝わってくるので、選手だけでなくスタッフをもこのBIG BEARSで勝ちたいという思いに導いてくれる、そんな主将だと思っています。

――チームを率いている髙岡監督について、これまでに出会った他の指導者との違いや何か感じるところがあれば教えていただきたいです

笹隈 髙岡監督は練習終わりにOLのベンチの近くにいらっしゃることが多いのですが、選手と監督の距離が近いと思います。そういった面で気軽に話すこともできますし、髙岡監督の方からおちゃらけた話も振ってくださるのでとてもやりやすいです。

金子 今まで自分が経験してきた監督とは大きく違います。「これはどうなんだ」、「これはどうするんだ」、と言われることはあっても、「こうしろ」と言われたことはなくて、自分たちで考えて行動しなさいという指摘や指導をして下さります。僕たち自身『一丸』というスローガンを掲げている中で選手がどう考えて動くかというところにすごく注力してくださっていて、近い距離で話させていただいていますし、監督を日本一にするというのも自分の中では大きな目標です。

江川 笹隈、金子の話とも被るのですが、すごく話がしやすいです。普段私は気軽に監督と話す方なのですが、なんでも相談してチームについて一緒に考えられる存在です。金子も言っていたように、一回考えさせてその考えに対して選手だけでなくスタッフにも信頼を置いて下さっていると感じます。私の場合、江川さんがそう思うならそれでいいよとかそういう風に言って下さることもあって、監督も含めて同じチームメイトと思えるくらい同じように考えて下さっています。

――三年前の甲子園ボウルではお三方は何をされていましたか。また敗北から何か感じたことはありましたか

笹隈 僕自身は未経験で入ったので、一年生の甲子園ボウルというのは先輩たちに連れてきてもらってサイドラインを固めているような立場でした。僕自身野球をやっていたということもあって甲子園に思い入れがあったので、その場に立てて嬉しいという思いがまずありました。でもグラウンドに立った時にやはり自分の手でグラウンドに立つ権利を獲得してもう一度戻ってきたいと強く思いました。

金子 一年生の時は仕事人をしていて。肩の手術をした後だったので一年生では一度もアメフトはしていないのですが、甲子園ボウルではサイドラインで立ってみていました。負けた時は一年生だったし、部活の中で何かしたわけでもなかったので、俯瞰的に見た時にこの人たちで負けるのかと思いました。自分がアメフトに詳しくなっていく中でもあの試合を見ると、関学大の精度の高さというのはびっくりするものがあったので、それを倒すために四年間やってきました。三年前の敗戦はもちろん悔しかったのですが、それと同じくらい驚きがありました。サイドラインから見ていて気づくことがたくさんありました。

江川 三年前の甲子園ボウルはATとしてスタッフとして前日入りして、当日も自分の目の前の仕事、ベンチワークとか設置とか撤収とかだったと思うのですが、それをこなすのに精一杯という状態で甲子園は過ごしていたと思います。試合後に私は撤収していて一人で負けた後の誰もいない甲子園をみて、ここでBIG BEARSが勝ちたいなと思ったのが自分の中ですごく印象に残っていて。そこでやっとBIG BEARSというチームの一員になったというか、自覚が芽生えた気がします。

「地元が関西だからこそ」(金子)

二浪を経験した金子は打倒関学の意気込みも人一倍

――金子選手にお聞きしたいのですが、大阪のご出身ということで、生まれ育った関西の土地で関西の大学を相手にするということに対して何か特別な気持ちはありますか

金子 僕が二浪した理由も正直そこにあって、関西の大学に行くという選択肢もあったのですが、日本一を経験してない、ガリ勉が多くてスポーツ推薦がない、そういったチームで日本一を目指したいという思いが強くて二浪しました。だからこそ関学大を倒すためにこの六年間やってきたという自負があります。その中ではるばる大阪から東京に来て、一年生の時は甲子園に行くも勝てず、四年生のとき甲子園に行くというのは僕が高校からやってきたのを含めると九年分の思いがあって、それは人一倍強いです。地元は関西ですけど、地元が関西だからこそ、関学大を倒す意気込みも人一倍あると思います。

――甲子園ボウルについて、ご自身やチームのここに注目してほしいというポイントがあれば教えてください

笹隈 オフェンスとしてはRB(ランニングバック)三人のワンプレーに注目してほしくて。僕はOLをやっているので、ランを出してなんぼという世界で生きています。オフェンスとして関東で1位の成績だったと思うのですが、それを引き下げて関西でもランをバンバン出して日本一になりたいと思います。

金子 選手を挙げると山田(琳太郎、商4=神奈川・川和)とかビッグプレーヤーがいると思うのですが、ディフェンスとして注目してほしいのはさっきも言ったアサインメントの精度です。ひとつひとつにこだわってやっているので、精度がすごく高いと言われている関学大に対して圧倒するところを見てほしいと思います

江川 個人を挙げたら山田だったり、RBの三人だったりいると思うのですが、このチームで戦っていく中でいろんな選手がいて確実にこの人というのはないというか、どの選手もいろんな場面で光っている部分があるので。私はスタッフなので全体を見て、いろんな人に視線を向けてほしいです。いろんな人にその人の努力があるので、注目選手だけでなく、そういう部分も見てもらえたらなと思っています。

――最後に四年間の集大成として臨む甲子園ボウルへの意気込みをお願いします

笹隈 僕自身スポーツを本気でやるのはこれが最後だと思っています。今まで最後は泣いてきたスポーツ人生だったので、最後の集大成だからこそ必ず日本一という大きなタイトルを獲って、満足した形でスポーツ人生を終えられるように、これからの期間死ぬ気でやっていこうかなと思っています。

金子 試合当日まで、自分が経験してきた9年間の中で一番ハードな練習をして悔いのないように必ず勝って終わりたいと思っています。

江川 絶対に勝って終わるのはもちろんで、その上でこうやって取材してくれている方々や、この前のハマスタ(横浜スタジアム)でも思ったのですが、BIG BEARSを応援してくださっている方はチームメイト以外にもすごくたくさんいるので勝ってそういう人たちとも一緒に喜びを味わいたいなと思います。

――ありがとうございました!

(取材 安齋健、田部井駿平 編集 梶谷里桜)

甲子園ボウルに向けた意気込みを書いていただきました!

◆笹隈弘起(ささくま・ひろき)※写真左

東京・早大学院高出身。スポーツ科学部4年。OL(オフェンスライン)。175センチ。103キロ。

◆金子智哉(かねこ・ともや)※写真中央

大阪・豊中高出身。教育学部4年。DL(ディフェンスライン)。179センチ。99キロ。

◆江川祐希(えがわ・ゆうき)※写真右

埼玉・越谷北高出身。スポーツ科学部4年。AT(アスレティックトレーナー)。