【連載】新体制特集『愚直』【第3回】監督対談 髙岡勝監督

米式蹴球

 今年でBIG BEARSの監督に就任し、5年目を迎える髙岡勝監督(平4人卒=静岡・聖光学院)。早慶戦6連覇、そして秋季リーグ1位を奪還し日本一を目指すBIG BEARSをマネジメントする高岡監督に昨年の振り返りや現在のチーム状況などについて伺った。

※この取材は4月3日に行われたものです。

「誰にでもできることを誰よりも当たり前にする」(髙岡)

前例のないシーズンとなった昨年を振り返る髙岡監督

――昨シーズンは、前例のないシーズンとなりましたが振り返っていかがですか

髙岡 うちのチームだけではないですが、経験したことがないということで早稲田の場合、ご存じの通りスポーツ推薦で集めているチームに比べて経験値が圧倒的に少ないので、どれだけ代が変わった後にそのチームのメンバーが試合をして成長するということでないとなかなか勝てないチームで、昨年は付属校出身のクリスマスボウルに出場した代ではなく、トップで戦ってきた人が少ないチームでしたので非常にチームづくりという点では苦労したというか完成できないまま秋シーズンに突入しました。またそこでコロナの影響も出ましたのでフットボールの面では不完全燃焼だった感じがします。ただいろいろな取り組みの中で自分ができることを見つめられたシーズンだったと思っています。

――監督としてチームを運営してきた中で、昨シーズンでうまくいった点やうまくいかなかった点はありましたか

髙岡 うまくいったという点では、フットボールだけではなくて、我々のチームの活動目的はリーダーシップのある人をつくっていくということが大学としての目的でもあるし、そういう点では、自分たちが今できることを4年生が特に考えていろいろやってきたのは、私が監督に就任して4年目でしたけれども言い続けてきたというか学生と共に歩んできた一つの成果が出たのかなと思います。できなかったことは、グランドに来られなかったので、日々のコミュニケーションとか部員が何を考えているのかというのを中々拾いあげることができず、そういう点で大きな一つの目標にチーム、コーチ含めていくところで、すごいパワーにはならなかったところに心残りがあります。

――今年もウイルスとも戦っていかなくてはならないと思いますが監督として選手への声かけなど心がけていることはありまあすか

髙岡 幸いなことに今シーズンは、チームのメンバー、ご家族ともに感染者が出ていないのでチームの活動は順調にはこなせています。やはり課題であった気持ちを一つにしていこうというか、コミュニケーションをとっていこうという点においてコロナ禍であっても、逆にコロナ禍で培ったオンラインのミーティングとかをできるようになったので、前はそういう発想が無かったですからそういう点では学生とコーチ間のコミュニケーションというのはスムーズに取れてきているかなと思っています。

――新体制について、今年からヘッドコーチというのが新しくできましたが、どのような経緯でできましたか

髙岡 私は、監督になる前から、組織をどう強くしていくかということで、色々な新しい取り組みをしていて、昨年までは私がヘッドコーチ兼務ということでしたが、今年は坂本智信オフェンスコーディネーター(平19教卒=東京・早大学院)をヘッドコーチにしてもらって、より1人1人の責任をつけてやっていこうということで彼にはヘッドコーチをお願いしました。

――永山開一主将(教4=東京・足立学園)の印象についてはいかがですか

髙岡 永山くんは高校時代もいいプレーヤーでしたし、入部する時も私が積極的に勧誘して入ってくれました。しかも高校3年生の秋まで試合に出ていて、その後勉強して現役で入ってきたので非常にあのガッツがある人間だと思っていました。飛び抜けて何か目立つ印象は無い選手ですが、コツコツ練習に励んで、同級生からも彼のひたむきな真面目に取り組む姿勢というのが(主将として)彼しかいないということでしたね。目立つ選手が本当にいない中で彼の存在というのは大きいのかなと思っています。

――今年の4年生の印象についてはいかがですか

髙岡 4年生非常に少ない人数なんですね、他の代に比べて。毎年4年生にお願いしているのは全員がキャプテンであってほしいということで、1人1人4年生と面談しましたけれども、印象としては、自分たちが人数が少なくてあまりリーダーシップを出してこなかった子も4年生になって変わったのかなあということがあって、そういう意味ではまだまだ分からない所も多いんですけども逆にどうもっと変わってくるのかが楽しみですね。

――その1対1の対談でどのようなことをお聞きになったのですか

髙岡 最上級生として君はチームで何をするのというのを中心に聞いていました。

――現在のチームの雰囲気は監督から見ていかがでしょうか

髙岡 まだまだですね。私は上手にプレーしろというのは求めないのですが、「誰にでもできることを誰よりも当たり前にする」というのがこのチームメンバーに大切な行動規範だよという話をしています。これは「当たり前」のことではなく、「誰にでも」というのが1つミソで、それは同じ物差しの中でできることをやりきることということの大事さを常々話しているのですが、そういう意味で、できることをやっていないというのがまだまだいっぱいあります。だからそれをやった上での日本一を狙えるレベルだと思っていますので、そういう点ではまだスタートして全然足りていないですね。

――新体制となり今の期間はどのようなことを意識して指導されていますか

髙岡 最終的なゴールは12月の第3週なので、早慶戦は一つの秋のチーム作りとしてのターニングポイントなのですが、やはりライバルの慶大には負けたくないので、その時点が一つのマイルストーンになります。どうやって自分たちのフットボールを仕上げられるかということで、一つ一つの精度へのこだわりというか、できることを100%やり切るというところをフォーカスして指導しています。

――昨シーズンでQBやDBなど低学年の時から多く試合に出場していた選手が抜けてしまったことについてはどのように捉えていますか

髙岡 昨年のコロナウイルスの影響で春シーズンに、今年の主力になっているだろう3年生が、試合ができなかったので、層としては、人数は多いのですがレベルとしては決して高くないのでここが大きな課題ですし、秋のリーグ戦の初戦が日大ですから、そこに向けてどう経験させるかというのが1番の課題です。

――監督が期待されている選手はいますか

髙岡 オフェンスはエースRBの吉澤(祥、スポ4=東京・成蹊)は経験値が高いですし、後はレシーバー陣もかなり大きな選手、特にU18に選ばれたWR上野(陸、社2=東京・早実)とか2年生にもいい選手が多くいます。あとは、去年のクリスマスボウルでヘイルメリーパスを取った北川大智(スポ1=東京・佼成)が入ってきますので、オフェンスに関しては、この辺のスキルポジションと共に、OLは一新していますから、これら中心にフレッシュなメンバーがどれだけ思いっきりできるかがキーとなり楽しみなところです。一方ディフェンスは、やっぱりDL山田琳太郎(商3=神奈川・川和)ですね。NFLにチャレンジできるような才能があるので、意識もだいぶ変わってきていますから、彼が永山と共にフロントをコントロールできるかという所だと思います。LBは、(メンバーが)ガラッと変わりますね。小粒ですが能力の高いLB斧田(康太郎、スポ3=愛知・海陽)とかがどう暴れまくるかという所だと思います。

「新しいチャレンジをしていきたい」(髙岡)

監督として指揮してきた4年間を振り返る髙岡監督

――指導する際に心がけていることなどあれば教えて下さい

髙岡 指導というか部員も仲間ですので自分のできること、監督としてできることは何かなと思った時にやはり部員1人1人がどのような顔色をしているのか、やっぱり意志とか闘志がないと成長しないので、闘志がなさそうな顔をしている選手が何か悩みがあるのであれば、それはチームにとってもマイナスなので、心がけている所はそのような所です。

――選手への指導と選手の自主性との関係は、難しいところがあると思うのですが、そこについては監督はどのように考えておられますか

髙岡 どれだけ自分がやるべきことが理解できているかということです。今は、コミュニケーションの伝達手段が文字になっているので気持ちが伝わっていなくて、違う解釈で正しくないことをしている場合があると思います。そこはコーチにも部員にも必ず自分がやるべきことをお互いが理解したうえでやってくれということを私は強くお願いをしています。

――次に春シーズンについてです。今年の春シーズンは、昨年はできなかった関西の強豪校と対戦しますが、どのように捉えていますか

髙岡 やはり春1番の強豪校は立命大なので、立命大相手に今年はフレッシュなメンバーですから、どれだけできるかというのは一つ秋に向けてのチェックポイントになってきますので楽しみというかチャレンジングだと思っています。

――また昨シーズンに惜しくも敗れた明大との試合もありますがどのように捉えていますか

髙岡 あの時は本当にコロナで活動ができなくて、やはりフットボールは練習をしないと勝てないなというのがよく分かりました。我々のフットボールで本来出すべきスピードがまるで出ていなかったので、やはりフットボールは練習があってのことだと思いました。

――最後に監督としてBIG BEARSで指揮をとり5年目となりますがいかがですか

髙岡 こんなに長くやるつもりはなかったんですけどね(笑)。そういう点では、今までは甲子園ボウルに行ったことがあり、経験値のある選手がいてある程度先が読めた年ではありました。昨年は厳しいかなと思ったのですが、春シーズンを戦ってみてこうなるだろうといった想像はあったんですが、今年は私自身も手探りなシーズンで、毎年新しいことにトライアルしていますので、今年も気持ちを新たに、今まで4年間やってきたことをベースに新しいチャレンジをしていきたいと思っております。

――ありがとうございました!

(取材・編集 小野寺純平)

意気込みを書いていただきました!

◆髙岡勝(たかおか・まさる)

1968(昭43)年6月22日生まれ。静岡・聖光学院高出身。1992(平4)年人間科学部卒。監督に就任し4シーズンで2度甲子園ボウルに導く。創部初の日本一へ、髙岡監督のマネジメントに期待がかかります!