【連載】甲子園ボウル直前特集【第2回】QB國元孝凱×QB石原勇志

米式蹴球

 第2回はチームの司令塔を務めるQB國元孝凱(社3=東京・早大学院)、QB石原勇志(スポ4=東京・足立学園)の二人が登場。今季、リーグナンバーワンのオフェンス陣を率いたお二方にお互いの関係性や甲子園ボウルへの思いについてお伺いしました!

高校時代から意識していた関係

秋シーズンを振り返るQB國元

――まずは、簡単に互いの他己紹介をお願いします

石原 自分は高校フットボール出身なのでそのときから(國元を)知っていて、正統派早大学院QBというのが第一印象です。めちゃくちゃパスがうまくて自分には無いものをもっている選手で、後ろで見ていても「うわ、うまっ」っていうのが多いイメージです。試合でも勝負強い印象なので、すごく頼れるQBという感じですね。

國元 自分は自分が高校一年生のときに勇志さんのせいで負けて、二年のときも勇志さんと花宮(圭一郎、文構3=東京・足立学園)に破壊され、「石原、まじかよ…」みたいな(笑)。そしたら早稲田に入るらしくて、自分が三年生のときに足立の石原がグランドにいて、「おお…」とか「怖い人なんだろうな」とか思っていったら、びっくりするくらい優しく面白い人でした。高校の印象だったら絶対ガツガツしているんだろうなって感じだったんですけど、今はこうして一緒に出られて二人とも自分の得意なところを生かして協力して勝っているというのは、高校の頃から考えると感慨深いものがあります。プレーの面では自分が走れない分、勇志さんのランでどうにかしてもらうというか。普通だったら誰かが(フィールドに)出て自分は(外に)出るってなったら、「自分を出させろよ…」ってなると思うんですけど、自分は「あ、勇志さん出た。すまんわ…」みたいな(笑)。それくらい信用していますし、自分が少し調子が悪いときに一回外に出て冷静になるチャンスをくれるので、非常にありがたい存在です。頼りにしていますね。

――関東リーグ優勝ということで、率直な気持ちを聞かせてください

國元 去年も一昨年も勝てず、自分は高校入学時から柴崎さん(哲平、令2政経卒)とかが甲子園に出ているのを見ていて、強い早稲田を知っていました。高校も自分が早大学院に入ったときは5年連続とかでクリスマスボウル(全国高校アメリカンフットボール選手権決勝戦)に出ている中、自分が入った瞬間に弱くなるみたいな感じで。その後の大学も自分が入った瞬間に甲子園ボウルに出られなくなって、自分たちでもっていくしかないなと思っていました。そんな中で、今年はしっかり自分たちが中心となって甲子園ボウルへのチャンスをつかんだので、そこは昔から甲子園ボウルに出ている早稲田を見ていたこともあって、率直に嬉しいです。

石原 素直に嬉しいというのが一番です。自分は他大学に行く選択肢があった中で早稲田を選んで入学した経緯があって、だけど去年は負けてしまって。ラストシーズンで法政に勝って関東優勝を決めることができたことはすごく嬉しくて感慨深いですし、自分の力だけではないですけど、自分の選択を正解にできたと思います。日本一になるために早稲田に入ったのでまだ通過点に過ぎませんが、とりあえず一安心というか嬉しい気持ちです。

それぞれの良さ

――お二人はタイプが違うQBかと思いますが、ご自身の長所やそれが秋のリーグ戦で具体的に発揮された場面があれば教えてください

國元 自分の長所は投げるところで、去年はリーグでリーディングパサーだったんですけど、今年は一部で一番パス獲得ヤードが少なくて。それは自分が下手とかではなくて、ランがすごく出ているので、そこに全信頼を置いているというのと、要所ではしっかりパスを決められているのかなと思います。さっき勇志さんも言っていましたが、勝負強くここっていうところで決められて、一番良かったなと思うのはこの前の法政戦のTDランだったり、立教戦でWR佐久間さん(優毅、政経4=東京・早実)に投げた逆転TDだったり、こちらが優勢になりそうなときにしっかりとそれを手繰り寄せるところが自分の強みだなと思っています。あとは自分がパスを投げられている結果として中のランが人数少なくなって出てるというのは、間接的に自分のパスを相手が脅威だと思ってくれてるんだなと感じながらプレーをしていました。

石原 自分はオプションプレーを得意としています。解説とかを聞いていると「(石原選手がフィールドに出ると)ランだ」とか言われているかと思うんですけど(笑)。自分が走るかRBが走るかを選ぶオプションを得意としているので、そこの判断能力には自分で自信をもっていますし、仮にミスをしてしまっても思い切りの良さでなんとかできるのが強みじゃないかなと思います。明大戦のタッチダウンが結構いい判断だったんじゃないかなと思っていて、あれはパスプレーではあったんですけど投げられないと思ったので思い切って走って、結果タッチダウンをとれたので、自分の判断に責任をもってやり切れたいいプレーだったんじゃないかなと思います。

――國元選手にお聞きします。パスを投げる際に、OL(オフェンスライン)やボールを受け取るWRに求めていることはありますか

國元 パスプロは5秒持たせてくれればうちのパス陣だったら誰かが空いて通るというふうにできていると思います。今まで甲子園に早大が行っているときはラインズ勝負は多分負けて、柴崎さんやブレナンさん(翼、令2国教卒)のスキルでは勝っていたんですけど、今年はまずラインズ戦で戦えるなと思っているので。そこに全信頼を置いてパスを投げようと思っています。レシーバーはいろんな記事にタレントがいないとは書いていますが、本当にそうかな〜みたいな(笑)。自分的には超豪華だと思っているので、すごく信頼しています。

高校時代を振り返るQB石原

――高校時代はお二人ともQBをされていたということですが、大学に入ってぶつかったカベなどはありますか

石原 自分は未だに全然克服できていないのですが、やっぱり投げられなきゃいけないというのが一番課題だと思っています。走る面で言ったら縦上がりのスピードが大学と高校ではレベルも違いますし、場面も大学の方が全然多いなと感じています。それを克服するために今季はRBパートに参加して一緒に練習したり、体重を落としてスピードを出せるようにしました。

國元 高校からプレースタイルは変わらず、パスを結構投げていたのですが、大学はやっぱりWRもディフェンスも全員速いので、その一瞬の隙をどう突けるかが大事だと思っています。昨年は投げるのが遅れることがあったのですが、今年はタイミングが遅れたら命取りだと思っていますし、そこが一番大事だと思ってやっています。克服した面で言うと、昨年の法政戦は前半でボコボコにやられて、後半に点差が離されたときに、「ああ…」っていう気持ちになったことを自分が覚えていて。QBがそういう気持ちになったらだめなのに、そうなっていた部分がありました。今年は気持ちを全面に出してプレーをするというか、QBは冷静でいろというのが鉄則ですが、自分はできないので(笑)。感情が爆発するシーンが結構あって、それは自分の強みだと思っているので、これからも冷静なときは冷静に、嬉しいときはめいいっぱい喜ぶという気持ちを出してプレーしていきたいと思います。

――そのような壁に直面した後、大学で試合に出られるようになったのは具体的にいつ頃でしょうか

石原 自分は大学一年生の春頃から少し試合には出させてもらっていたのですが、ケガと腎臓の病気が発覚してしまって一、二年生のシーズンはそれで出られなくて。大学三年生から今みたいな國元と併用のポイントで出させてもらっている感じですかね。

國元 自分は一年生のときに1プレーだけ出て、そこでタッチダウン決めてというのが最初のシーズンでした。二年生の時はずっと出させてもらっていたんですけど、昨年の経験というのが今年に生きているなと思っていて。QBは経験がものを言うと思うので、自分の実力で勝ち取った部分もあるかと思いますが、信頼して試合に出してくれたチームメイトや監督、コーチには感謝しています。

――QBとして試合に出る時に特に意識している点はありますか

石原 特に自分の場合は、プレー数も少ないですしポイント起用ということもあって、まずは思い切りやるというのを大切にしています。こんなことを言うのもあれですが、仮にミスをしても國元のパスでなんとかなるだろうみたいな感じでやらせてくれているのが、結構思い切りのいいプレーにつながっているのかなと思います。

國元 ラインズは四年生が多いのですが、スキルズは同期や一個下が多いので、そういうところは自分が引っ張っていかなきゃなと思っています。プレー外では感情を爆発させることが多いのですが、プレー中はプレーの前にどういう感じのカバーなのかなどを整理してから、臨めています。練習したことをやる感じなので、特に意識をするというよりは、勝手にしているかなと思いますね。

理想のQB

――理想のQB像や目標にしている選手はどなたかいらっしゃいますか

國元 自分はパトリック・マホームズ選手(現カンザスシティ・チーフス)です。プレーに目がいくと思うのですが、自分はマホームズの一番すごいところはメンタル面だと思っています。昔プレーオフでチーフスが最強だって言われているときなのにすごく負けている場面があって。味方がドロップしまくったりパントのキャッチをミスったりとかで第1Qからボコボコだった試合だったんですけど、ベンチのマホームズが出されたときに、死ぬほどチーメイトを鼓舞していて。マホームズだけ見ていたら「勝てんじゃね?」みたいな余裕の表情があって、これほど自信があってチームメイトを鼓舞できる人はすごいなと思いました。自分に自信がない人にそんなことはできないと思うので、マホームズのメンタル面をテレビ越しで見てから、すごい人だなと思っています。

石原 テイサム・ヒル(現ニューオーリンズ・セインツ)です。QBなのにレシーバーをやったりキックにも積極的に参加したりする、ポジションにとらわれないような選手です。少しでも自分の長所をチームのために生かせたらなと考えているので、ポジションにとらわれずにいろんなポジションで試合に出て、結果を残しているテイサム・ヒルはすごくかっこいいなと思っています。

――続いては亀井主将(理陽、法4=東京・早実)についてお聞きします。亀井主将の特徴や良さを教えてください

石原 今まで自分が経験してきた池田主将(直人、令2法卒)や永山主将(開一、令4教卒)、大西主将(郁也、令3法卒)は叱咤(しった)激励というか口で引っ張るような感じだったのですが、亀井は背中で引っ張っているようなイメージです。亀井のプレーがすごすぎてみんなついていくという感じですし、加えてチームの状況を見て言うべきときに言うというか、タイミングをしっかり見計らえているのがすごいなと思いますね。

國元 勇志さんが言っているように、(亀山主将は)背中で語る感じの人です。自分は目立ちたがり屋なので、自分が活躍したい、賞を取りたいとか思っていましたが、この前亀井さんが(リーグ戦のMVPを)取ったときは、とても嬉しかったです。全員が満場一致で亀井さんという感じで、この人を勝たせたいという一心でみんなやっていたのと、最後のカウントダウンのときに亀さんが涙目になっていて、みんなで「そんなんだめだよ…」みたいな(笑)。全員亀さんの涙を見てうるっときたというか、この人のために頑張っているなと思ったので、すばらしい主将だと思いますね。

――三年前の甲子園ボウルのお話をお聞きしたいと思います。國元選手は高校三年生、石原選手は大学一年生でしたが、当時の敗戦を見て何か感じられたことはありましたか

石原 自分はケガでフィールドには立たずに、上からアナライジングスタッフをサポートする役割をしていました。そこから試合を見ていて思ったのは、早稲田は逆転したときにすごく喜んでいたんですが、関学が焦っていないなと感じて。試合後に一つ上の永山主将と話す機会があったんですが、「あいつらは全然焦っていなかったし、淡々と次のプレーを遂行することを考えていた」っていう話をされていて。大舞台でも焦らずにできる関学さんは試合慣れもしているし、王者たる所以なのかなと思いました。6回も関西勢と戦って、一度も勝っていないのは早稲田だけらしくて、勝つためにゲームコントロールを全員で一丸となってやっていかなきゃいけないなと思っています。

國元 自分は高校引退後に膝をケガして、その状態で早稲田の試合を観に行っていました。まず一つは、自分がケガをしていた状況で観ていた試合に出られるというのは、同じく三年生で初めて甲子園に出場した柴崎さんに追いついたという感じがします。あとはあの試合は一番早稲田が善戦した試合だなと思っていて、あのメンバーでも勝てないんだというのを感じました。未知の領域なので、まずは思い切りやるというのと、ぶっつけ本番で勝てる相手では絶対にないので、しっかり準備していきたいですね。

――お二人とも自身初の甲子園ボウルになりますが、どのようなお気持ちでしょうか

石原 法大戦でもそうでしたが、楽しさ半分、恐怖半分という感じです。勝っても負けても引退というのもありますし、大学フットボーラーとして一番目指している舞台なので、まずは仲間を信じて自分のプレーを遂行し、かつ楽しんで、その結果日本一という結果になれればいいなと思います。

國元 まず大きいのは三年生であの舞台に立って思い切りプレーができるということで、自分らが頑張った部分もありますが、今の四年生にはしっかり感謝して、恩返しをするという意味でも、自分が勝利に導きたいなと思っています。やはりあの舞台でプレーができるのは全国で2チームだけなので、そこはしっかり楽しみたいと思います。楽しんでやるというのは人間が一番強くなれる瞬間だと思いますし、小学校からやってきたアメフトの憧れの舞台でそれをしっかりやりたいなと思います。

――ありがとうございました!

甲子園ボウルへの意気込みを書いていただきました!

(取材 安齋健、田部井駿平 編集 湊紗希)

◆石原勇志(いしはら・ゆうし)

東京・足立学園高出身。スポーツ科学部4年。170センチ。80キロ。ポジションはQB(クオーターバック)

◆國元孝凱 (くにもと・こうが)

東京・早大学院高出身。社会科学部3年。179センチ。87キロ。ポジションはQB。